COLUMN

一般内科・健康診断のご予約
「寝つけない」「途中で目が覚める」 … こうした不眠症状に悩む人は多くいます。一方、睡眠中に「呼吸が止まる」「いびきが激しい」といった無呼吸症候群も、睡眠の質を著しく損なう重大な問題です。
これらは「睡眠障害」という点で共通しますが、原因・病態・対処法は大きく異なります。正しく理解しないまま対処を誤ると、改善が遠のくケースも少なくありません。
本記事では、不眠症と睡眠時無呼吸症候群の違いを体系的に整理し、症状や診断法、治療・対策のポイントまでを詳しく解説します。自分の睡眠問題の原因を見極め、適切な改善策を取る手助けになれば幸いです。
不眠症(Insomnia)は、「十分な睡眠時間が確保できない」「寝つきが悪い」「睡眠が浅い/中途覚醒が多い」「早朝に目覚めて再び眠れない」などの訴えを指します。
学術的には国際的基準(ICSD‑3:International Classification of Sleep Disorders 第3版)などで、睡眠困難の自覚があり、それが日中機能障害(疲労感・集中力低下・記憶力低下など)を引き起こすという点が、「不眠症」と診断される要件となります。
不眠症は時間軸や持続性で分類されることが多く、たとえば:
不眠症を引き起こす因子は、多岐にわたります。以下は代表的なものです:
不眠は単に「寝られない」だけでなく、慢性化すると心身のストレス耐性低下・生活の質の低下を招きやすく、早期改善が望まれます。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS または OSA を含む)は、睡眠中に呼吸が繰り返し途絶(無呼吸)または浅くなる(低呼吸)現象を含む疾患群です。
主なタイプは以下の通りです:
OSA が最も頻度が高く、日常的に「いびき」「呼吸停止感」「日中眠気」を伴う典型像を呈することが多いです。
体が睡眠中に喉・舌・軟口蓋・咽頭壁の筋肉を弛緩させると、上気道の支持力低下・空隙狭小化により、空気通路が塞がれやすくなります。これが呼吸停止・低酸素・覚醒反応を誘発します。
呼吸が止まるたびに体は覚醒(短時間でも)して呼吸を再開し、その断続覚醒が睡眠構造の破綻を招きます。また、低酸素・二酸化炭素の蓄積・交感神経過緊張などが体内ストレスを高め、心血管系・代謝系への負荷をもたらす可能性もあります。
無呼吸重症度は一般に AHI(Apnea–Hypopnea Index) という指標で評価され、時間あたりの無呼吸・低呼吸回数を基に分類されます。
主な症状:
主な合併症・リスク:
OSA 患者の一部には、不眠症状(中途覚醒・入眠困難)を併発する傾向もあり、両者の重複(後述の COMISA)も注目されています。
| 項目 | 不眠症(Insomnia) | 睡眠時無呼吸症候群(特に OSA) |
| 主な障害対象 | 睡眠開始や維持が困難(主観的訴え) | 睡眠中の“呼吸”が断続・低下 |
| 覚醒・中途覚醒 | 覚醒主体、不安や認知要因が関与 | 呼吸停止後の再開が覚醒を誘発 |
| 日中症状 | 疲労感・倦怠感・集中力低下 | 強い眠気・居眠い傾向・昼間無感覚 |
| 典型症状 | 入眠困難・途中覚醒・早朝覚醒 | 大きな いびき・無呼吸感・加えて日中眠気 |
| 発生要因 | 心理ストレス・生活習慣・疾患・薬剤 | 解剖学的因子・肥満・筋弛緩・呼吸制御異常 |
| 検査法 | 睡眠日誌、質問票、場合によっては簡易ポリソムノグラフィー | 睡眠ポリソムノグラフィー、終夜呼吸モニタリング、AHI 評価 |
| 治療アプローチ | CBT‑I、睡眠衛生改善、薬物療法など | CPAP、口腔装置、体位療法、減量、手術など |
| 合併リスク | 精神疾患(うつ・不安)、慢性疲労、心身ストレス | 心血管疾患・代謝異常・認知機能低下・事故リスク |
この比較から不眠症と無呼吸は「睡眠を妨げる」という点では重なりますが、原因・アプローチ・メインターゲットが大きく異なることがわかります。
不眠症と睡眠時無呼吸症候群が同時に存在する状態を、近年「COMISA(併存型不眠+無呼吸)」と呼ぶことがあります。日本国内研究でも、OSA 患者の 30%前後に不眠症状を伴うとする報告があります。
この併存型は、単独の OSA や不眠と比較して、治療抵抗性・生活の質低下・アドヒアランス不良傾向(例えば CPAP 装置の継続利用率が低下)などの問題点が指摘されています。
まずは主観的訴えを丁寧に聴取します。典型的には以下の質問・評価が行われます:
スクリーニングツール例:Insomnia Severity Index(ISI)、Athens Insomnia Scale(AIS)、Epworth Sleepiness Scale(ESS)など。

無呼吸を疑う場合、在宅で行いやすい簡易モニタリング(終夜呼吸モニタリング装置)を使い、無呼吸・低呼吸・酸素飽和度低下を測定することがあります。
精密な睡眠・呼吸評価には、終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG) が用いられます。これは脳波(EEG)、筋電図、呼吸流量、酸素飽和度、心拍数、眼球運動、体位などを同時に記録する検査です。
これにより、無呼吸・低呼吸回数(AHI)、覚醒回数、睡眠段階構造、酸素変動などを詳細に評価できます。
また、COMISA を疑う場合は、不眠指標・覚醒頻度・呼吸イベントのタイミング関係性などを総合的に見る必要があります。
不眠症と無呼吸は異なる病態であるため、治療アプローチも当然異なります。ただし、併存型 COMISA では双方を統合的に扱う必要があります。
主な戦略には次のものがあります:
不眠が主因の場合、これらを中心にアプローチすることで睡眠の持続性と質を改善します。
主要な対策は次の通り:
これらは無呼吸エピソードを減らし、睡眠の断片化・酸素低下を抑制するために用いられます。
両者を併存するケースでは、下記のような統合的アプローチが望まれます:
このように、片方の治療だけで済ますのではなく、両者を絡めて戦略を立てることが、COMISA 対応の鍵となります。
病的治療と並行して、生活ベースでできる改善策を取り入れることが、長期的な改善には不可欠です。
肥満は無呼吸因子として極めて重要です。バランスのよい食事・定期運動・適正エネルギー制限が基本です。
また、就寝直前の重い食事や胃食道逆流を誘発する食事は避けるべきです。
一般内科・糖尿病内科を担当しています。
この記事は、ヒロクリニックの医師紹介・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
岡 浩子 (おか ひろこ)
医療法人社団福美会 理事長
この記事は、ヒロクリニックの医師紹介・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
一般内科を担当しています。
この記事は、ヒロクリニックの医師紹介・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
緊急性の高い症状は、当院への来院より救急要請を優先してください
強い胸痛、呼吸が苦しい、意識がもうろうとするなどの場合は119へ。受診先に迷う場合は埼玉県救急電話相談 #7119(24時間)をご利用ください。