3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症

3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症

概要

3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症(3-Hydroxy-3-Methylglutaryl-Coenzyme A Lyase Deficiency)は、HMG-CoAリアーゼの欠損症で、劣性遺伝疾患の一つです。肝臓でケトン体の産生がおよびロイシンの中間代謝が障害される疾患です。

疫学

世界で100例以上、日本では5~9例のみですが、同様の症状がみられるReye様症候群やSUIDs(Sudden unexpected infant death)の診断されている可能性もあります。

原因

原因遺伝子は染色体の1p36.1に位置するHMGCLであることがわかっています。
ミトコンドリアHMG-CoAリアーゼの欠損によって、肝臓でのケトン体の産生およびロイシンの中間代謝がブロックされます。非ケトン性低血糖と代謝性アシドーシスをきたす疾患です。ロイシンの中間代謝のブロックにより、尿有機酸分析で、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸、3-メチルグルタコン酸などの特徴的有機酸が排泄され化学診断が可能と言われています。

HMGCL遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
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症状

  • 低血糖発作:強い低血糖による嘔吐、意識障害、けいれん、多呼吸(代謝性アシドーシスの代償性と考えられます)など。新生児の場合は、低体温や哺乳不良などの症状がでることもあります。
  • 神経症状(てんかんや知的障害の合併)※
  • 肝腫大

※低血糖による後遺症

診断

血中アシルカルニチン分析でC5-OHの上昇があり、尿中有機酸分析で疾患特異的な代謝産物を認めたもの、もしくは酵素活性や遺伝子診断されたものを確定診断とします。

血液・尿検査

急性期の非ケトン性低血糖が最も重要です。
代謝性アシドーシスや高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇が多く認められます。

血中アシルカルニチン分析

C5-OH(3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン)が上昇するのが特徴ですが、メチルクロトニルグリシン尿症や複合カルボキシラーゼ欠損症、β-ケトチオラーゼ欠損症などでも同様にC5-OHが高値を示すため、血中アシルカルニチン分析だけでの鑑別は難しいと言えます。
なお、C0(遊離カルニチン)の低下も多く認められます。

尿中有機酸分析

特徴として尿中に3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸の排泄増加がみられます。
また、3-メチルグルタコン酸、3-メチルグルタル酸などの上昇もみられ、化学診断が可能です。

酵素活性

リンパ球や培養細胞などを用いた酵素活性測定

遺伝子解析

原因遺伝子であるHMGCL遺伝子の解析

治療

食事療法

食事療法では、①蛋白異化を防ぐこと、②ロイシン中間代謝産物の排泄をうながすこと③脂肪酸β-酸化系を抑制することが必要となります。ケトン体の値が低く神経系に与える影響は大きいため、グルコースの含まれる輸液によって低血糖補正を直ちに行います。

薬物療法

静脈注射(ない場合は内服)でL-カルニチンの投与を行います。