アルポート症候群

アルポート症候群アルポート症候群

概要

アルポート症候群(Alport Syndrome, X-Linked・AS)は、1927年に南アフリカ人のCecil Alport医師により報告された、進行性の慢性腎炎を特徴とする遺伝性疾患で、難聴や眼球異常が合併することが特徴です。

疫学

欧米では、5,000人から10,000人に1人の有病率と報告されています。日本国内においては、病院を受診した患者数を3年間調査した結果、1,200人程の患者がいるのではないかと推測されています。学校検診などで無症候性血尿を契機にして発見されることが多いため、無症候性血尿の症例に対しては、アルポート症候群を疑って、腎疾患の家族歴を調べることが重要です。

原因

腎組織でのIV型コラーゲンα3,4,5鎖にコードしている、COL4A3,COL4A4,COL4A5遺伝子のいずれかに異常が生じた場合に発症します。これらのタンパクは眼や内耳にも存在しているので、眼球異常や難聴の症状を合併します。また、本疾患は遺伝子疾患であるため、80%の患者において家族にも発症し、残りの20%では、遺伝子の突然変異によって発症します。
COL4A5遺伝子の異常に伴うX染色体連鎖型アルポート症候群の発症率が最も頻度が高く、明らかに女性患者に比べて男性患者のほうが重症を呈します。また、COL4A3、COL4A4遺伝子に異常がある場合にも、常染色体劣性型では約15%、常染色体優性型で約5%の頻度で遺伝します。

COL4A5遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
blue-btn

症状

慢性腎炎

典型例では、幼少期から血尿を認めます。通常は見た目だけでは尿に血液が混ざっていることが判明せず、尿検査時に血尿を指摘されます。また、風邪を引いた際に肉眼的血尿と呼ばれる赤色~コーラ色の尿が出ることがあります。年齢とともに蛋白尿が現れはじめ、末期の腎不全へと進行することがあります。最も頻度の高いCOL4A5遺伝子の異常に伴うX染色体連鎖型のアルポート症候群では、男性の場合、約90%の患者が40歳までに末期の腎不全へ進行します。女性の場合は、40歳までに約10%の患者が末期腎不全へと進行します。末期腎不全へと進行してしまった場合、透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要となります。

難聴

出生時~乳幼児期に症状を呈することはありません。男性の場合、COL4A5遺伝子の異常に伴うX染色体連鎖型アルポート症候群では、ほとんどが10歳以降に発症し、最終的には80%の患者において発症します。女性の場合は、20%の患者に発症します。

眼合併症

COL4A5遺伝子の異常によるX染色体連鎖型アルポート症候群では、男性の場合、約30%の患者に白内障や円錐水晶体などの眼合併症が発症すると報告されています。一方、女性においての眼合併症の発症は非常にまれであると考えられています。

びまん性平滑筋腫

良性腫瘍を発症する、非常にまれな合併症です。食道に最も発症し、女性生殖器や気管にも見られることがあります。

治療

根治的治療法は現在のところ存在しません。末期腎不全への進行を抑えることが重要で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬の服用による腎保護療法を行います。腎障害が進行し、慢性腎不全に進行した場合の治療法としては、透析療法(血液透析・腹膜透析)と腎移植があります。

予後

男性患者の場合、末期腎不全へ高頻度で進行し、到達平均年齢は25歳くらいと報告されています。その後、 腎移植や血液透などの腎代替療法が必要となります。腎移植の正着率は比較的良好であると報告されていて、抗基底膜抗体腎炎を発症する可能性はありますが、若年で慢性腎不全に陥った症例に対しては、腎移植の適応が考慮されます。
また、難聴が発症した場合、補聴器が必要になることもあります。

【参考文献】