シトリン欠損症

シトリン欠損症シトリン欠損症

概要

シトリン欠損症(Citrin Deficiency)は、シトリン欠乏症(NICCD)によって引き起こされる病気です。

新生児ではシトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)、高齢者ではシトリン欠損症による成長障害や脂質異常症(FTTDCD)、成人ではシトルリン血症II型(CTLN2)における神経精神症状を伴う再発性高アンモニア血症として発現することが知られています。多くの場合、タンパク質や脂質の多い食品を強く好み、炭水化物の多い食品を嫌うことが特徴です。

疫学

日本人を含む東アジア~東南アジアで高い頻度で見られる疾患です。

日本では、SLC25A13遺伝子の変異を持つ保因者もしくはヘテロ接合は65分の1なので、日本におけるの理論上の有病率は17,000分の1です。両アレルのSLC25A13遺伝子の病的変異を受け継いだほとんどの日本人はNICCDを発症すると考えられています。

劣性遺伝疾患のため、両親がALX25A13病原性変異体の保因者の場合は、兄弟や姉妹はそれぞれ、受胎時に25%の確率で罹患し、50%の確率で無症状の保因者となり、25%の確率で非罹患かつ保因者でなくなります。
また、一方の親が保因者で、もう一方の親が2つのSLC25A13病原性バリアントを有する場合、罹患者の兄弟や姉妹の罹患の確率は50%で、残り50%の確率で無症状の保因者となります。家族内のALC25A13病原性変異体がわかれば、リスクの高い親族に対する検査やリスクの高い妊娠に対する出生前検査が可能です。

原因

原因遺伝子はSLC25A13であることがわかっています。父由来、母由来の両方のSLC25A13遺伝子に遺伝子変異があった場合のみシトリン欠損症となります。

SLC25A13遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
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症状

  • 新生児肝内胆汁うっ滞症 (Neonatal Intrahepatic Cholestasis caused by Citin Deficiency: NICCD)
    1 歳未満の小児では、成長制限を伴う低出生体重児で、一過性の肝内胆汁うっ滞、肝腫大、びまん性脂肪肝、肝線維化を伴う実質細胞浸潤、可変性肝機能障害、低蛋白血症、凝固因子低下、溶血性貧血、低血糖が見られます。一般に重症ではなく、適切な治療により1歳までに症状が消失することが多いですが、まれに肝移植が必要となることがあります。
  • 脂質異常 (Failure To Thrive and Dyslipidemia caused by Citrin Deficiency: FTTDCD)
    1歳を過ぎると、シトリン欠損症の多くの小児は、タンパク質や脂質の多い食品を好み、炭水化物の多い食品を嫌がるようになります。臨床で認められる異常としては、成長制限、低血糖、膵炎、重度の疲労、食欲不振、およびQOLの低下が含まれることがあります。
    臨床検査では、脂質異常症や乳酸/ピルビン酸比の上昇、尿中酸化ストレスマーカーの高値、トリカルボン酸(TCA)サイクル代謝物の価が著しく逸脱することなどが認められます。新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)や脂質異常(FTTDCD)を発症した人の中には、10数年後に成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)を発症する人もいます。
  • 成人発症II型シトルリン血症 (Adult-onset Type 2 Citrullinemia: CTLN2)
    通常は 20 歳から 50 歳の間に突然発症します。
    夜間せん妄、攻撃性、過敏性、多動性、妄想、見当識障害、不穏、眠気、記憶喪失、振戦、痙攣性発作および昏睡などの精神神経症状を伴う再発性の高アンモニア血症などの症状が見られます。しばしばアルコールや糖分の摂取、投薬、手術によって症状が誘発されます。患者は、新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)または脂質異常(FTTDCD)の既往歴がある場合もあれば、ない場合もあります。

診断

シトリン欠損症の診断は、血中または血漿中のアンモニア濃度や、血漿または血清中のシトルリンやアルギニン濃度、スレオニン/セリン比、膵分泌トリプシン阻害剤の血清濃度の上昇などの特徴的な生化学的所見が見られた場合とSLC25A3の二重鎖病原変異が見られた場合となります。

治療

症状が出る前に適切な食事管理を行うために、発症者の兄弟姉妹を特定することが必要です。

NICCD:食事に脂溶性ビタミンを補充し、乳糖を含まない、中鎖トリグリセリド(MCT)を強化したミルクを使用します。

FTTDCD:食事療法に加え、ピルビン酸ナトリウムを投与することで成長が改善されることがあります。

CTLN2:肝移植によって高アンモニア血症クリーゼを予防し、代謝障害を是正し、タンパク質の多い食品への嗜好性をなくします。また、アルギニン投与により血中アンモニア濃度が低下し、カロリー/炭水化物摂取量が減少します。タンパク質摂取量が増えると高トリグリセリド血症を軽減されます。アルギニンや、ピルビン酸ナトリウム、MCTオイルを摂取すると肝移植の時期を遅らせることができる可能性があります。

予後

予防として脂質とタンパク質の多い低炭水化物食をとるようにします。

シトリン欠損症に関連するすべての表現型について、アンモニアとシトルリンの血漿中濃度、および PSTI の血清中濃度を定期的に測定します。
NICCDを発症した小児は、FTTDCDについてフォローアップを行います。

【参考文献】

引用:難病情報センター –