シュワルツ・ヤンペル症候群

シュワルツ・ヤンペル症候群シュワルツ・ヤンペル症候群

概要

シュワルツ・ヤンペル症候群(Schwartz-Jampel syndrome:SJS)は、別名、軟骨異栄養性筋強直症と称され、ミオトニア症状と軟骨異常を伴う遺伝性疾患で、生命予後は良いが成長とともに日常生活動作が障害されます。顔面筋の緊張のため眼裂は狭小となり、口を尖らせた特長的な顔貌を呈します。骨格異常としては、低身長、大関節の屈曲拘縮等が認められます。この疾患では、骨格異常とミオトニアという特異な臨床症状の組合せが知られています。ミオトニアとは、筋の持続収縮、弛緩障害を意味し、通常筋原性の症状を指しますが、本疾患におけるミオトニアは、筋緊張性ジストロフィーや、先天性ミオトニア等で観察されるミオトニアとは異なった特徴を持つため病因遺伝子の発見とその分子機構解明が待たれていました。

内反膝に加えて、腕を曲げたり、指や足の指を永久に曲げたり(屈指症)、肘や膝に関節の変形(拘縮)を起こして動きを制限することがあります。その他の特徴としては、骨盤の異常(腸骨)や骨塩密度の低下(骨減少症)などがあります。シュワルツ・ヤンペル症候群の乳児は、自律神経系の機能不全は、通常、摂食と嚥下の困難、呼吸の問題、および高体温を起こします。影響を受けた乳児は、体温が上昇していなくても、過度に発汗したり、痛みを感じる能力が低下したりすることもあります。この状態の多くの赤ちゃんは、呼吸と体温の調節に問題があるため、乳児期を過ぎても生き残れません。ただし、Stüve-Wiedemann症候群の人の中には青年期以降に生きる人もいます。一部の罹患者は、味蕾(糸状乳頭)を収容する隆起を欠く滑らかな舌を持っています。影響を受けた子供はまた、特定の反射、特に何かが目に触れたときにまばたきする反射(角膜反射)と膝のけいれん反射(膝蓋反射)を失う可能性があります。

SJSは、1997年にGiedionらにより臨床型から1A、1B、2型に分類されていました。1Aと1Bは重症度によって分類されていましたが、明確な区分は難しく、筋症状と骨、軟骨異常を合併し、乳児期致死を呈する2型は、現在では、leukemia inhibitory factor receptor(LIFR)遺伝子変異に起因するStuve-Wiedemann症候群と同一の疾患とされています。かつてシュワルツ-ジャンペル症候群2型として知られていた疾患は、現在、シュトゥヴェ-ヴィーデマン症候群の一部であると考えられています。研究者たちは、シュワルツ-ジャンペル症候群2型の呼称はもはや使用しないことを推奨しています。また、以下の名称で呼ばれることが多くあります。

  • 新生児シュワルツ-ジャンペル症候群
  • SJS2
  • Stuve-Wiedemann異形成
  • Stuve-Wiedemann症候群
  • Stuve-Wiedemann/Schwartz-Jampelタイプ2症候群
  • STWS
  • SWS

疫学

本邦での疫学調査はなく、パールカン変異を確定した患者数は不詳ですが、海外からの報告数は100を数えます。

原因

2000年代に入り、SJSはパールカン(HSPG2)遺伝子変異疾患であることがSJSはパールカン(HSPG2)遺伝子変異疾患であることが示されました(Nicole et al. Nature Genetics,2001 , Arikawa-Hirasawa et al Am.J.Hum Genet. 2002)。筋の自発持続収縮によるミオトニアと軟骨異形性による骨格病変を主症状とします。申請者らはパールカンが、アセチルコリンエステレースを神経筋接合部に局在させる必須分子であることを示しました(Nature Neuroscience 2002)。これらの研究成果により、SJSの原因遺伝子が初めて解りました。

LIFR遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

一般に出生時には明らかな症状を認めず乳児期以降、低身長や特徴的な顔貌に気付かれ、3歳位までに診断されます。顔面筋の緊張のため眼裂は狭小となり、口を尖らせた仮面のような顔貌を呈する。筋の自発持続収縮によるミオトニアと骨格病変を主症状とします。本疾患で観察されるミオトニアは、持続性、全身性に出現し、筋電図上も静止時に複合反復放電(complex repetitive discharge)と称される特徴的な所見を示します。骨格異常としては、低身長、大関節の屈曲拘縮、脊椎の後弯が認められます。X線所見にて、扁平椎体、骨端、骨幹端異形成が見られるが、骨端、骨幹端異形成は大関節に限られます。大腿骨頭の変化は比較的強く、内反股を認めることがあります。

診断

Definite、Probableを対象とします。

シュワルツ・ヤンペル症候群1型診断のカテゴリー

  • Definite

①に加え、③又は④を認めます。

  • Probable

①②を認めます。

①顔面を含むミオトニーを認めます。1)又は2)。

1)臨床的にミオトニー現象(筋強直現象)を認めます。

  • 眼輪筋の収縮による眼裂狭小を認めます。
  • 口輪筋の収縮による口を尖らせた表情をとります。

2)針筋電図で連続的な自発性活動電位を認めます。

低振幅で漸減がなく長く持続する特異なミオトニー放電です。

②下記のいずれかの骨格異常を認めます。

  • 低身長
  • 大関節の屈曲拘縮
  • 小胸郭
  • 脊椎の後弯
  • 扁平椎、骨端、骨幹端異形成

③筋生検の免疫染色等でパールカンタンパク質の欠損を認めます。

(参考:筋病理所見は筋線維の大小不同、内在核増生等非特異的なミオパチー様所見をとります。径の大小不同は主にタイプ1線維に認められます。)

④パールカン遺伝子に変異を認めます。

参考事項

発症は幼少期。多くは3歳位までに気付かれます。

ときに下記の小奇形を合併します。

  • 小眼球
  • 小顎症
  • 耳介低位
  • 毛髪線低位

シュワルツ・ヤンペル症候群は、1997年にGiedionらにより臨床型から1A、1B、2型に分類されており、1Aと1Bは重症度によって分類されていたが、明確な区分は難しいとされます。筋症状と骨、軟骨異常を合併し、乳児期致死を呈する2型は、現在ではleukemia inhibitory factor receptorLIFR)遺伝子変異に起因するStuve-Wiedemann症候群と同一の疾患とされています。

<重症度分類>

機能的評価:Barthel Index

85点以下を対象とします。

 質問内容点数
食事自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える10
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)
全介助
車椅子からベッドへの移動自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)15
軽度の部分介助又は監視を要する10
座ることは可能であるがほぼ全介助
全介助又は不可能
整容自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)
部分介助又は不可能
トイレ動作自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)10
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する
全介助又は不可能
入浴自立
部分介助又は不可能
歩行45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず15
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む10
歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能
上記以外
階段昇降自立、手すりなどの使用の有無は問わない10
介助又は監視を要する
不能
着替え自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む10
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
上記以外
排便コントロール失禁なし、浣腸、坐薬の取扱いも可能10
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取扱いに介助を要する者も含む
上記以外
10排尿コントロール失禁なし、収尿器の取扱いも可能10
ときに失禁あり、収尿器の取扱いに介助を要する者も含む
上記以外

診断基準及び重症度分類の適応における留意事項

1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)とします。

2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとします。

3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とします。

遺伝

この状態は常染色体劣性パターンで遺伝します。これは、各細胞の遺伝子の両方のコピーに突然変異があることを意味します。常染色体劣性疾患のある人の両親は、それぞれ変異遺伝子のコピーを1つ持っていますが、通常、その症状の兆候や症状は見られません。

治療

効果的対症療法、根治療法が確立していません。対症療法として眼瞼痙攣にボツリヌストキシンを使用した報告(J Craniofac Surg. Jul 2006;17(4):656-660.)があります。

予後

合併症としては、小眼症、白内障、斜視、眼振等の眼症状があります。高口蓋、低位耳介等の小奇形もしばしば合併します。