飲んでもいい?妊娠初期の薬とのつき合い方【医師監修】

薬

妊娠中の薬の服用について、ナーバスになっている方も多いことでしょう。そもそも、妊娠中に薬を飲んでもいいのでしょうか。

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この記事のまとめ

市販の薬は病院で処方されるものより成分が弱いものが多く、短期間の服用で赤ちゃんの発育に影響する可能性は極めて低いと言えますが、服用の際には必ず添付文書に目を通し妊娠中の措置方法について正しく確認しましょう。病院を受診し薬を処方してもらう際は、妊娠中であること、もしくは妊娠の可能性があることを忘れずに伝えましょう。

そもそも、妊娠中は薬を飲んでもいいの?

妊娠中の薬の服用について、ナーバスになっている方も多いことでしょう。そもそも、妊娠中に薬を飲んでもいいのでしょうか。

風邪薬や頭痛薬…市販の薬は?

ドラッグストアでも手軽に手に入る市販薬。ちょっと風邪気味のとき、頭が痛いとき、頼りになる存在です。置き薬として常備している方も多いことでしょう。
市販の薬は病院で処方されるものより成分が弱いものが多く、短期間の服用で赤ちゃんの発育に影響する可能性は極めて低いと言えます。しかし、市販薬だからといってなにも気にせず飲んでもよいというわけではありません。服用の際には必ず添付文書に目を通し、妊娠中の措置方法について正しく確認しましょう。妊婦が該当の薬を服用するにあたって、「投与しないこと(不可)」から「長期投与を避けること」まで、段階的に表現されています。判断に迷う場合は、医師や薬剤師の指示を仰ぐようにしてください。

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病院で処方される薬は?

病院を受診し薬を処方してもらう際は、妊娠中であること、もしくは妊娠の可能性があることを忘れずに伝えましょう。問診票などであらかじめ記入することがほとんどですが、診察中にも医師に薬の飲み方について聞いておくと安心です。
妊娠が分かる前に処方された薬については、赤ちゃんにどの程度影響のあるものか定かでありません。破棄して新しく処方してもらうか、妊娠中でも飲んで大丈夫か医師や薬剤師に相談しましょう。

妊娠初期の薬とのつき合い方

特に注意しておきたい薬

妊婦さんに禁忌とされている薬には、以下のようなものが挙げられます。

  • ワルファリン(抗凝血薬)
  • エトレチナート(角化症治療薬)
  • リバビリン(抗ウイルス薬)
  • トリアゾラム(向精神薬)
  • エルゴタミン(片頭痛治療薬)
  • ホルモン剤
  • 抗生物質(アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系)

これらの薬はお腹の赤ちゃんへの催奇形性(奇形を引き起こす可能性)が高いことが知られています。妊娠を申告していれば医療機関で処方されることはまずありませんが、妊娠中は服用することのないように特に気をつけましょう。

妊娠初期は薬の服用に特に注意が必要な時期

妊娠週数に応じて、薬が赤ちゃんに影響を与えうる危険性の大きさも変わってきます。中でも、妊娠初期(妊娠13週6日まで)は特に注意が必要な時期です。

無影響期/4週未満

この時期はまだ赤ちゃんの器官は形成される前ということもあり、薬が奇形などを引き起こすリスクは低いと言えます。「まだ妊娠に気づいておらず薬を服用していた!」というケースもあるかもしれませんが、妊娠が継続できていれば特別気にする必要はありません。
ただし、残留性の高い薬については注意が必要です。薬の成分が体内に残ったまま、妊娠4週以降に入ることも考えられます。薬の影響が長く残るものとして挙げられるのは、「エトレチナート(角化症治療薬)」、「リバビリン(抗ウイルス薬)」、「レフルノミド(抗リウマチ薬)」など。妊娠の可能性がある場合は、こういった薬の服用は避けるようにしましょう。

絶対過敏期/4週~7週

薬の服用において最も注意が必要なのが、妊娠4週~7週の時期です。この頃は赤ちゃんの中枢神経や心臓などの重要な器官が作られるため、薬の影響も受けやすいとされます。
前述した催奇形性の高い薬は、妊娠中の服用は避けましょう。妊娠している可能性があることを申告していれば、医療機関で処方されることはありません。
また、市販の薬が奇形の原因となることは稀ですが、いずれにせよ妊娠中に服用してもよいものか、添付文書にしっかりと目を通すようにしてください。

相対過敏期/8週~15週

妊娠8週から15週の期間は、口蓋や手足、性器などが形成されています。重要な臓器などの形成は終わっていますが、まだまだ注意が必要な時期です。引き続き、上記の薬は使わないようにしましょう。

潜在過敏期/16週以降

赤ちゃんの体のほとんどが形成されているため、薬が奇形を招く危険性はほぼなくなります。ただし、妊婦さんが飲んだ薬は胎盤を通して赤ちゃんの体内にも入るため、一部の薬は胎児の機能障害を引き起こすことも知られています。特に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は赤ちゃんの動脈管を収縮させてしまう働きがあるため、服用を避けることが一般的です。

病気療養中で薬を服用している場合

妊娠を意識し始めた時点で主治医に相談を

持病がある、病気療養中であるなどの理由で、長期間にわたって薬を服用している方もいることでしょう。「お腹の赤ちゃんによくないかもしれない…」と自己判断で服用を中断してしまうと、自身の体調を崩し、かえって赤ちゃんの発育に影響を与えてしまうことにもなりかねません。妊娠が分かった場合は、薬を飲み続けてもいいものか、別の薬に変えた方がいいのか、主治医に相談してみてください。
また、今現在妊娠が判明していなくても、近い将来妊娠を希望している、妊娠している可能性があるという場合は、できるだけ早い段階で医療機関に伝えておくと安心です。

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薬の服用がNIPT(新型出生前診断)の診断結果に影響することも

NIPT(新型出生前診断)では、妊婦さんの血液中に含まれる赤ちゃんのDNA断片を解析し、染色体の異常などがないか調べます。検査結果は通常「陽性」もしくは「陰性」で示されますが、服用している薬の種類によっては「判定保留」の結果がでることも。NIPT(新型出生前診断)を受けようと考えている方は、医師に相談したうえで検査を受けるようにしましょう。

服用に注意した方がいいサプリメントも

薬と比べると影響が小さそうに見えるサプリメント類ですが、中には注意が必要なものもあります。以下のサプリメントは赤ちゃんの発育に悪影響を与えることがあるので、服用には注意が必要です。

ビタミンAサプリメント

ビタミンAは、皮膚や粘膜、眼の機能を守るといった働きをもつ栄養素です。植物由来のカロテノイド、動物由来のレチノールに分けられ、特にレチノールは体に蓄積されやすく、妊娠初期に過剰摂取すると赤ちゃんの奇形を起こすリスクが高くなることが知られています。同様の理由から、「妊娠中は動物由来のビタミンAを多く含むうなぎやレバーの食べ過ぎに注意した方がよい」と聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
ドラッグストアやネット通販などでも気軽に手に入るサプリメントだからこそ、自己管理が大切になります。普段からビタミンAのサプリメントを摂取しているという方は、サプリメントを中断して緑黄色野菜などの食事から栄養素をまかなうようにしてみてください。

イソフラボンを含むサプリメント

女性ホルモンと似た働きをするというイソフラボン。美容にいいというイメージもありますが、妊娠中はサプリメントで必要以上にイソフラボンを摂取することはおすすめしません。妊娠期間中、女性の体はただでさえホルモンバランスが乱れやすい状態にあります。そこにイソフラボンを過剰摂取してしまうと、さらにホルモンのバランスが崩れ、赤ちゃんの生殖機能に影響を与えてしまうことも考えられるのです。
具体的にどのくらいの量が有害となるかは明言できませんが、厚生労働省は大豆イソフラボンの摂取目安量の上限を75mg/1日、サプリメントでの上乗せ摂取量の上限を30mg/1日としています。体にいいからと、過剰に摂取することのないよう気をつけましょう。

妊娠初期の薬とのつき合い方

妊娠に気づく前に薬を飲んでしまったら?

妊娠を自覚する前に薬を飲んでしまったというケースもあり得ます。特に薬の影響が懸念される妊娠初期にかかってしまっていると、やはり心配になりますよね。
前述したように、飲んだ薬が赤ちゃんに影響を与えやすい時期があるのは確かです。しかし、妊娠初期に市販薬を数回服用したからといって、赤ちゃんの発育には問題のない場合がほとんどです。奇形を引き起こす可能性のある薬も妊娠適齢期の女性には処方されないことが多く、気にしすぎることはないでしょう。
妊娠に気づく前に薬を飲んでしまっていたら、まずは医師に相談をすること。飲んだ薬の種類や量、服用期間など正確に伝えて、指示を受けてください。一人で思い悩んだり、ネット上の情報に一喜一憂したりするのではなく、専門家の正しい情報を知ることで気持ち的にも落ち着きますよ。

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薬に関して心配なことは医師や薬剤師に相談を

薬は心身の不調を改善してくれる頼れる存在ですが、妊娠中はどのようにつき合っていけばいいか悩みますよね。「このくらいは大丈夫なはず…」「体調が悪いけど薬は絶対に飲まない!」などと自分だけで判断することなく、気になることがあれば産婦人科やかかりつけの医師、薬剤師に相談するようにしましょう。

【参考文献】

妊娠中の薬の服用について、ナーバスになっている方も多いことでしょう。そもそも、妊娠中に薬を飲んでもいいのでしょうか。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


白男川 邦彦先生

白男川 邦彦先生

ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。

経歴

1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長

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