妊娠中の葉酸摂取はいつからいつまで?【医師監修】

ほうれん草

妊娠前から妊娠後期まで摂取が望ましいとされる葉酸。この記事では葉酸の成分がもたらす効果と推奨量、妊娠に葉酸がなぜ必要とされるのか、母体と赤ちゃんの発育にどのような影響を与えるかを医師が解説します。

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葉酸とはどんな栄養素?

葉酸はビタミンB群のひとつです。ほうれん草から発見されたことから“葉酸”と名付けられ、その名が示す通り緑の葉の野菜類に多く含まれています。

主なはたらきとして、ビタミンB12とともに赤血球の形成に関わっていることが知られており、造血ビタミンと呼ばれることもあります。

また、葉酸はDNAやRNAといった核酸、タンパク質を合成するためにも欠かせない栄養素です。DNAが正しく合成されることで細胞分裂も促進され、新陳代謝や成長も正常に行われます。

葉酸を適切に摂取することは、胎児期、幼児期の発育や、皮膚や粘膜の健康にもつながります。

葉酸と葉酸塩の違いとは

妊婦さんの中で「葉酸と葉酸塩は、どちらを摂取したほうが効果がありますか」といったご質問をいただくことがあります。

葉酸(folic acid)は人工化合物です。サプリなどの栄養補助食品などに含まれる形態が「葉酸」とされています。一方、葉酸塩(folate)は野菜や果実に存在します。

葉酸塩は調理時の加熱で葉酸成分量が減少することから、いくら野菜を食べても過剰摂取量とならないでしょう。熱を使用しないなど調理の仕方を工夫する、また不足するようであれば栄養補助食品などで葉酸補充を適切に行うことが大切です。

葉酸がお腹の赤ちゃんに与える影響

神経管閉鎖障害のリスクを減らす

妊娠中に葉酸の摂取が推奨される大きな理由として、「赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすため」ということが挙げられます。

前述したように、葉酸はDNAの合成に関わる栄養素です。葉酸が不足してしまうと、DNAがうまく合成できずに細胞分裂が失敗するリスクも高くなります。

特に妊娠初期は、赤ちゃんの脳や脊髄へと発達する神経管が作られる大切な時期です。

細胞分裂に失敗し神経管がふさがれてしまうと、下半身麻痺などの障害や、流産や死産の原因となってしまうことも考えられます。この時期に葉酸を意識して摂取することで、こうした神経管閉鎖障害のリスクをできるだけ回避することができるのです。

赤ちゃんの成長を促す

妊娠中、お母さんのお腹の中では赤ちゃんの細胞分裂が盛んに行われています。葉酸は赤ちゃんの細胞の分裂を促し、健全な成長をサポートする働きをもちます。

しかし葉酸が不足することにより、細胞分裂が正常に行われず、赤ちゃんの発育不全を引き起こすことも少なくありません。胎児期はもちろん、乳幼児期も葉酸は大切な栄養素となるため、妊娠前・妊娠中はもちろん、出産後の授乳期間も積極的な摂取が求められます。

葉酸でダウン症を防ぐことはできる?

ダウン症児を出産したお母さんの中で「妊娠中に葉酸サプリを飲んでたのにダウン症だった」とおっしゃる方は少なくありません。

葉酸は神経管閉鎖障害などの先天的な異常のリスクを軽減することから、ダウン症の発症も防げるのではないかと思う方もいるかもしれません。

しかしダウン症とは、21番染色体の数が1本多く存在するトリソミーなどが引き起こすとされています。これらのことから、葉酸の摂取がダウン症の原因の予防に繋がるとは言えないでしょう。

しかし近年では、神経管閉鎖障害とダウン症の発症には関係があるのではないか、とされる研究報告が提出されました。北海道大学の研究によると、神経管閉鎖障害を持つ赤ちゃんを出産したことのある女性は、そうでない女性と比べ、ダウン症児を出産する確率が約5倍も高くなるとの結果が出たのです。

現時点で葉酸がダウン症そのものを防ぐ、とは言い切れないでしょう。しかし葉酸を適切に摂取することで「ダウン症との関係が考えられる神経管閉鎖障害のリスクを減らすことはできる」と言えるかもしれません。

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妊婦さん栄養・葉酸を摂る

葉酸が妊婦さんの体に与える影響

葉酸塩欠乏症

妊娠中は赤ちゃんの成長のために血液中の栄養素が使われるため、血液が薄くなり、貧血を引き起こしやすくなります。貧血によるふらつきや転倒は、妊婦さん自身はもちろん赤ちゃんにとってもとても危険です。葉酸はビタミンB12とともに赤血球をつくるはたらきを担っています。

また、葉酸不足により葉酸塩欠乏症を引き起こすことも少なくありません。葉酸塩欠乏症は、葉酸を十分に摂取することで予防・改善することができます。

葉酸塩欠乏症のおもな症状

  • 軽度:貧血・めまい・息切れ・疲労など
  • 重度:舌炎・味覚異常・下痢・抑うつ・認知症など
  • 妊婦:胎児の神経管閉鎖障害により、脊髄および脳の先天性異常が生じるリスクが高まる

日本は葉酸強化食品の多い米国と比べ、血中の葉酸塩濃度が低値とされています。葉酸を多く含む食品を積極的に摂取するよう心がけましょう。

動脈硬化を予防し、妊娠高血圧のリスクを減らす

葉酸は、ホモシステインというアミノ酸を、メチオニンやシステインに変換する働きをもちます。なおホモシステインは、血栓をつくる危険因子であるとされており、葉酸が不足して血中のホモシステインが増えることにより動脈硬化を引き起こすことも少なくありません。葉酸を摂取して動脈硬化を予防することで、妊娠高血圧のリスクも軽減することができると言えるでしょう。

精神的な安定をもたらす

妊娠中は思うように動けなかったり、出産に対する不安があったりと、精神的に不安定になりやすい時期でもあります。妊娠によりホルモンバランスが大きく変化していることも影響しているでしょう。

葉酸を摂取することで、“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンの分泌量が増えることが確認されています。ストレスを軽減させたり、気分を落ち着かせたりといったはたらきも期待できるでしょう。

妊婦さん葉酸を摂ってリラックス

葉酸を食事から摂取するには?

日本人の食事摂取基準によると、1日当たりの葉酸塩摂取量は成人男女で200µg・推奨量240µgとされています。バランスの良い食生活と、適切な食事量であれば葉酸が極端に不足したり、または過剰摂取となる心配はないでしょう。

しかし、妊娠を希望する、または妊娠初期の段階にある女性は、さらに240µgの摂取が推奨されます。これは生のほうれん草で換算すると、1日当たり約1束分の量になります。これまで野菜や果実などをあまり食べていない方は、葉酸の多く含まれる食品を積極的に摂り、これまでの食生活を見直してみるのもよいでしょう。

葉酸以外にも健康維持に必要な栄養素は様々です。栄養摂取量の推移が分かる国民健康栄養調査による栄養調査報告なども確認し、健康的な食生活を心がけることが大切です。

葉酸を多く含む主な食品

  • ほうれん草※茹でたもの(110µg/100g)
  • ブロッコリー※茹でたもの(120µg/100g)
  • アスパラガス※茹でたもの(180µg/100g)
  • 枝豆※茹でたもの(260µg/100g)
  • アボカド(84µg/100g)
  • いちご(90µg/100g)
  • 鶏レバー(1300µg/100g)
  • 牛レバー(1000µg/100g)
  • 豚レバー(810µg/100g)
  • 納豆(120µg/100g)
  • 焼き海苔(1900µg/100g)

※日本食品標準成分表参照

“葉”という文字が示すように、葉酸は緑色の野菜全般に豊富に含まれます。水溶性ビタミンである葉酸は熱に弱いという側面も持つため、長時間加熱するとその成分の大半が減少するとされています。野菜や果実であれば生のままサラダなどで食べることが最も多くの葉酸を摂取できます。茹でたり炒めたりする場合も、できるだけ短時間で調理するようにしてみましょう。またスープなどにして汁ごと食べれば、栄養分を逃さず摂取することができます。

レバー類も葉酸を多く含む食品ですが、同時にビタミンAの含有量が多いことも特徴です。妊娠中にビタミンAを過剰に摂取すると、胎児の奇形を引き起こす可能性が高くなることも知られています。レバーを食べるなら1切れ程度に止めて、あまり頻繁に食べないよう注意が必要です。また、ビタミンAの含有量が比較的少ない牛レバーを選んだ方がよいでしょう。

焼き海苔などは、少量でも葉酸を豊富に摂取できる優秀な食品です。ごはんに乗せて食べたり、サラダのトッピングにしたりと、常備しておけば毎日の食事で効率的に葉酸を摂ることができます。

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葉酸は摂りすぎたらどうなる?

厚生労働省によると、葉酸の1日の摂取量の上限は1000µgとされています。バランスの良い食生活であれば、葉酸を摂りすぎるということは、ほとんど心配ないでしょう。

しかし、現在は葉酸サプリメントも多数販売されており、インターネットなどで「妊婦おすすめ葉酸サプリ」「葉酸を摂ると妊娠しやすい」「妊娠前と妊娠中に葉酸サプリをたくさん飲むとダウン症にならない」といった偽情報も少なくありません。しかし摂取目安量以上を服用すると、葉酸の過剰摂取となってしまうことも考えられます。

水溶性のビタミンである葉酸は、必要以上に摂取した場合も尿と一緒に排出されるため、過剰摂取を不安に思う必要はありません。

一方で、ビタミンB12の含まれていないサプリメントなどによって、1日の上限値以上の量の葉酸を服用し続けると、ビタミンB12欠乏症の診断が遅れてしまう可能性が示唆されています。

ビタミンB12の不足が原因で起こる悪性貧血は、葉酸の摂取によって貧血症状が改善します。しかしそのまま放置すると、もうひとつの症状である神経症状は改善されずに進行してしまうケースも考えられるため、注意が必要です。

また、オーストラリアの大学によると、妊娠後期にサプリメントで葉酸を1日1000µg以上摂取していた場合、産まれてくる子どもの小児ぜんそく発症リスクが約26%高まったという研究結果も出ています。食品と比べて葉酸の吸収率の高いサプリメントだからこそ、摂取量をしっかりと守ることが大切です。

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赤ちゃんと自身の健康のために適切な葉酸摂取を

葉酸は妊娠前・妊娠初期・中期・後期、そして授乳期間に至るまで必要とされる重要な栄養素です。野菜や果実など天然食材から摂取する葉酸であれば、過剰摂取の心配はありません。葉酸不足であれば、サプリメントや栄養補助食品などで葉酸補充を行なうことが大切です。また、つわりなどの体調不良の際は、無理にサプリメントなどの葉酸は飲まない方がいいでしょう。

胎児のダウン症を早期に知るためにヒロクリニックNIPT

ダウン症は染色体異常による先天性疾患です。葉酸の適切な摂取は赤ちゃんの細胞分裂を促し、健全な成長に重要とされますが、ダウン症の予防にはならないと言えるでしょう。現在の医療において染色体異常の予防や治療法は確立していません。しかし、赤ちゃんの染色体異常による先天性疾患リスクを早期に知ることは可能とされています。

ヒロクリニックNIPTによるNIPT(新型出生前診断)は、妊娠約6週(超音波検査で妊娠が確定したとき)より採血のみで行うことができるスクリーニング検査です。ダウン症に関しては感度・特異度ともに99.9%と高精度な出生前診断とされています。

また、赤ちゃんの染色体異常は、流産を引き起こすことも少なくありません。妊娠初期に赤ちゃんの健康状態を調べることは、健やかな妊娠・出産に大切と言えるでしょう。

ヒロクリニックNIPTではダウン症のみの単体検査はもちろん、すべての染色体の検査を行なうプランまでご提供しております。NIPT(新型出生前診断)ダウン症についてなど、分からないことや、ご不安なことは何でもご相談ください。NIPT(新型出生前診断)に精通した医師とスタッフがしっかりサポートいたします。

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NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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