ヒロクリニック心療内科|精神疾患の治療とASD遺伝子検査のご案内

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お知らせ

  • 【本日のコールセンター受付時間変更のお知らせ】
    平素よりご利用いただき、誠にありがとうございます。     本日限り、限りの電話受付時間下記そのまま変更させていただきます。   ■受付時間(本日のみ)   9:00〜18:00   ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
  • 年末年始休暇のお知らせ
    年末年始休暇のため、下記の日程を休診とさせていただきます。
    12月31日(水)~1月3日(土)
    1月4日(日)より、診察を行います。※日曜診療対応となります
    ご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
  • 医療DX推進の体制に関する事項について
    当院では、質の高い診療を提供するために以下の取り組みを行っております。 ・当院ではマイナンバーカードによる電子資格確認を行う体制を有しております。 ・オンライン資格確認システムを通じて、患者様の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導を行う際、当該情報を閲覧し活用しています。 マイナンバーカードによる保険情報、医療情報、薬剤情報を取得し、その情報を活用して質の高い医療を提供できるように取り組んでいます。 ・電子カルテ情報共有サービスを利用する取り組みを予定しております。 ・医療DX推進の体制に関する事項および質の高い医療を実施するための十分な情報を取得しおよび活用して診療を行うことについて、当医療機関の見やすい場所およびホームぺージに掲載しています。
  • 夏季休暇のお知らせ
    ヒロクリニック心療内科は2025年8月11日(月)~2025年8月14日(木)まで夏季休診日とさせていただきます。
  • 診療時間変更のお知らせ
    平素より当クリニックをご利用頂き、誠にありがとうございます。 2025年6月9日より診療時間に変更がございますので、下記の通りお知らせいたします。   新しい診療時間は下記の通りとなります。 2025年6月9日より 【変更前】・月曜、火曜、水曜、金曜、土曜、日曜日:AM9:00~12:00 PM13:30~18:00 【変更後】・月曜、火曜、水曜、金曜、土曜、日曜日:AM9:00~13:00 PM14:30~18:00
  • 保険診療の予約制度についてのお知らせ
    このたび、より多くの患者様に柔軟にご利用いただけるよう、保険診療における「予約制度」を廃止し、 受付時間内にご来院いただく形へ変更させていただくこととなりました。 今後は、ご来院いただいた順にご案内させていただきますので、受付時間内に直接ご来院くださいますようお願いいたします。 引き続き、皆様により安心してご利用いただけるクリニックを目指してまいります。何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
  • (変更)4月27日より外部からの時間予約は取れなくなりました。
    関係者各位へ ヒロクリニックでは今後時間予約を廃止いたします。これまでに予約のない方は来院してもらったのちに順番で診察を行います。電話での予約も行なっておりません。診察時に先生からまたは本人からの申し出があった場合には予約をクリニック内で取ることは可能です。
  • 【お知らせ】14日~15日一部時間帯における電話受付について
    4月14日~15日、当院のコールセンターが所在する地域にて、計画停電が実施されます。 これにより、停電の時間帯には2~3時間ほどお電話がつながらない状況となる見込みです。 なお、停電の開始時刻は現地でも未定となっており、事前のご案内が難しい状況です。 あらかじめご了承ください。 ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。 停電が解消され次第、お電話対応を通常通り再開いたします。 お急ぎの際は、お問い合わせフォームまたはメールにてご連絡いただけますようお願いいたします。

こんなお悩み1人で抱えていませんか?

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ヒロクリニック 心療内科では、うつ病、適応障害、睡眠障害、パニック障害、自律神経失調症、強迫性障害、摂食障害、統合失調症、認知症などの精神疾患全般を対象に治療を行っております。

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患者様おひとりおひとりの病状とご希望を把握し、親切丁寧で無駄のない治療を心がけております。 患者様本人だけでなく、ご家族の不安も取り除けるよう力を尽くしていきます。 ご心配があればご家族も一緒におこし下さい。 皆さまが少しでもこころの健康を取り戻せるよう、スタッフ一同、全力を尽くして参ります。

自閉症スペクトラム障害(ASD)遺伝子検査について

自閉症スペクトラム障害(ASD)の遺伝子検査は、患者の遺伝的リスクを詳細に分析する先進的な手法です。この検査は、特定の遺伝子変異を検出し、自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向を早期に把握することができます。早期発見によって、適切な支援と介入計画を立てることができ、遺伝子検査は子どもたちの発達支援において重要な役割を担います。
遺伝子検査によって得られた結果とリスクには、専門の知識が必要です。そのため、医師や遺伝カウンセラーの協力が不可欠となります。検査結果に基づいて、医師は適切な治療を行い、専門的なアドバイスやサポートも提供しています。
    自閉症の遺伝子検査  
自閉症スペクトラム障害(ASD)の遺伝的リスクを早期に特定することで、子どもの可能性を最大限に引き出し、発達障害の予防や軽減、リスク管理にもつなぐことができます。さらには子どもの健やかな成長と社会への適応を助ける一助にもなります。
※自閉症に関わる遺伝子のうち、特定の遺伝子を検査するものです。

初診の患者さまへ

可能な限り早く受診できるように尽力しております。 また、初診の患者さまには、事前にインターネットでの問診票へのご記入をお願いしております。
インターネットでの問診票へのご記入を利用することにより、混雑緩和にご協力いただくようお願いいたします。

事前記入のメリット
① ゆっくりと時間をかけて、自宅で問診内容を考えることができる。
② 問診内容をそのままカルテに記載されるので間違いがない。
③ メールアドレスが登録されるため、クリニックからの重要な変更およびお知らせが届く。
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保険診療外の場合、クレジットカードでのお支払いが可能です

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当院では保険診療外の場合、クレジットカードでのお支払いが可能です。
対応しているカードは「Visa」「Master Card」「JCB」「アメリカン・エキスプレス」「ダイナースクラブ」「銀聯(ギンレイ)カード」になります。
クレジットカード払いを希望される際は受付スタッフまでお気軽にお申し付けください。

コラム

統合失調症と就労継続支援A型の実情

ハート

統合失調症を抱える人にとって、「働くこと」は治療と同じくらい大切なテーマです。安定した収入を得ることは生活の自立につながるだけでなく、社会参加や自己肯定感の回復にも大きく寄与します。その中でも注目されているのが、障害福祉サービスの一つである「就労継続支援A型事業所」です。 しかし、現場では「思っていたより厳しい」「長く続かない」と感じる人も少なくありません。なぜA型が選ばれるのか、どんなサポートがあるのか、そしてどんな課題があるのか。この記事では、統合失調症とA型就労の実情を、医療・福祉・労働支援の専門的視点から詳しく解説します。 1. 就労継続支援A型とは ― 障害者の“働く場”を支える制度 障害のある人に「働く機会」を保障する制度 就労継続支援は、障害や難病を抱える人が、社会の中で“自分らしく働く”ことを支える福祉制度です。厚生労働省が定める障害者総合支援法に基づき、一般企業での就職が難しい人に対して、働く場と訓練の機会を提供することを目的としています。 統合失調症やうつ病、発達障害、知的障害など、症状の安定に波がある人でも「働きたい」という意欲を形にできるように支援するのがこの制度の本質です。単に「保護する」ではなく、「働く力を育てる」ことを重視しており、福祉と労働の橋渡し役を担っています。 「A型」と「B型」の違い ― 雇用関係の有無がポイント 就労継続支援にはA型とB型の2種類があります。最大の違いは雇用契約を結ぶかどうかにあります。 ▸ A型:雇用契約を結ぶ“働く場” A型事業所では、利用者は事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を受け取りながら働くことができます。一般企業の労働契約と同様に、勤務時間、休日、有給休暇なども労働基準法に準じて定められます。 仕事の内容は、商品の検品や梱包、清掃、軽作業、事務補助、喫茶・製菓・農業・リサイクルなど多岐にわたります。業種は地域によって異なりますが、近年ではIT関連の軽作業やデザイン業務など、デジタルスキルを活かした仕事も増えています。 このように、A型は「実際に働きながらリハビリを行う」という性質を持ち、労働者としての社会参加を前提にしています。 ▸ B型:雇用契約を結ばない“訓練の場” 一方のB型事業所では雇用契約を結ばず、「工賃」という形で成果に応じたわずかな報酬を受け取ります。社会復帰や体調の安定を目的としたリハビリ的な支援が中心で、作業時間も短めです。医療機関のデイケアと連携している場合も多く、「まず社会とのつながりを取り戻したい」という人が多く利用しています。 A型の目的 ― 一般就労へのステップ、または安定した働き方の選択肢 制度上、A型は「一般企業への就職(一般就労)」を目指すステップとして位置づけられています。つまり、A型で働きながら職業スキルを身につけ、最終的には一般企業に移行していくことが理想の流れとされています。 しかし、現実にはすべての人がこの“ステップアップ”を望むわけではありません。統合失調症などの精神障害を抱える人の場合、症状の再発リスクを考慮し、「安定してA型で働き続けること自体」を目標とするケースも多くあります。 一般企業の環境は競争的でストレスが多く、再発や離職につながることも少なくありません。そのため、「無理に一般就労に移行せず、自分のペースで働けるA型で長く続けたい」という選択が尊重されるようになっています。 この考え方は、近年の精神医療で重視される「リカバリー(回復)」の理念にも通じます。“治す”ことよりも、“その人らしく生きる”ことを支えるという発想のもと、A型は単なる訓練の場ではなく、“社会との架け橋”として機能しているのです。 制度の背景と拡大の流れ 就労継続支援A型は2006年に制度化されて以来、全国で急速に拡大してきました。背景には、精神障害者の社会復帰支援の需要が高まったこと、そして地域社会での雇用創出を目的にした地方自治体の後押しがあります。 しかし、制度の普及とともに「質のばらつき」も課題として浮上しました。中には、名ばかりの雇用契約を結び、実質的には十分な支援を行っていない事業所も存在します。こうした問題を受け、国は報酬制度の見直しや監査の強化を進め、より質の高い支援を提供できる事業所を中心に制度を再構築しつつあります。 A型が果たす社会的役割 就労継続支援A型は、単に「働く場」を提供するだけでなく、医療・福祉・労働の三領域をつなぐ中間的支援の場として重要な役割を果たしています。 統合失調症の人にとって、A型で働くことは「自分も社会の一員である」という自覚を取り戻すプロセスです。同時に、社会にとっても「障害があっても働ける」という理解を広める機会となります。 このように、A型は「社会参加を支える福祉」として、個人の尊厳と社会的包摂の両方を実現する基盤なのです。 統合失調症の人にA型が選ばれる理由 統合失調症は、幻覚・妄想・意欲低下などの症状を特徴とする精神疾患です。症状が安定していても、ストレスへの脆弱性や集中力の波などにより、一般企業での勤務を長く続けることが難しい場合があります。 A型事業所では、医療機関や家族と連携しながら、体調に合わせた勤務時間やペース配分を調整できるのが大きなメリットです。また、精神障害者保健福祉手帳を持つことで利用しやすく、「少しずつ働く習慣を取り戻したい」「社会復帰への第一歩を踏み出したい」という人に向いています。 2. A型事業所の仕組みと現場のリアル 雇用契約と給与の実態 ― 「働く権利」を守る仕組みと現実のギャップ 就労継続支援A型の最大の特徴は、雇用契約を結んで働けるという点にあります。利用者は労働者として位置づけられ、労働基準法・最低賃金法など、一般労働者と同様の法的保護を受けます。この仕組みは、「障害があっても働く権利を保障する」という理念に基づき、福祉と雇用の中間に位置づけられています。 給与は地域の最低賃金以上で支払われますが、現実には平均月収が5〜8万円前後にとどまります。勤務時間は1日4〜6時間、週20〜25時間程度が一般的で、体調や集中力に波がある統合失調症の人にとっては無理のないペースです。しかし、雇用契約を結ぶ以上、欠勤や遅刻が続くと契約更新が難しくなる場合もあります。 つまりA型事業所は、「一般就労より柔軟」ではあるものの、「福祉だから絶対に守られている」とは言い切れません。制度上は“守られた働き方”でも、現場では一定の成果や出勤率を求められるなど、現実のプレッシャーを感じる利用者も少なくありません。 職員体制 ― 支援と労務管理の両立を担う現場の専門職 A型事業所では、障害福祉サービスとしての基準に従い、複数の専門職が配置されています。主な職種と役割は以下のとおりです。 これらの職員がチームで関わり、「働く」と「生活する」を一体的に支援します。統合失調症の利用者が多い事業所では、精神保健福祉士(PSW)や臨床心理士が関与することもあり、医療的フォローと福祉的サポートの連携が密に行われています。 統合失調症の人への具体的な配慮 統合失調症の方がA型で安定して働くためには、症状の波を理解した上での柔軟な支援が不可欠です。現場では以下のような工夫が実践されています。 A型事業所の現場が抱える課題 理想的な支援体制を掲げながらも、現場にはさまざまな課題があります。特に人材不足は深刻で、一人の職員が十数名の利用者を担当するケースも少なくありません。その結果、個別支援が十分に行き届かないことや、職員のバーンアウト(燃え尽き)も問題となっています。 …

統合失調症の社会的スティグマを考える

落ち込む女性

統合失調症は、幻覚や妄想といった症状を特徴とする精神疾患であり、適切な治療と支援によって安定した生活を送ることが可能です。しかし、いまだに社会には「怖い」「危険」「治らない」といった誤解や偏見が根強く残っています。これらの誤解が生み出す「スティグマ(社会的烙印)」は、本人の回復意欲や社会参加を阻害する大きな壁となっています。 本記事では、統合失調症に対する社会的スティグマの構造とその影響、そして私たち一人ひとりにできる理解と支援のあり方について、精神医療の専門的な視点から考えていきます。 1. スティグマとは何か ― 「烙印」としての偏見 スティグマの定義とその背景 「スティグマ(stigma)」とは、もともと古代ギリシャ語で“罪人や奴隷の身体に刻まれた烙印”を意味する言葉です。現代社会においては、特定の特性や状態を理由に他者から否定的な評価を受ける現象を指します。つまり、社会がある集団や個人に「普通ではない」「危険だ」「関わりたくない」といったレッテルを貼り、その人を“異質な存在”として扱うことです。 統合失調症の場合、このスティグマは特に強く現れます。幻覚や妄想、感情の平板化といった症状が「不可解な行動」「理解不能な人格」として捉えられ、社会的距離を置かれやすいという傾向があります。このような偏見は、疾患そのものよりも社会の無知や恐れ、誤った情報によって作られるものです。つまり、スティグマは「病気の問題」ではなく、「社会が作り出す問題」でもあるのです。 スティグマの3つの段階 精神疾患に関するスティグマは、研究や臨床現場において一般的に3つの段階に分けて理解されます。それぞれが互いに影響し合い、偏見の連鎖を生み出しています。 1. 公的スティグマ(Public Stigma) 社会やメディアが形成する、広く共有された偏見です。報道で事件が起きるたびに「精神疾患の可能性」と強調されることがあり、その結果、「統合失調症=危険」「何をするかわからない」といった誤ったイメージが定着してしまいます。このような公的スティグマは、社会全体に恐怖や不信を植え付ける要因となり、患者本人や家族を孤立させます。 2. 自己スティグマ(Self-Stigma) 公的スティグマの影響を受けた本人が、「自分は社会に受け入れられない」「自分は劣っている」と感じてしまう心理的な状態です。この自己スティグマは、自己肯定感や治療への意欲を低下させ、回復を遅らせる要因になります。たとえ症状が安定しても、「病気のことを話せない」「働くことが怖い」と感じ、社会復帰への第一歩を踏み出せなくなるケースも少なくありません。 3. 構造的スティグマ(Structural Stigma) 偏見が社会の制度や文化、組織の中に根付いている状態を指します。たとえば、精神障害者に対する就労支援制度の不十分さ、教育現場での理解不足、雇用時に「精神疾患=リスク」とみなす企業文化などがこれに該当します。本人が努力しても、社会の仕組みそのものが不利に働く状況が存在しているのです。 「スティグマ」は“社会の鏡” スティグマは単なる「言葉の問題」や「一部の人の偏見」ではありません。それは、社会の中に潜む「精神疾患に対する無知」「不安」「他者への恐れ」が形となって現れた、社会構造的な問題です。言い換えれば、スティグマは「病気そのもの」ではなく、「病気をどう捉えるか」という社会の姿勢そのものの鏡でもあります。 精神医療の分野では、スティグマは治療の妨げになる最大の要因のひとつとされています。なぜなら、偏見の存在によって、患者が治療を受けることをためらい、早期発見や社会復帰の機会を逃してしまうからです。また、家族も「周囲に知られたくない」「恥ずかしい」と感じて支援を求めづらくなり、結果として孤立を深めてしまいます。 偏見をなくすために必要なのは「正しい理解」 スティグマの根を断ち切るためには、社会全体で精神疾患を正しく理解する教育と啓発が欠かせません。統合失調症は決して「人格の問題」ではなく、脳の情報処理のバランスが崩れることで起こる病気です。医学的に治療可能であり、多くの人が適切な支援を受けることで社会生活を送っています。 「統合失調症」という言葉を聞いたときに、“恐れ”ではなく“理解”を思い浮かべる社会へ。それこそが、スティグマのない共生社会を築くための第一歩なのです。 2. 統合失調症に対する社会的誤解とメディアの影響 「危険」「暴力的」という誤ったイメージ 統合失調症に対して社会が抱く最も根強い誤解のひとつが、「暴力的で危険な人」というイメージです。この偏見は長年、報道や娯楽作品の中で繰り返し描かれてきた「精神疾患=犯罪」「異常な行動」という構図によって強化されてきました。しかし、科学的根拠に基づく研究では、このイメージは事実と大きく異なります。 世界保健機関(WHO)や各国の精神医学研究によれば、統合失調症の人が他者に危害を加えるリスクは、一般人口と比べてもごくわずかであり、むしろ本人が差別や暴力、孤立の被害を受ける側であるケースの方が多いことが報告されています。つまり、「危険なのは病気そのものではなく、社会の偏見がもたらす孤立」なのです。 統合失調症の人が攻撃的な行動を示すのは、強い恐怖や被害妄想に追い詰められた一時的な状態であり、適切な治療と支援を受けている場合、そのようなリスクはほとんどありません。それにもかかわらず、社会では依然として「精神疾患=不安要素」「近寄りがたい存在」といったレッテルが貼られています。このような誤った認識が、本人や家族の社会参加の障壁となり、治療や支援を求める機会を奪ってしまうのです。 報道が生み出した“恐怖の物語” 日本における精神疾患のスティグマの一因は、事件報道のあり方にあります。報道の自由は民主主義の根幹ですが、かつて多くのニュースが、事件の背景に「精神疾患の有無」を強調してきました。「統合失調症の疑い」「精神障害の可能性」といった見出しは、視聴者の関心を引く一方で、病気そのものと犯罪を安易に結びつける誤解を社会に広めてきました。 報道は本来、「何が起きたか」を伝えるべきものですが、精神疾患の有無を必要以上に取り上げることで、「統合失調症=危険人物」という印象を固定化してしまうことがあります。しかも、その多くは事実確認が不十分なまま伝えられることもあり、病気を抱える人たちは、「報道のたびに自分たちが否定されるような感覚」を抱いてきました。 加えて、映画やドラマなどのフィクション作品でも、「妄想に支配されて暴走する人物」「正気を失うキャラクター」などが“物語を盛り上げる装置”として使われることが少なくありません。これらの描写が視聴者の潜在意識に残り、無意識のうちに「精神疾患=怖い人」というイメージを再生産しています。 メディアの責任と社会的影響 もちろん、すべての報道が悪意を持っているわけではありません。近年では、精神医療や福祉の現場を丁寧に取材し、当事者の回復ストーリーを伝える報道も増えています。しかし、依然として一部には「誤った言葉づかい」や「センセーショナルな演出」が残っており、「社会的関心を引くための“刺激的な表現”」が当事者の尊厳を傷つけてしまうケースもあります。 メディアは社会に対して大きな影響力を持つため、情報を発信する側には「正確さ」と「倫理性」の両立が求められます。特に、精神疾患に関しては「病名を不必要に強調しない」「当事者を匿名化する」「回復可能な病であることを伝える」など、報道ガイドラインの遵守と表現の慎重さが不可欠です。 メディアが正しい情報を伝えることは、社会全体の偏見を減らし、治療を受けやすい環境づくりや、家族・支援者の理解促進にもつながります。一方で、誤った情報発信は、数多くの人の生活や人権を脅かす危険性を持っています。 私たち一人ひとりにできること スティグマをなくすには、メディアだけでなく、受け取る側の私たちも「情報の読み手」として意識を持つ必要があります。つまり、視聴者・読者一人ひとりが、「報道の内容を鵜呑みにせず、背景を考える力」を持つことです。SNSの普及により、誰もが発信者になれる時代だからこそ、「精神疾患」という言葉を軽々しく使わず、正しい知識に基づいた発言と共有を意識することが大切です。 また、良質な報道や正確な医療情報を積極的に拡散し、誤った情報に対しては冷静に指摘することも、私たちができるスティグマ軽減への第一歩です。社会の価値観は、報道や教育だけでなく、「日常の言葉の選び方」からも変わっていきます。 3. スティグマがもたらす影響 ― 回復への見えない壁 統合失調症の治療において、薬物療法や心理社会的支援が重要であることは言うまでもありません。 しかし、その効果を妨げる「見えない壁」として立ちはだかるのがスティグマ(偏見)です。 スティグマは単なる誤解ではなく、本人・家族・社会全体に長期的かつ深刻な影響を及ぼします。 それはまるで、症状そのものとは別に“もう一つの病”として患者の心と生活を蝕んでいくのです。 1. 自己スティグマによる治療意欲の低下 …

統合失調症と運動習慣がもたらす効果

統合失調症の治療と聞くと、「薬物療法」や「カウンセリング」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年、世界的に注目されているのが「運動療法(エクササイズ・セラピー)」です。運動は心身の健康維持に欠かせないだけでなく、統合失調症の症状改善や再発予防にも有効であることが多くの研究で明らかになっています。 「体を動かすだけで本当に効果があるの?」と疑問に思うかもしれません。本記事では、統合失調症と運動習慣の関係について、科学的根拠に基づきながら詳しく解説します。日常に取り入れられる運動方法や注意点も紹介し、患者本人と家族の双方に役立つ情報をお届けします。 1. 統合失調症と運動の関係 ― 脳と心への科学的メカニズム 運動が脳に与える影響 統合失調症は、脳内の神経伝達物質(特にドーパミンやグルタミン酸)のバランスが崩れることで、幻覚や妄想などの症状が引き起こされます。運動を継続することで、この神経伝達の働きが整い、脳の可塑性(ニューロプラスティシティ)が促進されることが知られています。 特に有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・サイクリングなど)は、脳の「海馬」と呼ばれる記憶・感情を司る領域を活性化させ、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を抑える働きがあります。これにより、不安や抑うつ気分が軽減され、統合失調症で見られる「感情の平板化」「意欲低下」といった陰性症状の改善につながる可能性があります。 脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加 運動によって分泌が高まる「BDNF(脳由来神経栄養因子)」は、神経細胞の成長や修復を助ける物質です。統合失調症の患者ではこのBDNFが低下しているケースが多く、結果として認知機能の低下が生じやすいといわれています。定期的な運動は、このBDNFを増加させ、記憶力・注意力・判断力の改善に寄与します。 運動は「薬の副作用対策」にも 抗精神病薬を長期的に服用していると、体重増加や糖代謝異常、便秘などの副作用が起こることがあります。運動習慣を取り入れることで、体重コントロール・血糖値の安定・筋力維持が可能となり、薬の副作用リスクを軽減します。これは医学的にも非常に重要なポイントで、身体面からも治療を支える「補完療法」として注目されています。 2. 運動がもたらす心理的・社会的効果 ストレスの軽減と睡眠リズムの改善 統合失調症は、ストレスに対して非常に敏感な病気です。小さな不安や緊張が積み重なることで、再発や症状悪化につながることも少なくありません。運動は自律神経のバランスを整え、心拍数や呼吸を穏やかにすることでストレス反応を抑制します。 また、適度な運動はメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を促し、睡眠リズムの改善にも効果的です。夜しっかり眠れることで、翌日の集中力や気分の安定につながり、生活全体のリズムが整います。 社会的孤立の軽減 統合失調症の患者の多くは、発症後に人との関わりを避けがちになります。しかし、運動には「社会参加のきっかけ」という側面があります。地域のウォーキングイベントやスポーツクラブに参加することで、人と自然に会話する機会が増え、孤立感が和らぎます。このような活動は、本人に「社会の一員として生きている」という実感を与え、リカバリー(回復)意識の向上につながります。 自己肯定感の回復 運動を続けることで、「体が軽くなった」「前より疲れにくくなった」といった小さな成功体験が積み重なります。これが自己効力感(self-efficacy)の向上につながり、治療や生活への前向きな姿勢を育てます。心理学的には、この“成功体験の積み重ね”が長期的な回復において非常に重要な役割を果たします。 3. 統合失調症の人におすすめの運動と始め方 統合失調症の治療において、運動は単なる「体を動かす行為」ではなく、脳の機能回復と心の安定を支える重要な治療的手段です。 しかし、体調や気分に波がある統合失調症の方にとって、無理な運動は逆効果になることもあります。 ここでは、継続しやすく安全に取り入れられる運動方法を、効果と実践のポイントを交えて解説します。1. 有酸素運動 ― 心と脳を同時にリフレッシュ ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、水中ウォーキングなどの有酸素運動は、心肺機能を高めるだけでなく、脳の血流を改善し、神経伝達物質のバランスを整える効果があります。特に統合失調症では、ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌が脳機能を低下させる要因となるため、運動によるストレス軽減は大きな意義を持ちます。 最初から長時間行う必要はなく、1回15〜20分、週2〜3回の短い運動から始めるのがおすすめです。朝の散歩や、夕方の買い物の帰りに数駅分歩くなど、日常生活の延長として取り入れると負担が少なく続けやすいでしょう。 有酸素運動を続けると、脳内で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンやエンドルフィンが分泌され、気分の安定や快感情の増加が得られます。また、リズミカルな動きは呼吸と心拍を整え、自律神経を安定させる働きもあります。 2. ストレッチやヨガ ― 自律神経を整える癒しの運動 統合失調症では、不安や緊張、イライラなどの「自律神経の乱れ」による不快症状がしばしば見られます。このような症状に有効なのが、ストレッチやヨガなどの静的運動です。 呼吸に意識を向けながら、ゆっくりと体を伸ばすことで副交感神経が優位になり、心身がリラックス状態になります。とくに寝る前の10〜15分間に軽いストレッチを取り入れると、筋肉の緊張が和らぎ、入眠しやすくなるほか、睡眠の質の向上にもつながります。 ヨガや太極拳などの動的ストレッチも効果的で、集中力を高め、心の安定感を得る助けになります。また、グループで行うヨガ教室やオンラインレッスンを利用すると、社会的つながりを持ちながら自己肯定感を育むこともできます。 3. 軽い筋トレ ― 体力と「動ける自信」を取り戻す 統合失調症の治療中は、薬の副作用による体重増加や筋力低下が起こりやすく、体を動かす意欲が下がることがあります。このような場合におすすめなのが、自重トレーニング(自分の体重を使った筋トレ)です。 たとえば、スクワット・膝つき腕立て伏せ・椅子を使ったステップ運動など、負担の少ない動作から始めることで、体幹や下肢の筋肉を無理なく鍛えられます。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、体が軽く感じるようになります。この「動ける実感」が、自信と意欲の回復につながります。 また、筋トレには脳の報酬系を刺激する効果があり、少しずつ達成感を得られることも大きなメリットです。たとえば、「今日は3回できた」「昨日よりスムーズに動けた」といった小さな成功体験が、自己効力感(できる感覚)を育てます。 運動を始めるときの心構え 統合失調症の方が運動を始める際に大切なのは、「完璧を目指さない」ということです。体調や気分には波があるため、動けない日があっても落ち込む必要はありません。1回できなかったとしても、「また次にやればいい」と考える柔軟さが、長期的な継続を支えます。 また、運動の時間を「義務」ではなく「気分転換の時間」として捉えると、より自然に取り入れられます。音楽を聴きながら歩く、自然の中を散歩するなど、自分がリラックスできる方法を選びましょう。 4. 運動を継続するための工夫 運動の効果を十分に得るためには、「継続すること」が最も重要です。 しかし、統合失調症では意欲の低下(アモチベーション)や集中力の持続が難しいことが多く、「始めても続かない」「気分の波でできない日がある」と悩む人も少なくありません。 それでも、いくつかの工夫を取り入れることで、無理なく運動を生活の一部として習慣化することが可能です。 …

統合失調症患者のための家族教育入門

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統合失調症の治療は、患者本人だけでなく家族の理解と協力が欠かせません。症状が安定しても、再発やストレスによる悪化を防ぐためには、家族が病気の特性や支援の方法を正しく理解することが重要です。「どう接すればいいのか分からない」「励ますつもりが逆効果になってしまう」——そんな戸惑いを感じる家族は少なくありません。 本記事では、統合失調症患者の家族教育(Family Psychoeducation)の基本をわかりやすく解説します。家族が知るべき病気の理解、正しい接し方、再発を防ぐための工夫を専門家の視点で紹介します。 1. 家族教育とは ― 統合失調症の理解を深める第一歩 家族教育の目的と意義 「家族教育(Family Psychoeducation)」とは、統合失調症をもつ本人を支える家族が、病気に関する正しい知識と対処法を学び、適切に支援できるようにするための心理社会的プログラムです。単なる情報提供や講義ではなく、家族自身が安心して支援に関わる力を養うための“学びと共有の場”です。 統合失調症は、幻覚・妄想・思考の混乱などが主な症状で、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで発症します。薬物療法によって多くの症状は軽減できますが、それだけで生活のすべてを安定させることは難しいのが現実です。そのため、家庭という日常の環境が治療の「延長線上」にあり、家族が病気を正しく理解して支えることが、再発防止や社会復帰に大きく関係してきます。 家族教育の根底にある考え方は、「家族を治療の一員として支援体制に組み込む」ことです。かつては、家族が病気に対して罪悪感を抱いたり、本人を責めたりするケースもありました。しかし近年では、病気の原因が家族関係や性格ではなく脳の機能異常によるものであることが明らかになり、家族は「責任を負う存在」ではなく「回復を共に支えるパートナー」として位置づけられています。 家族教育で学ぶ内容とその意味 精神科医療機関や地域の家族会、精神保健福祉センターなどで実施される家族教育プログラムでは、以下のようなテーマを中心に体系的な支援が行われます。 これらは単なる理論ではなく、「家族が現実的にどう支えられるか」を具体的に考える実践的な学びです。プログラムによっては、同じ立場の家族同士で体験を共有しながら、互いの不安を分かち合うグループワーク形式もあります。同じ悩みを持つ人の話を聞くことで、「自分たちだけではない」という安心感が生まれ、支援へのモチベーションが高まります。 家族教育がもたらす効果 多くの研究で、家族教育を受けた家族のもとで生活する患者は、再発率が有意に低下することが報告されています。これは、家族が病気を「理解できる対象」として受け入れるようになることで、過剰な叱責や過保護といったストレス要因が減り、本人の安心感と自己肯定感が保たれるためです。また、家族自身も「自分たちにできること」「できないこと」を整理できるようになり、無力感や孤立感が軽減されます。 家族教育の最終的な目標は、「家族を介護者ではなく、支援者として育てること」にあります。そのためには、家族が専門家と連携しながら、病気と向き合うための知識と技術、そして心のゆとりを持つことが重要です。家族が安心して支援に関われる環境を整えることこそ、統合失調症の回復を支える土台となります。 2. 統合失調症の特徴を家族が理解する 病気の本質を正しく知る 統合失調症は、脳の情報処理のバランスが崩れることで現れる精神疾患です。特に、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやグルタミン酸の働きが過剰または低下することにより、現実の認識や思考の整理が難しくなります。このため、「他人の声が聞こえる」「自分の考えが操作されている」などの幻覚・妄想が現れることがあります。 発症の原因はひとつではなく、遺伝的要因・脳の発達過程・ストレスなどの環境的要因が複合的に影響していると考えられています。つまり、本人の性格や親の育て方が原因ではありません。この点を正しく理解することは、家族が「どうしてこんなことになったのか」と自責の念を抱かずに済むために非常に重要です。 また、統合失調症は「意欲が低下する」「感情の表現が乏しくなる」といった陰性症状も特徴的です。このため、周囲からは「怠けている」「何もしたくないだけ」と誤解されやすいのですが、実際には脳機能の低下によって活動意欲が出にくい状態です。こうした仕組みを知ることで、家族が患者を「努力不足」と捉えるのではなく、「病気の一部」として理解できるようになります。この認識の変化が、家庭内の緊張を和らげ、支援の第一歩になります。 回復のプロセスを理解する 統合失調症の治療と回復は、一度で完結するものではなく、段階的なプロセスを経て進む長期的な過程です。主に「急性期」「回復期」「維持期」の3つの段階に分かれ、それぞれに異なる支援のあり方が求められます。 急性期 幻覚や妄想が強く、不安や混乱が高まる時期です。この時期には本人が「現実」と「妄想」の区別をつけることが難しく、家族の言葉が届きにくい状態にあります。大切なのは、説得や否定をせずに安全を確保し、速やかに医療機関と連携して治療を受けることです。この段階では、感情的な対応よりも「安心できる環境の確保」が最優先になります。 回復期 薬の効果によって幻覚や妄想が落ち着き始める時期です。しかし、まだ疲労感や集中力の低下が残っており、本人は「社会に戻りたい気持ち」と「不安」の間で揺れています。家族は「もう大丈夫」と焦らず、本人のペースを尊重しながら自立への準備を少しずつ進めることが大切です。この時期には、生活リズムを整えたり、外出や作業所への通所など小さな成功体験を積むことが効果的です。 維持期 症状が安定し、社会復帰や就労などを目指す段階です。ここでの焦点は「再発の予防」と「社会とのつながりの維持」です。家族は服薬の継続を見守りつつ、ストレスが溜まらない生活環境を整えるサポートを行います。また、再発の兆候(不眠・イライラ・表情の変化など)を早期に察知できるよう、普段から本人の様子を観察しておくことが大切です。 家族が段階を理解する意味 病状の段階を理解することは、家族が「今、どんなサポートが最も効果的か」を判断する上で欠かせません。たとえば、急性期に励ましの言葉をかけると混乱を招く一方で、回復期には「よく頑張ってるね」という声かけが自信につながります。同じ言葉でも、伝えるタイミングと方法によって影響はまったく異なります。 つまり、家族が病気の特徴と経過を正しく理解することは、単なる知識の獲得ではなく、患者との信頼関係を築く基礎です。理解が深まるほど、家族は不安から解放され、本人も安心して治療と生活に向き合うことができるようになります。 3. 家族ができる日常的サポート 統合失調症の回復を支えるうえで、家族の関わりは非常に重要です。しかし、「どう接すればいいかわからない」「声をかけると逆効果になるのでは」と悩む家族も少なくありません。家族が無理なく、そして継続的に支援していくためには、「監視」や「指導」ではなく、共に歩む姿勢が何よりも大切です。 ここでは、日常生活の中で家族が実践できる3つのサポートの基本を詳しく紹介します。 1. 規則正しい生活をサポートする 統合失調症の症状は、生活リズムの乱れによって悪化しやすいという特徴があります。特に、睡眠・食事・服薬の3つは安定した体調を保つための基盤です。睡眠不足や昼夜逆転は幻覚・妄想の再燃を引き起こすリスクを高め、服薬の中断も再発につながることがあります。 しかし、家族が「ちゃんと薬を飲んだ?」「早く寝なさい」と強く注意してしまうと、本人は“監視されている”と感じ、かえって距離を置いてしまうこともあります。大切なのは、「見張る」のではなく、「一緒に整える」という姿勢です。たとえば、朝食を一緒にとる、天気の良い日に軽い散歩に誘うなど、生活のリズムを自然に共有する方法が効果的です。また、服薬についても「一緒にカレンダーでチェックする」「飲み忘れを責めずに声をかける」など、協力しながら支える形を意識しましょう。家庭が安心できるペースメーカーのような存在になることが、長期安定の大きな支えとなります。 2. 否定ではなく、共感の姿勢を持つ 統合失調症の症状のひとつである幻覚や妄想は、家族から見ると「現実とは違う話」に聞こえます。しかし、本人にとってはそれが「真実」であり、恐怖や不安を伴う切実な体験です。たとえば、患者が「誰かに見張られている」と話した場合、家族が「そんなわけない」「気のせいだよ」と否定しても、本人には理解されません。むしろ否定されることで孤立感が強まり、信頼関係が損なわれることもあります。 そのようなときは、事実を正す前に感情に寄り添うことが大切です。「怖い思いをしているんだね」「不安なんだね」と本人の気持ちを受け止めることで、相手は「自分の話を聞いてくれている」と感じ、安心します。妄想を肯定する必要はありませんが、「その状況で怖かったね」という共感的な対応が、心の緊張を和らげるのです。 こうした「共感的傾聴」は、臨床心理士や精神看護師も実践する基本的な支援技法です。家族がこの姿勢を日常の中で自然に取り入れることで、本人は治療への信頼感を深め、服薬や通院を継続する意欲にもつながります。 3. 家族自身のケアも忘れない 統合失調症の家族支援で最も重要なのは、「支える家族も守られること」です。長期的な介護や支援の中で、家族自身がストレスを抱え込み、心身の不調を起こすケースは少なくありません。「自分がしっかりしなければ」「もっと理解しなければ」と抱え込みすぎると、燃え尽き症候群のように支える力を失ってしまうことがあります。 そのため、家族自身のメンタルケアは、患者支援と同じくらい大切です。定期的にカウンセラーに相談したり、同じ悩みを持つ家族が集まる「家族会」に参加することで、自分の気持ちを共有できます。同じ立場の人の話を聞くだけでも、「自分だけじゃない」という安心感が生まれ、再び前向きに支えようという気持ちが湧いてきます。 また、家族が息抜きできる時間を意識的に作ることも重要です。短い外出や趣味の時間を持つことで、心のバランスを取り戻せます。家族が健康であることは、結果的に患者の安定にも直結します。 4. 再発を防ぐために家族ができること …

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