睡眠時無呼吸症候群
(Sleep Apnea Syndrome : SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。
Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われます。
睡眠中に10秒以上の呼吸が停止する無呼吸(呼吸停止状態)が1時間に5回以上繰り返される病気です。
検査による重症度があり、AHIが5以上(呼吸が止まったり、浅くなったりする回数が1時間に5回以上)を睡眠時無呼吸症候群と診断し、5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。
簡易検査における無呼吸低呼吸指数(AHI)が40以上の場合、重症の睡眠時無呼吸症候群と診断され、自覚症状を有している場合はCPAPが保険適応で治療可能です。またAHIが20以上40未満の場合入院による精密検査が必要です。精密検査でAHIが20以上の場合に保険適応となります。
自覚症状としてわかりやすいのが
- いびき、歯ぎしり
- 睡眠時間がとれていても昼間に眠いと感じる日が多い
- 寝つきが悪く熟睡感がない
- 疲れがとれない
- 起床時の頭痛
- 集中力の低下
- 夜間頻尿
- 息苦しくて眠れない
などの症状があります。
自身で睡眠時無呼吸症候群という自覚がなく睡眠不足で悩んでいる方も多いです。日常生活に様々なリスクが生じる可能性もあります。睡眠時間はとっているにも関わらず疲労感や集中力の低下がある際には睡眠障害の可能性もあるので医療機関へ相談しましょう。睡眠で最も重要なイベントは、睡眠直後のノンレム睡眠の90分間です。
睡眠時無呼吸症候群はこの睡眠最初のノンレム睡眠が充分に得られないことで睡眠の質を著しく低下させ、肥満(BMI 30以上)、高血圧、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患や、生活習慣病を合併するケースが多いと言われており早期に適切な治療をすることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の原因
〈閉塞性の無呼吸〉
いびきは舌や咽喉の筋肉の緊張がとれて、空気の通り道が狭くなって発生します。その際に咽喉が完全に塞がってしまう(舌根沈下)と窒息状態になるわけです。睡眠時無呼吸の患者様のほとんどの方が閉塞性の方です。
〈中枢性の無呼吸〉
上気道の閉塞ではなく、呼吸中枢の異常によって睡眠時の呼吸が障害されるパターンです。呼吸中枢は脳の延髄にあり、肺や胸郭、末梢神経などに指令を出して呼吸運動を引き起こしています。しかし、何らかの影響によって指令が出なくなり、呼吸が止まったり浅くなったりするのです。割合としてはこのタイプの方は少ないですが、循環器疾患や脳卒中、腎不全と関係していることがあります。
上記2つのパターンの混合型の方も稀にいます。
睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は頻繁に起こる無呼吸により、血液中の酸素飽和度が低下し、それに伴い心拍数が急激な上昇をしたりするのを繰り返します。苦しさを感じ中途覚醒することも多く、さまざまな睡眠障害等を起こします。深い睡眠が得られないことから、昼間に眠気が強い(昼寝してしまう)、集中力が低下する、体がだるい、あさの目覚めがすっきりしない、といった症状があります。
低酸素が続くことで身体や脳へのダメージが伴い多くの生活習慣病の合併症を引き起こす事が明らかになっています。
とくに肥満の場合には肥満低換気症候群という場合もあります。睡眠低換気に関係する症状/徴候が一つでもある(日中の過眠、覚醒維持障害、一過性でない睡眠時無呼吸)。重症化すると浮腫、息切れなどの右心不全症状がでたりもします。心不全の悪化に伴い、心房が大きくなることで致死性不整脈を起こす原因ともなります。
睡眠時無呼吸は多血症の原因ともなっており、脳血管障害や心疾患リスクも上昇し突然死のリスクも高まります。多血症とは、あまり聞き慣れない病名ですが、血液中の赤血球という、全身に酸素を運ぶ成分が以上に増えてしまう疾患です。赤血球が増えすぎると血液が濃くドロドロになって流れが悪くなります。そうして、特に血栓症の患者では血栓(血の塊)ができやすくなり心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。
また慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息は睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea
Syndrome:SAS)との合併が多く知られています。SASは睡眠中に繰り返し呼吸が止まり、繰り返し体内の酸素が低下します(低酸素血症)。COPD、気管支喘息、ほか呼吸器内科領域の病気は昼間からすでに低酸素血症であることが多く、SASを合併すると、睡眠中はより低酸素血症が悪化し、呼吸器の症状(息切れや咳など)も悪化することが多いと報告されています。
逆流性食道炎についても睡眠時無呼吸症候群の症状が重度なほど、発症する割合が高くなることが明らかにされています。
低酸素における脳へのダメージは精神面や物忘れなどにも影響が強いと言われています。
またデスクワークが中心の方でも、作業効率の低下や、業務上の事故の原因ともなります。
さらに交通事故を起こす頻度がSASの人は健常人の2.5倍も高くなることが報告されています。トラックやタクシーのドライバーなど、運転業務に関わる方は、会社で「SAS検診」が義務づけられている場合があります。万が一、交通事故を起こした場合に休職せざるおえない状態になってしまったり、最悪の場合には他人をケガに巻き込んでしまう可能性もあります。自分が睡眠時無呼吸症候群だという自覚症状がない場合もあるので、運転業務に関わる方は定期的に検査を受けることが大切です。年齢関係なく起こりうる睡眠時無呼吸症候群ですが、働く世代の方も診察を受けやすくするために夜間診療対応しております。企業からのお問い合わせもお待ちしています。
さらにこれらの合併症を低減するためにもSASの適切な診断と、継続的にCPAP治療する事が最も重要です。
当院では元東京医大教授が診察していることやCPAP療法士が在中しており、相談しやすい環境です。お気軽にお尋ねください。
症状が重くなると危険
1時間あたりの無呼吸が20回以上に達するような中等症~重症になると寿命が短くなり、7~8年後には20%~30%の人が死亡すると報告されています。
その死亡原因の多くは心筋梗塞(虚血性心疾患)や脳梗塞(脳血管障害)です。
また睡眠時無呼吸症候群にかかっている女性が妊娠すると、妊娠による体重増加により気道は狭くなり、症状は悪化します。
母親の睡眠中の無呼吸が胎児の酸素不足をもたらし、流産、切迫早産、発達障害児出産の原因になったとの研究報告も国内外でされています。
SASになりやすい人
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因としては、飲酒やたばこ(喫煙)、暴飲暴食などの生活習慣の乱れから発症すると言われております。
また太った男性に多いのはもちろんですが、瘦せ型でも女性でも男女関係なくかかる病気です。肥満でなくても、顎が小さかったり、喉が狭かったりと、頭蓋・顔面骨の骨格、咽頭腔に特徴や異常がある人はそうでない人に比べ気道が狭くなりやすく、SASになる可能性が高くなります。顔や首まわりの形体的特徴にて睡眠時無呼吸症候群になる方は遺伝にも影響されているかもしれません。
大人だけではなく、子供でも起こりえます。小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は成人と異なり、眠気よりも学力低下や、多動性・攻撃性などの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)様の認知・行動面の問題が生じやすく、発達に影響を及ぼすとされています。そのため発達障害との区別が難しい例もあると言われています。思春期のお子さんの場合、朝に起きることができない、ふらつき、学校にいけないなどの相談もあります。必要な方は精神科・心療内科・神経内科・睡眠医療専門病院への紹介も考え、睡眠障害のスクリーニングも必要な方は行っています。