この記事でわかること
- マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序と、体重減少・血糖改善の臨床試験データ
- SURMOUNT-1・SURMOUNT-2・SURPASS-1・SURPASS-2という主要な臨床試験の結果
- マンジャロと他のGLP-1受容体作動薬との効果の違い
- 使用上の注意点と、安全に治療を続けるためのポイント
はじめに
マンジャロは、複数の大規模臨床試験によって体重減少効果と血糖改善効果が確認されている薬剤です。近年、肥満は単なる体重増加の問題にとどまらず、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患などの生活習慣病リスクを高める重大な健康課題として注目されています。そのため、体重管理の戦略として薬物療法の重要性も増しています。中でもGIP/GLP-1受容体作動薬であるマンジャロは、肥満患者の減量治療において注目される存在です。本記事では、マンジャロの臨床データや実際の減量効果、既存のGLP-1受容体作動薬との比較、使用上の注意点について詳しく解説します。
1. マンジャロとは
マンジャロは、GLP-1とGIPという2つのホルモンに同時に作用する、他にはない特徴を持つ注射薬です。マンジャロはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の両方の受容体に作用する薬剤に分類される注射薬です。GLP-1は腸管から分泌されるインクレチンホルモンで、血糖値上昇時にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する作用があります。さらに、マンジャロは食欲に関わる中枢神経系にも作用し、食欲を抑制し、自然な食事量の減少をもたらすことが特徴です。
特徴
- 週1回の皮下注射で継続可能
- 中枢神経への作用による食欲抑制
- 血糖値改善と体重減少を同時に達成可能
2. マンジャロの作用機序
マンジャロは膵臓・肝臓・脳という3つの経路に働きかけることで、血糖改善と体重減少を同時にもたらします。マンジャロは以下の3つの主要な作用を示します。
- 膵β細胞への作用
- 血糖上昇時にインスリン分泌を促進
- 血糖上昇時にインスリン分泌を促進
- 膵α細胞への作用
- グルカゴン分泌を抑制し、肝臓での糖新生を抑える
- グルカゴン分泌を抑制し、肝臓での糖新生を抑える
- 食欲中枢への作用
- 脳の食欲調節に関わる部位に働きかけ、食欲を抑制
- 結果として自然なカロリー摂取の減少と体重減少をもたらす
- 脳の食欲調節に関わる部位に働きかけ、食欲を抑制
この3つの作用が相互に働くことで、血糖改善と体重減少の両方を同時に達成することができます。
3. マンジャロの臨床試験データ
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)の効果は、SURMOUNT試験・SURPASS試験という2つの大規模臨床試験シリーズによって裏付けられています。ここで紹介するのは、いずれもマンジャロそのもの(チルゼパチド)を投与した臨床試験の結果です。同じGLP-1系の薬剤でも、セマグルチドなど他の薬剤の試験結果とは区別して理解する必要があります。
3.1 体重減少効果(SURMOUNT試験)
肥満を対象とした臨床試験でマンジャロは有意な体重減少効果を示しています。以下に代表的な試験結果を示します。
- SURMOUNT-1試験(Jastreboff AM et al., 2022)
- 対象: 糖尿病を伴わない肥満・過体重の成人(BMI30以上、またはBMI27以上で肥満関連合併症あり)
- 投与: マンジャロ週1回皮下注射(5mg/10mg/15mg)
- 結果: 72週間で平均体重減少は5mg群15.0%、10mg群19.5%、15mg群20.9%
- プラセボ群の体重減少は平均3.1%にとどまった
- 対象: 糖尿病を伴わない肥満・過体重の成人(BMI30以上、またはBMI27以上で肥満関連合併症あり)
- SURMOUNT-2試験(Garvey WT et al., 2023)
- 対象: 肥満・過体重を伴う2型糖尿病患者
- 結果: 72週間で平均体重減少は10mg群13.4%、15mg群15.7%(プラセボ群は3.3%)
- 対象: 肥満・過体重を伴う2型糖尿病患者
3.2 血糖改善効果(SURPASS試験)
2型糖尿病患者を対象とした試験では、マンジャロは体重減少だけでなく血糖値改善効果も示しています。
- SURPASS-1試験(Rosenstock J et al., 2021)
- 他剤未使用の2型糖尿病患者を対象に、プラセボと比較
- 40週間でHbA1cが最大2.07%低下(プラセボ群は0.04%上昇)
- 他剤未使用の2型糖尿病患者を対象に、プラセボと比較
- SURPASS-2試験(Frías JP et al., 2021)
- マンジャロとセマグルチド1mg(従来のGLP-1薬)を比較
- 40週間でHbA1cはマンジャロ5mg群2.01%、10mg群2.24%、15mg群2.30%低下し、セマグルチド群の1.86%低下を上回った
- マンジャロとセマグルチド1mg(従来のGLP-1薬)を比較
このことから、肥満を伴う2型糖尿病患者に対しては減量と血糖コントロールの両立が可能であることが、複数の臨床試験で示されています。低血糖リスクについては、マンジャロ単独使用時は血糖依存性の作用のため比較的低いとされていますが、インスリンやSU薬と併用する場合はリスクが高まる点に注意が必要です。
4. 他のGLP-1受容体作動薬との比較
マンジャロは、GIPとGLP-1の両方に作用する点で、GLP-1のみに作用する既存薬と作用の仕組みが異なります。マンジャロは既存のGLP-1受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチドなど)と比較して、以下の特徴があります。
| 薬剤 | 投与頻度 | 臨床試験での平均体重減少 | 特徴 |
| マンジャロ(チルゼパチド) | 週1回 | 約15〜21%(SURMOUNT-1、最高用量) | GIP/GLP-1デュアル作用 |
| リラグルチド(サクセンダ) | 1日1回 | 約5〜10%(SCALE試験) | GLP-1単独作用 |
| セマグルチド(ウゴービ) | 週1回 | 約15%前後(STEP1試験) | GLP-1単独作用、高用量で強い減量効果 |
- マンジャロはGIP作用が加わることで、SURPASS-2試験ではセマグルチドを上回るHbA1c低下・体重減少が確認されている
- 各試験は対象患者の背景(糖尿病の有無・重症度など)が異なるため、数値を単純比較する際は試験デザインの違いに注意が必要
マンジャロ(マンジャロ)による医療ダイエット:GIP/GLP-1ダブル作用の効果と仕組みを解説
医療ダイエットの領域で今、最も注目を集めているのがマンジャロ注射(Mounjaro®/...5. 実際の減量効果と臨床応用
マンジャロは、高BMI患者・糖尿病合併患者・従来薬で効果不十分だった患者という3つの場面で臨床応用が検討されます。マンジャロは臨床現場で以下のような状況で有効に活用されています。
- 高BMI患者の体重管理
- 食欲抑制により無理のない減量が可能
- 食欲抑制により無理のない減量が可能
- 2型糖尿病患者で血糖コントロール不十分な場合
- 血糖改善と減量を同時に実現
- 血糖改善と減量を同時に実現
- 従来薬で効果が不十分な肥満患者
- GIP/GLP-1デュアル作用による新たな減量アプローチ
- GIP/GLP-1デュアル作用による新たな減量アプローチ
なお、日本国内でマンジャロが承認されているのは2型糖尿病治療のみで、肥満症治療薬としての承認は得られていません。ダイエット目的でマンジャロを使用する場合は適応外使用にあたり、ヒロクリニックを含む多くのクリニックで自由診療(全額自己負担)として提供されています。
6. 使用上の注意点
マンジャロは効果が高い一方で、消化器症状や特定の既往歴には注意が必要な薬剤です。治療を始める前に、以下の点を確認しておきましょう。
- 消化器症状
- 初期は吐き気、便秘、下痢などが報告されており、投与量調整で軽減可能
- 初期は吐き気、便秘、下痢などが報告されており、投与量調整で軽減可能
- 膵炎リスク
- まれに膵炎を発症することがあるため、強い腹痛や持続する消化器症状が出た場合は医療機関受診
- まれに膵炎を発症することがあるため、強い腹痛や持続する消化器症状が出た場合は医療機関受診
- 妊娠・授乳中の使用不可
- 安全性が確立されていないため使用不可
- 安全性が確立されていないため使用不可
- 腎機能低下患者
- 投与量調整や経過観察が必要
- 投与量調整や経過観察が必要
7. マンジャロの安全性
大規模臨床試験のデータでは、マンジャロによる重篤な副作用は少なく、多くは投与初期の消化器症状にとどまっています。
- SURMOUNT試験・SURPASS試験を通じて、重篤な副作用の発生はまれ
- 初期の消化器症状は投与継続や増量ペースの調整により軽減することが多い
- 長期使用時の安全性データについては、現在も追跡調査が継続されている
8. ここまでのまとめ
マンジャロは、SURMOUNT・SURPASSという2つの臨床試験シリーズで体重減少と血糖改善の両方が確認されているGIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1という2つのホルモンに作用する点が特徴で、週1回投与で継続性が高いため、現場での利用価値も大きいといえます。
- SURMOUNT-1試験では72週間で平均15〜21%の体重減少(プラセボ群3.1%)
- SURPASS-2試験では2型糖尿病患者でHbA1cが最大2.30%低下
- 他のGLP-1受容体作動薬より体重減少効果が大きいとする試験結果がある
肥満治療の戦略において、ライフスタイル改善と併用することで、より安全で効果的な体重管理が可能です。
9. 臨床でのマンジャロ使用の実際
臨床現場では、少量から始めて段階的に増量しながら、生活習慣の指導とあわせて治療を進めるのが一般的な流れです。マンジャロは臨床現場で以下のような指導や管理の下で使用されます。
- 投与開始と増量
- 初期は低用量から開始し、消化器症状を抑えながら徐々に標準用量まで増量
- 個々の患者に応じて用量調整を行う
- 初期は低用量から開始し、消化器症状を抑えながら徐々に標準用量まで増量
- ライフスタイルとの併用
- 適切なカロリー管理と運動療法を併用することで減量効果が最大化
- 栄養士や医師と連携した行動変容支援が推奨される
- 適切なカロリー管理と運動療法を併用することで減量効果が最大化
- 定期的なフォローアップ
- 体重、血圧、血糖、腎機能などを定期的にチェック
- 副作用や体調変化に応じて治療計画を調整
- 体重、血圧、血糖、腎機能などを定期的にチェック
- 患者教育の重要性
- 注射方法や副作用の対処法を事前に指導
- 減量効果は徐々に現れるため、短期間での結果を焦らず継続を促す
- 注射方法や副作用の対処法を事前に指導
10. マンジャロと心血管リスク管理
SURPASS試験のサブ解析では、マンジャロ使用に伴って血圧や脂質の指標が改善する傾向が報告されています。近年の研究では、GIP/GLP-1受容体作動薬が心血管リスク因子の改善にも寄与する可能性が報告されています。SURPASS-2試験のサブ解析では、マンジャロを使用した2型糖尿病患者で血圧や脂質異常の改善傾向が見られたことが報告されていますが、心血管イベント自体を減らすかどうかを直接検証した大規模アウトカム試験の結果は、本記事執筆時点ではまだ限定的です。

11. マンジャロの患者選択のポイント
マンジャロは、BMI30以上の肥満や、合併症を伴うBMI27以上の患者で特に効果が期待できるとされています。マンジャロを使用する上で、特に効果が期待できる患者は以下の通りです。
- BMI ≥30 kg/m²の肥満患者
- BMI ≥27 kg/m²で糖尿病や高血圧など合併症を有する患者
- 従来の生活習慣改善や薬物療法で十分な減量が得られなかった患者
- 食欲抑制による体重管理が必要な患者
逆に、妊娠中・授乳中、重度の膵疾患患者では使用は避ける必要があります。
12. 副作用と安全管理
マンジャロは一般的に安全性が高い薬剤ですが、消化器症状・膵炎・低血糖・腎機能の4点は特に注意が必要です。
- 消化器症状
- 吐き気、便秘、下痢
- 通常、投与初期に発生し、投与量調整や時間経過で軽減
- 吐き気、便秘、下痢
- 膵炎
- 強い腹痛や持続的な消化器症状が出た場合は医療機関へ
- 強い腹痛や持続的な消化器症状が出た場合は医療機関へ
- 低血糖
- 単独使用ではまれだが、インスリンやSU剤併用時には注意
- 単独使用ではまれだが、インスリンやSU剤併用時には注意
- 腎機能障害
- 既存腎疾患のある患者では慎重投与
- 既存腎疾患のある患者では慎重投与
定期的な血液検査や臨床観察を行うことで、安全かつ効果的な治療が可能です。
13. 今後の展望
マンジャロは糖尿病治療薬から肥満治療の選択肢へと位置づけが広がりつつありますが、日本国内での肥満症治療薬としての承認は今後の課題です。マンジャロをはじめとするGIP/GLP-1受容体作動薬は、単なる糖尿病薬から肥満治療の中心的な選択肢へと位置付けが変化しています。特にGIP作用が加わったことによる強い体重減少効果は、従来のダイエット法では得られなかった結果を可能にしました。
さらに、心血管リスク因子の改善や生活習慣病の予防への応用も期待されており、今後の肥満治療アルゴリズムにおいてマンジャロの役割はより重要になると考えられます。ただし、日本国内での肥満症に対する適応拡大の時期は本記事執筆時点で明確になっていません。
よくある質問
マンジャロの臨床データについて、診療の場でよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. SURMOUNT-1試験の「20.9%の体重減少」は誰にでも当てはまりますか?
A. いいえ。この数値は72週間、マンジャロ15mgを使用した臨床試験参加者の平均値です。年齢・性別・体質・生活習慣によって個人差があり、同じ結果が保証されるものではありません。
Q2. マンジャロとセマグルチドはどちらが効果的ですか?
A. SURPASS-2試験では、2型糖尿病患者においてマンジャロがセマグルチド1mgよりも大きいHbA1c低下・体重減少を示しました。ただし対象や条件が異なる試験結果を単純比較することはできず、実際にどちらが適するかは体質や治療目的によって異なります。
Q3. マンジャロは日本で肥満治療薬として保険適用されますか?
A. いいえ。マンジャロが日本国内で承認されているのは2型糖尿病治療のみで、肥満症治療薬としての承認は得られていません。ダイエット目的での使用は適応外使用にあたり、保険適用外の自由診療(全額自己負担)となります。
Q4. 臨床試験のデータと実際のクリニックでの効果は同じですか?
A. 臨床試験は一定の条件で参加者を管理した結果であり、実際の診療では体質・併存疾患・生活習慣が一人ひとり異なります。臨床試験のデータはあくまで目安として捉え、実際の効果は医師と相談しながら経過を確認してください。
Q5. SURMOUNT試験とSURPASS試験は何が違うのですか?
A. SURMOUNT試験は主に肥満・過体重の方を対象に体重減少効果を検証した試験シリーズで、SURPASS試験は2型糖尿病患者を対象に血糖改善効果を中心に検証した試験シリーズです。対象患者と評価項目が異なるため、目的に応じて参照するデータが変わります。
まとめ
マンジャロは以下の特徴を持つ肥満治療の選択肢です。
- SURMOUNT-1試験・SURMOUNT-2試験で高い体重減少効果が確認されている
- SURPASS-1試験・SURPASS-2試験で2型糖尿病患者の血糖改善も同時に可能
- GIP/GLP-1のデュアル作用により、既存のGLP-1単独薬より体重減少効果が大きいとする試験結果がある
- 消化器症状や膵炎リスクなど、副作用管理が必要
ライフスタイル改善と併用することで、安全かつ効果的に肥満を改善し、関連合併症リスクの低減にも寄与します。臨床現場では、患者教育、定期フォロー、適切な患者選択が治療成功の鍵となります。
参考文献
本記事で紹介した数値は、いずれもマンジャロ(チルゼパチド)を対象とした査読済み論文に基づいています。
- Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). N Engl J Med. 2022;387:205-216.
- Garvey WT, et al. Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (SURMOUNT-2). Lancet. 2023;402:613-626.
- Rosenstock J, et al. Efficacy and safety of a novel dual GIP and GLP-1 receptor agonist tirzepatide in patients with type 2 diabetes (SURPASS-1). Lancet. 2021;398:143-155.
- Frías JP, et al. Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes (SURPASS-2). N Engl J Med. 2021;385:503-515.
監修:岡 浩子(医療法人社団福美会 理事長/日本内科学会認定医)