マンジャロ注射を使った痩身治療の実態|医療ダイエットの最前線

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医療ダイエットの領域で今、最も注目を集めているのがマンジャロ注射(Mounjaro®/一般名:チルゼパチド)です。もともとは2型糖尿病治療薬として開発されましたが、最新の臨床試験で非常に高い減量効果が証明され、米国や欧州では肥満症治療薬としても承認。日本でも自由診療として導入する医療機関が急増しています。本記事では、マンジャロ注射の医学的背景、効果、副作用、費用、国内外の規制から今後の研究動向までをまとめて解説します。

1. マンジャロ注射とは?

マンジャロ(Mounjaro®/一般名:チルゼパチド)は、近年登場した新世代の注射薬で、従来のGLP-1受容体作動薬(オゼンピック、リベルサスなど)に加え、GIP受容体作動薬の作用を組み合わせた初めての薬剤です。
これにより、血糖コントロールと体重減少の両面で、従来薬を大きく上回る効果が確認されています。

もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、臨床試験で非常に高い減量効果が証明され、欧米では肥満症治療薬としても承認されています。特に「痩身効果」と「生活習慣病予防」の両立が期待できる点で、世界的に注目を集めています。

GLP-1とGIPの基礎知識

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)

  • 由来:小腸のL細胞から分泌されるインクレチンホルモン。食後、特に炭水化物や脂質の摂取によって分泌される。
  • 主な作用
    • 膵β細胞でのインスリン分泌促進(血糖依存的)。
    • 膵α細胞からのグルカゴン分泌抑制。
    • 胃内容物排出の遅延 → 食後血糖上昇を緩やかにする。
    • 中枢神経系への作用 → 食欲抑制(満腹感増強)。
  • 臨床的応用
    • GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド、リラグルチド)は2型糖尿病治療薬や肥満症治療薬として広く使われている。
    • 心血管イベントリスク低下の報告もあり、糖尿病治療薬の中で重要な位置を占める。

GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)

  • 由来:小腸のK細胞から分泌されるインクレチンホルモン。食後、特に脂質や糖の摂取により分泌。
  • 主な作用
    • 膵β細胞でのインスリン分泌促進(血糖依存的)。
    • 脂肪組織での脂肪合成促進作用(肥満との関連が注目されている)。
    • 骨代謝にも関与しているとされる。
  • 特徴
    • 2型糖尿病患者では、GIPによるインスリン分泌促進作用が低下していることが知られている。
    • 近年はGLP-1との併用や二重作動薬(例:チルゼパチド)が開発され、肥満・糖尿病治療の新しい可能性として注目されている。

二重作用のメリット

この二つのホルモンを同時に刺激することで、以下のような「三位一体の効果」が得られます。

  • 糖代謝改善:血糖値の安定化
  • 食欲抑制:自然に食べ過ぎを防ぐ
  • 脂肪代謝促進:脂肪燃焼を助け、筋肉量を維持

そのため、マンジャロ注射は「痩せる薬」というよりも、体重を減らしながら健康状態を改善する“代謝改善薬”としての性格を持っています。

2. 痩身治療としての効果

マンジャロ注射は、糖尿病治療薬としての効果に加え、肥満症に対する減量効果が非常に高いことが臨床試験で示されています。特に、体重減少率の大きさと生活習慣病リスクの改善が同時に得られる点が大きな特徴です。

2-1. SURMOUNT-1試験(肥満症患者対象)

対象:BMI30以上、またはBMI27以上+肥満関連疾患を持つ患者
投与期間:72週間(約1年半)

結果は以下の通りです。

  • 5mg群:平均−15.0%
  • 10mg群:平均−19.5%
  • 15mg群:平均−20.9%

体重の20%前後の減少は、これまでの薬物療法ではほとんど見られなかった水準で、外科的な減量手術に迫る効果と評価されています。さらに副次的な効果として、血圧の低下、中性脂肪の減少、HDLコレステロールの上昇といった心血管リスク改善も確認されました。

2-2. 糖尿病患者対象のSURPASS試験

糖尿病患者を対象とした試験でも、マンジャロ注射は大きな効果を示しています。

  • 平均体重減少:8〜12%
  • HbA1c(血糖値の指標)低下幅:1.6〜2.4%
  • 低血糖リスクは比較的低い

つまり、糖尿病の治療と同時に肥満の改善が可能であり、血糖コントロールと体重減少を両立できる点が、従来の治療薬と大きく異なる強みといえます。

3. なぜ痩せるのか?作用機序の詳細

マンジャロ注射は単なる「食欲を抑える薬」ではありません。複数の作用が組み合わさることで、体重減少を効率的かつ持続的にサポートするのが特徴です。

摂食中枢への作用

脳の視床下部に直接働きかけ、空腹感を自然に減らします。無理な我慢ではなく「食べたい気持ちが減る」という形で食欲をコントロールできます。

胃排出の遅延

食べたものが胃から小腸に移動するスピードを遅くし、満腹感が長時間続きます。そのため間食や食べ過ぎを防ぎやすくなります。

血糖スパイクの抑制

食後の急激な血糖上昇(血糖スパイク)を防ぐことで、インスリン分泌が安定。結果として、糖が脂肪に変換されにくくなります。

脂肪代謝の促進

脂肪酸の酸化を高め、エネルギーとして効率的に利用できるようにします。いわば「燃焼しやすい体」に近づける働きがあります。

筋肉量の維持

多くのダイエット薬では「体重と一緒に筋肉も落ちてしまう」リスクがありますが、マンジャロは筋肉量をできるだけ保つため、基礎代謝が下がりにくく、リバウンドしにくいとされています。

4. 投与方法とスケジュール

マンジャロ注射は、週1回の皮下注射で行います。専用のペン型注射器を使うため、慣れれば患者自身が自宅で自己注射することも可能です。通院の負担が少なく続けやすいのが特徴です。

投与の基本ステップ

  • 投与経路:週1回の皮下注射(自己注射が可能)
  • 開始量:2.5mg/週からスタート
  • 増量スケジュール:数週間ごとに → 5mg → 7.5mg → 10mg と調整し、必要に応じて最大15mgまで
    • 副作用の出方や体重減少の進み具合を見ながら、医師が判断します

投与期間の目安

  • 基本的には3〜6ヶ月以上の継続が推奨
  • 短期で「一気に痩せる」よりも、中長期的に体重を減らしリバウンドを防ぐことが大切

治療中の管理

  • 定期的な通院(目安:月1回)
    • 血液検査(血糖・肝機能・膵酵素など)
    • 副作用チェック(吐き気・胃腸障害・膵炎リスクなど)
  • 医師と相談しながら、安全性と効果をバランスよく維持
診察する女医

5. 副作用と安全性

マンジャロ注射は、糖尿病や肥満治療において高い効果が期待できる画期的な薬剤ですが、その一方で副作用に注意が必要です。副作用の多くは軽度かつ一時的で、使用を続けているうちに自然と落ち着くことも多いのですが、まれに重篤な合併症が報告されるケースもあります。そのため、医師の指導のもとで定期的に診察・検査を行いながら安全に使用することが大切です。

5-1. 軽度〜中等度の副作用(比較的よくあるもの)

  • 吐き気、下痢、便秘などの消化器症状
  • 食欲不振
  • 注射部位の赤みや腫れ

これらはマンジャロ注射の使用初期や、投与量を増量した際に特に出やすい症状です。多くの場合、数日〜数週間で体が慣れて改善する傾向があります。もし症状が強く生活に支障をきたす場合は、医師と相談の上で投与量を調整したり、注射のタイミングを工夫することで軽減できることがあります。

患者さんの中には「最初の数週間だけ吐き気が強かったが、徐々に慣れて気にならなくなった」という声も多く聞かれます。つまり、初期の副作用は一過性であることが多いのです。

5-2. 重篤な副作用(頻度は非常に低いが注意が必要)

  • 急性膵炎
    強い腹痛や背中に響くような痛みが出た場合は、急性膵炎の可能性があるためすぐに受診が必要です。膵炎は命に関わることもあるため、見逃さないことが重要です。
  • 低血糖
    特にインスリンやスルホニル尿素薬など、他の糖尿病治療薬と併用している場合に注意が必要です。マンジャロ単独では低血糖リスクは比較的低いとされていますが、併用薬がある場合は血糖値をこまめに測定しながら慎重に管理する必要があります。
  • 甲状腺髄様癌のリスク
    動物実験では甲状腺髄様癌の発生が報告されていますが、人間においてはまだ因果関係が明確に証明されていません。ただし、甲状腺疾患の家族歴がある方などは、あらかじめ医師に相談しておくことが推奨されます。

安全に治療を続けるために

これらの副作用は必ずしも全員に起こるわけではなく、多くの人は比較的良好に治療を継続できています。しかし、「軽い症状だから放置する」のではなく、変化を感じたら早めに医師へ相談することが安全につながります

また、定期的に以下の検査や診察を受けることが推奨されています。

  • 血液検査(肝機能、腎機能、血糖、膵酵素など)
  • 体重や血圧の測定
  • 甲状腺のチェック(必要に応じて)

こうしたモニタリングを行うことで、副作用を早期に発見し、適切に対処することができます。

6. 国内外の承認状況と費用

海外での承認状況

  • アメリカ・ヨーロッパ:糖尿病治療薬としてだけでなく、肥満症治療薬としても承認済み
    → 肥満を「病気」として積極的に薬で治療する流れが強い。

日本での承認状況

  • 日本:2型糖尿病の治療薬としてのみ承認。
  • 肥満症目的の使用は未承認で、行う場合はすべて**自由診療(自費)**になる。
    → 保険は使えないため、費用負担が大きい。

日本での課題

  • 保険がきかないため、長期間続けると経済的負担が大きい
  • 個人輸入や非正規ルートの薬剤は偽物や品質不良のリスクがあり危険

費用の目安(日本・自由診療の場合)

  • 初診+検査費用:5,000〜10,000円
  • 薬剤費:1か月あたり30,000〜60,000円(容量により変動)
  • 栄養指導や定期的な血液検査が別途必要な場合あり

7. 他の痩身治療との比較

治療法平均体重減少率特徴主なリスク
マンジャロ注射15〜20%GLP-1+GIP二重作用消化器症状、膵炎
リベルサス5〜10%経口GLP-1製剤消化器症状
脂肪吸収阻害薬3〜5%脂肪吸収抑制下痢、脂肪便
減量手術25〜35%外科的治療で確実外科合併症

8. 食事・運動との併用戦略

マンジャロ注射は強力な減量効果を持ちますが、食事・運動・生活習慣の改善とセットで行うことで効果を最大化し、リバウンドを防ぐことができます。

食事

  • 高たんぱく食品(肉・魚・大豆製品など)をしっかり摂る
  • 低GI食品(玄米、全粒パン、野菜など)で血糖値の急上昇を防ぐ
  • 糖質・脂質を極端に制限するのではなく、バランス重視

運動

  • 有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳など):脂肪燃焼に効果的
  • 筋力トレーニング:筋肉量を維持・増加させ、基礎代謝の低下を防ぐ
  • 無理のない範囲で、週2〜3回を継続することが大切

生活習慣

  • 十分な睡眠(7時間前後):食欲ホルモンの乱れを防ぐ
  • ストレス管理:過食の原因になるため、リラックス習慣(深呼吸、趣味、入浴など)を取り入れる

まとめ

マンジャロ注射は、GLP-1とGIPの二重作用により、従来の医療ダイエット薬を超える減量効果を発揮する画期的な治療法です。
費用や副作用の課題はあるものの、適切な管理下で使用すれば短期間での減量と健康改善が可能です。
これから医療ダイエットを始める方にとって、マンジャロ注射は有力な選択肢の一つとなるでしょう。

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