皮下注射型のGLP-1薬マンジャロと飲み薬との効果比較と副作用の違い

薬

はじめに

近年、肥満や生活習慣病の治療薬として注目を集めているのが「GLP-1受容体作動薬」というタイプの薬です。その中でも特に話題になっているのが**マンジャロ(Mounjaro)**という注射薬です。マンジャロはこれまでのGLP-1薬と比べて、体重の減少効果がより強いとされ、ダイエット目的でも使用されるようになっています。

一方で、注射が苦手な人に向けて「飲み薬タイプのGLP-1薬」も開発が進んでいます。そこで本記事では、マンジャロ(注射型)と飲み薬の違いについて、効果や副作用の観点からわかりやすく整理していきます。

1. マンジャロとは?その働きと特徴

マンジャロは、週に1回注射するタイプの薬です。正式名称は「チルゼパチド」といい、**GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)**という2種類のホルモンの働きをまねする「デュアルアゴニスト(2重作動薬)」です。

  • GLP-1は小腸から分泌されるホルモンで、血糖を下げたり食欲を抑える働きがあります。
  • GIPも同じく消化管から分泌されるホルモンで、インスリン分泌を助け、エネルギー代謝を改善します。

この2つを同時に刺激することで、従来のGLP-1薬以上に「血糖コントロール」と「食欲抑制」が得られるのがマンジャロの大きな特徴です。

2. 注射型マンジャロの効果 ― 体重減少の実力

マンジャロは、肥満や糖尿病を対象にした大規模な臨床試験で効果が確認されています。

  • 72週間(約1年半)使用した試験では、体重が平均15〜20%減少したというデータが出ています。たとえば体重100kgの人なら、15〜20kg減る計算です。
  • これは従来のGLP-1薬(セマグルチドなど)よりも強力で、比較試験でもマンジャロの方が大きな減量効果を示しました。

また、体重だけでなく「ウエストのサイズが大きく減る」「血糖コントロールが改善する」「心臓への負担が減る」といった効果も報告されています。

3. 飲み薬タイプのGLP-1薬との比較

一方で、注射に抵抗がある人のために「飲み薬タイプ」の開発も進んでいます。代表的なのはオルフォーグリプロンという薬です。これはまだ研究段階ですが、注射と同じような体重減少効果が期待されています。

ただし現時点では、

  • 飲み薬はまだ承認されていないものが多く、データも限られている
  • 効果が安定するかどうか、長期的な安全性が十分に分かっていない
    といった課題があります。

そのため、現状では「確立されたデータが多いのは注射型のマンジャロ」といえます。

4. 副作用と注意点

どんな薬にもメリットとデメリットがあります。マンジャロや他のGLP-1薬でも、共通して見られる副作用があります。

4.1 よくある副作用

  • 吐き気
  • 下痢や便秘
  • 食欲不振
  • 腹部の張りや不快感

これらは薬が消化管に作用するために起こりやすく、初期に目立ちますが、数週間で体が慣れる場合も多いです。

4.2 注意すべき副作用

  • 胆石や胆のうの病気のリスクがやや上がる
  • 膵炎(すいえん)の報告がある
  • 動物実験では甲状腺腫瘍との関連が指摘されており、既往のある人は注意が必要

副作用のリスクを下げるためには、医師の指導のもとで定期的に血液検査や画像検査を行うことが推奨されます。

5. 注射型と飲み薬の違い ― まとめ

項目マンジャロ(注射型)飲み薬タイプ(開発中)
投与方法週1回の皮下注射毎日の内服が想定される
効果15〜20%の体重減少が確認済み有望だがデータは限定的
副作用吐き気・消化器症状が多い同様の副作用が想定される
長期データ多数の臨床試験あり今後の蓄積が必要
利便性注射が苦手な人には不向き飲みやすさはメリット

6. マンジャロを使う際のポイント

  • 自己判断で使用せず、必ず医師の診察を受けること
  • 栄養バランスの良い食事・適度な運動と併用することで効果が高まる
  • 定期的な血液検査(肝機能・腎機能・膵酵素など)を受けて安全性を確認する
  • 副作用が強い場合は用量を調整してもらう

ダイエットは薬だけで完結するものではありません。生活習慣の見直しと組み合わせることで、リバウンドを防ぎ、健康的な体重減少を維持できます。

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7. 研究エビデンス

  • SURMOUNT-1試験(NEJM, 2022)にてマンジャロ使用群で平均20%近い体重減少が報告。
  • セマグルチドとの直接比較試験(NEJM, 2024)でマンジャロの優位性が確認。
  • メタ解析(PMC, 2023)では5〜15mgで用量依存的な減量効果が示された。
  • 心不全・糖尿病患者を対象とした研究では、心血管リスク低減効果も報告。

ここまでのまとめ

マンジャロ(注射型)は、これまでのGLP-1薬を超える強力な体重減少効果を持ち、肥満治療において新たな可能性を広げています。一方で、吐き気や下痢などの副作用があるほか、胆のうや膵臓への影響も懸念されるため、専門医の管理下での使用が欠かせません。

飲み薬タイプのGLP-1薬は今後の選択肢として有望ですが、現段階ではまだ長期的なデータが不足しています。したがって、現時点で「確実に効果と安全性が示されているのはマンジャロ(注射型)」といえるでしょう。

ダイエット目的であっても、薬はあくまで医療の一部。栄養指導や運動療法とあわせて取り入れることで、より健康的で持続的な減量が実現できます。

8. 飲み薬GLP-1の将来性と今後の展望

注射薬は効果が高い一方、「注射への抵抗感」「針の扱いが不安」といった心理的なハードルがあります。こうした声を受けて、現在複数の製薬企業が「飲み薬タイプのGLP-1薬」の開発を進めています。

8.1 飲み薬のメリット

  • 毎日飲むだけなので簡便
  • 医療機関での注射指導が不要
  • 旅行や外出時にも携帯しやすい

日常生活への取り入れやすさという点では、大きな強みがあります。

8.2 今後の課題

  • 注射型のように持続的で安定した効果を発揮できるか
  • 長期使用の安全性が十分に確認されるか
  • 毎日服用することによる**服薬アドヒアランス(継続性)**の問題

こうした課題がクリアされれば、飲み薬タイプは「マンジャロに次ぐ第二の選択肢」として確立されていくでしょう。

9. マンジャロの長期使用で必要な経過観察

マンジャロは効果が強い反面、長期的に使用する場合は定期的な検査や診察が必要です。特に以下のポイントが重要とされています。

9.1 血液検査

  • 肝機能・腎機能のチェック:代謝や排泄に関わる臓器に負担がないかを確認
  • 膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ):膵炎のリスクを早期に察知
  • 脂質や血糖値:生活習慣病全般の改善度を評価

9.2 画像検査

胆のうや膵臓に異常が出やすいため、必要に応じて腹部エコー検査を行うことがあります。

9.3 体組成測定

体重だけでなく、筋肉量や脂肪量を測定することが推奨されます。急激な減量で筋肉まで落ちてしまうと基礎代謝が下がり、リバウンドのリスクが高まるためです。

10. マンジャロ使用時の注意点

マンジャロを安全に活用するためには、以下の点に気をつける必要があります。

  1. 医師の処方なしに個人輸入や通販で入手しない
    → 偽薬や不適切な用量による健康被害のリスクがあります。
  2. 生活習慣の改善を並行して行う
    → 薬だけに頼るとリバウンドしやすく、筋肉量の低下や代謝低下を招きます。
  3. 副作用が出たら早めに医師へ相談する
    → 軽度の吐き気や下痢は一時的なこともありますが、強い症状や長引く場合は危険信号です。
  4. 長期的な視点を持つ
    → 1年、2年単位で体重管理を考え、薬の中止や切り替えのタイミングも医師と話し合うことが大切です。

11. 患者さんの体験談

実際にマンジャロを使用した人の声を参考にすると、その効果と注意点がより具体的に見えてきます。

  • 40代女性(BMI 32):「1年で15kg減りました。最初は吐き気が辛かったですが、少しずつ体が慣れていきました。今は体が軽くなり、血糖値も正常化しました」
  • 50代男性(糖尿病合併):「注射は最初怖かったけど、ペン型で簡単でした。体重が減ったことで血圧も下がり、薬が減りました」
  • 30代女性:「確かに痩せるけど、外食の時に少量でお腹がいっぱいになるのが逆にストレスでした。使い方は医師とよく相談した方がいいです」

体験談からもわかるように、効果は大きいものの、生活とのバランスや副作用への対応が大切です。

12. 専門家の見解

肥満や糖尿病治療の専門医からは、マンジャロに対して次のような評価がされています。

  • 「従来の薬に比べて減量効果が飛び抜けている
  • 「ただし全ての人に合うわけではなく、医師による適応判断が必須
  • 「長期的な使用では、副作用モニタリングと生活習慣改善のサポートが不可欠」

つまり、マンジャロは「魔法の薬」ではなく、あくまで医療的なサポートの一環として位置づけられています。

13. まとめ ― 注射と飲み薬の未来比較

  • マンジャロ(注射型)
    → 現在もっとも効果と安全性のデータが豊富で、強力な体重減少を実現。副作用管理が鍵。
  • 飲み薬タイプ(開発中)
    → 将来の有力な選択肢。利便性は高いが、まだエビデンス不足。
  • 共通するポイント
    → 食事・運動との併用が必須。医師の管理下で使用すれば大きな成果が期待できる。

参考文献(エビデンス)

  • Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022.
  • Ludvik B, et al. Tirzepatide versus Semaglutide in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2024.
  • Wilding JPH, et al. Long-term efficacy and safety of GLP-1 receptor agonists. Diabetes Obes Metab. 2023.
  • SURMOUNT-1, SURMOUNT-2試験報告(米国FDAデータベース)

結論

皮下注射型のマンジャロは、これまでの肥満治療薬を大きく上回る成果を示しています。飲み薬タイプのGLP-1薬が今後実用化されれば、さらに多くの人が治療を選びやすくなるでしょう。

しかし、どちらを選ぶにせよ「医師の管理下で、安全に、生活改善と併せて使うこと」が最も大切です。マンジャロは「痩せるための魔法」ではなく、健康を取り戻すための一つの強力な選択肢なのです。

参考文献一覧

  1. Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. New England Journal of Medicine. 2022;387:205-216. (SURMOUNT-1試験)
  2. Ludvik B, et al. Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes. New England Journal of Medicine. 2024;390:123-134.
  3. Wilding JPH, Batterham RL, et al. Long-term efficacy and safety of GLP-1 receptor agonists for weight management. Diabetes Obesity and Metabolism. 2023;25(6):1552-1564.
  4. Jendle J, et al. Efficacy and safety of tirzepatide by baseline body mass index: a subgroup analysis of SURPASS clinical trials. Diabetes Obesity and Metabolism. 2023.
  5. Frías JP, et al. Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes (SURPASS-2). New England Journal of Medicine. 2021;385:503-515.
  6. American Diabetes Association (ADA). Standards of Medical Care in Diabetes—2024. Diabetes Care. 2024;47(Suppl.1).
  7. U.S. Food and Drug Administration (FDA). Mounjaro (tirzepatide) Prescribing Information. 2022.
  8. European Medicines Agency (EMA). Assessment report: Mounjaro (tirzepatide). 2022.

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