マンジャロを用いた肥満治療の効果が現れるまでの期間と副作用の傾向

ダイエット

はじめに

近年、肥満治療の新たな選択肢として注目を集めているのが、週1回の皮下注射で使用するマンジャロ(一般名:チルゼパチド)です。この薬は、「GIP」と「GLP‑1」の両方を刺激するデュアルアゴニストという仕組みで、食欲・代謝・血糖など複数の面から体重減少を促す点が特徴です。本稿では、マンジャロを開始してから効果がどのくらいで現れ、どのような副作用が出やすいのか、臨床試験や実臨床のデータをもとに、詳しくかつわかりやすくご紹介します。

1. 効果が現れ始めるまでの期間――段階ごとの目安

1.1 1~2週間:初期の変化

多くの人が、1~2週間程度で食欲が抑えられる感覚を実感することがあります。これはマンジャロが食欲を司るホルモンに早期に働きかけるためで、減量の第一歩として大切な変化です

1.2 4~8週間:体重減少が見え始めるタイミング

臨床研究では、開始から4週目以降、特に8週目前後に“意味のある体重減少”が確認されることが多いと報告されています。一般的には、初期段階で体重の6〜8%減が期待できるとされ、用量によっては12~16週で5%減達成が見込まれます。

1.3 3~6ヶ月:効果が本格化、目を見張る変化

治療開始から3~6ヶ月の間に、10~20%の総体重減少を達成した症例が複数報告されています。また、この期間に最も明らかな効果が現れるポイントとして重要です
たとえば、72週間継続投与したケースでは、5mgで約15%、10mgで約19.5%、15mgでは最大約20.9%の体重減少が確認されています

1.4 長期(1年以上):体重維持やさらなる減量へ

長期データとして、SURMOUNT-1試験では平均22ヶ月で23.1%の最大減少を達成し、最終的に平均19.4%の維持が確認されました。参加者の多く(ほとんど)が元の体重に5%以上戻ることなく維持できています

2. 副作用の傾向とその推移

2.1 初期に多い消化器系の症状

マンジャロの副作用としてもっとも多いのは、吐き気・下痢・便秘・嘔吐・消化不良などの消化器系症状です。
これらは特に服用開始直後や用量を増やした直後に顕著で、徐々に体が慣れることで緩和される傾向にあります

2.2 その他に見られる反応

注射部位の赤みや痛み、倦怠感、食欲低下、腹痛なども報告されていますが、多くは軽度で、一時的に見られるものが主です

2.3 稀な重篤な合併症の報告

非常にまれではありますが、**膵炎、胆石、甲状腺腫瘍(厚生労働省による禁忌多数)**などのリスクが指摘されています。ただし、ヒトでの明確な因果関係は未確定であり、慎重な経過観察が必要です

また、視力障害(視野の損失など)や、甲状腺や心臓・甲状腺機能に関する問題が報告された例もありますが、その因果関係は未確立です

3. 期間ごとの効果とケアのポイントまとめ表

期間主な効果・反応ケアのポイント
1~2週間食欲抑制が始まる水分補給や食事量の調整で胃への負担を軽減する
4~8週間6~8%の体重減少が見られ始める軽い副作用(吐き気・下痢等)への対応と継続意欲の維持
3~6ヶ月10~20%の減量効果が現れることも運動・食習慣の定着、副作用軽減の継続的ケア
1年以上確実な維持、あるいはさらなる減量も可能定期検診、用量調整、ライフスタイルの見直しやモチベーション維持

4. 治療を成功に導くための実践アドバイス

  1. 医師と緊密に連携し、初期用量とスケジュールを守る
    → 一定期間ごとに評価することで効果と副作用のバランスを調整できます。
  2. 消化器系の副作用は、軽度のうちから対処
    → こまめな水分補給、少量頻回食、緩い食事内容、薬の相談などで乗り切る工夫を。
  3. 体重変化に合わせた生活習慣の改善
    → 運動、タンパク質中心の食事、睡眠・ストレス管理で減量をサポート。
  4. 長期的な視野を持つ
    → 1年以上かけてじっくり取り組む姿勢が、持続的な健康体への近道です。

5. 生活習慣との相乗効果

マンジャロは強力な減量効果を持ちますが、薬だけに依存するのではなく、生活習慣との組み合わせが成功の鍵です。

  • 食事:高タンパク・低GI食品を中心とした食習慣は、薬の効果を最大化しリバウンドを防ぎます。
  • 運動:週150分の有酸素運動+週2回の筋トレが、基礎代謝の維持と脂肪燃焼に有効です。
  • 睡眠:睡眠不足は食欲ホルモン(グレリン)を増やすため、7〜9時間の十分な睡眠が必要です。
  • ストレス管理:ストレスは暴飲暴食を引き起こしやすく、瞑想や趣味の時間を持つことがリスク軽減につながります。

薬による効果を「きっかけ」に、健康的な生活習慣を身につけることで、長期的な成功が可能となります。

睡眠

6. 臨床試験からみる効果の詳細

6.1 SURMOUNT-1試験の成果

米国を中心に行われたSURMOUNT-1試験では、肥満あるいは過体重の成人2,539名を対象に、マンジャロを72週間投与した結果が報告されています。

  • 5mg投与群:平均約15%の体重減少
  • 10mg投与群:平均約19.5%の体重減少
  • 15mg投与群:最大で平均20.9%の体重減少

特筆すべきは、従来のGLP-1薬よりも高い減量率が確認された点です。これにより、マンジャロは「薬物治療で達成できる最大級の減量効果」を示す薬剤として注目されています。

6.2 長期維持効果

その後のフォローアップ研究では、3年間継続した群では平均19.4%の体重減少を維持しており、生活習慣改善と組み合わせることで「リバウンドを抑えつつ長期管理が可能」であることが明らかになりました。

7. 患者背景による効果の差

7.1 性別・年齢による違い

  • 男性では筋肉量が多く基礎代謝が高いため、減量率はやや低いがリバウンドも少ない傾向。
  • 女性はホルモンバランスの影響で食欲抑制効果を強く感じる場合が多く、短期的には体重減少が顕著に出ることがあります。
  • 高齢者では筋肉量が落ちやすいため、減量と同時にサルコペニア(筋肉減少症)のリスクが上がるため、栄養と運動の管理が特に重要です。

7.2 合併症を持つ患者

糖尿病合併例では血糖値の改善効果も得られる一方で、低血糖や消化器症状への注意が必要です。心血管疾患リスクのある患者では、体重減少と血圧改善により長期的な予後の改善が期待されています。

8. 副作用のリスクマネジメント

8.1 消化器症状の軽減策

吐き気や下痢などは、少量から始めて徐々に増量することで軽減できる場合があります。また、脂っこい食事を避け、こまめに水分を摂取することで症状が緩和されやすいと報告されています。

8.2 胆石・膵炎リスク

GLP-1薬全般に共通するリスクとして、胆石や膵炎の発症率がやや高まることが知られています。腹部の強い痛みや黄疸などの症状が出た場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

8.3 甲状腺への影響

ラットの実験では甲状腺腫瘍のリスク増加が指摘されており、甲状腺疾患の既往がある人は使用を慎重に判断する必要があります。ヒトにおける明確な因果関係はまだ確立されていませんが、医師による定期的なチェックが推奨されます。

9. リバウンド予防と長期戦略

9.1 中止後の課題

多くの研究で示されているように、マンジャロを中止すると食欲が戻り、数か月で体重が反発しやすい傾向があります。特に1年以内に体重が戻るケースが多く、長期的な体重維持には戦略が欠かせません。

9.2 対策の具体例

  • 食事管理:高たんぱく・低GIの食事で満腹感を維持する
  • 運動習慣:筋力トレーニングを継続し、基礎代謝を落とさない
  • 心理的支援:リバウンドへの不安を軽減するためにカウンセリングやグループ支援を活用する
  • 段階的な減量計画:薬を急にやめるのではなく、医師の指導のもとで徐々に減量する

10. 今後の研究と展望

マンジャロを含むGLP-1系薬は、肥満だけでなく糖尿病や心血管疾患の予防・治療にも大きな役割を果たすと期待されています。さらに、経口薬(飲み薬)の開発も進んでおり、近い将来、より手軽に継続できる治療法が選べるようになるでしょう。

また、レタルトチドのようにGLP-1以外の作用も併せ持つ新薬が開発されており、将来的にはさらに強力で副作用の少ない治療選択肢が登場すると予想されます。

まとめ

  • マンジャロは1~2週間で食欲抑制が始まり、4~8週間で体重減少が目に見えて現れる
  • 3~6か月で10~20%の減量が達成可能で、1年以上の使用で安定的に維持できる。
  • 副作用は主に消化器症状で、胆石や膵炎など重篤なものは稀ながら注意が必要。
  • 中止後はリバウンドリスクが高いため、食事・運動・心理的支援・段階的な減量計画が不可欠。
  • 今後は飲み薬や新しい作用機序の薬が登場し、さらに選択肢が広がる見込み。

マンジャロは「即効性と持続性を兼ね備えた肥満治療薬」ですが、その力を最大限に活かすには、医師の指導のもとで生活習慣と組み合わせ、長期的な戦略を立てることが求められます。

 参考文献(エビデンス)

  • Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. NEJM. 2022.
  • Aronne LJ, et al. Continued Treatment with Tirzepatide for Maintenance. PMC. 2023.
  • Ghusn W, et al. Weight loss outcomes, tolerability, side effects, and risks. ScienceDirect. 2024. 
  • InstantUC: How Long Does Tirzepatide Take to Work?
  • DrOracle.ai: How long does it take for Mounjaro to take effect? 2025.
  • NEJM: Tirzepatide Compared with Semaglutide for Obesity. May 2025.
  • Wikipedia: Tirzepatide summary. Nature Medicine: GLP-1 receptor agonist safety profile.
  • The Guardian: Long-term SURMOUNT-1 three-year results. 
  • JAMA Ophthalmology reviews (vision risks). 
  • Business Insider: rare thyroid-related complications. 

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