マンジャロ皮下注射によるダイエット効果と長期使用の安全性について

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はじめに――「痩せる」から「病気を治す」へ

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、週1回の注射で体重を減らし、血糖や脂質のバランスも改善できる薬です。これまでのダイエット薬と違うのは、「食欲を抑える」+「代謝を助ける」という2つの作用を持つ点です。海外では肥満症治療薬「ゼップバウンド」として承認され、日本でも2025年から肥満症に使えるようになりました。

対象となるのは「高血圧や脂質異常症、糖尿病などを合併している肥満症の方」で、BMIの基準も定められています。つまり、美容目的や自己判断での使用は認められていません。

どんな仕組みで効くのか

マンジャロは、GLP-1GIPという体内ホルモンを同時に刺激します。

  • GLP-1:食欲を抑え、胃の働きをゆっくりにし、血糖を下げる作用があります。
  • GIP:脂肪や代謝に働きかけ、GLP-1と組み合わさることでさらに効果を強めます。

この「二刀流」の仕組みが、従来の薬よりも大きな体重減少を可能にしています。

研究でわかった効果

SURMOUNT-1(NEJM 2022)

肥満や過体重の2,500人以上を対象に72週間投与した研究では、体重が平均15〜21%減少しました。例えば体重100kgの人なら、1年半で15〜21kgの減少に相当します。副作用でやめる人は一部いましたが、多くは吐き気や下痢などの消化器症状でした。

SURMOUNT-3(Nat Med 2023)

食事や運動で少し痩せたあとにマンジャロを使うと、さらに21%の体重減少が得られました。つまり、生活改善と薬を組み合わせるとより効果的です。

SURMOUNT-4(JAMA 2024)

36週間で大きく痩せたあと、薬を続けるグループとやめるグループを比較したところ、

  • 続けた人はさらに体重が減少
  • やめた人は体重が再び増加

という結果でした。「肥満は慢性の病気であり、薬を続けることが治療の一部」だと示しています。

日本での使用ルール

  • 対象者:BMIが27以上で生活習慣病を合併している人、またはBMI35以上の人。
  • 開始用量:2.5mgから始め、4週ごとに少しずつ増やします。通常は10mgまで使い、最大で15mg。
  • 使える場所:専門の医療機関のみ。美容目的や短期のダイエット目的では処方されません。

安全性と副作用

よくある副作用

  • 吐き気、下痢、便秘、嘔吐
    → 多くは使い始めや増量期に出ます。食事量を調整することで軽減できます。

注意が必要な副作用

  • 胆石や胆嚢の病気
  • 膵炎(すいえん)
  • 腎機能の悪化(下痢や嘔吐による脱水が原因となることあり)
  • 甲状腺がんの可能性(動物実験で報告。人での因果関係は不明)

妊娠・避妊について

妊娠中の使用はできません。また胃の働きが遅くなるため、経口避妊薬の効果が下がる可能性があります。開始時や増量後4週間は、他の避妊方法を併用する必要があります。

長く使うとどうなる?

  • 続ければ体重を維持しやすい
  • やめるとリバウンドしやすい
  • 停滞期が来たら、運動や食事内容を見直すことが大切

つまり「薬だけに頼る」のではなく、「生活習慣とセット」で使うのがポイントです。

体重計

使い方の実際

  1. 週1回、同じ曜日に注射する。お腹や太もも、二の腕に打てます。
  2. 打ち忘れても4日以内ならOK。それを超えたら次の予定日に打ちます。
  3. 食事はたんぱく質を多めにし、脂っこいものは控える。水分補給も忘れずに。
  4. 運動は有酸素運動+筋トレを組み合わせる。筋肉量を保つことが大事。

向いている人/向いていない人

  • 向いている人
    BMIの基準を満たし、生活習慣病がある肥満症の方。医師と一緒に生活改善に取り組める人。
  • 向いていない人
    妊娠中・授乳中の人、甲状腺がんや膵炎の既往がある人、重い腎臓病がある人など。

よくある質問

Q1. マンジャロとゼップバウンドは違うの?
→ 成分は同じですが、日本では糖尿病用=マンジャロ、肥満症用=ゼップバウンドと名前が分かれています。

Q2. いつまで続けるの?
→ 基本的に長期継続です。やめると体重は戻りやすいです。

Q3. 筋肉は落ちないの?
→ 急に痩せると筋肉も落ちます。たんぱく質をしっかり摂り、筋トレを取り入れることで防げます。

Q4. ピルを飲んでいますが大丈夫?
→ 胃の働きが遅くなるため効果が落ちる可能性があります。開始や増量後4週間は他の避妊方法を併用してください。

Q5. 誰でも使える?
→ いいえ。医師が診断した「肥満症」の方だけが対象です。美容目的では処方されません。

ここまでのまとめ

マンジャロは「痩せる薬」というよりも「肥満という病気を治療する薬」です。研究では体重の15〜21%減少という大きな効果が示されており、長く続ければ効果も維持できます。ただし副作用やリスクもあり、医師の管理下で安全に使うことが前提です。

肥満は慢性疾患。薬と生活習慣改善を合わせることで、より健康的に体重をコントロールできます。

マンジャロ治療を受けるときの注意点

医師との定期的な面談が大切

マンジャロは「注射して終わり」の薬ではありません。定期的に医師の診察を受け、体重・血圧・血糖・血液検査などをチェックする必要があります。特に、胆嚢や膵臓のトラブルは早期発見が重要です。異常を感じたときは、自己判断せずすぐに医療機関を受診しましょう。

生活習慣を整えることが効果を高める

薬の効果を最大限に活かすためには、食事・運動・睡眠の3本柱が欠かせません。

  • 食事:高たんぱく・低脂質を意識し、糖質も摂りすぎないようにする。
  • 運動:ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加え、筋トレで筋肉を維持する。
  • 睡眠:睡眠不足はホルモンバランスを崩し、食欲を増やしてしまうため要注意。

薬だけに頼らない姿勢が重要

マンジャロは強力なサポートになりますが、「薬があるから安心」と生活をおろそかにするとリバウンドしやすいことが分かっています。薬と同時に生活習慣の改善に取り組むことが、長期的な成功につながります。

費用面について

マンジャロは、糖尿病治療薬としては保険が効きますが、肥満症治療薬としての「ゼップバウンド」は現時点で保険適用外(自由診療)の場合があります。

  • 自己負担額の目安:月数万円〜10万円程度(医療機関によって異なる)
  • 費用を抑える工夫:食事や運動も合わせることで、少ない用量でも効果を出しやすくなる可能性があります。

今後、日本での適応や制度の整備が進めば、費用負担が軽くなる可能性もあります。

長期使用で期待できるメリット

  • 体重の安定化:長期に続けることでリバウンドを防ぎやすくなる。
  • 生活習慣病の改善:血糖、血圧、脂質が整い、合併症リスクを下げる。
  • 生活の質の向上:動きやすくなる、睡眠の質が上がる、自己肯定感が高まる。

これらは「一時的に痩せる」だけでは得られない大きなメリットです。

患者さんの声

  • 40代女性:「食事制限が苦しくて続かなかったけど、マンジャロを始めてから自然に食欲が落ち、無理なく10kg痩せられました。」
  • 50代男性:「高血圧と脂質異常症で通院していたが、体重が15kg減って薬も減らせる可能性が出てきた。」
  • 30代女性:「副作用の吐き気は最初だけ。筋トレを組み合わせたら体型も引き締まってきた。」

今後の展望

マンジャロは、肥満症治療の大きな転換点となっています。今後は以下の点にも期待が寄せられています。

  • 長期的な安全性データの蓄積:何年も使い続けた場合の効果や副作用についてさらに明らかになる。
  • 日本での保険適用の可能性:医療費の負担軽減につながる。
  • 新しい併用療法:他の薬や治療との組み合わせで、さらに高い効果が期待できる。

まとめ

マンジャロは「肥満を根本的に治療する薬」として、世界中で注目されています。

  • 体重の15〜21%減少という強い効果
  • 長く続ければ維持できるが、中止するとリバウンドする可能性
  • 副作用に注意しながら医師の管理下で使う必要性

この3点を理解して、薬だけに頼らず生活習慣を整えることが、健康的で持続的なダイエット成功への鍵です。

参考文献

  • Jastreboff AM, et al. NEJM 2022:マンジャロによる72週の体重減少効果
  • Wadden TA, et al. Nat Med 2023:生活指導後の追加効果
  • Aronne LJ, et al. JAMA 2024:継続投与と中止後の比較
  • FDA「Zepbound」添付文書:安全性・副作用・避妊に関する注意
  • PMDA「チルゼパチド最適使用推進ガイドライン」:日本での使用条件

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