コラム

性病かも…気になる症状と受診の目安

Posted on 2025年 8月 15日

パートナー

性病(性感染症)は、性行為やそれに準じる行為を通じて感染する病気の総称です。クラミジア、淋菌感染症、梅毒、HIV感染症、尖圭コンジローマ、性器ヘルペスなど、種類や症状はさまざまですが、その多くが感染直後には症状が現れない、またはごく軽い症状にとどまるという共通点を持っています。この「無症状期間」こそが性病の厄介な点であり、本人が気づかないうちにパートナーや他者へ感染を広げてしまう原因になっています。

また、症状が軽くても病気が進行すると、男性では前立腺炎や副睾丸炎、女性では卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、不妊や慢性的な痛みの原因となる場合があります。さらに、梅毒やHIVのように放置すると全身の臓器に影響を及ぼし、生命の危険を伴う性感染症も存在します。

近年は若年層だけでなく、50代以上の中高年層でも感染者が増加しており、「若い人の病気」というイメージは過去のものになりつつあります。加えて、海外渡航や国内旅行、婚活・マッチングアプリなど、出会いの多様化によって感染経路はより複雑化しています。

本記事では、代表的な性病の初期症状や潜伏期間、放置によるリスク、そして「この症状があればすぐに受診すべき」という判断基準を、専門家視点でわかりやすく解説します。症状がある人はもちろん、心当たりはあるけれど症状が出ていない人にとっても、早期発見・早期治療のための行動指針になるはずです。

1. 性病の主な症状と潜伏期間

性病の症状は感染した病原体によって異なりますが、特に注意すべき共通サインがあります。

男性でよく見られる症状

・排尿時の痛み・しみる感覚

・尿道からの膿や分泌物

・性器のかゆみや赤み

・陰部や肛門周囲のイボや発疹

女性でよく見られる症状

・おりものの異常(色・量・匂いの変化)

・下腹部痛や性交時痛

・不正出血

・性器や膣周囲のかゆみ・痛み・発疹

全身に現れる症状

・発熱や倦怠感

・全身の発疹(梅毒など)

・リンパ節の腫れ

・関節痛(淋菌感染やクラミジアなど)

潜伏期間の例

・クラミジア:1〜3週間

・淋菌感染症:2〜7日

・梅毒:10〜90日(平均3週間)

・性器ヘルペス:2〜10日

・HIV:2〜6週間で急性期症状、その後無症状期へ

無症状でも感染力はあるため、「症状がない=安全」とは限りません。

2. 放置すると起こるリスク

性感染症は「自然に治るだろう」と放置すると、体の局所だけでなく全身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。初期症状が軽かったり無症状であっても、病原体は体内で着実に増殖・進行し、時には数年後に重篤な合併症として現れることもあります。
特に女性では生殖器系に影響を与えやすく、不妊や妊娠の合併症を引き起こすケースが多く見られます。男性でも、精子の通路に炎症が起きて生殖機能が低下することがあります。

主な放置リスク

女性の合併症

・卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID):卵管が詰まり、不妊や子宮外妊娠の原因に

・慢性骨盤痛:炎症後に持続する下腹部の鈍痛

・妊娠合併症:流産・早産・低出生体重児

男性の合併症

・副睾丸炎や精管炎:発熱や強い陰嚢の痛み

・前立腺炎:排尿障害や射精時の痛み

・精子数や運動率の低下

男女共通のリスク

・梅毒の進行による全身臓器障害(心臓・神経・視覚)

・HIV感染のリスク増大(炎症による感染感受性の上昇)

・慢性感染による免疫低下や体力消耗

母子感染

・妊娠中の感染が胎児に移行し、先天異常や新生児感染症を引き起こす

性病は早期に適切な治療を受ければ回復するケースが多いですが、放置によるダメージは不可逆的になることがあります。特に妊娠を希望する人や免疫力が低下している人は、症状の有無にかかわらず早めの受診が必要です。

3. 受診の目安

性感染症は早期に発見し、治療を始めることで重症化や他者への感染拡大を防げます。「明らかな症状がある場合」はもちろん、「症状がないけれど心当たりがある場合」も受診を検討すべきです。
症状が出てから時間が経つほど、検査や治療が複雑になり、合併症のリスクが高まります。

すぐに受診すべきケース

・排尿時の痛みや灼熱感がある

・尿道や膣からの異常な分泌物(色・量・匂いの変化)

・性器や肛門周囲に発疹・イボ・潰瘍が出た

・発熱、全身の発疹、リンパ節の腫れがある

・性行為後に下腹部痛や不正出血が続く

症状がなくても受診すべきケース

・コンドームを使用しなかった性行為をした

・感染の可能性がある相手と関係を持った

・複数のパートナーとの関係があった

・パートナーから「性病と診断された」と伝えられた

・妊娠中に感染の可能性がある行為をした

性感染症は無症状でも進行するため、「症状が出たら行く」という受診判断では手遅れになることがあります。また、感染の可能性がある時期から検査で正確な結果が出るまでには数日〜数週間の「ウィンドウ期」があります。この期間も医師に相談し、必要に応じて検査スケジュールを立てることが重要です。特に妊婦や免疫力が低下している人は、早期発見が母子や自身の命を守ります。

4. 検査と治療の流れ

性病が疑われる場合、医療機関での診断が必要です。泌尿器科・婦人科・性感染症外来が主な受診先ですが、自治体の保健所で匿名・無料検査を受けられる場合もあります。

検査の種類

・尿検査(クラミジア・淋菌など)

・血液検査(梅毒・HIV・B型肝炎など)

・分泌物・かすの検査(顕微鏡・培養)

・HPV検査(女性は子宮頸がん検診と併用されることも)

治療の基本

・細菌感染(クラミジア・淋菌・梅毒など)は抗菌薬

・ウイルス感染(HIV・ヘルペス・HPVなど)は抗ウイルス薬や対症療法

・治療は最後まで続け、再検査で陰性を確認

・パートナーも同時に検査・治療を受けることが重要

医者

5. 予防のポイント

性感染症は予防できる病気です。しかし、完全に防ぐためには単一の方法では不十分で、複数の予防策を組み合わせることが重要です。予防は「自分を守る」だけでなく、「相手を守る」行為でもあります。

基本的な予防策

コンドームの正しい使用

・膣性交・肛門性交・オーラルセックスすべてに使用

・途中で外さない、使い回さない

定期的な性感染症検査

・年1回以上、パートナーが変わったときも実施

・無症状でも感染を早期に発見できる

必要なワクチン接種

・HPVワクチン(子宮頸がん・陰茎がん予防)

・B型肝炎ワクチン

パートナーとの情報共有

・検査結果や予防の取り組みを共有

・感染が疑われる場合は早めに性行為を控える

リスク行動の回避

・不特定多数との関係を避ける

・性行為時に出血や傷がある場合は接触を控える


性感染症の予防は「知識」と「行動」の両方が揃って初めて効果を発揮します。特にHPVや梅毒、性器ヘルペスのようにコンドームだけでは完全に防げない病気もあるため、ワクチン接種や定期検査と組み合わせることが不可欠です。また、パートナーとの信頼関係を築き、性感染症についてオープンに話せる環境を持つことは、予防効果をさらに高めます。

まとめ

性病は決して特別な人だけがかかる病気ではありません。年齢や性別、生活環境に関係なく、誰にでも感染の可能性があります。特に厄介なのは、多くの性感染症が無症状のまま長期間進行するという事実です。その間も感染力は保持されており、自分だけでなくパートナーや将来の家族、さらには生まれてくる子どもにも影響を及ぼすことがあります。

感染を放置すれば、不妊や慢性疾患、全身の臓器障害、母子感染など、取り返しのつかない結果を招くことがあります。梅毒やHIVのように、進行すると命に関わる性感染症も少なくありません。しかし、ほとんどの性病は早期発見と適切な治療で完治またはコントロールが可能です。だからこそ、「気になる症状があるとき」や「感染の心当たりがあるとき」には迷わず受診することが重要です。

予防のためには、コンドームの正しい使用、定期的な検査、必要なワクチン接種(HPVやB型肝炎など)を習慣化することが不可欠です。そしてもう一つ大切なのは、性感染症に対する偏見や恥ずかしさを減らすこと。これらの感情が、受診や検査の遅れ、さらなる感染拡大を招く大きな要因となっています。

性病は、正しい知識と行動で十分に予防・管理が可能な病気です。不安を感じたら、ためらわずに医療機関や保健所を利用し、必要な検査と治療を受けてください。それが、自分の健康を守るだけでなく、大切な人の未来を守る最も確実な方法です。