トリコモナス症(Trichomoniasis)

トリコモナス症は、腟トリコモナスという「原虫(寄生虫の一種)」による性感染症で、細菌やウイルスとは異なるタイプの感染症です。女性は泡状で悪臭のあるおりものや強いかゆみが出やすく、男性はほとんど症状が出ません。放置すると再感染を繰り返しやすく、妊娠中は早産などのリスクにもつながります。飲み薬でしっかり治療でき、パートナーと一緒に治すことが大切です。

この記事でわかること

  • トリコモナス症の男女別の症状と、気づきにくい無症状のサイン
  • 性行為以外でうつることはあるのか
  • 放置した場合の妊娠への影響や再感染のリスク
  • 検査の方法と、飲み薬による治療の流れ
  • パートナーと一緒に治すことがなぜ大切か

トリコモナス症とは

トリコモナス症とは、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)という原虫が性器に感染して起こる性感染症です。

原因は細菌でもウイルスでもなく、動く小さな原虫(寄生虫の仲間)です。この違いは治療薬の選び方に関わるため、最初に押さえておきたいポイントです。おもに性行為で感染し、男女とも感染します。女性では腟や外陰部に、男性では尿道に炎症を起こします。

幅広い年代でみられ、症状の出ない人も多いため、知らないうちに広がりやすい感染症です。性感染症全体の位置づけは性感染症の種類とその特徴を知ろうもあわせてご覧ください。


トリコモナス症の症状

症状の出方は男女で大きく異なり、女性ははっきりした症状が出やすい一方、男性はほとんど無症状です。潜伏期間はおよそ1〜4週間です。

女性の主な症状

  • 泡状で悪臭のある黄緑色のおりもの
  • 外陰部の強いかゆみ・ヒリヒリした痛み
  • 排尿時や性交渉時の痛み
  • 外陰部の赤み・炎症

症状が出ない女性もいて、気づかないうちに続いていることがあります。

男性の主な症状

  • 多くは無症状
  • 排尿時の軽い違和感・不快感
  • 尿道のかゆみ・少量の分泌物

症状がなくてもパートナーへうつすため、片方に症状があれば男性もあわせて検査を受けてください。

気になる症状があるときの受診の目安は性病かも…気になる症状と受診の目安で解説しています。


感染経路と感染力

感染のほとんどは性行為によるもので、コンドームなしの接触が最大のリスクです。

  • 腟・性器の接触をともなう性行為
  • 感染者の分泌物との接触
  • まれに、濡れたタオル・下着・浴槽など性行為以外での感染の可能性も指摘されています(頻度は高くありません)

トリコモナス原虫は湿った環境でしばらく生き残れるため、他の性感染症と比べると性行為以外での感染がまれに起こりうる点が特徴です。ただし主な経路はあくまで性的接触です。


放置するとどうなる

治療せずに放置すると、症状が長引くだけでなく、妊娠中の方や再感染のリスクに関わります。

  • 妊娠中の感染:早産や低出生体重児との関連が指摘されています
  • 他の性感染症:炎症により、HIVなど他の感染症にかかりやすくなるとの指摘があります
  • 再感染:パートナーが治療していないと、うつし合って何度も繰り返します

性感染症を放置する危険性は性病が不妊につながる?放置の危険性とはもご参照ください。


トリコモナス症の検査方法

検査は分泌物を調べる方法が中心で、症状のない男性でも尿などで調べられます。

対象検体の採り方検査内容
女性腟分泌物顕微鏡検査・培養・PCR(核酸増幅法)
男性尿・尿道分泌物PCR(核酸増幅法)など

当院では、プライバシーに配慮した対応や結果のご連絡方法もご相談いただけます。他の性感染症と症状が似ていることも多いため、気になる場合はまとめて調べると安心です。検査のタイミングは性病の検査方法と受けるタイミングとはをご覧ください。


トリコモナス症の治療方法

トリコモナス症は、原虫に効く飲み薬でしっかり治療できる感染症です。

標準的な治療

  • メトロニダゾールなどの抗原虫薬(飲み薬)で治療します
  • 症状のない側も含め、パートナーも同時に治療します
  • 服用中は医師の指示に従い、飲酒を控えるなどの注意が必要です

薬の種類や飲み方は必ず医師の診察・処方に従ってください。治療後に症状が消えても、再検査で治ったことを確認すると安心です。再発を防ぐ考え方は繰り返す性感染症…再発を防ぐには?でも解説しています。


トリコモナス症の予防

予防の基本は、性行為時のコンドームの使用と、パートナーそろっての検査・治療です。

  • 性行為では最初から最後までコンドームを使う
  • 症状が出たら早めに検査を受け、自己判断で放置しない
  • 再発を繰り返す場合は、パートナー同時治療ができているか見直す

コンドームで防げる範囲と限界はコンドームで防げる性感染症と限界でくわしく解説しています。


よくある質問(FAQ)

Q. 性行為をしていなくても感染しますか?

感染のほとんどは性行為によるものです。原虫は湿った環境でしばらく生き残れるため、まれに濡れたタオルや浴槽などでうつる可能性も指摘されていますが、頻度は高くありません。

Q. 男性は症状がなくても検査したほうがよいですか?

はい。男性は無症状のことが多く、気づかないままパートナーへうつしてしまいます。パートナーが感染していた場合は、症状がなくても検査を受けてください。

Q. 自然に治りますか?

自然に治ることは期待できません。放置すると症状が長引き、再感染を繰り返します。飲み薬で治療できるため、医療機関を受診してください。

Q. パートナーも治療が必要ですか?

必要です。片方だけ治療してもうつし合う「ピンポン感染」で再発します。症状がない側も含めて同時に治療してください。

Q. 妊娠中でも治療できますか?

妊娠中の感染は早産などと関連するため、放置せず主治医に相談してください。使える薬や時期については、産科の医師が状況に合わせて判断します。


まとめ

トリコモナス症は原虫による性感染症で、女性は症状が出やすく、男性はほとんど無症状という特徴があります。飲み薬でしっかり治せる一方、パートナーと一緒に治療しないと再発を繰り返します。おりものの変化やかゆみが気になる方、パートナーが感染した方は、早めに検査を受けてください。ほかの性感染症については性感染症の一覧女性に多い性感染症とリスクの実態もご覧ください。



関連情報(男性・女性の視点)

トリコモナス症は、男性・女性それぞれの視点でも解説しています。あわせてご覧ください。

監修・運営/参考情報

本ページは医療法人社団福美会 ヒロクリニック性感染症検査の編集・監修体制のもとで作成しています。診断・治療は医師の診察に基づいて行われます。編集方針は編集ポリシーをご覧ください。

医師監修 監修日:2025年7月29日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

畠山 聡 (はたやま さとし)

医師・医学博士 ヒロクリニック医師

略歴

  • 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
  • 2016年 育和会記念病院
  • 2019年 大阪鉄道病院
  • 2021年 大阪公立大学附属病院
  • 2022年 大阪鉄道病院医長
  • 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長

資格・所属

  • 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

花澤 司

医師 ヒロクリニック大宮駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

陽川 英仁

医師・医学博士 ヒロクリニック大阪駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

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