C型肝炎(HCV感染症)
C型肝炎(HCV感染症)は、C型肝炎ウイルス(HCV)が主に血液を介して感染する病気で、多くの人が自覚のないまま慢性化し、長い年月をかけて肝硬変や肝がんへ進むことがあります。性行為による感染は比較的まれですが、出血をともなう行為やHIVとの重複感染などでは可能性があります。近年は飲み薬(DAA)でウイルスを排除できるケースが多く、早く見つけて治療につなげることが回復への近道です。
この記事でわかること
- C型肝炎とはどんな病気か、原因ウイルスと日本での位置づけ
- 無症状のまま慢性化しやすい、症状の出方と潜伏期間
- 血液を中心とした感染経路と、性行為による感染のリスク
- 放置した場合に進む肝硬変・肝がんのリスク
- 抗体からHCV-RNAへ進む検査の流れと、飲み薬(DAA)による治療
C型肝炎とは
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓に感染し、炎症が長く続く病気です。
HCVは主に血液を介してうつるウイルスで、感染すると肝臓の細胞に住みつき、じわじわと炎症を起こします。急性期は症状が乏しく、感染に気づかないまま過ごす方が少なくありません。
C型肝炎の大きな特徴は、感染した多くの方で慢性化する点です。自覚のないまま10年、20年という長い時間をかけて、肝硬変や肝がんへ進むことがあります。だからこそ「気づかない病気」として、検査による早期発見が重視されてきました。
かつては輸血や医療行為を通じて感染した方が多くいましたが、現在は献血された血液のスクリーニングが進み、新たな感染は以前より少なくなっています。それでも、過去に感染したまま気づかず過ごしている方がいるため、一度も調べたことがない方の検査が今も呼びかけられています。国の対策の全体像は、厚生労働省の肝炎対策のページで確認できます。
C型肝炎の症状(無症状・慢性化)
C型肝炎は急性期の症状が乏しく、多くの方が無症状のまま慢性化するのが特徴です。
急性期(感染して間もない時期)
- 無症状のことが多い
- 軽い倦怠感・だるさ
- 食欲の低下、みぞおち付近の重さ
- まれに黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
症状が軽いため「疲れかな」と見過ごされやすく、風邪と区別がつきにくいこともあります。
慢性化したあと
- 長い間、自覚症状がほとんどない
- 健康診断の肝機能異常で見つかることがある
- 進行すると疲れやすさ・むくみが出ることも
- 肝硬変・肝がんへ静かに進む場合がある
症状がないことがかえって発見を遅らせます。過去に検査歴がない方は、一度調べておくと安心です。
感染してから急性期の変化が出るまでの潜伏期間は、およそ2週間から数か月とされ、幅があります。症状の有無だけで感染を判断するのは難しいため、心当たりがある場合は血液検査で確かめてください。ほかの性感染症の症状の傾向は性感染症の種類と特徴もあわせてご覧ください。
感染経路と感染力(血液中心・性行為はまれ)
C型肝炎は主に血液を介して感染し、性行為による感染は比較的まれとされています。
- 感染者の血液が直接体内に入る経路(注射器具の共用、消毒が不十分な器具など)
- カミソリ・歯ブラシなど、血液が付きうる日用品の共用
- 出産時の母子感染(頻度は高くありません)
- 性行為による感染はまれですが、出血をともなう行為やHIVとの重複感染では可能性があります
日常生活の触れ合いや食器の共用、せき・くしゃみでうつる病気ではありません。血液に触れる場面を避けることが感染対策の中心になります。血液を介する点はB型肝炎と共通しますが、性行為でうつりやすいB型肝炎とは感染しやすさが異なります。同じく血液が関わるHIVとの重複感染にも注意が必要です。
放置するとどうなる(肝硬変・肝がん)
治療せず放置すると、自覚のないまま肝硬変や肝がんへ進行するおそれがあります。
慢性化したC型肝炎は、肝臓の炎症が長く続くことで少しずつ組織が硬くなっていきます。この状態が進むと肝硬変になり、さらに一部は肝がんへとつながることが知られています。
- 慢性肝炎:炎症が続き、肝臓に負担がかかった状態
- 肝硬変:肝臓が硬く変化し、本来の働きが低下する
- 肝がん:長い経過の末に発生するリスクが高まる
この進行は多くの場合、痛みなどのはっきりした合図がないまま進みます。「症状がないから大丈夫」と考えて放置するほど、発見が遅れやすくなります。だからこそ、感染が分かった段階で医師に相談し、経過を確認していくことが将来の肝臓を守ることにつながります。
C型肝炎の検査方法(抗体→RNA)
検査は血液検査で行い、まずHCV抗体を調べ、陽性ならHCV-RNAで現在の感染を確認する二段階が基本です。
| 検査 | 調べる内容 | 意味 |
| HCV抗体検査 | 過去・現在にHCVへ感染した反応があるか | まず最初に受けるスクリーニング |
| HCV-RNA検査 | ウイルスそのものが体内にいるか | 今も感染しているか(現感染)を確認 |
抗体が陽性でも、過去に感染して今はウイルスがいないケースもあります。そのため、抗体陽性の次にHCV-RNAを調べて、現在の感染かどうかを見きわめます。当院では、プライバシーに配慮した対応や結果のご連絡方法についてもご相談いただけます。検査を受けるタイミングは性病の検査方法と受けるタイミングとはもご参照ください。
こんな方は一度検査を
次のような心当たりがある方は、症状がなくても一度検査を受けておくと安心です。
- これまでにC型肝炎の検査を受けたことがない
- 過去に輸血や大きな手術を受けたことがある
- ピアス・タトゥーなどで器具の衛生状態が不確かだった
- 健康診断で肝機能の数値を指摘されたことがある
C型肝炎の治療方法(DAA)
近年は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)という飲み薬が登場し、多くのケースで高い確率のウイルス排除が期待できるようになりました。
DAAはウイルスの増殖を直接抑えるタイプの内服薬です。以前主流だったインターフェロン治療にくらべて体への負担が小さく、決められた期間の服用でウイルスを排除できる方が多くなっています。「ワクチンはないけれど、飲み薬で治せる時代になった」といえるほど、治療は大きく前進しました。
- 治療の中心はDAA(飲み薬)で、通院しながら内服します
- ウイルスの型や肝臓の状態によって、使う薬や期間が変わります
- 治療後も、経過観察で肝臓の状態を確認していきます
ただし、すべての方が同じ経過をたどるわけではなく、「必ず治る」と言い切れるものではありません。効果や再発の見きわめには専門的な判断が必要です。薬の種類や治療の進め方は、必ず医師の診察・処方に従ってください。C型肝炎の治療に関する詳しい情報は肝炎情報センターでも公開されています。
ウイルスが排除できたあとも、肝臓へのダメージがどこまで進んでいたかによっては、経過観察を続けることがあります。とくに肝硬変に近い状態まで進んでいた場合は、治療後も定期的に肝臓の状態を確認していきます。治すことと同じくらい、治療後の経過を見守ることも大切な段階です。まずは感染の有無を検査で確かめ、その結果をもとに医師と方針を相談することが、安心につながります。
C型肝炎の予防(ワクチンがない点)
C型肝炎にはワクチンがないため、血液に触れる機会を避けることが予防の中心になります。
- カミソリ・歯ブラシ・つめ切りなど、血液が付きうる日用品を共用しない
- ピアスやタトゥーの器具は、消毒・使い捨てが徹底された環境を選ぶ
- 性行為ではコンドームを使い、出血をともなう行為には注意する
- 心当たりがある場合や過去に検査歴がない場合は、一度検査を受ける
ワクチンがあるB型肝炎とは、この点が大きく異なります。なお、性行為後に抗菌薬を内服する予防(ドキシPEP)は細菌が原因の性感染症を対象としたもので、ウイルスであるC型肝炎には効果がありません。予防は「血液に触れない工夫」と「早めの検査」が基本になります。
よくある質問(FAQ)
Q. C型肝炎は性行為でうつりますか?
性行為による感染は比較的まれとされています。ただし、出血をともなう行為やHIVとの重複感染がある場合には、感染の可能性が高まります。血液が関わる場面には注意してください。
Q. 症状がないのに感染していることはありますか?
あります。C型肝炎は無症状のまま慢性化しやすく、健康診断の肝機能異常で初めて気づく方もいます。症状の有無だけで判断せず、血液検査で確かめることが確実です。
Q. C型肝炎は治りますか?
近年はDAAという飲み薬で、多くのケースでウイルスの排除が期待できるようになりました。以前より体への負担も小さくなっています。ただし経過には個人差があるため、治療方針は医師とよく相談してください。
Q. C型肝炎のワクチンはありますか?
現時点でC型肝炎にはワクチンがありません。ワクチンのあるB型肝炎とは異なる点です。血液に触れる機会を避けることと、早めの検査で見つけることが予防につながります。
Q. 家族にうつす心配はありますか?
食器の共用やせき、入浴など、日常の触れ合いでうつる病気ではありません。ただしカミソリや歯ブラシなど血液が付きうる日用品は分けて使ってください。不安がある場合は医師にご相談ください。
まとめ
C型肝炎は、無症状のまま慢性化し、時間をかけて肝硬変や肝がんへ進むことがある病気です。一方で、飲み薬(DAA)の登場により、早く見つけて治療につなげられれば道が開ける病気にもなりました。過去に検査を受けたことがない方や、血液に触れる心当たりがある方は、まず血液検査で確かめてください。ほかの性感染症については、性感染症の一覧や性感染症とは?初期症状と予防法を解説もあわせてご覧ください。
関連情報(男性・女性の視点)
C型肝炎は、男性・女性それぞれの視点でも解説しています。あわせてご覧ください。
- 男性向けの性感染症解説:性感染症(STD・性病)(泌尿器科)
- 妊娠と性病(母子感染):妊娠と性病(婦人科)
監修・運営/参考情報
本ページは医療法人社団福美会 ヒロクリニック性感染症検査の編集・監修体制のもとで作成しています。診断・治療は医師の診察に基づいて行われます。編集方針は編集ポリシーをご覧ください。
略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
畠山 聡 (はたやま さとし)
医師・医学博士 / ヒロクリニック医師
略歴
- 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
- 2016年 育和会記念病院
- 2019年 大阪鉄道病院
- 2021年 大阪公立大学附属病院
- 2022年 大阪鉄道病院医長
- 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長
資格・所属
- 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
医師 / ヒロクリニック大宮駅前院 院長
資格・所属
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
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医師・医学博士 / ヒロクリニック大阪駅前院 院長
資格・所属
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
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