マイコプラズマ感染症(Ureaplasma/Mycoplasma)

マイコプラズマ(マイコプラズマ・ジェニタリウム)やウレアプラズマは、淋菌でもクラミジアでもない尿道炎・子宮頸管炎の原因菌のひとつとして近年注目されている性感染症です。子どもや家庭で流行する「マイコプラズマ肺炎」とは別の菌で、性行為によってうつります。症状は軽く、無症状のことも少なくありません。ただし放置すると、女性では骨盤内炎症性疾患(PID)につながる可能性が指摘されています。気になる症状や心当たりがある方は、早めの検査と、パートナーそろっての対応が回復への近道です。

この記事でわかること

  • 性感染症のマイコプラズマ・ウレアプラズマと、マイコプラズマ肺炎との違い
  • 男女別の症状と、気づきにくい潜伏期間・無症状のサイン
  • 放置した場合に女性で心配される骨盤内炎症性疾患(PID)などの合併症
  • 検査(PCR)の受け方と、実施可否は医療機関へ相談が必要なこと
  • 薬剤耐性に注意した治療と、パートナー同時治療の大切さ

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症とは(肺炎マイコプラズマとの違い)

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症とは、マイコプラズマ・ジェニタリウムやウレアプラズマといった細菌が、性器などの粘膜に感染して起こる性感染症です。

これらの菌はとても小さく、淋菌やクラミジアとは異なる種類の細菌です。感染すると、淋菌でもクラミジアでもない尿道炎や子宮頸管炎(非淋菌性非クラミジア性尿道炎など)を起こすことがあります。検査技術が広まったことで、近年あらためて注目されるようになった原因菌です。

「マイコプラズマ肺炎」とは別の菌です

「マイコプラズマ」と聞くと、子どもや学校・家庭で流行する「マイコプラズマ肺炎」を思い浮かべる方が多いかもしれません。肺炎を起こすのはマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)という別の菌で、主に咳やくしゃみといった飛沫でうつります。

ここで扱う性感染症のマイコプラズマ・ジェニタリウムやウレアプラズマは、菌の種類も感染経路も異なります。名前が似ているため混同されがちですが、別のものと考えてください。この記事で解説するのは、性行為でうつるほうのマイコプラズマ・ウレアプラズマです。

性感染症全般の位置づけについては、厚生労働省の性感染症のページでも情報が公開されています。他の性感染症との違いは、性感染症の種類と特徴もあわせてご覧ください。


マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症の症状

症状は軽いことが多く、無症状のまま気づかない方も少なくないのが特徴です。

男性の主な症状

  • 排尿時の軽い痛みや違和感
  • 尿道のかゆみ・むずむずした感じ
  • さらっとした少量の分泌物
  • 症状が軽く、見過ごされやすい

淋菌のような強い痛みや膿は出にくく、「少し違和感がある」程度で済むことがあります。

女性の主な症状

  • おりものの量や色の変化
  • 軽い下腹部の違和感
  • 性交渉後などの不正出血
  • 無症状のことも多い

はっきりした症状が出にくいため、健診や他の検査のついでに見つかることもあります。

潜伏期間と無症状のサイン

感染してから症状が出るまでの潜伏期は、おおよそ1〜5週間程度とされます。ただし、この間もはっきりした自覚がないことが珍しくありません。症状が軽い、あるいは無症状のまま経過することがあるため、心当たりのある行為があった方は、体調に変化がなくても検査を検討してください。男性で気づきにくいサインについては、男性の性病サインもご参照ください。


感染経路

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、腟・口・肛門を使った性行為による粘膜の接触でうつります。

  • 腟・肛門・口を使った性行為(オーラルセックスを含む)
  • 感染している人の粘膜や分泌物との接触
  • パートナー間でうつし合う「ピンポン感染」

症状が軽い、あるいは無症状のままパートナーへうつしてしまうことがあります。片方だけが治療しても、もう一方が感染したままだと再びうつり合うため、ふたりそろっての対応が欠かせません。クラミジアや淋菌など、他の菌と同時に感染しているケースもあります。それぞれの詳細はクラミジアのページ淋菌感染症のページもご覧ください。


放置するとどうなる(合併症)

症状が軽くても放置すると、炎症が奥へ広がり、女性では骨盤内炎症性疾患(PID)につながる可能性が指摘されています。

  • 女性:子宮頸管から子宮・卵管へ炎症が広がると、骨盤内炎症性疾患(PID)を起こすことがあります。下腹部の痛みや発熱を伴い、将来の妊娠に影響する可能性も指摘されています。
  • 男性:尿道炎が長引いたり、まれに精巣上体炎につながったりすることがあります。
  • 共通:自覚のないまま、パートナーへうつしてしまうことがあります。

「症状が軽いから大丈夫」と自己判断で放置するのは避けてください。症状の有無にかかわらず、菌が残っている限りは体への影響やパートナーへの感染が続きます。性感染症と不妊の関わりは、性病が不妊につながる?放置の危険性とはでくわしく解説しています。


検査方法

検査は核酸増幅検査(PCR)で行いますが、実施の可否や保険適用は医療機関によって異なるため、事前の相談が必要です。

感染部位検体の採り方検査内容
男性性器尿PCR(核酸増幅法)
女性性器腟分泌物・子宮頸部ぬぐい液PCR(核酸増幅法)
のど・肛門ぬぐい液など心当たりがある場合に相談のうえ実施

マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査は、淋菌やクラミジアの検査ほど一般的でない場合があります。取り扱っている菌の種類や、症状の有無による対応は医療機関ごとに違うため、受診前に「マイコプラズマやウレアプラズマの検査を受けたい」と相談しておくと安心です。感染の機会からどのくらいで検査を受けられるかを含め、性病の検査方法と受けるタイミングとはもご参照ください。


治療方法(薬剤耐性への注意)

治療はマクロライド系・テトラサイクリン系・キノロン系などの抗菌薬で行いますが、特にマイコプラズマ・ジェニタリウムは薬剤耐性が増えており、医師の指示に沿った服用が欠かせません。

治療の基本

  • 菌の種類や状態に応じて、抗菌薬を医師が選びます
  • マイコプラズマ・ジェニタリウムは薬が効きにくい耐性が増えており、治療が難しくなる場合があります
  • 自己判断での市販薬や、中途半端な服用は耐性を強めるおそれがあります

治療中・治療後の注意点

  • パートナーも同時に検査・治療を受けます(ピンポン感染の防止)
  • 薬を飲みきるまで、また医師の指示があるまで性行為は控えます
  • 必要に応じて、治療後に治癒を確認する検査を行います

薬剤や用量、服用期間は、症状や菌の状態によって変わります。必ず医師の診察・処方に従ってください。治療全体の流れは性病にかかったら…治療の流れと注意点でくわしく解説しています。専門的な情報は日本性感染症学会のサイトも参考になります。


予防

予防の基本は、性行為時のコンドームの正しい使用と、パートナーそろっての検査・治療です。

  • 腟・肛門・オーラルの性行為で、最初から最後までコンドームを使う
  • 感染がわかったら、パートナーも一緒に検査・治療を受ける
  • 症状がなくても、心当たりがあるときは定期的に検査を受ける

コンドームは有効な予防手段ですが、覆えない部分の接触までは防ぎきれないという限界もあります。だからこそ、不安があるときの早めの検査と、パートナー同時治療が大切です。他の性感染症も含めた予防の全体像は、性感染症の一覧からそれぞれのページをご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 性感染症のマイコプラズマと、マイコプラズマ肺炎は同じですか?

別の菌です。肺炎を起こすのはマイコプラズマ・ニューモニエで、咳やくしゃみなどの飛沫でうつります。性感染症として扱うのはマイコプラズマ・ジェニタリウムやウレアプラズマで、性行為でうつります。名前は似ていますが、原因菌も感染経路も異なります。

Q. 症状がほとんどありません。放置しても大丈夫ですか?

症状が軽くても、菌が残っている限りパートナーへの感染は続きます。女性では放置により骨盤内炎症性疾患(PID)につながる可能性も指摘されています。自然に消えるとは限らないため、検査と、必要に応じた治療を受けてください。

Q. 感染してから、どのくらいで症状が出ますか?

潜伏期はおおよそ1〜5週間程度とされます。ただし、この間もはっきりした自覚がないことが多く、無症状のまま経過する場合もあります。心当たりのある行為があった方は、体調に変化がなくても検査を検討してください。

Q. マイコプラズマやウレアプラズマの検査は、どこでも受けられますか?

検査の実施可否や保険適用は医療機関によって異なります。淋菌やクラミジアの検査ほど一般的でない場合があるため、受診前に「マイコプラズマやウレアプラズマの検査を受けたい」と相談しておくと安心です。

Q. パートナーにも検査や治療は必要ですか?

必要です。片方だけ治療しても、もう一方が感染したままだと再びうつり合う「ピンポン感染」で再発します。パートナーも同時に検査・治療を受けてください。


まとめ

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症は、症状が軽く見過ごされやすい一方で、放置すると女性では骨盤内炎症性疾患(PID)につながる可能性が指摘される性感染症です。子どもや家庭で流行するマイコプラズマ肺炎とは別の菌で、性行為によってうつります。検査はPCRで行いますが、実施の可否は医療機関により異なるため、事前の相談が役立ちます。少しでも気になる症状がある方、パートナーが感染した方は、早めに医療機関へご相談ください。他の性感染症は性感染症の一覧性感染症の種類と特徴もご覧ください。



関連情報(男性・女性の視点)

マイコプラズマ感染症は、男性・女性それぞれの視点でも解説しています。あわせてご覧ください。

監修・運営/参考情報

本ページは医療法人社団福美会 ヒロクリニック性感染症検査の編集・監修体制のもとで作成しています。診断・治療は医師の診察に基づいて行われます。編集方針は編集ポリシーをご覧ください。

医師監修 監修日:2025年7月29日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

畠山 聡 (はたやま さとし)

医師・医学博士 ヒロクリニック医師

略歴

  • 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
  • 2016年 育和会記念病院
  • 2019年 大阪鉄道病院
  • 2021年 大阪公立大学附属病院
  • 2022年 大阪鉄道病院医長
  • 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長

資格・所属

  • 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

花澤 司

医師 ヒロクリニック大宮駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年7月29日

陽川 英仁

医師・医学博士 ヒロクリニック大阪駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

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