コラム

HIV感染を未然に防ぐ予防薬「プレピオン(PrEPion)」の基礎知識

Posted on 2026年 2月 18日

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プレピオン(PrEPion)は、HIVに感染していない方があらかじめ薬を服用し、HIVへの感染リスクを大きく下げる「曝露前予防(PrEP)」の考え方にもとづく予防プログラムです。ただし、正しく続けても予防効果は100%ではありません。仕組みと限界を知ったうえで、コンドームや定期検査と組み合わせて使うことが大切です。

この記事では、プレピオン(PrEP)の基本から、期待できる効果とその限界、相談の対象になる方、服用中に欠かせない検査までを、公的機関の情報にもとづいて整理します。自分と大切なパートナーを守りたいという方が、次の一歩を落ち着いて判断できる内容を目指しました。

この記事でわかること

  • プレピオン(PrEP)がどんな予防法で、何を防ぎ、何を防がないのか
  • 期待できる予防効果と、「100%ではない」といえる理由
  • PrEP(曝露前予防)とPEP(曝露後予防)の違い
  • 相談の対象になる方と、開始前・服用中に必要な検査
  • 当院(平日夜間オンライン診療・専用ダイヤル)で相談する流れ

プレピオン(PrEPion)とは?HIVの曝露前予防という考え方

プレピオンは、HIVにさらされる「前」から薬を飲み、体内であらかじめHIVの増殖を抑える準備をしておく予防法です。英語の Pre-Exposure Prophylaxis(曝露前予防)の頭文字をとって、一般に「PrEP(プレップ)」と呼ばれます。

これまでHIV対策といえば、感染後の治療や、性交渉時のコンドーム使用が中心でした。そこに、薬をあらかじめ飲んでおくという選択肢が加わったかたち。当院ではこの予防の取り組みを「プレピオン(PrEPion)」という名前でご案内しています。

体内に「守りの準備」をしておく仕組み

PrEPでは、抗HIV薬(テノホビル・エムトリシタビンなどの成分)を用います。あらかじめ有効成分を体内に一定量ためておくと、万が一HIVが粘膜や血液から入ってきても、ウイルスが自分のコピーを作って増える過程を強く妨げます。

ウイルスが体内に定着する前に、その働きを先回りして抑えておく。いわば、体の内側に見えない「守りの準備」を整えておくのがPrEPの発想です。ただし具体的な薬剤や用量、飲み方は医師の診察と処方に従ってください。自己判断での購入や服用は避けましょう。

日本国内でも、2024年にHIVの曝露前予防に使える薬が初めて承認され、医療機関で相談しやすい環境が整いつつあります。HIVそのものについては、厚生労働省「HIVとエイズ」の解説もあわせてご覧ください。基本の予防として、まずは性感染症とは何かを知っておくと、PrEPの位置づけも理解しやすくなります。

プレピオンの予防効果はどのくらい?「100%ではない」ことも知る

正しく継続して服用した場合、PrEPは性行為によるHIV感染リスクを大きく下げられます。ただし、その効果は100%ではありません。ここを誤解しないことが、安全に使ううえでの出発点です。

米国政府のHIV情報サイトは、指示どおりに服用した場合、PrEPは性行為によるHIV感染リスクを約99%、注射薬物の使用によるリスクを少なくとも約74%下げると説明しています。数値の出典はHIV.gov(米国政府)です。

感染の経路リスク低減の目安前提となる条件
性行為によるHIV感染約99%指示どおりに継続服用した場合
注射薬物の使用による感染少なくとも約74%指示どおりに継続服用した場合

大切なのは、これらが「毎日きちんと飲み続けた場合」の数値だという点です。飲み忘れが増えて体内の薬の濃度が下がると、予防効果は目に見えて落ちます。効果は100%ではなく、服用の継続が前提。だからこそ、コンドームの併用と定期検査を欠かさないことが土台になります。

当院にご相談に来られる方の中には、「薬さえ飲めば絶対に大丈夫」と思い込んでいた、という方も少なくありません。過信は禁物です。PrEPはリスクを大きく減らす心強い手段ですが、「ゼロにする魔法」ではないと知っておいてください。

PrEP(プレピオン)とPEP(曝露後予防)の違い

「予防の薬」と聞くと事後に飲む薬と混同されがちですが、プレピオン(PrEP)とPEP(ペップ)は目的もタイミングも異なります。まず両者の違いを整理しておきましょう。

項目PrEP(プレピオン/曝露前予防)PEP(曝露後予防)
目的日常的に服用し、感染を防ぐリスクのあった後に服用し、感染を防ぐ
開始タイミングリスクのある行為の前からリスクのあった後、できるだけ早く(一般に72時間以内)
服用の期間リスクが続く期間中の継続一定期間の連続服用(医師の指示による)
位置づけ計画的な予防緊急時の対応

PEPは、避妊の失敗や予期せぬリスクがあった後の「緊急の備え」です。時間との勝負になるため、心当たりがあるときは早めに医療機関へ相談してください。当院では、こうした予防の相談もオンラインで受け付けています。

プレピオンの相談対象になる方・開始前に必要な確認

プレピオンは誰でも自由に飲んでよい薬ではありません。安全に効果を得るために、開始前にいくつかの確認が必要です。まず前提として、服用開始前にHIV陰性であることの確認が必須です。

すでにHIVに感染している状態で予防量を飲むと、ウイルスが薬に耐性を持ち、将来の治療が難しくなる恐れがあります。だからこそ、検査による陰性確認が出発点になります。腎機能やB型肝炎の状況も、開始前に血液検査で確認します。

そのうえで、次のような状況にある方は、医師への相談を考えたいところです。

  • パートナーがHIV陽性で、治療によるウイルス量の管理が十分でない場合
  • 最近、梅毒やクラミジアなど他の性感染症にかかった場合(粘膜の炎症でHIVに感染しやすくなります)
  • 相手の感染状況が把握しづらい関係が続いている場合
  • コンドームを毎回は使えない事情がある場合
  • 仕事や生活のうえで感染リスクの管理が必要な場合

当てはまる項目があっても、あわてる必要はありません。まずは検査で今の状態を知ることから。心当たりのある行為については、性感染症に感染しやすい行為と予防策もあわせて確認しておくと、リスクの整理に役立ちます。

「自分にPrEPが向いているか知りたい」という段階でも大丈夫です。ヒロクリニックの性感染症検査は、平日夜間(18:00〜21:00)のオンライン診療に対応。専用ダイヤルへお気軽にご相談ください。

服用方法と続けるうえでの注意点(副作用・定期検査)

プレピオンの効果を保つ鍵は、体内の薬の濃度を一定に保つことです。飲み方や副作用、続けるうえでの検査について、押さえておきたい点を整理します。

毎日型とオンデマンド型

服用の方法には、毎日決まった時間に飲む方法(デイリー)と、リスクのある行為の前後にのみ飲む方法(オンデマンド)があります。ただし、国内で承認されている使い方や適応には条件があり、誰にでもオンデマンドが適するわけではありません。どちらが向くかは、必ず医師の診察と指示に従ってください。

毎日決まった時間に薬を服用する予防のイメージ

飲み始めに起こりやすい体の反応

飲み始めの数日から数週間に、一部の方で軽い症状が出ることがあります。多くは体が薬に慣れる過程の一時的な反応で、続けるうちに自然に落ち着くことがほとんどです。

  • 消化器の症状:吐き気、軽い腹痛、下痢、食欲の低下
  • 神経系の症状:頭痛、めまい、ふらつき
  • 全身の症状:だるさ、睡眠の質の変化

症状が気になるときも、自己判断で中止せず、まずは医師に相談してください。飲む時間を就寝前にずらすなど、続けやすくする工夫もあります。ごくまれに腎機能や骨密度への影響が指摘されるため、もともと腎臓に持病のある方は、事前に必ず申し出てください。

定期検査は続けるための「絶対条件」

プレピオンを続けるうえで、最も大切なのが定期検査です。おおむね3か月ごとに、次の項目を確認していきます。飲んでいれば安心、ではなく、検査とセットで初めて成り立つ予防だと理解してください。

確認する項目目的
HIV検査服用中に感染していないかを定期的に確認する
他の性感染症の検査梅毒・クラミジア・淋菌などを見逃さない
腎機能などの血液検査体への負担がかかっていないかを確認する

検査でHIV陰性を確認してからでないと始められない、と知って驚かれる方もいらっしゃいます。けれど、この順番こそが安全に予防を続けるための基本。検査の受け方やタイミングは、性病の検査方法と受けるタイミングで詳しく解説しています。PrEPの臨床的な位置づけは、国立健康危機管理研究機構(JIHS)のハンドブックも参考になります。

プレピオンだけでは防げない性感染症とコンドーム・検査の併用

プレピオンが防ぐのはHIVだけです。梅毒・クラミジア・淋菌などの性感染症は、PrEPでは防げません。ここを見落とすと、思わぬ感染につながります。

とくに梅毒は近年大きく増えています。報告数は2014年の約1,700人から、2024年には約14,663人(暫定値)へ。10年で約8倍という増加ぶりです。数字の出典は厚生労働省の性感染症報告数で確認できます。

やっかいなのは、症状が出にくいこと。クラミジアは無症状の割合が女性で7〜8割、男性でも約半数とされ、気づかないうちに広がりやすい感染症です。だからこそ、PrEPを使う方ほど、他の性感染症の検査を定期的に受けることが欠かせません。

コンドームの併用も引き続き大切です。ただし、コンドームにも防ぎきれない範囲があります。詳しくはコンドームで防げる性感染症と限界をご覧ください。症状がなくても油断できない理由は、性感染症は無症状も多い?早期発見の重要性で整理しています。PrEP・コンドーム・定期検査、この3つを重ねることが、いちばん現実的な守り方です。

よくあるご質問(FAQ)

プレピオン(PrEP)について、ご相談でよくいただく質問をまとめました。判断に迷ったときの参考にしてください。

Q1. プレピオン(PrEP)とは何ですか?

HIVに感染していない方が、あらかじめ薬を服用してHIVへの感染リスクを大きく下げる予防法です。英語のPre-Exposure Prophylaxis(曝露前予防)を略してPrEPと呼びます。当院ではこの予防プログラムを「プレピオン(PrEPion)」としてご案内しています。使う薬や飲み方は、医師の診察と処方にもとづきます。

Q2. 効果は100%ですか?

いいえ、100%ではありません。正しく継続して服用した場合、性行為によるHIV感染リスクを大幅に下げられますが、飲み忘れが続くと効果は下がります。海外の公的機関は、指示どおりの服用で性行為によるリスクを約99%下げると説明していますが、これも「継続して飲んだ場合」の数値です。過信せず、コンドームや検査と組み合わせてください。

Q3. 他の性感染症も防げますか?

防げません。プレピオンが対象とするのはHIVだけで、梅毒・クラミジア・淋菌などは予防できません。これらを防ぐには、コンドームの使用と定期的な検査が必要です。PrEPを利用する方ほど、他の性感染症のチェックを習慣にしてください。

Q4. 誰が対象になりますか?

HIV陰性の方が対象です。パートナーがHIV陽性でウイルス量の管理が十分でない、最近ほかの性感染症にかかった、コンドームを毎回は使えない事情がある、といった方は相談を考えたいところです。開始前にHIV陰性の確認と、腎機能などの検査が必要になります。適応は医師が診察のうえで判断します。

Q5. どこで相談できますか?

ヒロクリニックの性感染症検査で相談できます。平日夜間(18:00〜21:00)のオンライン診療に対応しており、専用ダイヤル(0120-16-9629)でも受け付けています。HIV検査・相談ができる公的な窓口は、厚生労働省のHIV検査・相談マップでも探せます。まずは今の状態を検査で確認するところから始めてください。

まとめ:正しく知って、重ねて守る

プレピオン(PrEP)は、HIVへの不安と向き合いながら、自分の健康を主体的に守るための選択肢です。ただし万能ではありません。要点を最後に整理します。

  • 正しく続ければHIV感染リスクを大きく下げられるが、効果は100%ではない
  • HIV以外の性感染症は防げないため、コンドームと定期検査を併用する
  • 開始前のHIV陰性確認と、服用中の定期検査(HIV・腎機能など)が前提
  • 薬や飲み方は自己判断せず、必ず医師の診察と処方に従う

「リスクがあるかも」と感じたときが、自分を守る第一歩です。検査で今の状態を知り、必要なら予防の相談へ。ひとつずつ進めていけば大丈夫です。

HIVの予防や検査について、まずは話だけでも聞いてみたいという方へ。ヒロクリニックの性感染症検査は、平日夜間(18:00〜21:00)のオンライン診療に対応。専用ダイヤルへお気軽にご相談ください。

【監修・運営】ヒロクリニック 性感染症検査(医療法人社団福美会)。本記事は、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構・日本性感染症学会などの公的情報をもとに作成しています。診断や治療の必要性は個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

医師監修 監修日:2026年2月18日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年2月18日

畠山 聡 (はたやま さとし)

医師・医学博士 ヒロクリニック医師

略歴

  • 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
  • 2016年 育和会記念病院
  • 2019年 大阪鉄道病院
  • 2021年 大阪公立大学附属病院
  • 2022年 大阪鉄道病院医長
  • 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長

資格・所属

  • 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年2月18日

花澤 司

医師 ヒロクリニック大宮駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年2月18日

陽川 英仁

医師・医学博士 ヒロクリニック大阪駅前院 院長

資格・所属

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

この記事は、ヒロクリニック性感染症の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。