この記事の概要
AGA(男性型脱毛症)は、日本人男性の約3人に1人が発症するとされる、非常に一般的な進行性の脱毛症です。しかし、「自分の薄毛がAGAなのか、別の原因なのか」を判断するのは専門知識がなければ困難です。
近年では治療法の選択肢が増え、早期の正確な診断がその後の治療効果を大きく左右することが明らかになっています。
本記事では、AGAの診断方法について、最新の研究や臨床ガイドラインに基づいて解説します。
目次
- AGAとは何か?
- AGA診断の重要性
- AGA診断の基本的な流れ
- 主なAGA診断方法の解説
- AGAと他の脱毛症の違い
- AGA診断におけるエビデンスと最新研究
- 診断後に取るべきアクション
- まとめ
- 参考リンク
1. AGAとは何か?
AGA(Androgenetic Alopecia)は、ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンの影響により、毛根(毛包)が萎縮して髪の成長が妨げられる疾患です。以下の特徴があります。
- 思春期以降に徐々に進行
- M字型、O字型など典型的なパターン
- 遺伝的要素が強い(家系に薄毛が多い場合は要注意)
2. AGA診断の重要性
AGAの診断が正確であることは、以下の理由から極めて重要です。
- 治療の方向性を誤らない
- 進行を食い止めるタイミングを逃さない
- 他の病気(円形脱毛症、脂漏性皮膚炎など)との鑑別が必要
3. AGA診断の基本的な流れ
AGAの診断は、一つの検査だけで完結するものではありません。以下の多角的なアプローチで総合的に判断されます。
- 問診(病歴と生活習慣の確認)
- 視診・触診
- 特殊検査(血液検査、トリコグラム、ダーモスコピーなど)
- 必要に応じて頭皮生検
- 診断確定と治療提案
4. 主なAGA診断方法の詳細解説
4-1. 問診
- 脱毛の開始時期、進行パターン
- 家族歴の有無(特に母方の祖父)
- ストレス、睡眠、食生活など生活習慣
- 使用している薬剤(副作用で抜け毛になる薬もあり)
4-2. 視診とノーウッド・ハミルトン分類
頭髪の分布を観察し、ノーウッド・ハミルトン分類(I〜VII)に基づきAGAの進行度を評価します。
💡この分類はAGA診断の国際標準として広く使われています。
4-3. 触診
- 頭皮の硬さ(硬くなっていると血流不良の可能性)
- 赤み・炎症・フケなどの皮膚症状がないかチェック
4-4. 毛髪引っ張り試験(Pull Test)
- 40〜60本程度の髪をつまみ、軽く引く
- 正常な場合は1~2本程度しか抜けない
- AGAや休止期脱毛症では5本以上抜けることがある
4-5. ダーモスコピー(拡大鏡診断)
皮膚科で広く使われている拡大鏡(ダーモスコープ)を用いて、毛包の状態やミニチュア化の有無を確認します。
- ミニチュア化 細く短くなった毛の割合が増えていればAGAの疑いが濃厚
4-6. トリコグラム(毛根分析)
毛根を顕微鏡で観察し、以下を判定します。
- 成長期毛(Anagen hair)の割合
- 休止期毛(Telogen hair)の割合
- AGAでは休止期毛の割合が増加します
📚 研究結果
Liew et al. (2016)によれば、トリコグラムはAGAの診断精度を高める補助的ツールとして有効。
▶︎ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27021642/

4-7. 血液検査
AGAと直接の因果関係はありませんが、以下をチェックすることで他の原因を除外できます。
- テストステロン、DHT(ホルモンバランス)
- 甲状腺ホルモン
- 鉄分(フェリチン)
- ビタミンD
4-8. 頭皮生検(必要時)
極めてまれですが、脱毛症の種類が不明な場合に頭皮の組織を一部採取して顕微鏡分析することがあります。
5. AGAと他の脱毛症の違い
| 脱毛症の種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| AGA | 徐々に進行、M字やO字の脱毛パターン |
| 円形脱毛症 | 急にコイン状に抜ける、自己免疫性疾患 |
| 脂漏性皮膚炎による脱毛 | フケや炎症を伴う |
| 休止期脱毛症 | 急激な抜け毛だが一時的なことが多い |
AGAでない場合、治療法が全く異なるため、診断は極めて重要です。
6. AGA診断におけるエビデンスと最新研究
近年では、AGAの診断精度を高めるための研究も進んでいます。
📘 主な論文
- Trüeb RM. (2005): AGAの毛周期に関する詳細な研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16297194/ - Liew SH, et al. (2016): ダーモスコピーとトリコグラムの有効性
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27021642/
7. 診断後に取るべきアクション
診断結果が「AGA」と確定した場合、治療の選択肢は多岐にわたります。
主な治療法
- 内服薬 フィナステリド、デュタステリド(DHT抑制)
- 外用薬 ミノキシジル(血行促進)
- 注入療法 PRP、幹細胞療法など
- 植毛 FUE法やFUT法など
- 生活習慣改善 ストレス管理、栄養補給、睡眠の質向上
早期治療が成功率を大きく左右します。
8. まとめ
AGAは進行性の疾患であるため、早期発見と正確な診断が何より重要です。
✅ 自己判断せず、必ず医師の診察を受ける
✅ 視診・問診だけでなく、拡大鏡や血液検査で客観的に判断
✅ 他の脱毛症と混同しないための検査が必須
✅ 診断確定後は、医師と相談しながら最適な治療を選択
9. 参考リンク
- Trüeb RM. (2005). The pattern of hair loss in androgenetic alopecia and its histological variants.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16297194/ - Liew SH, et al. (2016). Trichoscopy in the differential diagnosis of hair loss.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27021642/ - 日本皮膚科学会 AGA診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/










