この記事の概要
AGA(男性型脱毛症)は、日本人男性の約3人に1人が経験すると言われる、非常に身近な脱毛症です。現代では、内服薬や外用薬、注入治療、植毛手術など、さまざまなAGA治療法が普及し、進行を遅らせる・発毛を促すといった効果が期待されています。
しかしその一方で、AGA治療には一定の副作用リスクがあることを、多くの方が十分に理解していません。
本記事では、AGA治療を検討している男性に向けて、「治療効果と副作用リスクを正しく理解する」ことを目的に、最新のエビデンスに基づいた情報を詳しく解説します。
目次
1. AGAとは何か?その仕組みをおさらい
AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)は、男性ホルモンの影響によって頭髪が徐々に薄くなる進行性の脱毛症です。
原因物質 ジヒドロテストステロン(DHT)
- テストステロンが5αリダクターゼという酵素によってDHTに変換
- DHTが毛包(毛根)に悪影響を与える
- 成長期の毛が短縮 → 髪が細くなる → 最終的に毛が抜ける
この脱毛症は遺伝的要因が強く、父や祖父に薄毛の人がいると、高い確率でAGAが進行するリスクがあります。
2. 主なAGA治療法とその副作用
AGAの治療には多様な方法がありますが、副作用が報告されているものも少なくありません。
2-1. 内服薬の副作用 フィナステリド・デュタステリド
主な効果
- DHTの生成を抑制し、脱毛の進行を抑える
- 長期服用により、発毛効果も期待される
代表的な副作用
| 副作用 | 説明 |
|---|---|
| 性欲減退 | 性的関心の低下や勃起不全(ED)が1~2%の頻度で報告されています。 |
| 精液量の減少 | 精子の量・濃度が低下することがあり、服用中に見られる一時的な症状。 |
| うつ症状 | 長期服用による神経伝達物質のバランスへの影響が指摘されています。 |
| ポストフィナステリド症候群(PFS) | ごく稀ですが、服用中止後も性機能障害が持続する症例があり、国内外で研究が進められています。 |
📊 参考研究
- Irwig MS (2011):フィナステリド服用後に持続する性機能障害が報告され、PFSとして議論に。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21474994/
2-2. 外用薬(ミノキシジル)の副作用
主な効果
- 血管拡張作用により、毛母細胞へ栄養を届けやすくする
- 発毛・育毛効果が高く、外用薬として市販されている
主な副作用
| 副作用 | 内容 |
|---|---|
| 頭皮のかゆみ・発赤 | アレルギー反応や皮膚刺激によるものが多数 |
| 多毛症 | 額、頬など不要な部分に毛が生えることがある(塗布ミスなど) |
| 動悸・心拍数の増加 | ごく稀に報告。元々高血圧の人は注意が必要 |
📊 参考研究
- Olsen EA, et al. (2002):ミノキシジル5%を使用した男性の約60%が効果を実感
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12004372/

2-3. 注入療法(PRP療法・幹細胞治療)の副作用
- 自身の血液や幹細胞を使う再生医療であり、アレルギーのリスクは極めて低い
- しかし、注射による腫れ・内出血・痛みが一時的に出ることもあります
2-4. 植毛手術の副作用
- 外科的治療のため、手術部位の腫れ・赤み・痛みは一定期間見られます
- 失敗例として、生着率が低く不自然な仕上がりになることもあるため、クリニック選びは重要です
2-5. その他治療法の副作用(低出力レーザー・生活療法)
- LLLT(レーザー治療)にはほとんど副作用はなく、照射時の軽度の熱感や違和感がある程度です
- 食生活の改善やサプリ摂取による副作用は少ないですが、過剰摂取(特に亜鉛やビタミンA)には注意が必要です
3. 副作用への対処法と予防策
AGA治療に伴う副作用は、以下の工夫で大幅に軽減できます。
✅ 医師の診断と処方に従う
- 市販薬や個人輸入品ではなく、AGA専門のクリニックで処方された薬を使用
- 用法・用量を守ることが、副作用予防の第一歩
✅ 早期に異常を感じたらすぐ相談
- 性欲の低下や気分の落ち込みなどがあれば、即座に医師に相談
- 服用を中止せず、医師と相談して調整するのが安全です
✅ 生活習慣を見直す
- ストレス、睡眠不足、栄養バランスの乱れは副作用を悪化させる要因に
- 食事・睡眠・運動・禁煙を意識した生活がAGA治療の味方になります
4. AGA治療の効果と成功率
副作用の懸念はありますが、AGA治療の効果は非常に高く、多くの人が改善を実感しています。

📊 臨床研究データ
- フィナステリド:1年間服用で、約80%が脱毛の進行抑制
→ JAMA Dermatology (2020) より
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2763335 - ミノキシジル:6ヶ月使用で、60〜70%が発毛を実感
→ Journal of the American Academy of Dermatology より
5. AGA治療の注意点と選び方
❗ 長期治療が前提
AGAは「治す」のではなく「進行を止める」治療です。薬の服用を止めると、数ヶ月以内に再び脱毛が進行します。
❗ 個人差に配慮する
副作用も効果も、個人差が大きいため、他人の体験談だけで判断せず、自分の体と相談しながら治療を続けることが大切です。
6. まとめ
AGA治療は、正しく取り組めば高い効果が期待できる治療法です。しかしながら、一定の副作用リスクがあることを理解し、自分に合った方法を選ぶことが何より重要です。
- 内服薬・外用薬の副作用は事前に把握
- 必ず医師の診察を受けてから治療開始
- 生活習慣と併用することで副作用を軽減
AGAに悩むすべての男性にとって、安全で納得のいく治療が見つかることを願っています。
7. 参考エビデンス
- Irwig MS. (2011). Persistent sexual side effects of finasteride: Could they be permanent?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21474994/ - Olsen EA. (2002). Five percent topical minoxidil versus placebo in the treatment of male pattern hair loss.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12004372/ - JAMA Dermatology. (2020). Finasteride in long-term androgenetic alopecia management.
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2763335









