自毛植毛は、AGA(男性型脱毛症)治療において近年ますます注目されている方法であり、特に「自然な仕上がり」や「長期的な効果」を求める人々から高い評価を受けています。薄毛や脱毛に悩む多くの人が内服薬や外用薬から治療をスタートしますが、効果に限界を感じたり、より確実な改善を目指したいと考える段階で「自毛植毛」にたどり着くことがよくあります。自分自身の髪の毛を後頭部や側頭部から採取し、薄毛部分に移植するこの治療法は、拒絶反応の心配がなく、適切に定着すれば半永久的に髪が生え続けるため、多くの患者にとって大きな希望となります。
その自毛植毛には主に「FUT法(ストリップ法)」と「FUE法(切らない植毛)」という2つの代表的な手法が存在し、それぞれに独自の特徴やメリット・デメリットがあります。FUT法は比較的低コストで多くの株を採取できる効率性があり、FUE法は傷跡が目立たず回復も早いという美容面の魅力があります。とはいえ、どちらが優れているという単純な話ではなく、どちらを選ぶべきかは患者の頭皮の状態、求める仕上がり、予算、術後の生活スタイル、そして何よりも「どこまで見た目の自然さや髪型の自由度を重視するか」によって変わってきます。
本記事では、FUT法とFUE法の基本的な仕組みや特徴に加え、それぞれの費用相場、術後の回復、向いている人のタイプなどを徹底的に比較・解説します。植毛を検討している方が後悔のない選択をするために、正しい情報をもとに納得して判断できるよう、わかりやすく丁寧に解説していきます。
1. 植毛の基本と自毛植毛の特徴
植毛とは、薄毛や脱毛が進行した部分に新たな毛髪を移植することで、頭髪のボリュームや密度を回復させる外科的治療の一つです。その中でも特に信頼性が高く、多くの専門医に推奨されているのが「自毛植毛」です。自毛植毛では、自分の後頭部や側頭部といった薄毛の進行が少ない部分から毛包(髪の根元)を採取し、それを薄毛の気になる部分に移植するため、拒絶反応が起きにくく、非常に自然な仕上がりを期待できます。
自毛植毛は、見た目だけでなく「機能性の回復」も重視される治療法です。移植された毛包はしっかりと頭皮に定着すれば、その後は通常の髪の毛と同じように成長し続けるため、特別な手入れや維持費用がほとんど不要になります。これは、薬によるAGA治療では得られにくい「半永久的な効果」があることを意味しています。
治療の流れは比較的シンプルですが、非常に精密な作業を伴います。まずは後頭部や側頭部からドナー毛(移植に使用する毛包)を採取し、それをグラフトと呼ばれる株単位に細かく分けます。1グラフトには1〜4本の毛髪が含まれており、この構成によって移植後の密度や自然さが左右されます。次に、薄毛の部位に細かい切れ目(スリット)を作り、そこにグラフトを一本ずつ丁寧に移植していきます。
術後は一度移植した毛が抜け落ちる「ショックロス」と呼ばれる現象が起こることがありますが、数ヶ月後には新しい髪が生え始め、徐々に自然な密度に近づいていきます。このプロセスを経て、最終的に1年ほどで定着が安定し、見た目の改善がはっきりと現れます。
このように、自毛植毛はAGA治療の最終手段とも言える存在であり、見た目だけでなく精神的な満足感や自信の回復にもつながる、大きな価値を持った医療技術です。
2. FUT法(ストリップ法)の特徴と詳細
FUT法は、後頭部の皮膚を帯状に切り取り、その中から毛包を採取する方法です。採取した部分FUT法(Follicular Unit Transplantation)は、自毛植毛において古くから広く採用されている方法のひとつであり、特に多くの移植株を一度に確保したい人にとって非常に効率の良い手法です。この方法では、後頭部の比較的薄毛の進行が見られにくいエリアから、帯状(ストリップ状)に皮膚ごと切り取り、その中から毛包を抽出します。採取後、切開部分は縫合されるため、線状の傷跡が残ることがあります。
最大のメリットは、短時間で大量の株(グラフト)を採取できる点です。特に広範囲の薄毛に悩む患者にとっては、1回の手術でより多くの髪を移植できるため、施術の回数や期間を最小限に抑えることが可能です。また、皮膚ごと切り取ることで毛包の取り扱いがしやすく、グラフトの質が安定しやすいため、生着率(移植毛が定着して成長する割合)も高い傾向があります。
さらに、FUT法は1株あたりのコストが比較的安価に設定されていることが多く、予算を抑えながらも大規模な治療を望む方に適しています。費用対効果の高さから、国内外の多くのクリニックで今もなお根強い人気を保っています。
しかし、デメリットも明確です。最大の懸念は、後頭部に残る線状の傷跡です。髪を伸ばしていれば隠れることが多いですが、短髪やスポーツ刈りなど、髪を短くカットする人にとっては目立つリスクがあります。また、皮膚を切開して縫合するため、術後にツッパリ感や軽い痛み、不快感がしばらく続くことがあります。回復期間もFUE法に比べてやや長く、通常は術後数週間は安静が推奨されます。
このように、FUT法は効率性とコスト重視の方に最適な方法である一方、見た目やダウンタイムに敏感な方には慎重な判断が求められます。自分の髪型や生活スタイルと照らし合わせながら、FUT法の適否をしっかり検討することが大切です。
3. FUE法(切らない植毛)の特徴と詳細
FUE法は、専用のパンチという器具で毛包を1株ずつくり抜く方法です。メスを使わないため、傷跡は点状になり、肉眼ではほとんど目立ちません。
メリット
- 傷跡が非常に目立ちにくく、短髪やスポーツ刈りでも安心
- 回復が早く、術後の痛みや違和感が少ない
- 採取部位の柔軟性が高く、複数回の手術でも採取可能範囲を確保しやすい
デメリット
- 1株ずつ採取するため、手術時間が長くなる
- 高度な技術が必要で、施術者の腕によって仕上がりが左右されやすい
- 1株あたりの単価が高く、FUTより費用がかかる傾向がある
FUE法は、見た目の自然さや回復の早さを重視する人、傷跡をできるだけ残したくない人に向いています。
4. FUT法とFUE法の比較表
| 項目 | FUT法 | FUE法 |
| 採取方法 | 後頭部を帯状に切り取り採取 | 専用パンチで1株ずつ採取 |
| 傷跡 | 線状(短髪だと目立つ) | 点状(ほとんど目立たない) |
| 手術時間 | 短め(数時間) | 長め(株数によっては1日) |
| 生着率 | 高め | 医師の技術による差が大きい |
| 費用相場 | 60〜200万円程度 | 80〜250万円程度 |
| 向いている人 | 大規模移植、費用重視 | 傷跡を避けたい、自然さ重視 |
5. 自分に合った植毛法を選ぶポイント
- 移植範囲と必要株数
広範囲の場合はFUT法が効率的。部分的ならFUE法でも十分可能。 - 予算
コスト重視ならFUT法、仕上がり重視ならFUE法。 - 髪型の自由度
短髪や坊主頭を希望するならFUE法が有利。 - 手術後の回復期間
早く日常生活に戻りたい場合はFUE法の方が有利。 - 医師の技術力
どちらの方法も、施術者の経験や技術で結果が変わるため、症例数や実績を確認することが重要。

6. 費用の目安と資金計画
FUT法の費用例
- 基本料金+1株あたり1,000〜1,200円
- 1,500株の場合:約150万円前後
FUE法の費用例
- 基本料金+1株あたり1,500〜2,000円
- 1,500株の場合:約220〜300万円
資金計画のコツ
- 医療ローンや分割払いを活用して負担を分散
- モニター割引を利用して費用を抑える
- 無理のない範囲で段階的に移植する
7. まとめ
FUT法とFUE法は、いずれも自毛植毛における代表的な手術方法であり、どちらにも明確なメリットとデメリットが存在します。FUT法は帯状に皮膚を切り取って多くの毛包を一度に採取できる点で非常に効率的であり、広範囲に渡る薄毛の改善やコストパフォーマンスを重視する方には非常に適した手法です。反面、手術後に後頭部に線状の傷跡が残るため、短髪を希望する方には不向きなケースもあります。一方、FUE法は専用のパンチで毛包を1本ずつくり抜くため、メスを使わずに手術が可能で、術後の回復が早く、傷跡も点状で目立ちにくいという大きな利点があります。その分、施術時間が長くなり、費用も高くなる傾向がありますが、見た目の自然さやダウンタイムの短さを優先する方にとっては非常に魅力的な選択肢となります。
また、どちらの方法を選ぶかは、移植範囲の広さや希望する髪型、予算、回復期間など、患者一人ひとりのライフスタイルや価値観によって異なります。そのため、まずは自分の優先順位を明確にし、「どこにお金をかけたいか」「どこまでの変化を求めるのか」といった観点から、冷静に判断することが求められます。そして何より重要なのは、施術を担当する医師の経験と技術力です。同じ手法であっても、医師の腕によって最終的な仕上がりは大きく左右されるため、複数のクリニックでカウンセリングを受け、実績や症例を丁寧に確認した上で信頼できる医師を選びましょう。
自毛植毛は単なる美容医療ではなく、今後の生活や自信にも大きく関わる大きな決断です。だからこそ、時間をかけて情報を集め、自分にとって最も後悔のない選択をすることが大切です。今回ご紹介したFUT法とFUE法の比較を参考に、ぜひ自分にぴったりの植毛法を見つけてください。










