髪の未来を変える小さな道具たち:自毛植毛FUEの進化とロボット技術の今

自毛植毛やFUE技術に関心を持ち、自身の髪の将来について真剣に考えるショートヘアの女性のイメージ。薄毛や頭髪の変化に悩む人々の感情や意識変化を象徴するビジュアル。

この記事の概要

自分の髪を「引っ越し」させるFUE(毛包単位抽出法)は、いまや最先端の薄毛治療として注目されています。そんなFUEを支えているのが、手のひらサイズの器具たち。手動メスから電動パンチ、さらにはロボットまで進化したその道具の物語を、わかりやすく、ちょっと楽しくご紹介します。

髪の未来を支える「FUE」という技術とは?

自毛植毛やFUEの最新技術について資料を読みながら調べ、比較検討している女性のイメージ。薄毛治療や植毛手術に関する正確な情報を得ようとする、意識の高い読者像を象徴。

私たちの髪は、年齢や体質、生活習慣など、さまざまな要因によって少しずつ減っていくことがあります。特に男性の中には「おでこの生え際が後退してきた」「つむじ周辺が薄くなってきた」と悩む人も少なくありません。そんなときに選択肢の一つとなるのが、自毛植毛(じもうしょくもう)という治療法です。

自毛植毛とは、自分自身の頭皮から毛を採取して、薄毛が気になる場所に植え直すという、いわば「髪の引っ越し」術。中でも近年注目されているのが、FUE(Follicular Unit Extraction:毛包単位抽出法)という技術です。

FUEは、髪の生えるもとになる毛包単位(Follicular Unit:FU)を一つずつ丁寧に取り出し、それを移植する方法です。1本ずつ手作業で「引っ越し」するイメージですね。昔ながらの方法では、後頭部の皮膚を帯状に切り取ってその中から毛を採っていましたが、FUEでは皮膚を大きく切らずにすむので、傷跡が目立ちにくいという大きなメリットがあります。

ただし、FUEは高度な技術を要するため、施術を行う医師には非常に繊細な手さばきが求められます。そして、その技術を支えているのが、日進月歩で進化してきた専用器具の数々なのです。

ここからは、FUEを可能にしてきた歴代の器具たちとその魅力について、まるで歴史物語のようにご紹介していきましょう。

自信を取り戻す、最適な植毛

はじまりの道具「手動パンチ」:原点にして王道

FUEによる自毛植毛手術に関して、最新の器具や施術技術について意見を交わす医療従事者のイメージ。安全性や毛包採取の精度向上に向けたチーム医療を象徴するワンシーン。

FUEの歴史の第一歩を飾ったのが、手動パンチ(manual punch)という非常にシンプルな道具です。

これは直径0.7ミリ〜1.0ミリ程度の円筒状のメス(scalpel)で、まるで小さな金属のストローのような形をしています。このパンチを、頭皮に生えている髪の根元にそっとあてがい、手でくるくると回しながら皮膚をくり抜くように使います。すると、毛包単位(FU)を周囲の組織から切り離すことができるのです。

この後、ピンセットのような器具を使ってFUを慎重に引き抜けば、採取完了です。とても原始的な方法ですが、実はこれがFUEの基本。手術道具の進化は、この小さなメスから始まったと言っても過言ではありません。

しかしながら、この方法は医師の腕前によって結果が大きく左右されるため、まさに“職人技”の世界。うまく使いこなせば傷も小さく、毛も元気なまま採取できますが、慣れていないと毛包を傷つけてしまうリスクもあります。

自信を取り戻す、最適な植毛

進化の第一歩「SAFEシステム」:安全・丁寧を極めた三段活用

次に登場したのが、SAFEシステム(The SAFE System)という画期的な技法です。これは、FUEをより安全に、毛を傷つけずに取り出すために考案された三段階の手動プロセスです。

  1. 鋭利な円形パンチを使って、まずは毛包の周囲の皮膚をやさしく切り取ります。
  2. 次に、鈍くて丸いパンチ(blunt punch)を使って、毛包を周囲の組織からゆっくりと緩めていきます。ここでは、毛を無理に引っ張るのではなく、まるで根菜を土から傷つけずに掘り出すようなイメージです。
  3. 最後に、ピンセットでFUをスッと引き抜いて完了!

このようにSAFEシステムでは、力ずくで引き抜くのではなく、やさしく“ふやかす”ように採取することが大きなポイント。結果として、毛包が傷つきにくく、移植後の毛の生え具合も良好になります。

自信を取り戻す、最適な植毛

Powered SafeScribe®:モーターの力で素早く正確に

手作業でのFUEは、丁寧な反面、時間がかかってしまうこともありました。そこで登場したのが、Powered SafeScribe®(パワード・セーフスクライブ)という電動のハイテク器具です。

この装置は、手に持って使う小型のモーター付きデバイスで、パンチ部分が自動で高速回転します。さまざまなサイズのパンチが用意されており、毛の太さや頭皮の状態に応じて選べます。

この装置のメリットは多岐にわたります:

  • 施術時間の大幅短縮:手作業よりも早くFUを採取できる
  • 傷跡がより小さく:正確な操作で皮膚のダメージを最小限に
  • 生着率アップ:毛包を傷つけずに取り出すことで、移植後の成功率が高くなる

つまり、Powered SafeScribe®は、医師の“右腕”となる存在なのです。

自信を取り戻す、最適な植毛

RotoCore:自動回転で切開の深さまで完璧にコントロール

「もう少し自動化できないものか…」と考えた開発者たちが生み出したのが、RotoCore(ロトコア)です。

この装置のすごいところは、パンチが自動で回転するだけでなく、切る“深さ”まで設定できること。あらかじめ医師が理想的な深さを指定しておけば、その通りに皮膚を切開してくれるという、まるで“お料理ロボ”のような精密さです。

これにより、毛包を傷つけずに一定の品質でたくさん採取できるようになり、医師の負担もぐっと減ることになりました。

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Fellerインスツルメント:一つにまとめてスマート化!

FUEには「切って」「緩めて」「引き抜く」という複数の工程が必要ですが、それを一つの器具で完結させようとしたのが、Fellerインスツルメントです。

この装置は、いわば「FUEのオールインワンツール」。効率的に動作し、スピーディかつ正確な操作が可能になります。まるで最新の多機能スマホのように、一台で何役もこなしてしまうのです。

これにより、施術時間の短縮はもちろん、毛包の損傷もさらに抑えることができるようになりました。

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Cole Isolation Technique:毛包の「環境」ごとまるっと採る技術

次に紹介するのは、FUEの中でも特に“毛の未来”を大切に考えた技術、Cole Isolation Technique(コール分離技術)です。別名Follicular Isolation Technique(毛包分離法)とも呼ばれています。

この方法の特徴は、ただ毛包を抜くだけではなく、毛包を取り囲む微小な環境=“毛の家”ごと、やさしく引っ越しさせるという点です。毛包の周囲には、毛を育てるのに必要な血管や支持組織が存在しています。これを壊さずにそのまま移植できれば、定着率がぐっと上がり、自然な生え方が期待できるのです。

この技術には、専用に設計された特殊な器具が使われ、まるで外科手術で“内臓ごと移植”するような丁寧さで、毛の命を守ります。

自信を取り戻す、最適な植毛

NeoGraft:吸引力で素早くスムーズに

次に紹介するのは、まさに近未来感あふれる装置、NeoGraft(ネオグラフト)です。

NeoGraftの最大の特徴は、回転パンチで毛包を切開した後、自動で吸引して毛を吸い上げるという点です。吸い上げた毛包は、専用のトレイに最大50本まで一時保管され、移植の準備が整います。

この仕組みにより、FUの採取が非常にスピーディに行え、作業の流れもスムーズ。まるで掃除機のように「サクサク採取」していく、そんな頼もしいマシンです。

自信を取り戻す、最適な植毛

ARTAS®:ロボットが髪を運ぶ時代へ

最後にご紹介するのは、まさにFUEの未来形ともいえる完全自動化装置、ARTAS® System(アルタス・システム)です。

これはコンピューター制御のロボットアームを搭載した、全自動のFUE装置。アメリカのFDA(食品医薬品局)によって正式に承認された、信頼性の高いマシンです。

ARTASは、以下のような動作を全自動で行います:

  • 毛の位置をコンピューターで解析
  • 小型パンチ(Powered SafeScribe®)で皮膚を切開
  • 空気吸引でFUを吸い上げ
  • 専用トレイに自動収集

これらすべてが、医師がモニターを見ながら調整するだけで進行します。もはやSF映画さながらの世界ですが、現実の診療現場でも活躍中です。

自信を取り戻す、最適な植毛

おわりに:器具の進化が生んだ、髪の最前線

FUEは「毛を一本ずつ丁寧に移す」手術でありながら、その裏では高度な技術と精密な器具が支えています。手作業の時代から電動、そしてロボット制御へと進化してきたその流れは、人の“毛”に対する情熱の結晶とも言えるでしょう。

将来、さらに革新的な器具が登場することで、FUEはより安全に、より美しく、より手軽に進化していくはずです。

薄毛でお悩みの方や、自毛植毛に興味がある方は、ぜひ使用される器具や技術にも目を向けてみてください。それが、あなたの未来の髪を守る第一歩になるかもしれません。

自信を取り戻す、最適な植毛

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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