この記事の概要
近年、無資格の施術者による植毛手術が世界的に問題視されています。価格の安さや「傷跡ゼロ」の宣伝に惹かれて施術を受けた結果、取り返しのつかないトラブルに見舞われるケースも少なくありません。本記事では、信頼できる医師の見分け方や、安全な手術のために知っておくべきことを、医療の専門用語をやさしく解説しながらお届けします。
無資格者による植毛手術に要注意!あなたの頭皮と命を守るために知っておくべきこと

今、密かに深刻な問題が世界中で広がっています。それは、医療資格を持たない無資格の人たちが、植毛手術(hair restoration surgery)を行っているという現実です。しかも、ただの補助作業ではなく、本来なら医師しかできないような高度な医療行為まで手を出しているのです。
この問題に強い警鐘を鳴らしているのが、国際毛髪外科学会(ISHRS:International Society of Hair Restoration Surgery)という、世界中の植毛専門医が所属する信頼ある国際団体です。ISHRSは、患者の安全を守るために「消費者への注意喚起(Consumer Alert)」を公式に発表し、次のように警告しています。
「無資格者による植毛は、患者の健康と手術結果に深刻なリスクをもたらします。」
この記事では、その警告の背景にある真実を、わかりやすく、読みやすく、そして少し面白くお伝えします。読めば読むほど、「ああ、医師選びって本当に大事なんだな」と心から思えるはずです。
植毛って「簡単な処置」だと思っていませんか?実は立派な外科手術です

「最近は針やメスを使わない『低侵襲(ていしんしゅう)』な植毛が流行っているから、簡単で安全でしょ?」
そう思っている方、ちょっと待ってください!
たとえ傷が小さく見えても、植毛はれっきとした外科手術(surgery)です。医師の専門知識と技術が絶対に必要な、れっきとした医療行為なのです。
たとえば、現在主流の植毛方法には以下の2つがあります:
- FUT法(Follicular Unit Transplantation):後頭部の皮膚を細長く切り取り、そこから毛包(もうほう:毛根とその周囲の組織)を採取して移植する方法です。確実に毛を取りやすく、密度も高めやすい一方で、皮膚を切開するため傷跡が残りやすくなります。
- FUE法(Follicular Unit Extraction):頭皮にパンチという小さな器具を使って、1本1本の毛包を丁寧にくり抜く方法です。傷が小さく目立ちにくいのが魅力ですが、手間と時間がかかる技術です。
どちらの方法でも、頭皮に数百〜数千の切開(インシジョン)が行われます。皮膚の中には毛細血管や神経が走っており、切り方を誤れば出血や麻痺、感染などを引き起こす可能性もあります。
また、手術中には局所麻酔(きょくしょますい)が使われます。これは意識を保ったまま痛みを感じさせないための処置ですが、量を間違えると心拍数の異常やショック症状を引き起こすこともあるのです。
こうしたすべての工程には、医学的な知識と臨床判断が不可欠です。
手術のどこまでを無資格者がやってはいけないの?
「無資格者が手術してるって、どこまでの話?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は、手術の前から後までのさまざまな工程で、医師の判断が必要不可欠です。
ISHRSが警告しているのは、以下のような工程を無資格者が担っているケースが多いという事実です:
- 事前の診察・カウンセリング(preoperative evaluation)
→ 脱毛の原因を見極めるには、医学的な知識が必要です。ホルモンの異常?ストレス?免疫疾患?原因を間違えれば、そもそも手術すべきかどうかさえ判断できません。 - 手術計画の立案と実行(surgical planning & execution)
→ 髪の生え方、顔のバランス、ドナーの状態などを総合的に見て、自然なヘアラインを作るのはまさに“職人技”。しかもそこには医療知識と美的感覚の両方が求められます。 - ドナー部の採取(donor harvesting)と受容部の作成(recipient site creation)
→ 誤って重要な血管や神経を傷つけたら大変。無資格者では危険が伴います。 - 術後の合併症対応(complication management)
→ 傷が化膿した、発熱が続く、などの異常にどう対応するか?医療知識のない人では、ただ「様子を見ましょう」と言うだけになりかねません。
国によって法律は異なりますが、ISHRSは「手術における切開や切除を伴う行為は、必ずライセンスを持つ医療従事者が行うべき」と強く主張しています。
なぜ無資格者に任せると危険なのか?
無資格者が植毛手術を行うと、以下のような命にも関わる重大なリスクが潜んでいます:
- 誤診の危険
たとえば、実は甲状腺機能の異常や自己免疫疾患が原因で脱毛しているのに、それに気づかず安易に植毛をすすめてしまう可能性があります。適切な治療を受けないまま進行すれば、健康そのものが損なわれます。 - 不要または危険な施術の実施
脱毛症のタイプによっては、そもそも植毛が向かない場合もあります(例:活動性の脱毛症、炎症性の脱毛など)。にもかかわらず、知識がない人が手術を行えば、結果は悲惨です。 - 感染・出血・麻酔事故などの医療トラブル
しかも、何か異常が起きたとき、すぐに適切な処置を取れるとは限りません。
ISHRSの会員医師の元には、こうした無資格手術による「修正手術」を希望する患者が後を絶ちません。
近年急増する「修正希望」の患者たち
最近のトレンドとして、ISHRS所属の医師に対して次のような訴えをする患者が増えています:
これらの例はすべて、医療的な知識と技術が不足していたがために起こった人災といえるでしょう。
「傷跡ゼロ手術」なんて存在しない?誇大広告に惑わされないで!
「FUE法なら傷が一切残りません!」「最新ロボットで完全自動化!」「ノーダウンタイムで翌日から仕事OK!」
このような広告、見たことありませんか?
実は、ISHRSはこうした誇大広告や虚偽表現に対しても強く懸念を示しています。
まずは知っておいてほしいこと:
- 皮膚にどんなに小さな切開を加えても、体の修復反応によって瘢痕(はんこん=傷跡)は必ずできます。
- 「傷が目立たない」ことと、「傷が一切ない」はまったく別物です。
- そして現在の医療技術では、すべてをロボットが自動で安全・完璧に行うことは不可能です。あくまでロボットは医師の補助ツールに過ぎません。
あなたの頭皮は、広告のキャッチコピーを試す場所ではありません。冷静な判断を持ちましょう。
信頼できる医師の探し方と、賢い患者になるために
ここまで読んで、「じゃあ、どうすれば安心して植毛を受けられるの?」と思った方に、ISHRSは次のようなアドバイスを送っています。
- 実際に施術を行う医師が誰かを確認する
- その医師の資格・経験・症例写真を見る
- ISHRSなどの専門学会に所属しているかどうかをチェックする
さらに、ISHRSでは「Find a Physician」サービスを通じて、世界中の信頼できる植毛医を紹介しています。電話での問い合わせも可能です(+1-630-262-5399)。
あなた自身が最強の守り手です
大切なのは、あなたが自分自身の健康のために正しい選択をすることです。
- 安さだけで決めない
- ネットの口コミだけを鵜呑みにしない
- どんなに魅力的な広告でも、裏付けのある医師かどうかを見極める
あなたの髪と命を守れるのは、あなた自身です。
どうか、自分にとって本当に安全で信頼できる選択をしてください。そして、植毛という医療行為を正しく理解し、賢く、慎重に、未来の自分のために一歩を踏み出していただければと思います。







