この記事の概要
最近SNSや広告でよく見かける「格安で自然な仕上がりの海外植毛」。でも、その裏に“医師免許を持たない無資格者”が行う危険な手術が潜んでいるとしたら…?本記事では、世界最大の毛髪外科学会ISHRSが警鐘を鳴らす「ブラックマーケット型植毛」の実態と、安全なクリニック選びのポイントを詳しく解説します。あなたの大切な髪と人生を守るため、今こそ「知識」が必要です。
ISHRSが世界へ警鐘を鳴らす:「ブラックマーケット植毛」の危険とは?

最近、インターネットやSNSを見ていると、次のような魅力的な広告を目にすることがありませんか?
「海外で格安植毛!自然な仕上がりを保証」
「5,000株の大ボリューム移植で理想のヘアラインへ」
「観光ついでに最新の植毛手術が受けられる!」
まるで魔法のようなキャッチコピー。価格は日本よりずっと安く、症例写真はどれも完璧。口コミも高評価ばかりで、「この価格でこれだけ綺麗になるなら、やってみたいかも……」と思ってしまうのも無理はありません。
ですが、ちょっと立ち止まって、想像してみてください。
もしその広告の裏に、「医師免許を持たない人物が行う違法な手術」が潜んでいたとしたら?
もし手術の結果が、髪が生えるどころか、傷跡と後悔だけを残すものだったら?
実は今、世界中でこうした「ブラックマーケット型植毛クリニック」が横行しており、深刻な被害を受けている人が後を絶ちません。
しかも、問題なのはその見分けにくさです。彼らは本格的なウェブサイトを用意し、Google広告を活用して検索上位に表示され、まるで医療機関のように装っています。InstagramやTikTokなどでキラキラした投稿を展開し、「プロフェッショナルなチームが責任を持って施術します」と謳っています。
ですがその実態はというと、なんとタクシー運転手やシリアからの難民など、医療の訓練を一切受けていない無資格者が手術を担当しているケースすら存在しているのです。
「まさか自分が…」その日、希望は地獄に変わった

ブラックマーケット型クリニックで植毛手術を受けた人の中には、「髪が生えて人生が変わるはずだったのに…」と、深い後悔とともに日常を過ごしている人が数多くいます。
例えば――
- 前髪の生え際が直線になり、まるでカツラのような不自然な仕上がりに
- 髪の向きがバラバラで、ブローしてもまとまらない
- 後頭部(ドナー部位)を過剰に採取され、そこがハゲてしまった
- 感染症を起こして頭皮が腫れ、膿が出た
- 高額な費用を支払ったのに、実際には約束の半分の本数しか移植されていなかった
中には、外見の問題だけでなく、外に出られない、人と話せない、という深刻な精神的ショックを抱えてしまう人もいます。
「安かったから」「みんながやってるから」と軽く決断した結果、一生取り返しのつかないダメージを背負ってしまうかもしれない――それが、このブラックマーケット型植毛の真の恐ろしさなのです。
ISHRSが立ち上がった理由
こうした被害を少しでも減らすため、世界最大の毛髪治療・植毛専門の学会である国際毛髪外科学会(ISHRS:International Society of Hair Restoration Surgery)は、世界規模の患者啓発キャンペーン(Patient Awareness Campaign)を立ち上げました。
ISHRSは、医療的・倫理的に正しい植毛を提供することを目的とした専門医師の団体であり、世界中の信頼できる植毛専門医が所属しています。今回のキャンペーンでは、薄毛に悩むすべての人々に「安全な選択のための知識と判断基準」を届けることを目指しています。
この記事では、ISHRSが何を警告しようとしているのか、そして私たちがどうすれば安全な植毛クリニックを選べるのかを、ストーリー形式でわかりやすくお伝えしていきます。
あなた自身や、あなたの大切な人が将来、後悔しないために。
この情報が、きっと役に立つはずです。
髪の悩みにつけ込む「ブラックマーケット型植毛クリニック」とは?
髪の毛が薄くなると、人前に出るのが恥ずかしくなったり、自信をなくしてしまったりする人も少なくありません。そんな気持ちにつけ込んでくるのが、ブラックマーケット型の植毛クリニックです。
この言葉、少し物騒に聞こえるかもしれませんね。でも、実際に起きていることはそれ以上に深刻です。ブラックマーケット型クリニックとは、医師の資格を持っていない人物が、患者に植毛手術を行っている違法な施設のこと。外見は立派な病院のように見えても、実態はまったくの別物です。
例えば、ある海外の国では、タクシー運転手やシリアからの難民が植毛手術を行っているという報告すらあるのです。聞いた瞬間「まさか」と思いますが、これが現実。
彼らは医療の専門知識や手術の訓練を受けていないにもかかわらず、Google広告(リスティング広告)やSNSで美しく見える写真や口コミを使って「プロっぽさ」を演出しています。
「レビューも星5つばかりだし、安くて結果も良さそう」と思ってしまうのも無理はありません。でも、その手術を受けたあとに、傷跡だらけになったり、髪の生える方向がバラバラになったり、不自然な生え際にショックを受けたりする人が後を絶たないのです。
ISHRSによる実態調査:失敗症例が「毎年6件以上」あるという現実
ISHRSが世界中の会員医師に対して行った調査によると、なんと77.5%の医師が毎年6件以上の“修正手術”を行っているという結果が出ています。この「修正手術」とは、ブラックマーケットで受けた失敗植毛の後始末のことです。
中には、「傷跡がひどくて帽子なしでは外を歩けない」「生え際がまるで不自然な直線になっていて、かえって恥ずかしい」など、心のダメージも大きいケースもあるといいます。
また、「実際には半分の本数しか移植されていなかった」「写真の症例とは全く違う結果だった」など、数や成果の“詐称”も多く報告されています。特に、FUE法(毛包単位抽出法)という人気の技術では、ドナー部位(髪の毛を採取する後頭部など)を過剰に使われてしまい、そこがハゲてしまった、という被害が続出しているのです。
ソーシャルメディアで「希望」が「罠」になる
いまや情報の中心はインターネット。InstagramやTikTokで成功体験をシェアする人が増え、それを見て「私もやってみようかな」と思う人も多いでしょう。
しかし、この便利さが裏目に出ることもあります。ISHRSは「ソーシャルメディアこそ、詐欺的なクリニックが最も活用している場」であると指摘しています。広告用の写真や動画、偽レビューなどを巧みに使い、まるで一流の医師が施術する高級クリニックのように見せかけるのです。
ところが、いざ現地に行ってみると、実際に現れたのは医師ではなく、資格のない作業員。言葉も通じず、医療設備も不十分、術後のケアも一切ない——そんな事例が後を絶ちません。
ISHRSの取り組み:信頼できる情報源をあなたの手に
こうした背景を受けて、ISHRSは世界規模で「患者啓発キャンペーン(Patient Awareness Campaign)」を展開しています。
その中心は、患者と医師が実際のトラブル体験を共有し、注意喚起すること。そして、ISHRSの公式ウェブサイト(www.ISHRS.org)では、「ブラックマーケット植毛に注意(Beware of the Hair Transplant Black Market)」という特設ページを用意。
そこでは次のような情報が紹介されています:
- 医師の本当の資格や経歴をどうやって確認するか
- 植毛手術で起こりうるトラブルの症例写真と詳細な解説
- 信頼できるクリニックを選ぶためのチェックリスト
まさに「防災マニュアル」のような内容です。
海外で植毛する人が急増…でも、その選択、安全ですか?
最近では、「医療ツーリズム」として、韓国、トルコ、タイなどで植毛を受ける人も増えています。費用が日本よりも安く、観光とセットで施術を受けられる魅力があるからです。
ですが、ここにも落とし穴があります。国によっては、医療の法律が甘く、「医療従事者でなくても手術できてしまう」ようなところもあるのです。さらに、もし問題が起きても、現地での再手術や補償は期待できません。
ISHRSが行った調査では、63.27%の医師が「ブラックマーケット植毛の問題を深刻(10点中8〜10点)だと評価」しています。それほど、世界中の医師が危機感を抱いているのです。
ISHRSが勧める「安全なクリニック選び」5つのポイント
ISHRSは、植毛を希望するすべての人に、次のような確認をするよう強く呼びかけています。
- 実際に手術をする医師の名前と資格を事前に確認すること
- ISHRSの公式サイトで、医師が登録認定されているかをチェック
- 「医師が手術を行う」と明記されている契約書を交わすこと
- 可能であれば、第三者の観察者を同席させる許可を求めること
- あまりにも安すぎる価格に注意し、疑問を感じたらすぐ調べること
もし観察者の同席が断られた場合、そのクリニックは透明性がない、あるいは医師が関与していない可能性が高いと言えるでしょう。
最後に:後悔しないために「知識という武器」を持とう
ISHRS会長のタイコシンスキー医師は、次のように語っています:
「植毛手術を考えているすべての方に、まず正しい知識を身につけてほしい。知っていれば、防げる被害がたくさんある。ブラックマーケットクリニックの巧妙な罠にかからないために、“知識”という最強の防御を持ってください」
髪の悩みは、決して恥ずかしいことではありません。それに向き合おうとするあなたの気持ちは、決して間違っていません。だからこそ、あなたの大切な髪、そして人生を預ける場所は、しっかりと見極めて選んでください。
「安い」「簡単」「確実」という言葉の裏に、本当にあなたの未来を守ってくれる場所はあるのか?
まずはISHRSの公式サイト(www.ISHRS.org)を訪れ、信頼できる情報に触れてみてください。知ることこそ、最良の選択につながる第一歩です。







