この記事の概要
FUE(毛包単位抽出法)による植毛を検討し始めたとき、多すぎる情報に混乱していませんか?「ロボットFUE」や「自動FUE」など、聞き慣れない用語に不安を感じる方も多いでしょう。この記事では、世界中で実際に使用されている代表的な4つのFUE手法をわかりやすく解説し、それぞれの特徴やメリット・注意点を比較します。あなたにとって「後悔しない植毛選び」のための第一歩として、信頼できる医師との出会いのヒントも紹介します。
あなたにとって「最高のFUE(毛包単位抽出法)」とは?迷わないための完全ガイド

植毛について調べ始めたとき、インターネットの海に漂う情報の多さに、思わず目を回しそうになったことはありませんか?とくに「FUE」と呼ばれる手術法については、ロボットを使うとか、切らない方法があるとか、キラキラした宝石を使っているとか、いろいろな宣伝が目につきます。
どの方法も「これが一番だ!」と謳っていますが、実はその多くがちょっと誤解を招くような言い回しだったり、単なる宣伝文句であることも少なくないのです。
そこで今回は、FUEの中でも「ドナー採取(後頭部などから毛を取り出す)」という工程に焦点を当てて、実際のところどんな方法があって、何を基準に選べばよいのかを、専門用語もわかりやすく噛み砕いてご紹介します。
FUEってそもそも何?基礎のキソからわかりやすく解説!

「FUE」とは、「Follicular Unit Excision(毛包単位抽出法)」の略で、文字どおり、頭皮から毛の生えている単位(毛包:follicular unit)を1つ1つ丁寧に取り出す方法です。
ここでいう「毛包」とは、簡単に言うと「毛が生えてくる根っこの集合体」のこと。一本の毛のように見えて、実はそこには毛母細胞や皮脂腺、血管などがまとまって存在しており、それが1つのユニット(単位)として機能しているのです。
FUEはこの毛包をピンセットのような器具や専用パンチを使って1個ずつくりぬいていく技術です。かつて主流だった「FUT法(帯状に皮膚を切り取って毛を採取する手術)」と違い、頭皮に大きな傷を残さずに済むことから、より自然な仕上がりやダウンタイムの短さが評価されています。
ただし、「どのように毛包を取り出すか」に関してはさまざまな方法があり、選択によっては、仕上がりの自然さ、傷跡の目立ちにくさ、さらには毛の生着率(毛がきちんと生えそろうかどうか)にも影響します。
世界中のクリニックが取り入れている4つのFUE手法とは?
世界中のクリニックがこぞって「うちだけの独自手法!」と謳うFUE。しかし実のところ、そのほとんどは以下の4つの手法のどれかに該当します。
- 手動FUE(Manual FUE)
- 手持ちモーターFUE(Handheld Motorized FUE)
- ロボットFUE(Robotic FUE)
- 「自動FUE(Automated FUE)」と呼ばれるもの(注意点あり)
この4つの手法について、具体的に見ていきましょう。
手の感覚で丁寧に採る「手動FUE(Manual FUE)」
まず最初は、もっともシンプルで原始的な手法である手動FUEです。
これは、パンチと呼ばれる丸い刃のついた器具を、指で持ってくるくると回しながら頭皮に押し当てて、毛包をくり抜いていくという方法です。パンチはペンのような形状をしていて、直径は1ミリ前後と非常に小さいのですが、この中に毛包をくるっと包み込んで取り出します。
この手法は、FUEが開発された当初からある伝統的な方式で、当時は「バイオプシーパンチ(biopsy punch)」と呼ばれる皮膚検査用の器具が改造されて使われていました。現在よりもずっと大きく不器用な器具だったため、傷跡が目立ちやすかったのですが、その後、より小型で精密なパンチが登場し、手動FUEも高精度化してきました。
この方法は「手の感覚」に頼る分、熟練の医師による施術であれば非常に丁寧で美しい仕上がりが期待できます。ただし作業スピードは遅く、施術者の集中力と体力が問われるため、最近ではやや少数派となっています。
電動の力でスピーディーに!「手持ちモーターFUE(Handheld Motorized FUE)」
次に紹介するのは、現在もっとも多くのクリニックで採用されている主流の方法、「手持ちモーターFUE」です。
これは、パンチを手で回す代わりに、小型の電動モーターの先端に取り付けて、電力で高速回転させながら毛包を切除していく方法です。見た目は小型ドリルのようですが、中身は繊細で医療専用の高精度マシン。患者一人ひとりの頭皮の硬さや毛の向き、太さなどに合わせて細かく設定ができるのが特徴です。
モーターには簡易的なタイプから、タッチパネル式で細かな調整が可能な高性能タイプまで、さまざまなモデルがあります。パンチの直径や素材も複数から選べるため、「自分にぴったり合う設定」で施術できるのが大きなメリットです。
ただし、最終的に毛包(グラフト)をピンセットで引き抜く作業は手作業になるため、モーターがどれだけ高性能でも、施術者の経験と手技の正確さが仕上がりを左右します。
ロボットの時代到来!?「ロボットFUE(Robotic FUE)」
ここ数年で登場したハイテク技術が、このロボットFUEです。なんと、毛包の切除をロボットアームが自動で行うのです。
代表的なのが「ARTAS(アータス)」というロボットで、事前にスキャンした頭皮の情報に基づいて、最適な角度と深さで毛包を切除してくれます。
ただしここで注意が必要です。ロボットが行うのは「切除」までであり、実際に毛包を取り出すのは、やはり人間の手によるピンセット作業なのです。つまり、「ロボットがすべてやってくれる!」というわけではありません。
しかも、ロボット操作には専門の知識と経験が必要で、毛の生え方や角度、頭皮の柔らかさに応じて、リアルタイムで微調整を行うのは医師の役目。まるでF1マシンのように、優れたマシンも優秀なドライバーがいてこそ真価を発揮する、というイメージに近いでしょう。
名前に注意!「自動FUE(Automated FUE)」という誤解
最後に紹介するのは、ちょっと曲者な存在。それが「自動FUE(Automated FUE)」と呼ばれるものです。
名前だけ見ると、「ボタンを押せばすべて機械がやってくれる」ように思えてしまいますが、実際にはそんな機械は存在しません!この「自動」という言葉はマーケティング的に使われているだけで、あくまでも「補助的にモーターや吸引装置を使っている」というレベルです。
この手法では、モーター付きパンチで毛包を切除し、空気圧(エアサクション)や、冷やした保存液を循環させる方式(ウェットサクション)で毛包を吸引して採取します。
グラフトはそのままチューブを通って保存容器に運ばれますが、ここでもやはり、「どこからどれくらい採るか」という判断力、過剰採取を避ける感覚、毛包の取り扱いの丁寧さなど、すべて施術者の腕次第です。
「最高の方法」は人によって違う!本当に大切なポイントとは?
ここまで読んで、「結局どのFUEが一番いいの?」と思われるかもしれません。でも実は、「これが万人にとって最良!」というFUE法は存在しないのです。
なぜなら、毛の太さ、密度、生え方、頭皮の硬さ、癖毛か直毛か……こういった個々の体質や髪質に合わせて最適な方法は変わるからです。
それに、どんなに優れたマシンや手法を使っていても、最終的に「どのように毛を配置するか」「自然に見えるか」を決めるのは医師の技術とセンスです。
FUEはあくまで「毛を採取する方法」なので、それだけで見た目が美しくなるわけではありません。むしろ、「どの毛をどこに植えるか」「自然な前髪のラインをどう描くか」など、美的な判断と繊細な技術が問われるのです。
まとめ:自分に合ったFUEを選ぶには、まず医師選びから!
最終的に大切なのは、自分の希望をしっかり聞いてくれる医師と出会うことです。
どの医師も自分にとってベストな手法や機器を持っていますが、それがあなたにとってもベストであるとは限りません。だからこそ、「症例写真を見せてもらう」「納得するまで相談する」「使っている機器について説明してもらう」ことがとても大事です。
もし信頼できる医師を探したい場合は、国際毛髪外科学会(ISHRS:International Society of Hair Restoration Surgery)の公式サイトにある「Find a Doctor」機能を活用するのもおすすめです。
あなたの未来の髪型が、満足のいくものでありますように――。知識を味方につけて、納得できる選択をしていきましょう。







