「FUEは本当に傷が残らない?」やさしく解説!自毛植毛の真実と誤解

頭頂部とこめかみに手を当てて薄毛を気にする男性。FUE手術を検討中の患者像として、髪の減少に不安を抱える様子を表現

この記事の概要

「傷跡ゼロの自毛植毛って本当?」SNSや広告でよく見るこのキャッチコピー。でも、現実はどうなのでしょうか?本記事では、FUE(毛包単位切除法)という最先端の植毛技術について、中学生でも理解できるようにやさしく解説します。医学的な仕組みからメリット・注意点、FUTとの違い、そして「本当に傷は残らないのか?」という核心まで、わかりやすくお伝えします。あなたが安心して自毛植毛を選べるように、正しい知識を一緒に学びましょう。

FUEは本当に「傷が残らない」?その真実をやさしく解き明かします

前髪を横に流し、生え際の頭皮を指で優しく触れて確認する男性。SMP(スカルプ・マイクロピグメンテーション)による自然な生え際再現を検討中の様子を連想させる場面。

最近、SNSや雑誌、ウェブ広告などで「傷跡ゼロの自毛植毛」というキャッチコピーを目にしたことはありませんか?InstagramやFacebookには、まるで魔法のように髪の毛がよみがえり、しかも「傷跡が一切残らない」とうたう宣伝がたくさん並んでいます。しかし、本当にそんなことが可能なのでしょうか?

この記事では、「FUE(毛包単位切除法)」と呼ばれる現代的な自毛植毛技術について、中学生でもわかるようにやさしく丁寧に解説します。わかりにくい医学用語や手術の仕組みも、日常的な言葉でかみくだいてご説明しますので、どうぞリラックスして読み進めてください。

自信を取り戻す、最適な植毛

そもそも自毛植毛ってどんな仕組み?

強い日差しを手で遮る女性。黒く艶のある髪と白い肌のコントラストは、日本人特有の太く色素の濃い直毛の特徴を示す印象的なビジュアル。

「自毛植毛(じもうしょくもう)」とは、自分自身の髪の毛を、薄くなった部分に植え直すというシンプルかつ効果的な薄毛治療法です。例えば、後頭部のようにしっかり髪が残っている場所から健康な毛を取り、それを前頭部や頭頂部など薄くなったところに移植します。

でもここで一つ大切なことがあります。

髪の毛は、自分の体からしか採取できないのです。

「友達や家族の髪を分けてもらえばいいんじゃない?」と思った方、それはちょっと無理なんです。というのも、髪の毛の根元には「毛包(もうほう)」という小さな組織があり、これは自分の体にとって“異物”と認識されると、拒絶反応(免疫反応)が起こってしまいます。

これは、腎臓や心臓などの臓器移植と同じ理屈。違う人の毛包を使ってしまうと、身体が「これは自分のものじゃない!」と反応して、せっかく移植しても抜けてしまいます。さらに、拒絶反応を抑える薬(免疫抑制剤)を一生飲み続けなければならなくなるかもしれません。

そんな大ごとにならないよう、自毛植毛では必ず自分自身の髪の毛を使うのが原則です。

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FUEとFUT:自毛植毛には2つの方法がある

自毛植毛には主に2つの手術法があります。ひとつは「FUT(Follicular Unit Transplantation)」と呼ばれる方法、そしてもうひとつが「FUE(Follicular Unit Excision)」という新しい方法です。名前だけ聞くと難しく感じますが、順番に見ていきましょう。

FUT(ストリップ法)とは?

FUTは、「ストリップ法」とも呼ばれます。これは、後頭部の皮膚を帯状(ストリップ状)に切り取って、その中にある毛包をまとめて取り出すという方法です。少し昔ながらのやり方で、今でも多くの専門医が使っています。

メリットとしては、一度にたくさんの毛包を採取できるため、広範囲に髪を増やしたい人には適しているという点があります。ただし、デメリットも明確です。それは……

一本の長い「線状の傷跡」が、後頭部に残るということ。

この傷は髪がある程度長ければ隠すことができますが、短髪にすると見える場合があります。また、手術後はしばらく頭を動かさないように注意する必要があります。

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FUE(毛包単位切除法)とは?

一方、FUEは「毛包単位切除法」という方法です。こちらはFUTとは違い、後頭部の皮膚を切り取るのではなく、髪の毛を1本ずつ、極小の丸い器具でくり抜くように採取する手法です。

FUEに使われる器具は「パンチ」と呼ばれ、その直径はわずか0.6〜1.0mm程度。まるでえんぴつの芯のように細いのです。この小さな穴から毛包を1本ずつ採り出していくため、FUTのような線状の傷跡は残りません。

そのため、FUEは「傷跡が目立たない」「短髪でもOK」として人気を集めているのです。

……でも、本当に「傷跡ゼロ」なのでしょうか?

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FUEにも傷跡は残る、ただし見え方が違うだけ

実はここが一番大切なポイントです。FUEは「線状の傷」ができないだけで、小さな点状の傷がたくさんできるのです。これは、1つの毛包を採るたびに1つの小さな穴ができるからです。

たとえば1000本の髪を採取した場合、1000個の小さな傷跡ができるという計算になります。ただし、それぞれの傷が小さく、しかも無作為に広がっているため、人の目にはパターンとして認識されにくいのです。

これは、私たち人間の目が「規則性(pattern)」に敏感であることと関係しています。FUTのように一本の線がずばっと通っていると目に留まりやすいのですが、FUEのように「点々と広がる不規則な傷」は、意外と気づかれにくいのです。

そのため、「FUE=傷跡なし」と誤解されることもあるのです。

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FUEの限界と注意点:万能ではない

FUEにも弱点はあります。まず、一度に採れる毛包の数には限界があるという点。傷が目立ちにくい分、たくさん採取しすぎるとドナー部の密度がスカスカになり、不自然になってしまうのです。

また、1つの場所から集中して採りすぎると、「空白地帯(void)」と呼ばれる髪の抜けた範囲ができてしまい、それが逆に目立つこともあります。これは、パンチのサイズが大きすぎたり、隣同士の毛包を同時に採ったりした場合によく起こります。

さらに重要なのは、「傷跡の数と面積」です。同じ数の毛包を採った場合、実はFUEの方がFUTよりも傷の総面積が大きくなることもあるのです。なぜなら、FUEは「点の集合体」、FUTは「線1本」だからです。

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FUEとFUTの併用という選択肢

進行した薄毛の場合や、将来的に複数回の手術を考えている方には、FUEとFUTを併用するという高度な選択肢もあります。

たとえば、最初にFUTである程度の毛包を採取し、その後にFUEで補強する、という戦略を取ることで、それぞれの技術の短所を補い合いながら最大限の効果を狙うことができます。

このような判断は専門医でなければ難しく、経験豊富な医師にしかできない判断です。

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実は一番大事なのは「医師の技術力と美的センス」

さて、ここまで読んで「じゃあFUEにしようかな」と思った方、ちょっと待ってください。FUEは手術の中でも特に医師の経験と技術が問われる方法です。

どこから、どのくらいの間隔で毛包を採取するのか?どのくらいの範囲に分散させるべきか?こうした「ドナー管理」がしっかりできていないと、後頭部の見た目が不自然になってしまうこともあります。

実際、安易なクリニックでのFUEによって、ドナー部がボロボロになり、今後の施術ができなくなる例もあります。これは「ドナーデプリション(donor depletion)」と呼ばれ、取り返しがつかないケースもあるのです。

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信頼できるクリニックを選ぶには?

自毛植毛を考えているなら、必ず経験豊富で信頼できる医師が在籍するクリニックを選びましょう。広告の「傷跡ゼロ」や「驚きの価格」に惑わされてはいけません。

国際的な医師団体であるISHRS(International Society of Hair Restoration Surgery)=国際毛髪再生外科学会では、世界中の信頼できる医師を紹介しています。自毛植毛は一生に関わる選択です。焦らず、しっかりと情報を集め、納得してから行動しましょう。

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まとめ:FUEは「傷が目立ちにくい」手術。でも「傷が残らない」わけではない。

FUEは、確かに見た目に優れた自毛植毛技術です。特に短髪でも目立ちにくく、ナチュラルな仕上がりになるため、多くの方に支持されています。

ですが、「FUEなら傷が残らない」という宣伝文句は誤解を招きかねません。本当は、小さな傷がたくさんあるけれど、それが見えにくい形で分散されているというのが正確な表現です。

そしてその仕上がりは、医師の技術とセンスに大きく左右されます。あなたの頭皮と未来の髪の運命をゆだねる以上、じっくりと時間をかけて、信頼できるクリニックと出会いましょう。

自毛植毛は、人生を前向きに変える力を持っています。正しい知識を持ち、賢く美しく、自分の選択に誇りを持てるような第一歩を踏み出してください。

自信を取り戻す、最適な植毛

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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