世界の毛髪医療が集結!ISHRS国際会議レポート──植毛手術・再生医療・SMPの最前線とは?

この記事の概要

2019年、タイ・バンコクで開催された国際毛髪外科学会(ISHRS)の世界会議には、世界中から1000人を超える毛髪専門医が集結しました。毛髪再生医療、植毛技術、幹細胞研究、頭皮マイクロピグメンテーション(SMP)など、最先端のトピックが語られた本会議を、わかりやすく解説します。

ISHRS世界会議がタイ・バンコクで開催──毛髪医療の最前線を世界中の医師たちが共有

ISHRS世界会議の開催地であるタイ・バンコクを象徴する金色の寺院の風景。国際的な毛髪外科学会が東南アジアで開催された歴史的背景を象徴する印象的な文化的イメージ。

2019年11月、タイの首都バンコクで、世界の毛髪再生医療の第一線を走る医師たちが一堂に会する壮大な国際会議が開催されました。その名も「ISHRS第27回世界会議および世界ライブ外科技術ワークショップ(World Live Surgery Workshop)」。このイベントは、毛髪再生医療における世界的権威である国際毛髪外科学会(ISHRS: International Society of Hair Restoration Surgery)によって主催されました。

ISHRSは、世界中の毛髪専門医が所属する、いわば「毛髪治療のオリンピック委員会」のような存在です。この学会が年に一度開く国際会議では、毛髪移植に関する最新の医療技術、研究成果、未来へのビジョンが惜しみなく共有されます。今回の開催地は、東南アジア屈指の大都市バンコク。会場はシャングリ・ラ バンコクホテルと、チュラロンコン記念病院という2つの名門施設が使われ、非常に格調高い雰囲気の中で行われました。

この5日間の会期中、なんと約1,000人の医師や医療スタッフが世界各地から参加しました。参加者の顔ぶれは、欧米のベテラン医師からアジアの若手ドクターまで多彩。彼らは、最新の毛髪医療技術を学び、自身の知識とスキルを磨くために集結したのです。

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ACCMEの「称賛付き認定」──世界最高レベルの教育プログラム

カラフルな車が行き交うタイ・バンコク市内のにぎやかな通りの様子。ISHRS世界会議の開催地であるバンコクの活気ある都市文化を象徴する光景で、東京など他都市とは異なる明るい配色の車が印象的。

この国際会議の価値は、ただの情報交換会にとどまりません。主催するISHRSは、米国の「継続医学教育認定評議会(ACCME: Accreditation Council for Continuing Medical Education)」より、最高評価である「称賛付き認定(Accreditation with Commendation)」を受けている教育機関です。これは「世界でもっとも教育的価値の高い医療学会のひとつ」と認定された証です。

この認定が示すように、ISHRSの会議はただの展示会やセミナーではありません。医師たちが本気で学び、現場に活かせる「教育の場」なのです。

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“Triple Crown”──3大技術を一度に体験できる夢のワークショップ

今回の世界会議で最も注目を集めたプログラムが、「Triple Crown(トリプルクラウン)」と呼ばれるライブ外科技術ワークショップです。Triple Crownとは、毛髪移植の現場で現在もっとも重要とされている3つの手術技術を、一度に学べる夢のようなプログラムです。

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FUT(Follicular Unit Transplantation:毛包単位移植術)

これは、後頭部などから皮膚を帯状に切り取り、その中にある「毛包(もうほう)」と呼ばれる毛の根元の構造を顕微鏡で分離して移植する技法です。毛包とは、毛根を取り囲む組織で、そこにある細胞が髪の毛を作り出します。FUTは毛包の損傷が少なく、生着率(=移植が成功する割合)も高いため、長年にわたり多くの医師に支持されてきました。

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FUE(Follicular Unit Excision:毛包単位切除法)

FUEは、FUTとは異なり、皮膚を帯状に切らずに、専用の小さなパンチ型の器具で毛包を1本ずつ丁寧にくり抜いて採取する方法です。頭皮への負担が少なく、手術跡が目立ちにくいため、近年はFUEを希望する患者さんも増えています。

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SMP(Scalp Micropigmentation:頭皮マイクロピグメンテーション)

SMPは、手術ではなくアートメイクのような技術です。専用の針と色素インクを使って、頭皮に非常に小さな点を打ち、髪が生えているような「視覚的な錯覚(錯視)」をつくり出す技術です。剃り込んだ短髪のような見た目を再現したり、薄くなった部分を自然にカバーしたりすることができます。手術と組み合わせることで、より自然な仕上がりが実現できるため、美容外科でも人気の補助技術です。

この3つの技術が、実際の手術室でリアルタイムに実演され、ライブ中継で別室の講義会場に映し出されました。医師たちは、術者の手元の動きや、患者さんへの配慮、使われている器具まで、細部をじっくり観察しながら学ぶことができたのです。

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世界の権威が登壇──知識の祭典をさらに豊かに彩る

この会議のプログラムを監修したのは、アメリカ・ニューヨークで活躍するロビン・アンガー医師(Dr. Robin Unger)。彼女は次のように語っています。

「毛髪外科がここまで飛躍的に進歩したのは、専門知識と訓練を積んだ医師たちが、確かな技術で結果を出してきたからです。今回の会議では、あらゆるレベルの医師が本物の学びを得られる場になりました」

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登壇した講師陣も、まさに世界の第一人者ばかりです。

  • トーマス・L・ドーソン博士(Dr. Thomas L. Dawson Jr./シンガポール)
     毛髪の健康を保つためのライフスタイルや製品選びについて、科学的な視点から講演。
  • ラモン・グリマルト医師(Dr. Ramon Grimalt/スペイン)
     男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)の内服・外用薬による管理方法、そしてPRP療法(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)についての最新報告。
  • クォン・オサン博士(Dr. Ohsang Kwon/韓国)
     毛包を他人から移植するという、かつて夢物語とされた「同種毛髪移植(Allogeneic Hair Transplantation)」の最前線を紹介。
  • ジャネット・ネルソン氏(Janet L. Nelson, MS, ACSM/米国)
     長時間の手術に従事する医師が抱える「筋骨格系障害(Musculoskeletal Disorders)」の原因や予防法を分かりやすく解説。
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未来の毛髪治療を形づくる、注目の研究と技術

この会議では、以下のような未来志向のテーマも多数取り上げられました。毛髪治療の世界がどこまで進んでいるのか、一般の方でもワクワクするような内容です。

他人の髪を自分の頭に?──同種毛髪移植の可能性

従来、髪の毛の移植は「自分の髪を別の場所に植える」のが基本でした。しかし、そもそも移植する髪が残っていない人にとっては、それすら不可能です。そこで注目されているのが「同種毛髪移植」。つまり、他人の髪を自分の頭に移植するという夢のような技術です。

最大の課題は、拒絶反応を防ぐための免疫抑制剤。これが副作用も強く、実用化の壁となってきました。しかし、最近のマウス実験では、特定の条件下でこの問題をクリアできる可能性が見えてきています。

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着色で髪を描く?──SMPが創る“見せる植毛”

先ほど紹介したSMP(頭皮マイクロピグメンテーション)は、もはや「アート」とも言える精緻な技術です。手術に不安を感じる人や、部分的にボリュームを演出したい人にとって、外科手術と並ぶ新たな選択肢になっています。

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幹細胞で髪が生える?──再生医療の新たな地平線

「幹細胞(Stem Cell)」とは、さまざまな細胞に変化できる、体の“設計図”のような存在です。近年では、この幹細胞を使って毛髪を再生させる試みが進んでいます。まだ実用化には時間がかかるものの、薄毛治療の未来を担う切り札となる可能性が高いと期待されています。

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シャンプーや食事は髪に影響する?

「髪に良い」とされるシャンプーや栄養サプリ、食べ物は本当に効果があるのでしょうか? 本会議では、科学的データに基づいた正しい知識が提供され、消費者が正しく商品を選ぶための指針が共有されました。

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おわりに──毛髪医療は今、革新の時代へ

ISHRSが開催したこの世界会議は、単なる技術発表会ではなく、医療者たちが“共に学び、成長し、未来をつくる”場でした。毛髪医療は今、かつての“美容”の枠を超えて、本格的な“医療”の領域へと進化しています。

薄毛や脱毛に悩むすべての人に対して、より多くの選択肢と、より安全で効果的な治療法を届けるために──世界中の医師たちの挑戦は、今日も続いています。

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記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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