植毛と移植された毛根の生着率について|成功率を高める医療技術と術後ケアのすべて

医者

植毛は「髪を増やす」だけでなく、「どれだけ自然に、確実に生えるか」が重要です。その成否を大きく左右するのが、移植された毛根の生着率(定着率)。いくら手術自体が成功しても、生着率が低ければ意味がありません。本記事では、生着率の仕組みや成功率を高めるための最新技術、術後における注意点などを医療的かつ実用的な視点から徹底解説します。これから植毛を検討している方はもちろん、術後のケアに不安がある方にも役立つ内容です。

1. 生着率とは?|定義と重要性

植毛手術における「生着率」とは、移植された毛包(毛根)が頭皮に定着し、その後も正常に毛髪を生み出し続ける割合のことを指します。
一般的には、「術後1年時点でどれだけの移植毛が残っているか」によって判断されます。

● 生着率がなぜ重要なのか?

  • 見た目の密度と自然さに直結する
  • 定着しなければ追加手術が必要になる可能性もある
  • 費用対効果に大きく影響する

たとえば3000グラフト移植したのに、1500しか生着しなければ生着率50%。同じ費用を支払っても半分しか成果を得られないという事態になりかねません。

2. 生着率に影響を与える5つの要因

生着率は医師の技術力だけでなく、患者自身の体質や術後の行動にも大きく左右されます。主な影響因子は以下の5つです。

① グラフトの取り扱い

毛包は非常に繊細な組織です。採取や保管中に損傷を受ければ、生着できない可能性が高まります。

② 植え込み角度と深さ

生え際に対して自然な角度適切な深さ移植されないと、血流が行き届かず脱落しやすくなります。

③ 移植から再灌流(血流再開)までの時間

採取された毛包が血流から遮断されている時間が長いほど、壊死のリスクが高まります。

④ 頭皮の状態(血行・皮脂・炎症)

皮膚のコンディションが悪ければ、毛包が定着する土壌として不適切になります。

⑤ 術後のセルフケア

術後の洗髪、枕の使い方、飲酒喫煙、頭皮への刺激などが生着を妨げる要因となります。

3. 術式別に見る平均生着率の違い

術式によっても、生着率に差が生じることがあります。以下は代表的な術式とその平均的な生着率です。

術式平均生着率特徴
FUT法(切開法)約85〜95%大量採取可能/術者の技術に依存
FUE法(切らない植毛約90〜95%傷跡が少ないが手間がかかる
DHI法(直接植毛約95〜98%移植時間が短く、定着率が高い傾向

特にDHI法は、採取から移植までの時間が短いため、生着率が高いと報告されています(ただし費用は高くなる傾向)。

4. 生着率を高める最新医療技術

近年では、生着率を向上させるための様々な補助技術や機器が導入されています。

● 低温保管液(HypoThermosol®など)の使用

移植前の毛包を専用保存液に浸けることで、酸化ストレスや壊死を抑制し、高生着率を維持。

● インプランター(Choiペン)による直接植毛

毛包を保持したままダイレクトに植え込むことで、乾燥やダメージのリスクを軽減

● PRP療法(多血小板血漿)併用

自身の血液から得た成長因子を頭皮に注入することで、毛包の活性化と血流促進を図る

● LED光線療法

低出力レーザーで血流促進・細胞活性化を促し、毛包の生着をサポート。

これらの技術を併用することで、生着率は平均90%超えが可能になってきています。

5. 術後の生着率を左右するセルフケアとは?

植毛手術後の過ごし方によっても、生着率は大きく変わります。特に1週間〜1ヶ月の過ごし方が重要です。

● 術後1週間の注意事項

  • 患部をこすらない・洗わない(指先ではなくシャワーで流す)
  • うつ伏せ禁止/仰向けで寝る
  • 激しい運動や飲酒・喫煙を避ける(血流障害防止)

● 術後1ヶ月間のセルフケア

  • 保湿ローションや医師指定の外用薬を正しく使用
  • 抜け毛(ショックロス)は一時的なものと理解し、慌てない
  • 帽子の着用やUV対策を徹底
日焼け対策

正しいセルフケアを行うことで、植毛の生着率を10〜15%向上させることも可能とされています。

6. 定着不良の兆候とその対処法

生着に失敗した場合、早期に兆候を見分けて対応することが重要です。

● 定着不良のサイン

  • 2〜3ヶ月経過後も一部だけ全く毛が生えてこない
  • 炎症やかさぶたが長期間続く
  • 頭皮に凸凹や陥没が見られる

● 対処方法

  • 成長因子注射(PRP/エクソソーム)の追加施術
  • 医師による状態確認と局所治療の実施
  • 症状が限定的な場合は、リタッチ的な再植毛も検討されます

これらを早期に行うことで、長期的な失敗を防ぐことができます。

7. まとめ|生着率こそが植毛の真の成功指標

いくら高額な手術を受けても、生着率が低ければ効果は一時的または限定的になってしまいます。
しかし、逆に高い生着率を維持できれば、一生ものの価値を持つ髪を取り戻すことが可能です。

植毛手術を受ける際は、

  • 術式の選択と医師の技術力の確認
  • 生着率を高める医療機器・補助技術の有無
  • 術後ケアのサポート体制と指導内容

を総合的に検討し、“見た目の変化”と“長期的な効果”を両立できる施術を選択することが重要です。

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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