植毛のやり方と種類を解説 FUE法やFUT法の違いとは

医者

薄毛やAGA(男性型脱毛症)の進行に悩む多くの人にとって、「植毛」は根本的な解決策として注目されています。しかし、植毛と一口に言っても、いくつかの異なる手法があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。本記事では、現在主流となっている植毛方法「FUE法」と「FUT法」を中心に、「植毛 比較」の観点から詳細に解説します。

植毛とは何か?基本の仕組み

植毛とは、頭皮に自分の毛髪(自毛)や人工毛を移植する医療処置です。特に近年は自分の後頭部などから健康な毛包を採取し、薄毛部分に移植する「自毛植毛」が主流です。移植された毛は定着すれば生涯にわたって自然に成長し続けるため、他の治療法よりも根本的かつ持続的な解決法とされています。

自毛植毛の2大手法:FUE法とFUT法

FUE法(Follicular Unit Extraction法)

FUE法は、頭皮から毛包単位で採取する方法です。パンチという小さな刃を使い、後頭部や側頭部から毛根ごと一つひとつくり抜いて採取します。その後、薄毛部分に移植します。

特徴とメリット

  • 切開不要:メスを使わないため傷跡が小さい
  • ダウンタイムが比較的短い
  • 将来的に髪型の自由度が高い(短髪にしやすい)

デメリット

  • 手作業中心のため施術時間が長くなりやすい
  • 採取範囲が広いためドナー部に負担がかかることも
  • 高度な技術を要するため、医師の経験によって結果が左右されやすい

科学的根拠

FUE法は、外傷の少なさと自然な仕上がりが評価されており、2020年の国際毛髪外科学会誌(ISHRS)の報告では、FUE法による移植毛の生着率は約85〜95%と高い水準にあることが示されています。

FUT法(Follicular Unit Transplantation法)

FUT法では、ドナー部分(通常は後頭部)から皮膚ごと帯状に切り取り、顕微鏡下で毛包単位に分けて移植します。

特徴とメリット

  • 一度に多くのグラフト(移植毛)を採取可能
  • 生着率が高い(約90〜95%)
  • 大規模な植毛にも適している

デメリット

  • 後頭部に線状の傷跡が残る可能性あり
  • 回復までに時間がかかる
  • 傷跡が気になるため、短髪スタイルに制限が出ることも

科学的根拠

FUT法の有効性については、Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery(2018)においても報告されており、特に広範囲の脱毛症例において高い生着率と長期的な成果が確認されています。

FUE法とFUT法の比較一覧

項目FUE法FUT法
採取方法毛包単位でくり抜き帯状に皮膚を切除して分離
傷跡点状の小さな傷が残る線状の傷跡が残ることが多い
ダウンタイム比較的短いやや長め
生着率85〜95%90〜95%
大量移植への対応不向きなこともある大量移植に適している
医師の技術依存度高めやや低め(標準化されやすい)

その他の植毛法との比較:人工毛植毛との違い

一部では人工毛植毛という選択肢もありますが、これは合成繊維で作られた人工毛を頭皮に埋め込む方法です。

問題点

  • 異物反応や感染症のリスクが高い
  • 定着率が低く、定期的なメンテナンスが必要
  • 厚生労働省の認可を得ていない医療機関もあり、安全性に課題

このような理由から、現在では自毛植毛(FUE法・FUT法)が主流となっており、医学的にも推奨されています。

植毛を検討する際の注意点

信頼できるクリニックの選び方

  • 経験豊富な医師が在籍しているか
  • 生着率や症例実績が公開されているか
  • アフターケア体制が整っているか

また、安価な施術を売りにするクリニックには注意が必要です。特にFUE法は医師の技術に強く依存するため、価格だけで判断せず、実績や評判を重視しましょう。

植毛の施術の流れとダウンタイムの比較

FUE法の施術ステップ

  1. デザインとマーキング
    医師と相談の上、移植部位のデザインを決定し、自然な生え際をシミュレーションします。
  2. ドナー部のトリミングと局所麻酔
    後頭部の毛を短くし、局所麻酔を施して痛みを軽減。
  3. グラフトの採取
    パンチ器具を使って、1本ずつ毛包を採取します。
  4. 移植部への開孔と植え付け
    植える部位に微細な穴を開け、採取したグラフトを一本ずつ丁寧に植え込みます。
  5. アフターケアと経過観察
    術後は腫れや赤みを抑える処置を行い、数日間は洗髪などの指導が行われます。

FUE法のダウンタイム

  • 一般的には3〜5日程度の安静期間が推奨され、1週間後には社会復帰も可能です。
  • 痛みは軽度で、鎮痛薬でコントロールできます。
  • 傷跡は目立たず、短髪でも自然に見えます。

FUT法の施術ステップ

  1. マーキングと局所麻酔
    採取する帯状部分をマーキングし、麻酔をかけます。
  2. ドナー部切除
    頭皮の一部を切除して毛包を含んだ組織を取り出します。
  3. 縫合と毛包分離
    ドナー部は縫合され、切り取った組織は顕微鏡下で毛包単位に分けられます。
  4. 受容部への移植
    自然な方向と密度を考慮しながら植え付けます。

FUT法のダウンタイム

  • 縫合した傷が治るまで10〜14日程度の回復期間が必要です。
  • 傷跡の赤みやつっぱり感は一時的ですが、完全に目立たなくなるには数ヶ月かかることもあります。

自毛植毛の費用比較

項目FUE法FUT法
費用相場1グラフトあたり500〜800円程度1グラフトあたり300〜600円程度
施術総額100〜200万円(3000グラフト以上)80〜150万円程度
保険適用適用外(自由診療)適用外(自由診療)

費用に関しては、採取数や使用する機器、医師の技術料により大きく変動します。単純に金額だけで判断せず、費用対効果や生着率、術後の満足度を重視するべきです。

費用 比較

FUE法とFUT法の向き不向き

FUE法に向いている人

  • 短髪を好む人
  • 傷跡を避けたい人
  • 小規模〜中規模の植毛を希望する人
  • 回復の早さを重視する人

FUT法に向いている人

  • 広範囲の植毛が必要な人
  • グラフト数を多く確保したい人
  • コストパフォーマンスを重視する人
  • 傷跡が隠れる長髪を保つ人

国内外における技術動向とトレンド

近年では、日本国内でもFUE法を中心としたロボット支援型の植毛技術が導入され始めています。米国で開発されたARTASシステムは、高精度な画像認識技術とロボットアームにより、毛包の採取を自動化し、人的ミスを最小限に抑えることが可能です。

海外動向

  • 韓国やトルコでは高度なFUE技術が普及しており、医療ツーリズムとして植毛を受けに訪れる患者も増加。
  • 欧米ではFUE法が主流で、特にセレブリティや著名人の症例公開により認知度が上昇。

植毛以外の治療法との比較

自毛植毛は「毛が生える仕組みを根本的に回復する」治療ですが、以下のような他の方法も存在します。

治療法特徴効果範囲維持の可否
ミノキシジル血流改善による発毛促進頭頂部中心継続が必要
フィナステリドDHTの抑制による脱毛進行の遅延前頭部・頭頂部継続が必要
自毛植毛生涯維持可能な毛包の移植どこでも可能半永久的

特に薬物治療と植毛を併用することで、抜け毛の進行を抑えつつ、新たに移植した毛髪を育てるという相乗効果が期待できます。

植毛に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 一度の手術で完了しますか?

A. 一度の施術で完了するケースもありますが、生着率や希望する密度により2回以上の手術が必要な場合もあります。

Q2. 植毛後に再び薄毛になりますか?

A. 移植毛は基本的に脱毛の影響を受けにくい「後頭部の毛包」を使用するため、再び薄くなる可能性は非常に低いとされます。

Q3. 痛みはありますか?

A. 麻酔が使用されるため、施術中の痛みは最小限です。術後も軽度の鈍痛やかゆみが一時的に生じる程度です。

正しい比較と判断が成功のカギ

植毛 比較」という視点から、FUE法とFUT法の違いや特徴、安全性について詳しく見てきました。それぞれの方法には明確なメリットとリスクがあり、どちらが優れているかは患者一人ひとりの目的・毛髪状態・生活スタイルによって変わってきます。

重要なのは、信頼できる医師と十分に相談したうえで、自身に最も適した手法を選択することです。最新技術の導入状況や過去の症例、アフターケアまで含めて総合的に検討し、長期的に満足できる結果を目指しましょう。

参考文献・出典リンク

  • International Society of Hair Restoration Surgery (ISHRS): https://ishrs.org/
  • Rassman WR, Bernstein RM. Follicular Unit Extraction: Minimally Invasive Surgery for Hair Transplantation. Dermatol Surg. 2002.
  • Sharma, R.K. et al. Comparison of the efficacy of FUT and FUE techniques in androgenetic alopecia. J Cutan Aesthet Surg. 2018;11(2):76–82. PubMed

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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