この記事の概要
薄毛や抜け毛に悩む男性にとって、信頼できる治療法を探すことはとても重要です。この記事では、米国FDAにも承認され、世界中で使用されている男性型脱毛症(AGA)治療薬「フィナステリド(プロペシア®)」について、仕組み、効果、安全性、注意点までわかりやすく解説します。自毛植毛を検討中の方にも必見の情報です!
フィナステリド(プロペシア®)による薄毛治療について

フィナステリド(Finasteride)は、男性型脱毛症(MPHL:Male Pattern Hair Loss、いわゆるAGA)の治療に用いられる内服薬です。米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)によって、医師による処方が認められている唯一の男性型脱毛症専用治療薬です。
これまでに世界中で100万人以上の患者が使用しており、長期的な有効性と安全性が確認されています。年齢や人種を問わず、幅広い男性に対して効果が認められています。フィナステリドは、単独で使用される場合もあれば、外用薬であるミノキシジル(Minoxidil)(市販名:ロゲイン®)と併用して、より高い効果を目指すケースもあります(→詳しくは「ミノキシジルの使用について」参照)。なお、女性への使用は推奨されていません。
フィナステリドが効果を発揮しやすい脱毛の進行度

フィナステリドは、脱毛の初期〜中等度の段階で、脱毛進行の抑制および新たな発毛を促す効果を発揮します。一方、脱毛がかなり進行してしまった場合には、フィナステリド単独で十分な発毛効果を得るのは難しく、自毛植毛などの外科的アプローチが検討されることが一般的です。
特に、頭頂部(つむじ周辺)の発毛促進に対しては高い効果が期待できますが、前頭部(生え際)における発毛効果はやや限定的です。前頭部の薄毛、いわゆる「後退した生え際(receding hairline)」には、フィナステリドによる進行予防を図りつつ、必要に応じて植毛治療を組み合わせるのが一般的な治療方針となっています。
フィナステリドの作用機序とは
フィナステリドは、分子レベルで脱毛を抑制し、発毛を促進します。そのメカニズムは、体内で男性ホルモンのテストステロン(Testosterone)を、髪の毛の成長に影響を及ぼす形態であるジヒドロテストステロン(DHT:Dihydrotestosterone)に変換する酵素(5α-リダクターゼ:5-alpha-reductase)の働きを選択的に阻害することによります。
テストステロンは、皮膚、毛包(hair follicle)、前立腺など、さまざまな組織に影響を与えるアンドロゲン(androgen、男性ホルモン)の代表的存在です。ただし、髪の毛や皮膚、前立腺に直接作用するのは、テストステロンではなく、テストステロンから5α-リダクターゼによって生成されるDHTです。つまり、DHTが高濃度で存在すると、毛包が萎縮し、薄毛が進行すると考えられています。
フィナステリドはこの5α-リダクターゼのうち、特にタイプII(Type II)という亜型を選択的に阻害します。タイプI(Type I)は皮脂腺に多く、タイプIIは毛包や前立腺組織に主に存在しています。
研究により明らかになったこと
- タイプIIの5α-リダクターゼ活性が正常〜高い男性は、男性型脱毛症や前立腺肥大症(BPH:Benign Prostatic Hyperplasia)を発症しやすい
- タイプII活性が低い男性は、これらのリスクが低い
- よって、タイプIIの5α-リダクターゼを抑制し、DHT濃度を下げることで、男性型脱毛症および前立腺肥大の発症リスクを低減できる
この発見を受け、フィナステリドは当初、前立腺肥大症治療薬(商品名:プロスカー®(PROSCAR®)、1日5mg投与)として開発・承認されました。
その後、低用量(1mg/日)での男性型脱毛症への応用が研究され、プロペシア®(Propecia®)として臨床使用が始まりました。この用量では、一部の男性において脱毛抑制と発毛促進の効果が確認されています。
フィナステリドと前立腺がんリスクについて
プロペシア®が前立腺がん(Prostate Cancer)の発症や進行に関連するか否かについては、2003年に発表された大規模な研究で検討されています(→詳しくは「フィナステリドと前立腺がん」参照)。この点に関心のある方は、必ず医師に相談するようおすすめします。
フィナステリド使用時の注意点
フィナステリドによる脱毛治療は、必ず医師(特に薄毛治療専門の医師)による診察と処方のもとで行う必要があります。自己判断で服用を開始することは、安全性の観点からも推奨されません。
また、フィナステリドは女性には使用できません。特に、妊娠中または妊娠の可能性のある女性が誤ってフィナステリドに曝露すると、胎児(特に男性胎児)の生殖器発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、厳重な注意が必要です。








