この記事の概要
「シャンプーのしすぎは髪に悪い?」「ストレスで髪が抜ける?」「帽子をかぶるとハゲる?」――こうした脱毛に関する“ウワサ”を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では、国際毛髪再生外科学会の見解をもとに、医学的根拠に基づいて5つのよくある脱毛神話をわかりやすく解説します。正しい知識で髪と向き合う第一歩を踏み出しましょう。
脱毛に関するよくある誤解

日常の会話の中で、こんなやり取りを聞いたことはありませんか?
たとえば年末年始の集まりや友人との飲み会で――
「ジムが最近髪の毛薄くなってるのは、一日中仕事で帽子をかぶってるからだよ」と誰かが言う。
このようなコメントは、何となく納得されてしまうことが多いものです。
その場で明確に否定できるだけの知識がないと、つい受け入れてしまいがちです。
しかし、こうした「帽子のせい」説をはじめ、根拠のない“脱毛神話”は世間に多く流布しています。たいていは無害な雑談に過ぎませんが、誤った理解が広がることで、本当に有効な治療へのアクセスや相談の機会が妨げられることもあるのです。
そこで本記事では、国際毛髪再生外科学会(International Society of Hair Restoration Surgery:ISHRS)の見解に基づき、よくある脱毛原因の誤解を正しく解説します。
医学的に否定されている「脱毛の原因」一覧

以下のようなものは、現在の医療・科学の知見では脱毛の直接的原因とは認められていません。
血行不良(Poor circulation)
「頭皮の血行が悪いと毛が抜ける」という説はよく耳にしますが、通常レベルの血流低下が直接的に脱毛を引き起こすという医学的根拠はありません。極端な循環障害や疾患がない限り、血流と脱毛の因果関係は立証されていません。
毛穴の詰まり(Clogged hair follicles)
毛穴に皮脂や汚れが詰まることで毛が抜ける、という主張も広く信じられていますが、毛包(hair follicle)が詰まっても、それが恒常的な脱毛に直結するわけではありません。抜け毛の大半は毛周期(ヘアサイクル)の自然な過程に沿って生じています。
シャンプーのしすぎ(Frequent shampooing)
「毎日シャンプーすると髪が抜けやすくなる」というのもよく聞く話ですが、適切な頻度で洗髪すること自体が脱毛の原因になることはありません。逆に、清潔に保つことは頭皮環境の改善に寄与します。ただし、強すぎる洗浄成分の使用や爪を立てて洗うことは頭皮を傷つける可能性があるため、注意が必要です。
ダニの存在(Presence of mites)
一部では「頭皮にダニがいるから毛が抜ける」といった話もありますが、一般的な頭皮に生息する常在菌やダニが直接的に脱毛を引き起こすという証拠は乏しいです。皮膚疾患などの特殊なケースを除き、こうした微生物は脱毛の主因ではありません。
軽度のストレス(Stress)
「仕事が忙しくてストレスが溜まってるから髪が抜ける」というのは誰しも心当たりがあるかもしれません。確かに極度の精神的ショックや、外科手術・重篤な疾患後などの医学的ストレスが引き金となる一時的な脱毛(休止期脱毛/telogen effluvium)は実在します。
しかし、日常的なストレス程度では、男性型脱毛症(後述)などの持続的な脱毛には繋がらないと考えられています。
本当の主な原因:男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)
では、実際に多くの人が経験する脱毛の主な原因は何なのでしょうか?
答えは、遺伝的要因に起因する男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)です。
これは、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響によって、遺伝的に感受性のある毛包が徐々に萎縮していくという現象です。日本人男性の約3人に1人が、年齢とともにこのタイプの脱毛を経験するといわれています。
「アンドロゲン性脱毛症」は女性にも発症することがありますが、進行パターンは異なります(詳しくは『女性の脱毛の原因』の記事をご参照ください)。
誤解を正すことで、正しい対策へ
次に誰かが「脱毛は帽子のせい」だと言ったときには、優しく、けれど正しくこう伝えてあげてください。
「実際は、ほとんどのケースで遺伝が関係しているんだよ。医学的には『アンドロゲン性脱毛症(Androgenetic Alopecia)』っていうんだ。」
誤解が解ければ、正しいケアや治療法にたどり着きやすくなります。悩んでいる方の助けになるのは、こうした正しい情報の共有なのです。
あなたが聞いた「脱毛のウワサ」で、いちばん奇妙だったものは?
あなたの周りでも、ユニークな脱毛の都市伝説を耳にしたことはありませんか?
「〇〇を食べると髪が生える」「寝る向きで毛の量が変わる」など、科学的に裏付けのない話は意外と多いものです。
こうした誤解を笑い飛ばすのではなく、根拠に基づいた知識で正しく対処することが、健康的なヘアケアの第一歩です。







