この記事の概要
薄毛や抜け毛に悩む方が増えるなか、世界中で植毛手術や非手術による毛髪再生治療を受ける人が急増しています。本記事では、国際毛髪再生外科学会（ISHRS）が発表した2009年の大規模調査データをもとに、最新の治療件数や患者層、注目されている施術部位の傾向まで、わかりやすくご紹介します。
2008年に世界で25万件以上の植毛手術が実施される：ISHRSの国際調査結果
2009年9月4日、アメリカ・イリノイ州ジュネーブ発表―国際毛髪再生外科学会（ISHRS）は、世界中の医師から収集したデータをもとに、2008年の毛髪再生に関する実態調査を実施し、その結果を公表しました。この調査により、毛髪再生手術の件数、患者の年齢や性別、手術の部位のトレンド、さらに市場規模に至るまで、多岐にわたる実態が明らかとなりました。
世界における植毛手術の実施件数（2008年）
2008年には、全世界で推計25万2,002件の毛髪再生手術（植毛手術）が実施されました。これは、2006年の件数と比較して12%の増加となっています。
地域別の件数は以下の通りです：
- アメリカ合衆国：98,727件
- カナダ：5,268件
- メキシコ・中南米地域：13,102件
- ヨーロッパ：32,320件
- アジア：78,822件
- オーストラリア：3,116件
- 中東地域：20,647件
このデータからも、特にアジア地域における需要の高さが際立っています。
世界の毛髪再生市場規模の推計（2008年）
2008年に実施された25万2,002件の手術に、患者が支払った平均費用（average fee）を掛け合わせることで、世界の毛髪再生市場規模は以下のように算出されました：
- 約12億6,859万米ドル（$1,268,590,668 USD）
- 約9億7,150万ユーロ（€971,501,957）
- 約15億3,626万カナダドル（$1,536,263,299 CAD）
- 約17億6,099万オーストラリアドル（$1,760,994,136 AUD）
※「平均費用」とは、手術を受けた患者全体に対して報告された手術1件あたりの平均額です。実際には移植する毛根の数（grafts）や施術部位の広さなどにより、費用は大きく異なるため、あくまで参考値となります。
手術および非手術の毛髪再生治療を受けた患者数（2008年）
2008年には、手術および非手術を含めた毛髪再生治療を受けた患者数は推計81万1,363人に達しました。これは2006年から26%の増加です。
- 手術を受けた患者数：236,468人
- 非手術（内服・外用薬など）治療を受けた患者数：574,894人
地域別の患者数は以下の通りです：
- アメリカ合衆国：227,216人
- カナダ：10,695人
- メキシコ・中南米：43,969人
- ヨーロッパ：73,167人
- アジア：385,711人
- オーストラリア：14,855人
- 中東：55,750人
アジア地域では特に、内服薬や外用薬などの非手術的治療の普及が進んでいることが推察されます。
年齢・性別による患者の傾向
手術を受けた患者（2008年）
- 男性：84.9%（2006年の86.2%からやや減少）
→ 最も多い年齢層：30代男性（31.2%） - 女性：15.1%（2006年の13.8%からやや増加）
→ 最も多い年齢層：40代女性（31.1%）
非手術治療を受けた患者（2008年）
- 男性：68.2%（2006年の71.8%からやや減少）
- 女性：31.8%（2006年の28.2%から増加）
また、男女ともに30〜49歳の年齢層が全体の過半数を占めており、それぞれ男性59.6%、女性54.9%となっています。
国別・部位別の注目すべきトレンド
2008年に行われた25万2,002件の植毛手術のうち、92.9%は頭髪部（scalp）を対象としたものでしたが、その他の部位への施術も注目を集めています。
中東地域
- 最多の成長率を記録し、2006年から68%の増加（13,743件 → 20,647件）
- ヒゲ・口ひげ（facial hair）の移植手術が110%増加（436件 → 916件）
ヨーロッパ
- 眉毛の植毛手術（eyebrow transplant）が297.9%の増加（719件 → 2,861件）
アジア
- 胸毛の移植手術（chest hair transplant）が184.4%の増加（77件 → 219件）
メキシコ・中南米
- 眉毛の移植手術が21.5%増加（613件 → 745件）
アメリカ合衆国
- ヒゲ・口ひげの移植手術が15.1%増加（1,189件 → 1,369件）
このように、美容的・文化的ニーズに応じて部位別のトレンドが顕著に異なることがわかります。
ISHRS調査の目的と手法について
本調査は、毛髪再生手術の実施件数や、患者の属性（年齢・性別）、使用される技術や治療法の傾向を統計的に信頼性の高い形で把握することを目的に行われました。
サンプルの信頼水準は95%、誤差範囲は±6.5%とされています。
調査は、米国イリノイ州シカゴに拠点を置くRH Research社が実施しました。同社は、学会や業界団体向けの調査を専門とする独立系の調査会社です。データの収集・分析・報告まで一貫して担当し、回答した医師の情報はすべて匿名・機密として保護されました。
なお、本報告書の情報はすべて、実際に報告された過去のデータに基づくものであり、将来の予測や広告・推薦を目的としたものではありません。内容の正確性や完全性について、ISHRSおよびRH Researchは責任を負わない旨が明記されています。
おわりに
今回のISHRSの調査結果から、植毛や毛髪再生治療は年々着実に需要が増加していることが明らかになりました。特に非手術的なアプローチの拡大や、眉毛・ヒゲなど従来とは異なる部位への施術ニーズの増加が、今後のトレンドを読み解く重要な指標となります。
毛髪再生に関心のある方は、地域の信頼できる専門医によるカウンセリングを受け、十分な情報を得たうえで治療方法を選択することが大切です。
