薄毛・植毛・白髪の悩みを専門医が徹底解説!手術後の炎症対策から最新治療法までまるわかりガイド

優しい表情を浮かべた女性医師が、細くしなやかな指先で患者の頭皮を丁寧に診察している様子。穏やかな笑顔をたたえながら、慎重かつ思いやりのある態度で頭髪と頭皮の状態を確認しているシーン。

この記事の概要

「植毛は痛い?白髪でもできるの?」「薄毛治療薬って一生使わないと意味がないの?」――そんな疑問を抱えている方に向けて、世界中の植毛専門医が集まる国際毛髪外科学会(ISHRS)の医師が、最新の薄毛治療・植毛技術・手術後ケアについて、わかりやすく丁寧に解説します。この記事を読めば、ネットの噂や自己判断では得られない、本当に信頼できる情報が手に入ります。

専門医に聞いてみた!植毛や薄毛治療のギモンを、世界の医師がやさしく解説

ヒゲのある欧米人男性医師がデスクで説明する様子。ヒゲ移植の専門性や信頼感を伝えるイメージカットとして使用。

最近、テレビやSNSでもよく見かけるようになった「植毛」や「薄毛治療」という言葉。でも、実際にどんなことが行われているのか、詳しく知っている人は案外少ないかもしれません。今回は、世界中の植毛専門医が集まる国際学会「ISHRS(国際毛髪外科学会:International Society of Hair Restoration Surgery)」に所属するベテラン医師たちが、一般の患者さんからよく聞かれる素朴な質問に答えてくれました。

この記事では、「手術のあとに毛穴が赤くなったり膿んだりするのはなぜ?」「白髪でも植毛できるの?」「薄毛に効くお薬ってあるの?」といった疑問を、やさしく、けれどしっかり専門的に解き明かしていきます。科学的な根拠に基づいた話なので、ネットのあやしい噂に惑わされる前に、ぜひ読んでみてくださいね。

自信を取り戻す、最適な植毛

植毛手術のあとに「毛包炎(もうほうえん)」ができるって本当?その原因と対策とは

術後の痛みに対する不安から頭を抱える女性|植毛手術は本当に痛いのかをテーマにしたコラム内のイメージカット

まずは、アメリカの植毛専門医ポール・マキャンドリューズ医師(Dr. Paul J. McAndrews)が教えてくれたお話です。

植毛手術を受けたあと、まれにですが「毛包炎(folliculitis)」という炎症が起こることがあります。これは簡単に言うと、「髪の毛の根っこを包んでいる毛包という部分が炎症を起こして赤く腫れたり、膿んだりする状態」のことです。ニキビみたいに見えることもあります。

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さて、この毛包炎、どうして起きるのでしょうか?

マキャンドリューズ医師によると、いちばん多い原因は「埋没毛(いまいずもう、英語ではingrown hair)」なんだそうです。これは、植えた髪の毛がまっすぐ伸びずに、皮膚の中に巻き込むように生えてしまう状態。体がそれを異物(つまり「入ってきちゃいけないもの」)と判断して、炎症を起こしてしまうのです。

たとえば、髪がクルクルしたくせ毛の人は、毛が皮膚に入り込みやすいため、埋没毛になりやすいといわれています。さらに、移植手術のときに毛の向きを誤って上下逆に入れてしまったり、深く入れすぎてしまったりすると、やはり毛包炎のリスクが上がります。

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では、そうならないためにはどうすればいいのでしょうか?

コツは、「毛を皮膚の表面と同じ高さに、自然に毛先が少し外に出るように植えること」だそうです。つまり、地面に種をまくときに、深すぎず浅すぎず、ちょうどよいところに置くイメージですね。

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もし毛包炎になってしまった場合はどうすればよいのでしょう? 

医師は、「小さく切開して、膿を出してあげる(切開排膿)」というシンプルな治療法をすすめています。これは、ニキビがひどくなったときに皮膚科で行う処置と似ています。

さらに注意したいのが、手術のあとに使われる保護用ジェル。これが毛穴をふさいでしまい、「閉塞性毛包炎(occlusive folliculitis)」という状態を引き起こすこともあるのです。この場合は、ジェルを取り除き、やはり膿を出してあげることで改善されます。

そしてもうひとつ、アメリカでよく見られる例として、「ネオスポリン(Neosporin)」という市販の抗菌クリームが、アレルギー性皮膚炎(allergic contact dermatitis)を引き起こすことがあると医師は指摘しています。つまり、良かれと思って塗った薬が、かえって炎症を悪化させることもあるということですね。

ちなみに、「ばい菌が入ったのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、細菌が原因で起こる毛包炎は、実はかなりまれだそうです。それでも、膿んでいる場合は細菌培養(さいきんばいよう)といって、どんな菌が原因かを調べる検査を行い、必要なら抗生物質を使って治療します。特に注意すべき菌は、連鎖球菌(Streptococcus)や、MRSAという耐性菌を含むブドウ球菌(Staphylococcus)です。

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白髪の人にもFUE植毛はできる?見えにくい白髪にどう対処する?

続いては、ジェームズ・ハリス医師(Dr. James A. Harris)による、白髪患者へのFUE(Follicular Unit Excision:毛包単位切除)メガセッションの工夫について。

「FUEってなに?」という方もいるかもしれませんね。これは、ドナーとなる後頭部などから髪の毛の根っこ(毛包)を1つずつくり抜くように採取して、必要なところに移植する方法です。まるで畑から苗を一株ずつ丁寧に取り出して、別の場所に植え直すような手術です。

さて、このFUEという方法ですが、実は白髪の人だとちょっとだけ難易度が上がるんです。なぜかというと、白髪は皮膚の上ではとても見えにくく、どこに毛があるのか分かりにくいからです。

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そんなときに医師が使うテクニックがふたつあります。

ひとつは、ドナー部分をすべて1〜1.5mmの長さに剃ってしまい、その剃り跡に「Just for Men」という染毛剤(白髪染め)を使って色をつける方法。これにより、白い毛がはっきり見えるようになるのです。染めたあとは、肌に余計な色が残らないように「Roux Clean Touch」というクリーナーで頭皮をきれいに拭き取ります。

ただし、中には染料でかぶれてしまう人もいるので、手術当日ではなく事前にパッチテストをして、アレルギーがないかを確認するのが安全です。

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もうひとつの方法は、ドナー部分を剃らずに、特定の毛だけ部分的にトリミング(Individual Follicular Trim)する方法です。この場合は、手術用ライトの角度を工夫して、毛の生える方向に沿って光を当てることで、白髪がキラリと反射して見えるようにします。まるで逆光で髪の毛が輝くようなイメージです。

このように、白髪の患者さんでもFUEを受けることは十分可能であり、医師の工夫次第で安全かつ効果的に行えるということが分かります。

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薄毛を止めたい!男性型脱毛症(AGA)の医学的な治療法とは?

最後にご紹介するのは、ロバート・T・レナード医師(Dr. Robert T. Leonard, Jr.)が語る、男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)の医学的治療法についてです。

AGAは、男性ホルモンの影響と遺伝によって起こる進行性の脱毛症で、思春期以降に徐々に髪が薄くなるのが特徴です。額の生え際が後退したり、頭頂部が薄くなったりするあれです。

では、このAGAに対して、科学的に効果が証明されている治療法にはどんなものがあるのでしょうか?

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実は、現在3つの主要な治療法があり、いずれも「長く使い続けること」が大前提です。途中でやめてしまうと、せっかく回復した髪も再び抜けてしまうのです。

まずひとつ目は、フィナステリド(Finasteride 1mg)という飲み薬。商品名は「プロペシア(Propecia®)」として有名ですね。これはDHT(ジヒドロテストステロン)という脱毛の原因となる男性ホルモンの働きを抑える薬で、約83%の人で進行を抑え、約66%の人で発毛が確認されたというデータがあります。主に頭頂部(vertex)に効果があります。

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副作用はまれですが、0.3%の人に精液の量が減る、勃起の硬さが低下する、性欲が落ちるといった影響が報告されています。

ふたつ目は、ミノキシジル(Minoxidil 5%)という塗り薬。商品名「ロゲイン・フォーム(Rogaine Foam)」として知られていて、朝晩1日2回、地肌に直接塗る必要があります。こちらも約70%の人で進行を止め、約50%の人で髪が増えるというデータがあります。

副作用としては、頭皮のかゆみ、赤み、皮膚の剥け(2%程度)が報告されています。よく「頭頂部にしか効かない」と思われがちですが、実は頭皮全体に効果があることが確認されています。

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そして三つ目は、低出力レーザー治療(LLLT:Low-Level Laser Therapy)という、頭皮にレーザー光を当てる方法です。レーザーといっても痛くも熱くもなく、特定の波長の光が皮膚に吸収され、毛根への血流を良くする効果があります。なんと90%の人で進行を抑え、50%の人で発毛効果が期待できるという結果もあります。しかも、現在までに副作用は報告されていないという点も大きな魅力です。

女性にも効果があるの?と思われるかもしれませんが、ミノキシジルと低出力レーザーは、女性にも安全に使用できます。ただし、フィナステリドは胎児に悪影響を与える可能性があるため、妊娠の可能性がある女性には使えません。その代わり、閉経後の女性には医師の判断で処方されるケースもあるそうです。

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記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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