髪の色はどう決まる?白髪になる理由と最新研究まとめ

明るいブラウン、赤、チェスナットブラウン、ブラックに染め分けられた髪の束のイメージ

この記事の概要

私たちの髪の色は、単なる「遺伝」だけで決まるわけではありません。髪に色をつける細胞「メラノサイト」と、その働きをコントロールする遺伝子や分子のメカニズムを、わかりやすくご紹介します。なぜ年齢とともに白髪になるのか、最新の研究成果も交えて詳しく解説します!

髪の色はなぜ違う?なぜ白髪になるのか?

私たちの髪の色は、主に両親や祖先から受け継いだ遺伝子によって決まっています。一部には例外もあり、病気や先天的異常(congenital anomalies)によって髪色が変化するケースもあります。

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しかし、「髪色は遺伝によって決まる」という事実は、髪の色の仕組みのほんの入り口に過ぎません。科学者たちは現在も、遺伝子や調節分子(regulatory molecules)がどのように毛包(hair follicle)に指令を出し、特定の色の髪を生み出すのか、そのメカニズムを解明し続けています。同様の分子機構が僕皮膚の色素沈着(skin pigmentation)僕の制御にも関与しているため、色白の人にブロンド(blond)髪が、色黒の人に黒髪が多く見られるのは自然な現象と言えます。

どんな髪色でも、年齢を重ねるにつれて色素を失い、白髪やグレイヘアになる可能性があります。



髪色と肌色を決める「メラノサイト」

髪と肌の色を決める中心的な細胞は、僕メラノサイト(melanocyte)と呼ばれる特殊な細胞です。メラノサイトは皮膚や毛包内に存在し、その主な役割は色素であるメラニン(melanin)僕を合成することにあります。

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さらに詳しく見ると、メラノサイト内部には僕メラノソーム(melanosome)僕という小さな細胞小器官(オルガネラ、organelle)が存在します。このメラノソームが、遺伝子と分子シグナル(例:ホルモン刺激や酵素反応)によって制御されながらメラニンを合成します。

メラノソームには2種類あり、それぞれ異なるタイプのメラニンを合成します。

  • 楕円形(oval-shaped)のメラノソーム → ユーメラニン(eumelanin)(黒〜茶色の色素)を合成
  • 球形(spherical)のメラノソーム → フェオメラニン(pheomelanin)(赤〜黄色の色素)を合成

つまり、髪や肌の色のバリエーションは、これら2種類のメラニンの合成比率や量によって生まれるのです。



髪の毛とメラノサイトの働き

皮膚のメラノサイトは、角化細胞(keratinocyte)と呼ばれる、皮膚や髪の表面層を構成する丈夫な細胞からも影響を受けています。角化細胞は、メラノサイトの成長やメラニン産生を調節する生化学的因子(biochemical factors)を分泌しています。

毛包内のメラノサイトは、毛根の基部、すなわち毛成長サイクル(hair growth cycle)の成長期(アナゲン期、anagen phase)に新しい髪が作られる場所に位置しています。(※関連情報:「About Hair Loss」および「Hair Loss and the Hair Growth Cycle」参照)

メラノサイトは、成長期に入るとメラニンの合成を始め、退行期(カタゲン期、catagen phase)や休止期(テロゲン期、telogen phase)にはメラニン合成が停止します。

新たに形成される髪の最初の部分(いわゆる「先端部」)は、完全またはほぼ無色です。毛幹(hair shaft)の成長が進むと、髪の芯である僕コルテックス(cortex)僕にメラニンが取り込まれ、髪に色がつきます。コルテックスは、ケラチン(keratin)という硬いタンパク質でできた外層(キューティクル、cuticle)に守られています。

通常、1つの毛包ではユーメラニンかフェオメラニンのどちらか一方が合成されますが、両方の色素が異なる比率で混ざり合うことで、多様な髪色のバリエーションが生まれます。髪の色の濃さ(明度)は、毛幹中のメラニンの量に比例します。



白髪になる仕組み

加齢とともにメラノサイトの活動が低下すると、新しく形成される髪は徐々に灰色(グレー)になっていきます。そして、メラノサイトの機能が完全に停止すると、色素のない白髪になります。

なぜメラノサイトが年齢とともに不活性化するのかは、いまだ研究途上のテーマです。



髪色を決定する遺伝子と最新研究

近年、髪色に関与する遺伝子や分子シグナル機構について、科学者たちはより具体的な理解を進めています。

例えば、マウスの研究では、毛包の基部にある毛乳頭細胞(follicular papilla cell)が、メラノサイトにメラニン合成を促す指令を送る遺伝子を発現していることが発見されました。

さらに、僕bcl-2遺伝子(bcl-2 gene)僕は、マウスとヒトの両方でメラノサイトの生存に関与していることが示されています。このbcl-2遺伝子をマウスで機能停止させると、成長サイクルの2週目からマウスの毛が灰色に変化しました。

加えて、僕幹細胞因子(stem cell factor)僕とその受容体(receptor)の存在も、メラノサイトの発達および活性化に不可欠であることが、マウスモデルによる実験で証明されています。



まとめ:髪色と遺伝の深い関係

これまでの研究から、次の事実が確実となっています。

  1. 髪の色は完全に遺伝的制御下にある。
  2. 現在のところ、遺伝子レベルで髪色を意図的に変える方法は存在しない。
  3. 加齢に伴う毛包メラノサイトの不活性化が、私たちの髪を白髪に導く主要な要因である。

今後さらに研究が進むことで、白髪化のメカニズムや、新たな髪色コントロール技術の開発に繋がる可能性も期待されています。



記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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