自毛植毛の「ドナー部位」ってどこ?後悔しないための採取方法と選び方をわかりやすく解説

金色に輝くなめらかな髪が女性の華奢な背中に沿って優雅に波打つ様子。最高級の糸のように柔らかくカールしながら光をまとって流れ落ちる、美しく健康的なドナーヘアの象徴的イメージ

この記事の概要

「植毛って、髪の毛をどこから取ってどこに移すの?」そんな素朴な疑問を持ったことはありませんか?自毛植毛では、髪がしっかり残っている後頭部や耳の上などから「ドナー毛」を採取し、薄くなった部分へ丁寧に移植します。本記事では、ドナー部位の選び方から採取方法の違い、将来的な脱毛への備えまで、知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。施術を検討している方はもちろん、将来の選択肢として植毛を知っておきたい方にも役立つ内容です。

自毛植毛のためのドナー部位(採取部位)の採取について

光を受けて艶やかに輝くボリュームヘアをふわりと持ち上げる女性の後ろ姿。自毛植毛のドナーヘア採取に適した健康的で滑らかな髪質をイメージしたイメージ写真

自毛植毛(hair transplant)とは、自分自身の髪の毛と毛包(hair follicles)を、髪の毛がある部位から抜けてしまった部位へと移植する外科的な治療法です。このとき、毛髪と毛包を採取する部位を「ドナー部位(donor site)」、移植先の部位を「レシピエント部位(recipient site)」と呼びます。

ドナー部位から採取された毛髪は、レシピエント部位に移された後も、そのままの性質で生え続け、自然な見た目を回復する役割を果たします。

自信を取り戻す、最適な植毛

ドナー部位からの毛髪採取(ハーベスティング)とは?

アジア人女性が髪の毛先を指先でそっとつまみながら、もう一方の手で頬を包み、優しく微笑む姿。自毛植毛におけるドナーヘアの質や状態を丁寧に確認する様子をイメージした写真

ドナー部位から毛髪と毛包を取り出すプロセスは「ハーベスティング(harvesting)」と呼ばれます。これは複数の工程から成る専門的な手技であり、綿密な計画立案から始まり、健康な毛包を移植可能な状態で確保することで完了します。

なお、ハーベスティングは、植毛全体の計画が確定するまでは行われません。手術における最初の段階として、ドナー部位の選定と採取計画は非常に重要な役割を担います。

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採取部位(ドナー部位)の計画と選定

ドナー部位として最も一般的に使用されるのは、後頭部、うなじ、耳の上部の頭皮です。これらの部位は、多くの場合、男性型脱毛症(male pattern baldness)などの影響を受けにくく、毛髪が長期間維持される特徴があります。

前傾姿勢で真剣な眼差しを向ける日本人ビジネスマン。頭皮は滑らかで光を反射するほど無毛であり、男性型脱毛症(AGA)の進行による深刻な薄毛の現実を映し出したイメージ写真

ただし、脱毛の進行パターンや髪質には個人差があります。たとえば、以下のような特徴が人によって異なります:

  • 毛髪の色
  • 髪質(太さ・細さ)
  • 髪のクセ(直毛・くせ毛など)
  • 毛髪の密度(1平方センチメートルあたりの毛包数)

これらの違いは、どのドナー部位からどれだけの毛髪を採取するかに大きく影響します。たとえば、自然な生え際(hairline)を形成するためには、耳上の細く柔らかい髪が適している一方で、頭頂部のボリュームを補うには後頭部の太い毛髪が有用です。

こうした個々の髪の特徴をもとに、医師(毛髪再生の専門医)は植毛計画をトータルに設計します。

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長期的視点:将来的な脱毛進行への配慮

ハーベスティングを計画する際に、特に重要なのが将来的な脱毛の進行リスクです。特に若年層の男性では、移植後も数年単位で脱毛が進行するケースが珍しくありません。

若い男性が目線を落とし、両手をこめかみに添えて髪の生え際を指先でなぞるように触れている様子。将来の薄毛や生え際の後退を気にして思い悩む様子を捉えたイメージ写真

そのため、現在の施術だけでなく、将来必要となる移植に備えてドナー毛を温存しておくという戦略も必要です。このような長期的な配慮は、以下のような要因から予測されます:

  • 脱毛の進行スピード(急速に進行しているかどうか)
  • 家族歴(遺伝的に脱毛が進行している傾向があるか)

これらを踏まえ、将来の再施術の可能性について、医師と十分に相談しておくことが推奨されます。

なお、広範囲にわたる植毛が必要な場合は、1回の施術で完結せず、数週間〜数か月の間隔を空けて2〜3回以上に分けて行うのが一般的です。

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採取技術の種類とその特徴

現在では複数の採取方法があり、個人の髪質や希望に合わせた最適な方法を選択することができます。以下に代表的な採取技術をご紹介します。

ストリップ法(Strip Harvesting)

片手で頭頂部の髪をつかみ、もう一方の手で露出した毛根部分を丁寧に触れている様子。自毛植毛におけるドナーヘアの密度や健康状態を確認する場面をイメージした写真

最も一般的な採取法で、毛髪を含む頭皮の帯状の組織(ストリップ)を切り取って採取する方法です。手術用メス(シングル、ダブル、トリプルブレードなど)を使用し、毛包が損傷しないように注意深く切開されます。

採取されたストリップは、医師や助手が、以下のように目的別に毛包単位に丁寧に切り分けます:

  • 単毛(single follicles):自然な生え際形成用
  • 2~4本の毛包(micro-またはmini-grafts):中程度の密度補強用
  • それ以上の密集毛包:頭頂部など広範囲のカバーに使用
トマトレッドカラーのホッチキス(ステープラー)のクローズアップ画像。自毛植毛手術で使用されるパンチ機器の形状が一般的なホッチキスに似ていることから、その比較対象として用いられるイメージ写真

切開後の部位は、縫合またはホチキスのようなステープルで閉じられ、一般的には大きな合併症なく治癒します。

なお、これに類似した技術として楕円状(elliptical harvesting)に切開を加える変法もあります。

パンチグラフト法(Round Graft Harvesting)

現在ではあまり使用されていない方法で、円形の器具で毛包を採取する旧来の技術です。かつては一般的でしたが、より自然で精密な植毛が可能な方法の登場により、今日ではほとんど使われていません。

上空から見た頭皮のクローズアップ画像。部分的に毛量が減少しており、薄毛やびまん性脱毛の兆候が見られるスカルプコンディションの参考イメージ

フォリキュラー・ユニット・トランスプランテーション(FUT法)

FUT(Follicular Unit Transplantation)法は、毛髪が自然に生えている単位=フォリキュラー・ユニット(follicular units, FUs)ごとに採取・移植する最新技術です。

1つのフォリキュラー・ユニットは、通常1~4本の毛髪と、それに付随する皮脂腺、神経、結合組織などから構成されており、生理的な「毛髪の生え方」に忠実です。

このFUT法では、自然な密度と流れを再現できるため、熟練した医師が行えば、極めて自然で周囲に気づかれにくい仕上がりを実現できます。

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まとめ:自然で長期的な満足を得るために

頭頂部を真上から撮影したスカルプの写真。頭皮全体が漆黒の髪でしっかり覆われており、健康的で高密度なドナーヘアの理想的な状態を示す参考イメージ

自毛植毛の成功には、髪質の理解と長期的な計画、そして個々の患者に合わせた技術選定が欠かせません。将来的な脱毛も見据えた上で、適切にドナー部位を活用することが、自然で持続可能な結果につながります。

信頼できる毛髪再生の専門医としっかり相談し、自分に最適な治療方針を一緒に組み立てていくことが、納得のいく植毛の第一歩です。

自信を取り戻す、最適な植毛

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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