薄毛が気になりはじめたら読むべき発毛治療薬の選び方:ミノキシジル・フィナステリド・デュタステリド徹底解説

口を大きく開けてカラフルな錠剤を舌に乗せた女性のイメージ|発毛治療薬や内服薬のイメージカットとして使用可能なストック写真

この記事の概要

「最近、髪が細くなった気がする」「抜け毛が増えたかも…」そんな不安を感じたら、できるだけ早めの対策がカギになります。市販薬から医師の処方薬まで、発毛効果が認められた治療薬は複数ありますが、どれが自分に合っているのか迷う方も多いはず。本記事では、発毛治療薬の中でも信頼性の高いFDA承認薬(ミノキシジル・フィナステリド)と欧州承認のデュタステリドについて、特徴・効果・副作用をわかりやすく解説します。

薄毛・抜け毛に悩んだら?医学的アプローチによる発毛治療薬の基礎知識

白衣を着た2人の女性研究者が実験室で業務中。1人はベンチで顕微鏡を操作し、もう1人はクリップボードを持って議論を交わす医療・研究現場のイメージ|臨床試験や医薬品研究、発毛治療薬の科学的検証に関連する画像素材

髪が細くなったり抜け始めたりして、「このまま薄毛が進行するのでは?」と不安になる方は少なくありません。そんなとき、髪を再び生やす手段として注目されるのが、医学的アプローチによる治療薬の使用です。しかし、インターネットや雑誌では「天然由来」「ハーブ配合」「育毛に効果あり」などと謳う製品があふれており、どれを選べばよいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

最も信頼できる判断基準は、米国食品医薬品局(FDA: U.S. Food and Drug Administration)によって「脱毛症の治療薬」として正式に承認されているかどうかです。FDA承認とは、科学的根拠に基づく臨床試験(clinical trials)を通じて「安全性」と「有効性」が厳格に検証されたことを意味します。

2025年現在、FDAが脱毛症の治療目的で正式に承認している薬剤は次の2つのみです:

  • ミノキシジル(Minoxidil):市販で入手可能な外用薬(頭皮に塗布)
  • フィナステリド(Finasteride):医師の処方が必要な内服薬(経口摂取)

さらに、デュタステリド(Dutasteride)という薬も欧州では発毛目的で使用が認められており、アメリカでも「適応外使用(off-label)」として医師の判断で処方されることがあります。

以下では、それぞれの薬剤の特徴を詳しく紹介し、副作用や使用上の注意点も丁寧に解説します。



ミノキシジル(Minoxidil)|外用薬としての定番

親指と人差し指で軽く持たれたスポイトが空中に浮かぶイメージ|ミノキシジル外用薬の塗布方法を連想させる医療・育毛関連の象徴的なビジュアル

製品名例:ロゲイン(Rogaine)

用法・用量

ミノキシジルは液体またはフォーム(泡)状で頭皮に直接塗布するタイプの外用薬です。濃度は2%および5%の2種類があります。もともとは男性型脱毛症(男性型脱毛症=AGA: Androgenetic Alopecia)向けに開発された5%濃度も、女性に対して有効であることが臨床試験により確認されています。

入手方法

市販薬としてドラッグストアやオンラインで購入可能です。ミノキシジルの特許が切れた後は、多くのジェネリック医薬品が登場しています。「ロゲイン(Rogaine)」は特許期間中の代表的なブランド名です。

作用機序(メカニズム)

ミノキシジルがどのようにして発毛を促すのか、正確なメカニズムはまだ解明されていません。もともとは高血圧治療のための経口薬として開発され、血管を拡張させることで血圧を下げる作用がありました。その副作用として体毛が増える現象が報告され、発毛剤としての開発に転用されたという経緯があります。血管拡張による頭皮への血流増加が関係している可能性はありますが、明確な因果関係は不明です。

効果・有効性

2%および5%の濃度ともに、男女を問わず脱毛の進行を遅らせ、発毛を促進する効果が報告されています。とくに5%濃度の方が効果が高い傾向にあります。
臨床試験では、およそ50%〜80%以上の被験者が「抜け毛の減少」や「新たな髪の成長」など、何らかの改善効果を実感したと報告されています。ただし、使用を中止すると効果は失われます。局所的な脱毛部位には高い効果を示しますが、広範囲の脱毛には効果が限定的です。

副作用

最もよくある副作用は頭皮のかゆみです。誤って顔などに塗ってしまうと顔の産毛が濃くなる可能性があります。稀に、大量に使用した場合に血圧が下がる副作用が報告されています。



フィナステリド(Finasteride)|内服によるDHT抑制薬

製品名例:プロペシア(Propecia)

用法・用量

1mgの錠剤を経口摂取(飲み薬)します。この1mgという用量は男性型脱毛症(AGA)の治療目的に設定されています。なお、5mgの用量(製品名:プロスカー Proscar)は前立腺肥大症(BPH: Benign Prostatic Hyperplasia)の治療に用いられます。

入手方法

日本でもアメリカでも医師の処方が必要な「処方薬(prescription drug)」です。「プロペシア(Propecia)」が発毛目的での代表的な製品名です。

作用機序(メカニズム)

フィナステリドは、「5α-還元酵素Ⅱ型(Type II 5-alpha reductase)」という酵素の働きを阻害します。この酵素は、テストステロン(男性ホルモン)をより強力な作用を持つジヒドロテストステロン(DHT: Dihydrotestosterone)に変換する役割を担っています。DHTは毛包(毛根の周囲の組織)に作用して、髪の成長を妨げ、細く短い毛しか生えないようにしてしまうことが知られています。

効果・有効性

複数年にわたる大規模臨床試験で、多くの男性において脱毛の進行を抑制し、発毛を促進する効果が確認されています。ある5年間の試験では、軽度から中等度のAGAの男性の65%が改善効果(抜け毛の減少・発毛)を示しました。
治療効果を維持するには継続的な服用が必要です。医師によっては、ミノキシジルとの併用療法や、外科的治療(植毛など)と併用して総合的なアプローチをとることもあります。

副作用

  • 妊娠中または妊娠予定の女性は、絶対に服用・接触してはいけません。胎児の生殖器官に異常を引き起こす恐れがあります。
  • 主な副作用には、性欲減退(リビドーの低下)、勃起障害(ED)、男性の乳房の肥大、およびうつ症状などが報告されています。



デュタステリド(Dutasteride)|進行中の新薬候補

製品名例:アボダート(Avodart)

用法・用量

0.5mgカプセルを経口摂取します。現在、男性型脱毛症治療薬としては米国FDAの正式承認は未取得ですが、臨床試験が進行中です。

入手方法

アメリカでは前立腺肥大症の治療薬としてFDA承認済みで、医師の裁量で発毛目的に適応外処方(off-label)されるケースがあります。ヨーロッパでは、薄毛治療薬として正式に承認されており、国によっては処方されています。

作用機序(メカニズム)

デュタステリドもフィナステリドと同様に、5α-還元酵素によるDHT産生を抑制します。ただし、フィナステリドがⅡ型のみを阻害するのに対し、デュタステリドはⅠ型およびⅡ型の両方を阻害する点で、作用範囲が広いとされています。

効果・有効性

現在の臨床試験では、フィナステリドと同様の効果が確認されつつあり、今後の正式承認が期待されている薬剤です。

副作用

フィナステリドと同様に、妊娠中または妊娠予定の女性の服用・接触は厳禁です。副作用としては、性欲の低下、勃起障害、男性乳房の肥大、うつ症状などが報告されています。
また、他の薬剤との相互作用にも注意が必要で、一部の抗生物質、抗うつ薬、抗不安薬、HIV治療薬との相互作用が報告されています。



まとめ|発毛治療薬は専門医の診断のもとで

薄毛・脱毛の原因は人によって異なるため、治療効果を最大限に引き出すには医療機関での正確な診断が不可欠です。とくに、発毛治療薬は継続的な使用が前提となるため、副作用や効果の有無を医師と一緒に確認しながら進めることが重要です。

医師の指導のもとで、ミノキシジルやフィナステリド、必要に応じてデュタステリドを使い分けることで、最適な発毛治療計画を立てることができます。



記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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