この記事の概要
「サーファーヘア」と聞くと、夏らしくおしゃれな印象を持つかもしれません。でも実はそれ、髪が深刻に傷んだ“風化現象”かもしれません。肌と同じように、髪も紫外線や摩擦、化学処理によって老化し、見た目年齢を引き上げてしまうのです。本記事では、髪の「風化」の正体と予防法、そして毛髪再生治療後に気をつけたいヘアケア習慣について、専門医監修のもと分かりやすく解説します。
髪も「風化」する?―知らないうちに進むヘアダメージの真実
肌が日差しや風に長年さらされて乾燥し、しわが増えた状態を「風化(weathering)」と表現することがあります。この言葉は主に皮膚の老化に対して使われますが、実は髪にも同じような「風化」が起きていることをご存じでしょうか?

海水に何時間も浸かり、太陽にさらされた「サーファーヘア」が典型例です。髪がパサつき、色が抜け、ゴワゴワした状態になるこの現象も、髪の「風化」なのです。
このような髪の劣化は、肌と同じく見た目の印象を大きく左右します。実年齢よりも老けて見える原因にもなり得るのです。
「ヘアウェザリング」とは?その原因を徹底解説
髪の毛は、毛根(hair follicle)ではなく、毛幹(hair shaft)がダメージを受けることで「風化」します。毛幹とは、頭皮から出ている髪の見えている部分のことを指します。

本来、髪は「成長 → 退行 → 休止 → 脱毛」という ヘアサイクル(hair growth cycle) を繰り返しています。このサイクルの中でも年数が経つにつれ、髪は自然にやや劣化していきますが、これを加速させるのが、以下のような「外的・化学的ダメージ」です。
紫外線(UV)による影響
日差しが肌を傷めるのと同様に、髪も紫外線で構造的に損傷を受けます。帽子やスカーフなどで頭を覆うことで、髪も紫外線から守ることができます。最近では、髪用の日焼け止めスプレー(hair sunscreen)も市販されており、水辺のレジャーが多い方には有効です。

海水やプールでの濡れ
塩分を含む海水やプールの水は、髪にとって強い刺激となります。水に濡れた髪を強くとかしたくなる衝動に駆られがちですが、濡れた髪は特にデリケートな状態にあるため、乱暴なブラッシングは毛幹を痛める原因となります。
パーマ・縮毛矯正などの化学的処理
パーマ(permanent waving) や 縮毛矯正(hair straightening)、アイロンによるカール などの処理は、長期的に繰り返すと髪の構造を損傷し、風化を引き起こします。

漂白・染毛・脱脂シャンプー
ブリーチ(bleaching)やヘアカラー、そして洗浄力の強すぎる脱脂シャンプーは、髪のタンパク質構造を壊し、特にキューティクル層(後述)を著しく劣化させます。
摩擦や過度な引っ張り

硬いブラシでのブラッシング、きつく編んだ三つ編みや コーンロウ(corn-rowing) によって起きる摩擦も、髪の「風化」を早めます。さらに、これらの習慣は 牽引性脱毛症(traction alopecia) を引き起こすことがあり、毛根が傷つくと永久的な脱毛にもつながります。
髪のダメージは痛みを感じない?―構造と損傷の仕組み
髪は神経が通っていないため、皮膚のように「痛み」でダメージを感じることができません。そのため、知らないうちに大きく劣化していることがあります。

顕微鏡で見ると、髪の表面には魚のウロコのように重なり合った キューティクル(cuticle) という層があります。これは硬いタンパク質からなる保護層で、その下にある柔らかいコルテックス層やメデュラ層を守る役割を果たしています。
加齢や外的刺激によってこのキューティクルが剥がれたり裂けたりすると、髪はツヤを失い、裂け目やコブ(nodules)ができて、まとまりにくい状態になります。これが、いわゆる「ゴワゴワした髪」「まとまらない髪」の原因です。
頭髪だけでなく、体毛も爪で頻繁に掻くことで似たような風化現象が起きる場合があります。
原因の特定と対処法―医師による診断と予防の重要性
私たちの生活には髪を傷つける要因があまりに多いため、単一の原因を特定するのは難しいことが多いです。そのため、毛髪再生専門医(physician hair restoration specialist) による診断と指導が非常に重要です。

まれに、遺伝的な要因によって髪が裂けやすく、もろくなる 遺伝性毛幹異常症(genetic hair shaft disorders) も存在します。毛髪再生治療を始める前には、専門医によってこうした疾患が除外されます。
ヘアリストレーション後こそ重要なヘアケアの習慣
幸いなことに、毛根(follicle)が無傷であれば、毛幹がどれほど風化していても 自毛植毛(hair transplantation) は可能であり、成功する可能性が高いとされています。さらに、活動を停止している毛根が残っていれば、適切な 非外科的治療(nonsurgical hair loss treatments) によって再び発毛するケースもあります。

ただし、せっかく治療で得た見た目の改善も、日常生活の中で再び髪を風化させてしまっては本末転倒です。専門医は、移植後の髪を美しく保つためのアドバイスや、ダメージ毛に対して 洗い流さないプロテイン系トリートメント(leave-in protein conditioner) を勧めることもあります。
髪は「死んだ細胞」と思われがちですが、実際には複雑で繊細な構造を持った組織です。正しいケアによって、髪の印象は大きく変わります。毛髪治療の前も後も、生活習慣やケア方法を見直し、髪の「風化」を防ぐ意識を持つことが、美しい髪への第一歩となるのです。
髪は「死んだ細胞」と思われがちですが、実際には複雑で繊細な構造を持った組織です。正しいケアによって、髪の印象は大きく変わります。毛髪治療の前も後も、生活習慣やケア方法を見直し、髪の「風化」を防ぐ意識を持つことが、美しい髪への第一歩となるのです。








