この記事の概要
眉毛が薄くなってきた、まつげが少ない、ヒゲの形が整わない――そんなお悩みを抱える方が増えるなか、注目を集めているのが「非頭皮部位の毛髪移植手術」です。かつては頭皮への植毛が主流でしたが、近年では自然な見た目と長期的な定着率を誇る眉毛・まつげ・ヒゲの自毛植毛が静かに浸透しつつあります。本記事では、実際の症例、医師のコメント、統計データをもとに、最新の毛髪再生医療の可能性をやさしく解説します。
頭皮以外の毛髪移植手術が人気上昇中:眉毛・まつげ・顔の毛の移植手術が14.2%増加
2011年11月14日 米国イリノイ州ジュネーブ発

薄毛に悩む人々にとって、科学的に効果が証明された内服薬や外用薬(たとえばミノキシジルやフィナステリド)に加え、頭皮の毛髪移植手術(hair restoration surgery)は、脱毛を回復させたり、進行を遅らせる有効な治療法として広く活用されています。
しかし、バージニア州バージニアビーチ在住の37歳女性デニース・グールスビーさんのように、頭髪ではなく眉毛の薄毛に悩んでいる場合、どこで治療を受ければよいのか分からず、選択肢も限られていました。
「私はもともと眉毛が薄かったのですが、20代の頃からさらに薄くなっていくのに気づきました。最初はアートメイク(tattooing)を試しましたが、逆に悪化してしまいました」とグールスビーさんは話します。「最終的には眉毛がほぼ無くなり、毎日アイブロウペンシルで描き足すのが本当に大変でした。」
眉毛やまつげの移植も可能に:専門医による毛髪移植の新たな領域

その後、情報を集めたグールスビーさんは、バージニアビーチの毛髪移植外科医エドウィン・エプスタイン医師(Dr. Edwin Epstein)にたどり着きました。彼は頭皮だけでなく、眉毛やまつげ、顔の毛(髭や口ひげなど)の毛髪移植にも対応している専門医です。
「眉毛は顔のバランス(顔面の対称性)を保つ重要な要素です。眉毛がないと表情がぼんやりして見え、印象も大きく変わります」と語るのは、国際毛髪外科学会(ISHRS: International Society of Hair Restoration Surgery)の元会長でもあるエプスタイン医師です。「毛髪移植技術が進歩したおかげで、眉毛の一部または全体を自然に再現することが可能になっています。」
施術方法:後頭部の毛根を用いた眉毛移植のプロセス
グールスビーさんのケースでは、後頭部のドナー部位から単一毛包単位(single follicular units)を採取し、それを眉毛の部位に移植する外来手術が行われました。これにより、自然な流れと方向性を持つ眉毛を再現することができます。
エプスタイン医師によれば、眉毛移植では毛質(髪の太さやクセ)や毛の向きが適しているかが特に重要です。移植された毛は移植後数か月かけてゆっくりと伸びていき、グールスビーさんの眉毛は約6か月で完全に生え揃いました。ただし、頭髪由来の毛は生え続ける特性があるため、定期的なトリミング(カット)が必要になります(詳細は「眉毛移植手術に関する記事」もご参照ください)。
「新しい眉毛はとても自然で、これまでのように人目を気にしたり、毎朝のメイクに時間をかける必要がなくなったのが本当にうれしいです」とグールスビーさんは話します。
非頭皮部位の毛髪移植:患者に広がる新たな選択肢
エプスタイン医師は、頭皮以外の部位に対する毛髪移植(non-scalp hair restoration)は、多くの患者にとって現実的な選択肢であると述べています。ただし、施術の適応可否や具体的な方法については、専門医との事前相談が不可欠です。
統計データ:非頭皮部位への移植は全体の7.2%、過去2年間で14.2%の増加
国際毛髪外科学会(ISHRS)が最近実施した会員調査によると、2010年に行われた毛髪移植手術のうち、92.8%が頭皮への移植であり、残り7.2%が非頭皮部位を対象としていました。
具体的な内訳は以下のとおりです:
さらに、2008年から2010年の間に、眉毛・まつげ・顔への移植手術は14.2%増加しており、特に注目されています。
地域別では、頭皮・顔(髭)・胸毛への移植が最も多かったのはアメリカ合衆国であり、まつげ・眉毛・陰部の毛に対する移植手術はアジア地域で最も多く行われていました。
調査概要
この調査は、米国イリノイ州シカゴのリレバント・リサーチ社(Relevant Research, Inc.)が実施したもので、ISHRSに所属する医師が提供した実際の診療データを集計しています。将来予測ではなく、あくまで過去の実績に基づいています。サンプルの誤差範囲は±6.4%(信頼水準95%)です。
詳細な調査レポートは、ISHRSの公式ページ「Hair Restoration Surgery Statistics」で閲覧可能です。








