毛はいつから生えるの?毛包の不思議な起源と再生医療の可能性

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この記事の概要

「髪の毛は、いつ・どこから・どうやって生えるのか」そんな疑問を科学的に解き明かすコラムです。毛包(hair follicle)の起源は、実は私たちが「人の形」になるずっと前、受精からわずか数週間の間に始まっています。本記事では、毛包がどのように幹細胞から生まれ、成長し、肌や臓器と深く関わっているのかを、最新の研究成果とともにわかりやすく解説。再生医療や脱毛症治療への応用も視野に入れた、毛髪科学の最前線をご紹介します。

毛包の起源とは?:ヒトの発生初期に起こる細胞の運命づけ

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ヒト胚のごく初期段階では、毛包(hair follicle)はおろか、骨や神経、内臓、皮膚といった器官の痕跡すら存在しません。この時点で見られるのは、幹細胞(stem cells)と呼ばれる前駆細胞だけです。これらの幹細胞は、遺伝子(genes)の働きや、そこから生成される成長因子・発生調節分子(growth and development molecules)によって、特定の細胞型——たとえば骨細胞、神経細胞、皮膚細胞——へと変化していきます。

驚くべきことに、毛包の発生は乳腺や前立腺といった他の器官と共通の発生経路を持っています。これは、幹細胞が持つ「多分化能(multipotency)」——すなわち、さまざまな専門的細胞へと変化する能力——を示す一例です。

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毛包形成の始まり:細胞間のシグナル交換による「芽(bud)」の出現

毛包は、幹細胞から突然現れるわけではありません。毛包発生の第一歩は、外胚葉(epidermal layer:皮膚の外側の層)と、内側にある中胚葉性の細胞群(mesenchymal layer)の間で起こる分子シグナルの交換(molecular signaling)から始まります。

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このシグナル交換によって、皮膚の表面に「上皮芽(epithelial bud)」と呼ばれる小さな隆起が形成されます。これは、毛包を構成する細胞群が「毛になるための」専門的な細胞へと変化を始めたことを意味します。

この現象は、ヒト胚が胎児(fetus)へと成長する以前、すなわち妊娠約9週目にはすでに始まっていることがわかっています。最初に毛包ができるのは、将来的に眉毛、上唇、顎になる部分です。その後、顔や頭皮、全身へと毛包形成が「波状」に進行し、妊娠4~5か月目にはほぼすべての毛包が形成されます。そして通常、出生後に新たな毛包が自然に生じることはないと考えられています。

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毛包が「毛を生やす構造」になるまでの分子プロセス

毛包が発生すると、そこに集まった幹細胞たちは分化(differentiation)と呼ばれる過程を経て、特定の機能を持つ細胞へと変化していきます。このとき、細胞は周囲の細胞とメッセンジャー分子(messenger molecules)を通じて情報をやりとりし、集団として毛包という複雑な構造体を形成します。

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その後、色素細胞(melanocytes)と呼ばれるメラニンを生成する細胞が毛包内部に組み込まれ、毛に色がつく仕組みが整えられます。同時に、皮脂腺(sebaceous gland)も毛包の一部として形成され、将来的に毛に潤いを与える油分(皮脂)を分泌するようになります。

また、毛包は皮膚表面に対して特定の角度で形成されるよう指示されており、これにより毛はブラシのように真っ直ぐではなく、一定の角度で生えます。ただし、寒さなどの刺激で立毛筋(arrector pili muscle)が収縮すると毛が立ち上がり、いわゆる「鳥肌(goose bumps)」が発生します。これは体温保持のための生理反応です。

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毛包研究の最前線:遺伝子とシグナルのクロストーク

ハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute)とロックフェラー大学(Rockefeller University)の研究者たちは、毛包形成に関与する分子シグナル伝達(signal transduction)のメカニズムを明らかにしつつあります。

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彼らの研究によれば、毛包を構成する細胞がどのようにして上皮芽を形成するのか、その背景には特定の遺伝子の活性化・抑制(up-regulation / down-regulation)を指示する分子シグナルが存在するとのことです。マウスを用いた実験では、この遺伝子制御を操作することで、通常よりも毛が多いマウス(多毛)や、毛のないマウス(無毛)を作り出すことに成功しています。これは、毛包の発生が他の器官(歯、骨、内臓、四肢など)と共通する発生経路を持つ可能性を示唆しています。

研究者たちは論文中で、「毛包の発生に関わる初期の上皮発生プロセス(epithelial development)の分子メカニズムに新たな光を当てた」と述べています。この知見は、器官形成の理解のみならず、上皮組織から発生するがん(例:皮膚がんや乳がん)の研究にも波及効果をもたらすと期待されています。

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関連研究:毛包発生をめぐるその他の論文

毛包の形成メカニズムに関する知見は、以下の研究成果によってさらに補強されています:

  • Bernet KMら(2002):「ケラチン16(keratin 16)の発現が皮膚形成および毛周期における特定の上皮細胞を定義する」
    Journal of Investigative Dermatology 119:1137–1149.
  • Smith FJら(2002):「ヒト、マウス、有袋類におけるケラチン7(keratin 7)のクローニングと、マウスでの発現分布の調査」
    Biochemical and Biophysical Research Communications 297:818–827.
  • Laurikkala Jら(2002):「毛包発生におけるTNFシグナル“エクトジスプラシン(ectodysplasin)”とその受容体EDARによる制御」
    Development 129:2541–2553.
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記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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