この記事の概要
加齢やホルモンバランスの変化によって進行する脱毛症。せっかく植毛手術を受けたのに、その後も髪が減ってきた――そんな不安を感じていませんか?実は、アンドロゲン性脱毛症は進行性のため、追加の再生植毛が必要になることもあります。この記事では、なぜ再度の植毛手術が求められるのか、そして最新技術でどのように自然な見た目を取り戻せるのかを、専門的な視点からわかりやすく解説します。
再生植毛(Follow-up Hair Restoration Procedures)について
外科的植毛は、男性型脱毛症または女性型脱毛症(いずれもアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia))に対する永久的な治療法です。しかし、次のような理由から、再度植毛手術や一連の治療が必要になるケースもあります。

- アンドロゲン性脱毛症が進行し続けるため、希望する髪のボリュームを維持するために追加の施術が必要となる場合
- 過去に行った植毛手術が、現在のように洗練された技術を使用していなかったため、より自然な見た目を目指して修正したい場合
- 初回の治療部位に、さらに高い毛密度を希望する場合
- 加齢に合わせて、ヘアライン(hairline)の位置(前進または後退)を調整したい場合
- その他、患者様自身の個人的な理由による場合
これらの理由については、植毛専門医(hair restoration surgeon)と十分に話し合い、希望する結果が医学的・審美的に実現可能か確認することが不可欠です。
進行するアンドロゲン性脱毛症による追加治療の必要性
アンドロゲン性脱毛症は、遺伝性でかつ進行性の脱毛症です。ただし、その進行の仕方やスピードは予測が難しい特徴もあります。
例えば、父親や叔父たちが「僧侶型(頭頂部中心の)脱毛」だったとしても、その息子はもっと若い頃(20代)から脱毛が始まり、急速に進行する場合があります。この場合、息子は30歳までに髪の50%以上を失う一方で、父親は50歳を超えても中央部分のみの脱毛に留まるかもしれません。つまり、遺伝子は共有していても、脱毛の進行パターンには家族内で大きな個人差があるのです。

若年期に脱毛が始まる場合には、早期に植毛専門医に相談することが重要です。若いうちから始まる脱毛は、将来的に急速かつ広範囲に進行する兆候である可能性があります。そのため、FDA(米国食品医薬品局)認可の脱毛治療薬(例:フィナステリドやミノキシジル)を用いた治療プログラムが推奨されることもあります(詳細は「非外科的脱毛治療オプション」参照)。
また、経験豊富な医師は、将来的な脱毛範囲を予測して、移植毛を適切に配置することで、進行に備えた「予備」を作ることも可能です。しかし、予測不能な脱毛進行により、初回手術後にも追加手術が必要になるケースがあります。さらに、長期間の治療中にドナー部(移植用の髪を採取する部位)の毛髪が不足するリスクも考慮する必要があります。
こうした長期的な視点に立った治療計画については、必ず医師と十分に相談し、個々に最適なアプローチを設計してもらいましょう。
女性の場合は、妊娠や閉経(menopause)に伴うホルモンバランスの変化により脱毛が進行することがあり、その結果、追加の植毛手術が必要になることもあります。この判断には、専門医による診察と頭皮検査が不可欠です。
過去に行った植毛手術の修正と、最新技術による自然な見た目の実現
植毛手術は、約40年前からアンドロゲン性脱毛症の治療法として行われてきました。当時は、現在ほど洗練された器具や技術がなく、プラググラフト(plug graft)と呼ばれる、複数の毛包(毛根)を含んだ大きな単位で移植が行われていました。
近年では、器具や技術の飛躍的な進歩により、1〜4本の毛髪を含むマイクログラフト(micrograft)単位での移植が主流になっています。また、ドナー部から採取する際も、できる限り組織損傷を最小限に抑える方法が開発されています。この進化により、より自然な髪の生え方を再現できるようになりました。
かつての「プラグ」技術による植毛では、しばしば「とうもろこし畑」のような均一で不自然な並び方になり、移植とすぐに分かってしまう外観になることがありました。しかし、今日では、これらの古い植毛を自然な見た目に修正することが可能です。

専門医は頭皮の状態を評価し、患者様と合意の上で最適な修正プランを提案します。修正方法の一例としては、既存のプラグの間に不規則にマイクログラフトや単毛グラフトを配置して自然な密度を演出したり、必要に応じて古い移植部を部分的に除去したうえで新たな移植を行う方法もあります。取り除いた毛包が健全であれば、それを再利用することも可能です。
ただし、修正手術には、患者様と医師との密な協力が不可欠です。場合によっては、患者様の希望する結果が、技術的または美的観点から適切でないと医師が判断することもあります。たとえば、色白で硬い黒髪の方が高密度を希望すると、結果として「モッサリ」とした不自然な見た目になるリスクがあるため、慎重な判断が求められます。
なお、古い植毛手術によって生じた頭皮の凹凸(コブ状(cobblestone))やドナー部の傷跡についても、多くは小規模な外科的修正で改善できます。
年齢に応じたヘアライン(hairline)の調整が必要になることも
若い頃(20〜30代)に脱毛が進行し、植毛手術を受けた男性が、「若々しい印象」を求めて前頭部〜こめかみ部(frontal-temporal area)に低めのヘアラインを希望することがあります。しかし、年齢を重ねると、この若々しいヘアラインがかえって不自然に感じられるようになる場合もあります。
このような場合、ヘアラインの修正手術が選択肢となります。具体的な方法には次のようなものがあります。
- 頭皮縮小術(scalp reduction)によるヘアラインの後退
- 頭皮縮小+数列の移植毛除去
- 前額リフト(forehead lift)による前頭部の引き上げ
- ヘアラインから毛髪を外科的に切除
これらの施術は、患者様の希望と、医学的・審美的観点からの総合的な判断に基づき、経験豊富な植毛専門医が提案・実施します。
参考文献
- Leavitt ML. 「Corrective hair restoration」『Hair Replacement: Surgical and Medical』Stough DB, Haber RS編、St. Louis: Mosby, 1996: 306-314.
- Swinehart JM. 「Hair repair surgery: Corrective measures for improvement of older large-graft procedures and scalp scars」『Dermatologic Surgery』1999; 24: 523-529.
- Unger WP. 「Correction of poor transplanting」『Hair Transplantation, 3rd ed』New York: Marcell Dekker, Inc., 1995: 375-388.







