FUEとFUTの違いとは?最新植毛法の特徴とグラフト採取量を最大限に活かす方法を解説

薄毛や抜け毛の診察に対応する医師と看護師が笑顔で立つ、安心感のある専門クリニックのイメージ写真

この記事の概要

「植毛には興味があるけれど、FUEとFUTって何が違うの?」という疑問を持つ方に向けて、この記事では、注目される2つの最新植毛技術の違いや選び方、そして移植に使う髪の毛(グラフト)を最大限に活かすための方法を、専門医の見解を交えながら分かりやすく解説します。

FUE vs FUT:どちらがあなたに合う?最新植毛技術と髪を最大限に活かす方法

海外の医療現場で活躍する2人の看護師が、白衣を着てカルテを見ながら治療内容を確認している様子。グローバルな医療ツーリズムにおける現地医療スタッフとのやり取りや、海外クリニックの信頼性を象徴するイメージとして使用。

髪の毛が薄くなってきた…。
鏡を見るたびに頭頂部や生え際が気になってしまう…。

そんな悩みを抱えている方にとって、「植毛」という言葉は一筋の光に思えるかもしれません。実は、今の植毛技術はとても進化していて、「昔のような不自然な仕上がりになるのでは…?」といった心配もずいぶん減ってきました。

本記事では、今注目されている2つの植毛技術、「FUT(フォリキュラーユニット・トランスプランテーション)」と「FUE(フォリキュラーユニット・エクスシジョン)」を中心に、それぞれの特徴、選び方、そして髪の毛の移植を最大限に活かす方法について、たっぷりと、分かりやすく解説していきます。

また、20年以上にわたり植毛の現場で活躍し続けるヒュマユン・モフマンド医師(Dr. Humayun Mohmand)の見解を交えながら、「どちらが良いか?」という単純な二択ではなく、「どう活かすか?」という視点からもお話ししていきます。



そもそもFUTとFUEってなに?──基本から丁寧に解説!

診療記録を手に微笑む医師の男性|植毛手術は医師の専門知識と外科的技術が必要であることを象徴するイメージ

まず、「FUT」と「FUE」は、どちらも自分自身の後頭部や側頭部から髪の毛(毛包:もうほう)を採取し、それを薄毛の部分に移植するという方法です。違いは「どうやって毛を採るか」にあります。

FUT(フォリキュラーユニット・トランスプランテーション)とは?

FUTは、後頭部の頭皮を帯状(ストリップ)に切り取り、そこから顕微鏡で毛包単位(1〜4本の髪が生えている単位)に分けて移植する手法です。日本語では「ストリップ法」や「帯状皮膚採取法」とも呼ばれます。

FUTの特徴は、

  • 安全なエリアから高品質の毛を大量に採取できる
  • 毛包の生存率が高い
  • 手術の計画が立てやすい
    といった点です。

ただし、頭皮を切開するため、線状の傷跡が残るというデメリットもあります。とはいえ、髪の長さがある程度あれば傷跡は隠れますし、後でFUEを使って目立たなくすることも可能です。



FUE(フォリキュラーユニット・エクスシジョン)とは?

一方でFUEは、専用のパンチ(直径0.7〜1.0mmほどの器具)を使って、頭皮から毛包を一つ一つくり抜いて採取する方法です。皮膚を帯状に切る必要がないので、FUTに比べて傷跡が目立ちにくいのが魅力です。

しかし、

  • 採取に時間がかかる
  • 技術が難しく、慣れない医師だと毛包を傷つけやすい
  • ドナー部位の管理が難しく、質の低い毛まで採ってしまうこともある
    といった課題もあります。



ドナー部位とは?「毛の畑」を大切に扱うことがカギ

植毛に使う髪の毛は、自分自身の「ドナー部位」から採取します。これは多くの場合、後頭部や側頭部が対象です。

なぜなら、これらの部位は男性ホルモンの影響を受けにくく、将来的に脱毛しにくい性質があるからです。つまり、ここから採取した毛を移植すれば、移植先でも長く生え続ける可能性が高いのです。

モフマンド医師によると、このドナー部位はすべてが均等に優れているわけではなく、特に「安全なドナーゾーン(Safe Donor Zone)」と呼ばれる領域が重要なのだそうです。

この安全ゾーンは、

  • 頭皮全体のドナーエリアの約1/3〜40%程度
  • 将来にわたっても毛が残る可能性が高い
  • 質の高い毛包が得られる
    という特徴があります。

しかし、FUEではこのゾーン以外からも毛を採取してしまうケースが多く、将来的に薄毛になるリスクのある部位からの採取が行われてしまうことも。その結果、せっかく移植しても、長くは保てないということになりかねません。



FUTの魅力:量より質、そして計画的な収穫

モフマンド医師が特に評価しているのが、FUTによる「高品質な毛包の確実な収穫」です。

FUTでは、傷が一箇所に集中するため、

  • ドナー部位全体を乱雑に使わない
  • 将来の再手術に向けてドナー資源を温存できる
  • 移植に使える毛の「質」が高い
    というメリットがあります。

彼はこの方法を「良質な素材を、最も信頼できる場所から丁寧に集める作業」と表現しています。まるで、熟練の職人が最高級の布を丁寧に裁断して使うかのようです。



FUEの落とし穴?──便利さと引き換えの課題

FUEは技術的にも新しく、「メスを使わない」「ダウンタイムが短い」などの理由で人気があります。しかし、モフマンド医師はFUEの「便利さ」だけに目を向けすぎることのリスクを指摘しています。

FUEでは、

  • ドナーエリア全体からまばらに採取するため、頭皮に無数の小さな点状の傷が残る(ピットスカー)
  • 医師の技術によっては、毛包が壊れて使えなくなるリスクも高まる
  • 長期的な発毛維持には、薬の併用が必要になるケースもある
    といった現実があります。



2つを組み合わせるという選択肢:最強の植毛術!

ここで登場するのが、「FUTとFUEのハイブリッド手術」です。モフマンド医師は、患者にとって最も効果的な結果を出すためには、

  • FUTで安全ゾーンから高品質な毛を確実に採取
  • FUEで足りない部分を補う
    という二段構えの戦略が最適だと考えています。

この方法を使えば、

  • ドナーエリアの乱用を防ぎつつ
  • より自然でボリューム感のある仕上がりが得られる
    という、理想的なバランスが実現します。



カバレッジファクター(Coverage Factor)という考え方

モフマンド医師は、「カバレッジファクター」という概念にも触れています。これは、必ずしも高密度に髪を詰めることが見た目の満足度を高めるわけではない、という考え方です。

彼の施術では、

  • 初回は1平方センチあたり約25グラフトを配置
  • 髪型の希望や将来の変化に合わせて、2回目以降で戦略的に追加
    というアプローチを取ります。これにより、少ない毛でも見た目に自然なボリュームを演出できるのです。



医師の「好み」に惑わされないで:大切なのは中立的な説明

医師の中には、

  • 自分が得意な技術だけを勧める
  • よく使う手法だけに偏った説明をする
    といったケースも少なくありません。

モフマンド医師は、「医師の技術バイアスに惑わされず、患者自身が納得して選べるように、正しい情報を伝えることが医師の倫理的責任だ」と力説します。



まとめ:FUEとFUTは対立ではなく、共存が鍵!

結局のところ、FUEとFUTは「どちらか一方が優れている」という話ではありません。
それぞれに長所と短所があり、患者の髪の状態、将来の脱毛リスク、生活スタイル、希望のヘアスタイルなどに応じて使い分けることが大切です。

そして、両方の技術に精通し、柔軟に対応できる医師こそが、本当に優れた植毛専門医だと言えるでしょう。



おわりに:自分に合った選択をするために

髪の悩みは、とてもデリケートで、そして日常生活に大きな影響を与えます。だからこそ、植毛という選択肢を検討するなら、その技術や仕組みをしっかり理解し、信頼できる医師と一緒に最善のプランを見つけることが大切です。

あなたの髪と人生が、もう一度輝き始めるその第一歩として、この知識が少しでも役立てば幸いです。



記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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