この記事の概要
髪の毛はなぜ抜けて、また自然に生えてくるのでしょうか?その答えは「毛周期」という人体の神秘的なサイクルにあります。本記事では、専門用語をわかりやすく解説しながら、髪の成長・脱毛・再生を繰り返すメカニズム、そして幹細胞の重要な役割について詳しく紹介します。
髪の毛の生え変わりとは、1本1本の毛が「成長期・退行期・休止期」という毛周期(ヘアサイクル)をくり返し、古い毛が抜けて新しい毛に置きかわる自然なしくみです。毎日髪が抜けても心配いらないのは、その多くが役目を終えた毛であり、同じ毛穴から次の毛が育っているからです。一方で、AGA(男性型脱毛症)などでこのサイクルが乱れると、成長期が短くなって毛が太く長く育つ前に抜けてしまい、少しずつ薄毛が進みます。
この記事では、髪の毛の生え変わりの基本、成長期・退行期・休止期それぞれの期間、1日に自然に抜ける本数の目安、そして「正常な抜け毛」と「病的な抜け毛」の見分け方を、専門用語をかみくだきながらやさしく解説します。植毛や毛髪治療を考える前に知っておきたい、からだのしくみのお話です。
この記事でわかること
- 髪の毛の生え変わり=毛周期(ヘアサイクル)の全体像
- 成長期・退行期・休止期の期間とそれぞれの役割
- 1日に自然に抜ける本数の目安と、正常な抜け毛の特徴
- AGAでサイクルが乱れて薄毛が進む仕組みと、病的な抜け毛の見分け方
- 毛が再生する土台となる「毛包幹細胞」の基礎知識
髪の毛の生え変わり(ヘアサイクル)とは
髪の毛の生え変わりとは、1本1本の毛が寿命を迎えて抜け、同じ毛穴から新しい毛が生まれてくる周期的なサイクルのことです。この周期を毛周期(もうしゅうき)、または英語のまま「ヘアサイクル」と呼びます。

朝、鏡の前で髪をとかしたとき、ブラシや洗面台に抜け毛が残っていることがあります。私たちが患者さんから相談を受ける中でも、「最近抜け毛が増えた気がする」という不安の声はとても多く聞かれます。けれども、抜けた毛のほとんどは、すでに役目を終えて自然に抜け落ちた「休止期の毛」です。
頭には、およそ10万本の毛が生えているといわれます。その1本1本が別々のタイミングで生え変わっているため、私たちの髪はいつ見てもほぼ同じボリュームを保っていられます。全部の毛が一斉に抜けたり生えたりしないところに、からだのうまくできたしくみがあります。
毛周期は、髪が伸びる「成長期」、成長を終える準備をする「退行期」、次の毛が生えるまで待つ「休止期」という3つの段階からなります。新しい毛が下から育ってくると、上にあった古い毛は押し出されるようにして抜け落ちます。つまり、抜け毛は次の毛が育ちはじめたサインでもあるのです。
1つの毛穴(毛包)は、一生のあいだにこのサイクルを10〜20回ほどくり返すと考えられています。1回のサイクルが数年単位のため、生まれてから年を重ねるまで、同じ毛穴が何度も新しい毛を送り出してくれる計算になります。
成長期・退行期・休止期|3つの期間と役割
毛周期は成長期・退行期・休止期の3段階で構成され、髪が抜ける原因のほとんどはこの自然な移り変わりで説明できます。それぞれの期間と役割を、下の表にまとめました。
| 段階 | 期間の目安 | 髪全体に占める割合 | 役割・状態 |
|---|---|---|---|
| 成長期 (アナゲン) | 約2〜6年 (男性でおよそ3〜5年) | 約85〜90% | 毛が根元でつくられ、太く長く伸びていく時期 |
| 退行期 (カタゲン) | 約2〜3週間 | 約1% | 毛をつくる働きが止まり、抜ける準備を整える時期 |
| 休止期 (テロゲン) | 約3〜4か月 | 約10〜15% | 成長を休み、下で育つ新しい毛に押し出されて抜ける時期 |
いちばん長いのが成長期です。ここで毛が十分に育つからこそ、髪はしっかりとした太さと長さになります。健康な頭皮では、全体の8〜9割の毛がこの成長期にあるとされています。
退行期はごく短く、わずか2〜3週間ほど。この間に毛を根元でつくる「毛球」の働きが弱まり、毛は上へ押し上げられていきます。全体に占める割合が約1%と小さいのは、それだけ短い期間だからです。
そして休止期。ここでは毛の成長が止まり、次の毛が下から育つのを待ちます。3〜4か月ほど経つと、育ってきた新しい毛に押し出されるかたちで古い毛が抜け、ふたたび成長期へと移っていきます。この静かな入れ替わりの時期。
髪の色つやや太さは、成長期にどれだけ健やかに毛が育つかで大きく変わります。髪色そのものの決まり方に興味がある方は、髪色と遺伝の関係|2つのメラニンで決まる黒髪・白髪の仕組みもあわせてご覧ください。
1日に自然に抜ける本数の目安と、正常な抜け毛の特徴
健康な人でも、髪は1日におよそ50〜100本ほど自然に抜けており、これは毛周期による正常な生え変わりの一部です。抜け毛があること自体は、異常ではありません。
抜ける本数は季節によっても変わります。とくに秋は抜け毛が増えやすく、一時的に1日100本を超えて感じられることもあります。これは動物が季節ごとに毛を替えるのと似た自然な変動で、多くは数週間から数か月でおさまります。
正常な抜け毛には、いくつかの見た目の特徴があります。次のような毛は、寿命を終えて自然に抜けた休止期の毛だと考えられます。
- 毛先までしっかり伸びた、太さのある毛が中心
- 抜けた毛の根元が白っぽい丸い形(毛球)をしている
- 本数が1日50〜100本前後で、日によって多少ばらつく程度
- 抜け毛が増えても、頭皮全体が透けて見えるほどには変化しない
抜け毛の本数を毎日きっちり数える必要はありません。目安として知っておくと、「これは自然な範囲なのか、それとも気にかけたほうがよいのか」を落ち着いて判断する手がかりになります。抜け毛が増えたと感じたら、シャンプー時や枕元の毛の様子を1〜2週間ほど観察してみてください。
「帽子をかぶるとハゲる」「シャンプーで洗いすぎると抜ける」といった抜け毛の言い伝えには、根拠のあいまいなものも少なくありません。よくある誤解は、「帽子をかぶるとハゲる」は本当?脱毛にまつわる5つの誤解を専門医が解説で整理しています。
抜け毛が急に増えた、地肌が透けてきたと感じたら、一人で悩まず一度ご相談ください。ヒロクリニック植毛「Natural Pro」では、自毛植毛の無料カウンセリングを受け付けています。費用や仕上がりの不安は、専門医に直接ご相談ください。
病的な抜け毛(AGA)の見分け方|生え変わりのサイクルが乱れる仕組み
AGA(男性型脱毛症)では、毛周期のうち成長期が短くなり、毛が十分に育つ前に抜けてしまうため、少しずつ薄毛が進みます。正常な生え変わりとの大きな違いは、この「成長期の短縮」にあります。

通常は2〜6年ほど続く成長期が、AGAでは数か月から1年程度にまで縮んでしまうことがあります。すると、毛は太く長く育ちきる前に退行期・休止期へと進み、細く短いままで抜けていきます。この現象は「軟毛化(なんもうか)」と呼ばれ、髪全体が細く弱々しく見える原因になります。
この背景には、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)の働きが関わっているとされます。日本皮膚科学会の皮膚科Q&A(脱毛症)でも、男性型脱毛症では前頭部や頭頂部の成長期が短くなり、軟毛化が進むと説明されています。ホルモンと薄毛の関係は、髪が薄くなるのは男性ホルモンのせい?テストステロンとDHTのしくみをやさしく解説でくわしく取り上げています。
正常な生え変わりと病的な抜け毛は、次のような点で見分けるヒントがあります。診療の現場では、抜け毛の「本数」よりも「毛の質」と「地肌の見え方」の変化を丁寧にうかがうようにしています。
| 観察ポイント | 正常な生え変わり | 気にかけたい抜け毛 |
|---|---|---|
| 抜けた毛の太さ | 毛先まで伸びた太い毛が中心 | 細く短い毛(軟毛)が目立って増える |
| 進み方 | 季節などで一時的に増減する | 数か月〜数年かけて徐々に進む |
| 目立つ部位 | 全体的でかたよりが少ない | 生え際(前頭部)や頭頂部が中心 |
| 地肌の見え方 | 大きくは変わらない | 分け目や頭頂部の地肌が透けてくる |
細く短い抜け毛が増える、生え際や頭頂部だけが薄くなる、地肌が透けてきた——こうした変化が数か月続くようであれば、自然な生え変わりの範囲を超えているサインかもしれません。気になる場合は、自己判断で市販品を試す前に、皮膚科や毛髪の専門医に相談してください。円形脱毛症などの疾患による抜け毛は、まず皮膚科での診断が必要で、植毛の適応外のこともあります。
毛包幹細胞の役割|髪が再生する土台
髪が何度も生え変われるのは、毛穴の奥に「毛包幹細胞(もうほうかんさいぼう)」という、毛をつくり直すもとになる細胞が備わっているからです。これが髪の再生の土台になっています。
幹細胞とは、必要に応じてさまざまな細胞に変化し、自分自身を増やすこともできる特別な細胞です。毛穴の中ほどにある「バルジ領域」と呼ばれる部分に、毛をつくるための幹細胞がたくわえられていると考えられています。この幹細胞のたくわえ場所。
休止期を終えて成長期が始まるとき、この幹細胞が目覚めて活発に働きだし、毛をつくる細胞へと変わっていきます。1回のサイクルごとに毛包の下側は一度縮み、幹細胞の働きでまた再生される、という入れ替わりがくり返されているのです。
ただし、このしくみにはまだ解明しきれていない部分が多く残されています。幹細胞がどのように補われ、加齢や脱毛症でどう変化するのかは、現在も研究が進められている段階です。毛髪再生医療の研究が今後さらに進めば、髪をつくらなくなった毛包を再び働かせる治療につながる可能性があります。ただし、実用化には時間がかかり、効果には個人差があると考えられます。
ここで押さえておきたいのは、自毛植毛が、この毛包幹細胞ごと毛を移す治療だという点です。AGAの影響を受けにくい後頭部などの毛包を、薄くなった部分へ移植します。移した毛は、その場所でも本来の毛周期を保ちながら生え変わりをくり返すと考えられています。植毛の基本は、初めての植毛手術:知っておくべき基本情報で解説しています。
生え変わりのサイクルを健やかに保つために
毛周期を大きく乱さないためには、頭皮と全身の健康を整える毎日の習慣が土台になります。特別なことよりも、基本的な生活の積み重ねが髪の環境を左右します。
髪は、食事からとった栄養をもとに毛穴の奥でつくられます。睡眠不足や強いストレス、極端なダイエットが続くと、成長期の毛が休止期に移りやすくなり、一時的に抜け毛が増えることがあります。次のような習慣は、髪が育つ環境を整えるうえで役立ちます。
- たんぱく質・鉄・亜鉛など、髪の材料になる栄養をバランスよくとる
- 睡眠時間を確保し、頭皮の血流を保つ生活リズムを整える
- 強くこすらず、指の腹でやさしく洗って頭皮を清潔に保つ
- 喫煙・過度な飲酒・過剰な整髪料の使いすぎを控える
生活習慣の見直しは、毛周期が乱れる要因を減らすための土台づくりです。ただし、AGAのように進行するタイプの薄毛は、生活改善だけで止めることは難しいとされています。気になる変化が続くときは、早めに専門医へ相談してください。原因に応じた対応をとることが、髪を守る近道になります。
なお、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」では、自毛植毛術は男性型脱毛症に対して推奨度B、人工毛植毛術は推奨度Dと位置づけられています。学会が自毛植毛を相対的にすすめ、人工毛植毛は行うべきでないとしている点は、治療を選ぶうえで知っておきたいポイントです。くわしくは同ガイドライン(PDF)をご参照ください。
よくあるご質問(FAQ)
髪の毛の生え変わりについて、患者さんからよくいただく質問にお答えします。
Q1. 1日に何本くらいまでの抜け毛なら心配いりませんか?
健康な人でも1日およそ50〜100本は自然に抜けます。秋など季節によって一時的に増えることもあり、多少のばらつきは正常な範囲です。太くしっかりした毛が中心で、地肌の見え方が大きく変わらないなら、過度に心配する必要はありません。ただし細く短い毛が増え続ける場合は、一度ご相談ください。
Q2. 抜けた毛穴からは、もう毛は生えてこないのですか?
自然な生え変わりで抜けた毛穴では、休止期を経て同じ毛穴から新しい毛が育ってきます。毛穴の奥に毛包幹細胞が残っているためです。ただしAGAが進むと成長期が短くなり、生えてくる毛が細く弱くなっていきます。生えてこない状態が続くかどうかは原因により異なるため、個人差があります。
Q3. AGAによる抜け毛と、正常な抜け毛はどう見分けますか?
大きな手がかりは「毛の質」と「進み方」です。細く短い毛が増える、生え際や頭頂部だけが数か月かけて薄くなる、分け目の地肌が透けてくる——こうした変化が続く場合は、成長期が短くなっているサインかもしれません。自己判断が難しいため、皮膚科や毛髪の専門医の診察を受けてください。
Q4. 生活習慣を整えれば、薄毛は止められますか?
バランスのよい食事や十分な睡眠は、髪が育つ環境を整えるうえで役立ちます。ただしAGAのように進行するタイプの薄毛は、生活改善だけで止めることは難しいとされています。生活習慣の見直しは土台として続けつつ、進行が気になる場合は専門的な対応を検討してください。効果には個人差があります。
Q5. 植毛した毛も、その後は生え変わりますか?
自毛植毛では、AGAの影響を受けにくい後頭部などの毛包ごと毛を移します。移植した毛は、いったん抜けたあとに再び生えてきて、その場所でも本来の毛周期に沿って生え変わりをくり返すと考えられています。定着や仕上がりには個人差があるため、詳しくは無料カウンセリングでご相談ください。
髪の生え変わりの変化が気になったら、原因に合わせた見極めが第一歩です。ヒロクリニック植毛「Natural Pro」では、自毛植毛の無料カウンセリングを受け付けています。費用や仕上がりの不安は、専門医に直接ご相談ください。電話・LINE・予約フォームからお問い合わせいただけます。
まとめ|生え変わりを知ることが、髪を守る第一歩
髪の毛の生え変わりは、成長期・退行期・休止期という毛周期をくり返す、からだの自然なしくみです。毎日50〜100本ほど抜けるのは正常な範囲で、太くしっかりした毛が中心なら心配いりません。
一方で、細く短い毛が増える、生え際や頭頂部が数か月かけて薄くなるといった変化は、AGAなどで成長期が短くなっているサインの可能性があります。正常な生え変わりと病的な抜け毛を見分ける目を持つことが、早めの対応につながります。
毛穴の奥にある毛包幹細胞は、髪が何度も生え変わる土台です。自毛植毛は、この毛包ごと丈夫な毛を移す治療にあたります。気になる変化が続くときは自己判断で抱え込まず、皮膚科や毛髪の専門医に相談してください。原因を正しく知ることが、これからの髪を守る近道になります。
【監修】ヒロクリニック植毛 統括院長・岡 博史(医学博士/日本皮膚科学会 皮膚科専門医/AGA外来 診療部長)。【発行】ヒロクリニック植毛編集部(医療法人社団福美会)。本記事は日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」等の公的情報をもとに作成しています。治療の適応や効果には個人差があります。施術を検討される場合は、必ず医師の診察を受けてください。
略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、ヒロクリニック植毛の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。




