この記事の概要
自毛植毛を考えているけれど、問診票に「正直に書くべきか」迷っていませんか?タバコ、お酒、薬物使用——ちょっと答えづらいこれらの項目が、実は手術の成功率や回復スピードに大きく関係しています。本記事では、医師がなぜ生活習慣を確認するのか、その理由と背景を医学的根拠を交えてわかりやすく解説。術後トラブルを防ぐためにも、まずは「正直さ」から始めましょう。
医療申告では「正直」が最善の選択です

誰にでも、人にはあまり言いたくない「悪い習慣」が一つや二つあるものです。たとえば、喫煙本数や飲酒量を自慢げに語る人はほとんどいません。それもそのはず、健康に悪影響を及ぼす行動だと多くの人が理解しているからです。
しかし、自分自身の健康、特に自毛植毛(hair restoration)などの医療行為を受ける前の問診票(medical history)記入においては、「正直であること」が何よりも重要です。ご自身の喫煙や飲酒習慣について、包み隠さず正しく伝えることは、安全で効果的な施術を受けるための大切なステップです。
本記事では、なぜ正確な医療情報の申告が重要なのか、喫煙・飲酒・薬物使用が自毛植毛にどのような影響を与えるのか、そして医師に伝えるべき内容とその理由について、医学的根拠を交えて詳しく解説します。
「医療申告」とは?——施術前に行う最も重要なステップ

「医療申告」とは、医師があなたの健康状態、生活習慣、既往歴(過去の病気や手術歴)、現在使用している薬などを把握するために行う質問や問診のことを指します。これは、医療処置を安全に実施するうえで不可欠な手続きであり、特に以下のような情報が重視されます:
- 慢性的な疾患(例:高血圧、糖尿病、心疾患など)
- アレルギー歴(例:薬剤、麻酔薬、食物などに対するアレルギー)
- 現在服用している薬(処方薬・市販薬・サプリメント含む)
- 喫煙・飲酒・薬物使用の有無
このうち、喫煙や飲酒、薬物使用といった生活習慣に関する項目は、「言いづらい」「恥ずかしい」と感じて正確に答えない人もいます。しかし、それが思わぬリスクにつながることがあるのです。
なぜ喫煙や飲酒が自毛植毛に影響するのか?
自毛植毛は、患者自身の後頭部などから毛包(hair follicle)を採取し、薄毛の部分に移植する手術です。局所麻酔下で行われ、出血や炎症のリスクも伴います。以下では、喫煙・飲酒・薬物使用がそれぞれどのような影響を及ぼすかを詳しく見ていきましょう。
喫煙(Smoking)の影響
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素などの成分は、血管を収縮させ、血液の流れを悪化させることが知られています。これにより以下の問題が起こります:
- 移植毛の定着不良:血流が不十分なため、移植された毛包が十分な栄養を得られず、脱落する可能性が高まります。
- 傷の治癒遅延:血流が悪いと、酸素や栄養が届きにくくなり、傷の回復が遅くなります。
- 感染症のリスク上昇:治癒が遅れることで、創部が細菌に感染しやすくなります。
アメリカ形成外科学会(American Society of Plastic Surgeons)では、手術の少なくとも2〜4週間前からの禁煙を推奨しています。また、術後も同程度の禁煙期間が必要です。
飲酒(Alcohol Consumption)の影響
アルコールには血管拡張作用があり、過度の飲酒は以下のような影響を及ぼします:
- 手術中の出血量増加:血管が拡張し、止血しづらくなるため、施術の安全性が下がります。
- 麻酔薬との相互作用:アルコールの常用者は、麻酔薬に対する感受性が変化することがあり、適切な麻酔管理が難しくなります。
- 肝機能障害による薬物代謝の異常:アルコールの長期摂取により肝臓に負担がかかると、術後に使用される抗生物質や鎮痛薬の代謝が遅れる可能性があります。
日本形成外科学会のガイドラインでも、「手術の1週間以上前からの禁酒が望ましい」と明記されています。
違法薬物(Recreational Drugs)の影響
違法薬物(例:コカイン、マリファナ、覚せい剤など)は、身体への影響が非常に強く、以下のようなリスクを伴います:
- 血圧や心拍数の急激な変動:コカインなどは血圧を急上昇させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。
- 免疫機能の低下:長期的な薬物使用は、免疫力を低下させ、術後感染のリスクを高めます。
- 麻酔薬との危険な相互作用:特に吸入麻酔や局所麻酔との併用で、予測不能な副作用やアレルギー反応を起こす可能性があります。
そのため、医師は施術前に「違法薬物の使用歴」を確認する必要があります。
医師に伝えるべき質問項目とその理由
自毛植毛やその他の美容医療を検討している方は、問診時に以下のような質問を受けることが一般的です。それぞれの質問に「どのように答えるべきか」「なぜその情報が重要なのか」を解説します。
1. 「タバコは吸っていますか?どのくらいの本数、何年くらい吸っていますか?」
この質問は、血管や循環器への負担を医師が見積もるために重要です。また、禁煙を促すタイミングを判断する材料にもなります。禁煙歴がある場合は、「何年前にやめたか」「どの程度吸っていたか」も併せて伝えるのが理想的です。
2. 「お酒は飲みますか?頻度と量はどれくらいですか?」
飲酒の頻度(週に何回、1回あたり何合など)や、飲み始めた時期、飲酒歴も伝えると、肝機能や出血傾向の予測に役立ちます。休肝日があるかどうか、直近に飲酒したのはいつかも把握しておくとよいでしょう。
3. 「違法薬物や嗜好品を使用したことがありますか?」
これは、医師にとって非常に重要な質問です。正直に答えることに抵抗を感じる方も多いですが、施術の安全性を確保するためには必須の情報です。現在使用していない場合でも、「過去に使用歴があるが、○年×ヶ月前にやめた」と伝えるだけでも、医師の判断に大きく影響します。







