この記事の概要
ヘア移植って髪を全部剃らないといけないの?そんな疑問に、ドナー部位・移植部位・移植方法という3つの視点から丁寧に答えます。剃る場合と剃らない場合の違いや、それぞれのメリット・デメリットまで、専門用語もわかりやすく解説。自然な仕上がりを目指す方必見の記事です!
はじめに:そもそも「剃毛」ってどういう意味?

最近、ヘア移植(髪の毛を薄い部分に移す手術)に関する話題で、「剃毛(ていもう)」とか「非剃毛(ひていもう)」という言葉を耳にすることが増えてきました。剃毛とは「髪の毛を剃ること」、非剃毛は「剃らないこと」を指します。でも、実はこの言葉、医療の現場でも使い方がまちまちで、患者さんが混乱してしまうことがあるんです。
たとえば、「非剃毛のヘア移植」と言っても、「どこの毛を剃らないのか?」によって意味が全然違ってきます。そこでこの記事では、ヘア移植の3つの重要なポイント――
この3つに分けて、それぞれの「剃毛」や「非剃毛」がどういう意味で、どんなメリット・デメリットがあるのかを、わかりやすく丁寧に説明していきます!
ドナー部位とは?髪を「採る場所」の剃毛・非剃毛
ドナー部位ってどこ?

ヘア移植ではまず、「元気な髪の毛」を別の場所から取ってきます。その取ってくる場所が「ドナー部位(donor site)」と呼ばれ、主に後頭部や耳の上あたり(側頭部)から選ばれます。ここは男性型脱毛症などでも比較的髪が残りやすいエリアなんです。
このドナー部位から「毛包(もうほう)」という毛の根っこごと採取し、薄くなった部分に移していきます。
採取方法には2つの種類がある!
ドナー部位から毛包を取る方法には、大きく2種類あります。
1. ストリップ法(Strip FUT)
「ストリップ」とは英語で「帯(おび)」という意味。この方法では、頭皮を帯状に切り取って、その中から毛包を取り出します。切った部分は縫って閉じるので、傷跡は残りますが、上から髪で隠すことができます。
この方法では、剃る・剃らないの選択が可能で、髪が長ければ手術後の見た目もあまり変わりません。
2. FUE法(Follicular Unit Excision)
最近の主流がこのFUE法です。これは毛包を1つずつ専用の「パンチ」という小さな円形の器具でくり抜いて取っていく方法です。切開の範囲が小さく、傷跡も目立ちにくいというメリットがあります。
ただし、FUEは細かく皮膚を切開するため、立派な「外科手術」とされており、専門の医療資格を持った医師や看護師が行う必要があります。
FUE法における「剃毛」のスタイル:あなたはどれを選ぶ?
FUEでは、ドナー部位の髪の毛をどれくらい剃るかによって、次の3つのスタイルがあります。
① 完全剃毛(Full Shave)
後頭部全体をスッキリ剃る方法です。男性で短髪好きな人には違和感が少なく、施術しやすい方法です。
② 部分剃毛(Partial Shave)
髪を持ち上げて、内側だけを細く剃る方法。剃った部分は周囲の髪で隠せるので、外見があまり変わらずに済みます。
例えば、必要な毛の数が多い場合には、いくつか細い帯状のゾーンを設けて、効率よく毛包を採取することもできます。
③ 非剃毛(Unshaven)
まったく剃らずに、長い髪のまま毛包を採取する技術です。これは見た目の変化をほとんど出さずに手術ができるので、芸能人や人前に出る仕事の人に人気があります。ただし、これにはかなり高い技術力が必要なんです。
非剃毛FUEのむずかしさとプロの工夫
長い髪のままで毛包を採取する「非剃毛FUE」は、見た目が自然に保たれるという大きな利点があります。しかし問題もあります。
まず、長い毛のままでは、毛の流れを読み取って正確にパンチを当てるのが非常に難しい!さらに、うまく採取できなければ「毛包切断(transection)」といって、毛の根っこが途中で切れてしまい、再び生えてこなくなるリスクがあります。
こうしたリスクを減らすために、医師は手術前に採取予定の毛だけハサミで短くしておいたり、パンチで切るタイミングであえて毛幹(毛の見えている部分)を切って調整したりする工夫をしています。
もう一つの利点は、採取しながら「薄毛が目立ってないか」をその場で確認できることです。これにより、必要以上に毛を取りすぎる「過剰採取(over-harvesting)」を防げます。
移植する側(レシピエント部位)における剃毛の意味
移植部位でも剃る?剃らない?
ヘア移植では、毛を「どこに移すか」も重要なポイントです。この「レシピエント部位」では、次のような選択肢があります。
どれがベストかは、医師とのカウンセリングで決めるのが基本です。
剃毛のメリット:技術的にやりやすく、密度を高めやすい
剃ることの一番のメリットは、毛が邪魔にならず作業がスムーズに進むこと。長い髪のままだと、毛が入り乱れて見えにくく、細かい手作業がしにくくなります。
さらに、密度高く毛を移植したい場合も、周囲の毛がない方が正確に狙って毛包を植えやすいんです。
非剃毛のメリット:手術直後もナチュラルな見た目!
反対に、剃らずに移植する方法は、手術直後から見た目がほとんど変わらないという魅力があります。
特に女性や長髪の方にとっては、「手術したって誰にもバレない」という安心感があります。
さらに最近では、「ロングヘアプレビュー移植(Long-hair preview transplantation)」という、ちょっとカッコいい名前の手法も登場!これは、長い髪の中に新しい毛包が加わったときに、どんな仕上がりになるかをその場で確認できる方法です。手術中にバランスを調整できるという、美容的にとてもありがたい技術です。
毛包の移植法と「インプランター」って何?
毛包を移植するには、以下の道具が使われます。
- ピンセット(forceps):小さな毛包を手でつまんで植える
- 鈍頭インプランター(dull implanter):先が丸く、毛包をやさしく押し込む器具
- シャープインプランター(sharp implanter):先が鋭く、切開と移植を一度にできる
長い毛でも短い毛でも、これらの道具を使えばしっかりと植え付けることができます。
術後の注意点:髪が抜ける!? でも心配無用!
驚かれるかもしれませんが、移植した髪の毛は術後2〜3週間で一度「全部抜けてしまう」のが普通です。これを「ショックロス」と呼びます。
でも、これは失敗ではありません!毛根(根っこ)はしっかり皮膚の中に残っていて、そこから数ヶ月後に新しい髪が元気に生えてきます。
術後は、洗髪や髪のとかし方に注意が必要です。せっかくの毛包を引っ張ってしまわないよう、医師の指導に従ってやさしくケアしましょう。
最後に:自分に合った方法を医師とじっくり相談しよう
「非剃毛ヘア移植」と聞いて「ラッキー!髪を剃らずに済むんだ!」と思ったあなた――ちょっと待ってください。
どこを剃らないのか? 採取する場所? 移植する場所? それとも両方?
意味がまったく変わってくるので、クリニックの説明をよく読み、しっかり医師と相談することがとても大切です。
剃る・剃らないには、それぞれメリットとデメリットがあります。あなたの髪型、生活スタイル、ダウンタイム(回復期間)の希望などを総合的に考えて、最適な方法を選びましょう。
「剃るべきか、剃らざるべきか?」――悩んだときこそ、信頼できる医師との対話が成功への第一歩です。








