髪は取り戻せる!頭皮を伸ばして薄毛を治す最先端外科治療とは?

スマートフォンで髪に関する最新ニュースを読んで微笑む若い女性のストック画像。世界の毛髪専門医によるシャキーラの美髪選出や、薄毛治療の新技術に関心を寄せる読者像をイメージした写真。

この記事の概要

「薄毛=植毛」と思っていませんか? 実は、頭皮そのものを“伸ばして”毛のない部分を切除するという、驚きの外科的治療が存在します。本記事では、組織拡張法やスカルプエクステンション、PATE法など、医学的に根拠ある最新技術を、わかりやすく丁寧に解説します。手術後の自然な仕上がりや、自毛植毛との併用メリットもご紹介。これまでの常識を覆す、目からウロコの新しい薄毛治療法に迫ります。

髪が薄くなっても、あきらめないで!頭皮を「伸ばして」薄毛を治療するという選択肢

「最近、髪が薄くなってきたかも……」「生え際が後退してきてる?」
鏡を見るたびに、そんな不安を感じたことはありませんか?

現代では、薄毛はもはや珍しい悩みではなく、男女問わず多くの人が抱える身近な問題です。そしてこの悩みに対して、医学は年々進歩を続けています。中でも最も知られているのが「自毛植毛(じもうしょくもう:Hair Transplantation)」。自分の後頭部などの髪の毛を採取し、薄くなった部分に移植するという技術です。

でも、実はそれだけが方法ではありません。

「頭皮を伸ばして、毛のない部分を丸ごと切り取ってしまう」という、ちょっと驚きの治療法があるのをご存じでしょうか? 本記事では、そのユニークかつ効果的な治療法について、できるだけわかりやすく、ちょっと物語のような語り口でご紹介していきます。

自分の髪を取り戻す方法には、思いもよらぬ“裏道”があるのです。

自信を取り戻す、最適な植毛

頭皮は意外と伸びる?皮膚のびっくりな性質

がん治療中の外見ケアに前向きな気持ちで取り組む若い女性が、白いキャップをかぶって海辺で笑顔を見せている様子。頭皮冷却キャップを連想させる装いで、心の回復と自分らしさの大切さを象徴するイメージ。

まずは、ちょっとした豆知識から始めましょう。

私たちの皮膚は、ただの「身体を覆う膜」ではありません。実は、力を加えると伸びる性質があるのです。

たとえば、ナイロンのストッキングを両端からグイッと引っ張ると、細かい網目が広がって、ずいぶん伸びますよね? それと同じように、人間の皮膚も、ある程度の期間引っ張り続けることで、だんだんと伸びていくのです。この現象を専門的には「機械的クリープ(mechanical creep)」と呼びます。

でも、それだけでは終わりません。

皮膚を長い時間かけて引っ張り続けていると、今ある皮膚が伸びるだけでなく、新しい皮膚が作られてくることがあるんです! さらには、近くの皮膚が少しずつ「引き寄せられてくる」こともあります。このように、皮膚自体が増えたり移動したりする現象を、「生物学的クリープ(biological creep)」と呼びます。

わかりやすい例でいえば、妊婦さんのお腹の皮膚。赤ちゃんが大きくなっていくにつれて、お腹の皮がどんどん伸びていきますよね? あれも、生物学的クリープの一種なのです。

この皮膚の「伸びる」「増える」という特性を応用して、薄毛治療に活かそうというのが、今回ご紹介する外科的治療法です。

自信を取り戻す、最適な植毛

方法その1:ティッシュエキスパンダーでじわじわ頭皮を拡張!

最初にご紹介するのは、組織拡張法(Tissue Expansion)という技術。これは、1982年にアメリカの形成外科医、アーネスト・マンダース先生によって頭皮に初めて応用されました。

さて、ここからはちょっと想像力を働かせてみてください。

あなたの頭の中に、柔らかい風船のようなものが入っていたらどうなるでしょう? この手術では、まさにそんな「風船=ティッシュエキスパンダー(Tissue Expander)」を、毛が生えている頭皮の下にそっと埋め込みます。

手術後、2週間ほど経ったら、その風船に少しずつ「生理食塩水(Saline)」という体に優しい水を注射器で入れていきます。週に1~2回のペースで、ちょっとずつちょっとずつ……。この過程を8~12週間続けることで、頭皮がゆっくりと膨らみ、生物学的クリープが起こります。

膨らんだ頭皮は、まるで新しい土地のように広がり、毛のある面積が増えます。そして最終段階で再度手術を行い、毛のない部分の頭皮を切除し、膨らませた毛のある頭皮でそこをカバーしていくのです。

ただし、注意点もあります。最終段階では頭皮がかなり膨らんでくるため、見た目に違和感が出ることがあります。帽子やウィッグで隠す必要があるかもしれません。でも、その一時的な不便を乗り越えれば、長期的には自然な見た目の改善が手に入ります。

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方法その2:ゴムバンドのように頭皮を左右から引っ張る「スカルプエクステンション」

次に登場するのは、1993年にフランスの外科医パトリック・フレシェ先生が考案したスカルプエクステンション(Scalp Extension)という方法です。

こちらのやり方は、風船ではなく「エクステンダー(Extender)」という特殊なシートを使います。このシートはシリコン製で、両端に金属のフックが付いており、まるで大きな輪ゴムのように引っ張って頭皮の下に取り付けられます。

このエクステンダーを、毛のある頭皮の左右に埋め込み、中央に向かって引っ張るように取り付けることで、毎日少しずつ、頭皮が「真ん中に集まる」ように変化していきます。

30日ほど経ったら再手術を行い、中央に残った脱毛部分を切除。そして、左右から引き寄せた毛のある頭皮で、その部分をカバーするのです。

この方法のメリットは、見た目の変化が比較的少ないという点。風船を使う拡張法と違って、頭皮が目立って膨らむことがないため、普段の生活への影響が少なく、自然な形で治療を進められます。

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方法その3:1回の手術で急速拡張!PATE法という革命的アプローチ

そして最後にご紹介するのは、PATE法(Prolonged Acute Tissue Expansion)。これは1997年、カナダのマーティン・G・ウンガー先生によって開発された、まさに革命的な方法です。

この手術は、なんといってもスピードがすごい!

まず、毛のある頭皮の下にティッシュエキスパンダーを入れ、切開した頭皮を閉じます。ここまでは先ほどの方法と似ていますが、ここからが驚きです。

エキスパンダーに蒸留水(Distilled Water)を入れて2分間膨らませ、そして2分間しぼませる。この「膨らませて、戻して」のサイクルを、手術中に18~20回繰り返します。まるで筋トレのような反復作業によって、頭皮に短時間で最大限の伸び(機械的クリープ)を引き出すのです。

その結果、たった一度の手術で、従来の頭皮縮小手術より136%も多くの脱毛部位の皮膚を除去できるというデータもあります。

スピーディに、そして一気に改善したいという方には、これ以上ない強力な選択肢となるでしょう。

自信を取り戻す、最適な植毛

最終仕上げは自毛植毛と組み合わせるのがベスト!

ここまでの外科的手法だけでもかなりの改善が期待できますが、理想的な仕上がりを目指すなら、自毛植毛(FUTやFUE)との組み合わせが最強です。

なぜなら、これらの手術によって毛のない部分の面積をあらかじめ半分以下にまで縮小しておくことで、その後の植毛がとても効率的になるからです。必要な移植毛の量が減るため、植毛の密度も高めやすく、仕上がりも自然になります。

すなわち、手術で「地ならし」をした後に、植毛という「最終仕上げ」を行う——これが現代の薄毛治療における最も洗練された戦略です。

自信を取り戻す、最適な植毛

まとめ:髪の未来は「伸びる頭皮」とともにある

「髪が薄くなってきた……」
そんな悩みは、誰にとっても切実です。

でも、医学は進化しています。そして、皮膚が持つ「伸びる力」と「再生する力」を活かせば、私たちの髪の未来には、まだまだたくさんの希望があるのです。

ちょっと変わった方法かもしれませんが、「風船のように膨らませる」「ゴムのように引っ張る」「筋トレのように刺激を与える」——そんな発想の転換が、新しい自分をつくる一歩になるかもしれません。

もしあなたが、これまでの治療法に限界を感じていたなら、この「皮膚を伸ばして治す」という選択肢、ぜひ専門医と一緒に検討してみてください。
その先には、きっと「鏡の中の自分」が、もう一度笑ってくれる未来が待っています。

自信を取り戻す、最適な植毛

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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