そのシャンプー、本当に髪にいい?毛髪科学者が教える「正しいヘアケア」の選び方

真剣な表情で両手を使い力強くシャンプーをする男性。ややコミカルな姿ながら、髪を守り育てようとする切実な思いがにじみ出ており、ポリフェノールなど自然由来の成分による毎日の頭皮ケアや育毛の重要性を表す場面。

この記事の概要

毎日使うシャンプーやコンディショナー、本当に自分の髪に合っていますか?「ノンシリコン」「サルフェートフリー」など流行のキーワードに惑わされがちですが、大切なのは科学に基づいた正しい選び方。毛髪研究の専門家が、髪を傷めないためのやさしく効果的なヘアケアの秘訣をお伝えします。

そのシャンプー、本当に髪にいい? ― 毛髪科学のプロが教える「失敗しないヘアケア」の秘密

美容院のシャンプー台で横たわる顧客の髪を丁寧に洗う美容師。正しい洗髪ステップとプロによる頭皮ケアをイメージさせる場面は、ヘアケア製品の使い方や順序を伝える文脈に適した視覚表現

毎日のように使うシャンプーとコンディショナー。あなたは何を基準に選んでいますか?「泡立ちがいいから」「香りが好きだから」「なんとなく高級そうだったから」――そんな理由で選んでいる人は、実はとても多いのです。

でも、もしあなたが「髪がパサつく」「指通りが悪い」「最近なんだかボリュームがない」なんて悩みを抱えているなら、その原因は“選び方”や“使い方”にあるかもしれません。

この記事では、20年以上にわたり毛髪とスキンケアの研究を行ってきたトーマス・ドーソン教授(Professor Thomas Dawson)のインタビューをもとに、髪に本当にいいシャンプーとコンディショナーの選び方、そして正しい使い方を、中学生にもわかるように、やさしく楽しく解説していきます。

「ヘアケアって難しそう…」と思っている方こそ必見。今日から使えるプロの知識で、あなたの髪はきっともっと輝きます。



髪の毛は「生きていない細胞」なのに、ものすごくデリケート?

「FUE法とは何か?」の記事を読みながら、毛髪移植の仕組みに納得する日本人女性の表情

まずは、ちょっと意外なお話から。

私たちの髪の毛は、実は生きていない細胞でできています。皮膚と違って、傷ついても自然に修復されることはありません。つまり、一度ダメージを受けると、そのままずっと残ってしまうんです。

髪の構造は主に3層からなっていて、

  • キューティクル(cuticle):一番外側。ウロコのように重なり合い、髪の中身を守っている。
  • コルテックス(cortex):髪の強さや弾力を生み出す繊維状の部分。
  • メデュラ(medulla):中心部分にある空洞のような構造(ない髪もあります)。

この中でも、キューティクルは特にデリケート。ドライヤーの熱や紫外線、ブラッシングの摩擦など、ちょっとした刺激ですぐに剥がれてしまいます。そしてキューティクルが傷つくと、その下のコルテックスも無防備に…。

つまり、髪の毛って実はとっても繊細。見た目ではわからなくても、日々のちょっとした習慣が、髪の未来を左右しているんです。



ヘアケア製品は3つに分類される ― 実は「全部違う役割」だった!

ドーソン教授は、ヘアケアに使われる製品を大きく3つに分類しています。

  1. シャンプー(Shampoo)
  2. リンスオフ・コンディショナー(Rinse-off Conditioner)
  3. リーブイン・トリートメント(Leave-in Treatment)

それぞれの役割を一言でまとめると、こんな感じです。

  • シャンプー → 汚れを落とす
  • コンディショナー → ダメージを整える
  • リーブイン(洗い流さない)トリートメント → 長時間守ってくれる

でも、実際にどう違うのか、もう少し深掘りしていきましょう。



シャンプーは「ただ洗うため」だけのものだった!

「栄養たっぷりのシャンプーで、髪がよみがえる♪」なんてCM、よく見ますよね。でも、ここでドーソン教授の一言。

「シャンプーに栄養を求めるのは間違いです。髪を“準備する”のがシャンプーの役目です。」

ちょっとびっくりですよね。実はシャンプーは、髪に何かを“与える”のではなく、“取り除く”ための製品なんです。

たとえば、汗・皮脂・ホコリ・花粉・スタイリング剤など。これらは髪と頭皮に残るとトラブルの原因になります。だから、まずしっかり落とさなければいけない。ここで登場するのが表面活性剤(surfactants)という成分です。



表面活性剤ってなに?

表面活性剤とは、油と水を仲良くさせる魔法のような成分。油汚れを水で洗い流すために不可欠で、シャンプーや洗剤に必ず使われています。

ただし、種類によって洗浄力や肌への刺激が異なります。たとえば強力な「ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)」は泡立ちがよく、洗浄力が高い反面、敏感な人には刺激が強すぎることも…。

だからこそ、自分の頭皮の状態や髪質に合った“ちょうどいい洗浄力”のシャンプーを選ぶことが大切なんです。



シャンプーで補修しようとしないで!

シャンプーはあくまで「準備」です。つまり、

  • 汚れをしっかり落とす
  • 髪をクリーンな状態に戻す
  • 次のステップ(コンディショナーやトリートメント)がしっかり浸透するように整える

これが本来の目的。髪の補修やうるおいを期待するなら、その役目は「次」に回しましょう。



コンディショナーは「髪のパジャマ」!?補修して守ってくれる頼れる存在

では、シャンプーで清潔になった髪を、どうやってケアするか。ここで登場するのが、コンディショナー(Rinse-off Conditioner)です。

シャンプーが「洗い流すもの」だとすると、コンディショナーは「少しだけ残すもの」。つまり、髪の表面に良い成分を“うっすらとまとわせて”補修・保護してくれるのです。



コンディショナーに含まれる「ベネフィット成分」とは?

コンディショナーには、髪に良い影響を与える成分=ベネフィット成分(benefit agents)がたっぷり含まれています。たとえば:

  • シリコン(Silicone):表面をなめらかにして、クシ通りをよくしてくれる
  • 植物由来のオイル(アルガン、ホホバなど):乾燥から守る
  • 陽イオン性ポリマー(Cationic Polymer):髪のダメージ部分に吸着して補修

これらの成分が髪のキューティクルに優しくくっつくように設計されているので、洗い流しても少しだけ髪に残り、手触りやツヤを改善してくれます。

ドーソン教授いわく、「コンディショナーは、髪を扱いやすくし、将来のダメージから守るための“防具”のようなもの」なんだとか。まさに、お風呂上がりに着るパジャマのような役割ですね!



「ノンシリコン」「サルフェートフリー」は本当に安全?その正体とは?

近年よく耳にする言葉、「ノンシリコン」「サルフェートフリー(sulfate-free)」――なんとなく「髪にやさしそう」と思われがちですが、実はここにも誤解があります。

ノンシリコンってなにが違うの?

「ノンシリコン」とは、シリコンが含まれていない製品のこと。確かに、頭皮に残りすぎると毛穴詰まりの原因になる…という説もありますが、実際は科学的に明確なリスクは確認されていません。

シリコンには髪をなめらかにして指通りをよくする効果があり、使い方を間違えなければとても優秀な成分なんです。



サルフェートフリーってなに?

「サルフェート」は、先ほど紹介した硫酸系の表面活性剤。洗浄力が高く、泡立ちもいいですが、敏感肌の人には刺激になることも。

そこで登場したのが「サルフェートフリー」。でも、サルフェートを抜くと泡立ちや洗浄力が落ちるため、他の界面活性剤を多く入れる必要があるという現実もあります。

ドーソン教授の見解は明快です。

「サルフェートを抜くこと自体に科学的なメリットはあまりありません。大事なのは製品全体のバランスです。」

つまり、「なんとなく流行っているから」ではなく、自分の髪質や悩みに合っているかどうかで選ぶことが何より大切なのです。



今日からできる!賢いシャンプー&コンディショナーの使い方

最後に、ドーソン教授のアドバイスをふまえた「今日からできる賢いヘアケア習慣」をご紹介しましょう。

  1. まずはシャンプーで“準備”!
     汚れをしっかり落として、次のケアが入りやすい髪に整えることが第一。
  2. コンディショナーは“補修と予防”に集中!
     洗い流しすぎず、しっとり感が少し残るくらいが理想。
  3. 成分よりも“自分に合うか”を重視!
     流行ワードより、自分の頭皮や髪質、悩みに合わせて選ぶ。
  4. 1回で全部を完璧にしようとしない!
     シャンプー・コンディショナー・トリートメントはそれぞれ役割が違う。分担させて、チームでケアをする感覚が大事!



髪は毎日の積み重ねで応えてくれる ― 科学と正しい習慣が未来のツヤ髪をつくる

美しい髪は、一日にしてならず。高価な製品やSNSで話題の商品を追いかけるよりも、科学に基づいた正しい知識と、自分に合った選択を続けることが、未来の“理想の髪”を育てる近道です。

今日からあなたも、ドーソン教授直伝のヘアケアメソッドで、髪に優しく、そして賢く向き合ってみませんか?

きっと、明日の鏡の中の自分が、ちょっとだけ誇らしく感じられるはずです。



記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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