この記事の概要

脱毛症や頭髪の薄毛に悩む方にとって、最適な治療法を見つけることはとても大切な課題です。しかし、薄毛の原因は人それぞれ異なり、正しい診断と個別に最適化された治療プランが不可欠です。本記事では、最新の科学的知見に基づき、脱毛症の原因や診断方法、そして医師による個別対応の重要性について、わかりやすく丁寧に解説します。あなたにぴったりの解決策を見つける第一歩として、ぜひご一読ください。

脱毛症と毛髪再生治療には個別の対応が必要です

近年、脱毛症（hair loss）の原因についての科学的理解は急速に進展しています。そしてその知見をもとに、医師による毛髪再生治療専門家（physician hair restoration specialists）たちは、革新的なアプローチを用いて薄毛治療の成果を高め続けています。

髪を後ろにかき上げて額を露出させた女性の様子。生え際付近には産毛のような細い髪が目立ち、頭髪のボリューム低下や薄毛の兆候が見受けられるシーン。

科学が進歩するにつれ、脱毛症の原因は非常に複雑であり、個人ごとに異なる可能性があることが明らかになってきました。そのため、それぞれの患者さんの脱毛症の原因を正しく診断することが、個別最適化された治療計画を立てるうえで欠かせない第一歩となります。

医師による毛髪再生治療専門家は、脱毛症の治療は次の2つの観点から患者さんごとにカスタマイズされるべきだと理解しています。

原因、脱毛パターン、進行速度、進行範囲
患者さん自身の希望（仕上がりイメージ、費用、治療にかける時間、合併症や副作用の許容範囲）

個々の患者さんにおける脱毛症

過去20年間で、頭髪が生える仕組みと頭髪が失われる原因について、多くのことが解明されました。

頭髪の成長メカニズムは、基本的にすべての人類に共通していますが、頭髪が失われる原因には大きな個人差があり、外傷（trauma）、疾患（disease）、そして遺伝的要因による男性型および女性型脱毛症（pattern hair loss）など多岐にわたります。

柔らかなニットセーターの袖口から伸びた女性の手が、抜け落ちた細い髪の束を軽く握っている様子。抜け毛や薄毛が進行する不安や恐怖を感じさせる場面。

男性型脱毛症（androgenetic alopecia）および女性型脱毛症は、男女ともに最も一般的な恒久的脱毛の原因です。脱毛症の詳細な原因については「About Hair Loss（脱毛症について）」を参照してください。

ただし、これらパターン脱毛症の根本原因については、今なお完全には解明されていません。そのため、科学的な知識と臨床的な診断技術を持つ医師毛髪再生専門家による診察が極めて重要です。適切な診断により、最も効果的な治療法が選択されます。

男性における診察結果の解釈

男性型脱毛症の根本的な原因は、遺伝的素因（genetic predisposition）にあることが知られています。つまり、親から受け継いだ遺伝子によって、テストステロン（testosterone）の代謝物が脱毛を引き起こす体質が決まるのです。テストステロンと脱毛症の関連については「About Hair Loss」をご覧ください。

しかしながら、遺伝的素因の詳細は以下のように完全には解明されていません。

確定的な「脱毛遺伝子（baldness gene）」は特定されていません。
2つ以上の遺伝子が相互に作用して発症に関与している可能性が高いと考えられています。
男性型脱毛症の家族歴は父親や近親男性に見られることが多いですが、発症に関与しているとされる主要な遺伝子の一部は、母系（X染色体）に存在すると考えられています。
男性型脱毛症患者のうち、約20%は家族歴がありません。
特に50歳以上の男性では、加齢による要因が遺伝的素因に加わって発症する可能性も指摘されています。

また、人種差による脱毛パターンの違いも見られます。例えば、白人系、アジア系、アフリカ系、ネイティブアメリカン系など、民族によって脱毛の進行パターンや範囲に差があることが知られています。

診察においては、たとえ男性型脱毛症が最も疑われる場合でも、その他の原因を確実に除外する必要があります。たとえば、アスリートであればステロイド使用による脱毛が考慮されることもありますし、甲状腺機能低下症（hypothyroidism）や鉄欠乏症（iron deficiency）も脱毛を引き起こす可能性があります。

ヘアプルテスト（hair pull test）などの標準検査から得られる情報は、脱毛の発症時期・持続期間・パターンの診断、および他疾患の関与有無の把握に役立ちます。この情報は、たとえば男性型脱毛症以外が原因だった場合、フィナステリド（finasteride、製品名：プロペシア®）など特定治療薬の無効性を予測するうえで極めて重要です。

また、毛髪移植（hair transplantation）を考える際には、後頭部や側頭部のドナー部位（donor site）にどれだけ健全な毛髪が残っているかの評価が不可欠です。ドナー毛髪の適切な評価に基づき、長期的に成功する毛髪移植計画が策定されます。詳しくは「The Donor Site: Savings & Loan of Hair for Transplantation」をご覧ください。