その植毛手術、本当に“医師”が行っていますか?ISHRSが警告する無資格施術の実態と回避法

薄毛治療に関する情報を確認する若い女性カウンセラーのイメージ写真。植毛手術や毛髪再生に関心を持つ患者への説明や統計データの提示を連想させる構図。

この記事の概要

植毛手術を考えている方、ちょっと待ってください。その施術、医師免許を持たない“無資格者”が行っている可能性があります。世界最大の植毛学会ISHRSが警鐘を鳴らす、無資格者による危険な植毛手術の実態とは? 本記事では、実例と共に、信頼できる医療の見分け方や、安全なクリニック選びの具体的なチェックポイントをやさしく丁寧に解説します。

薄毛は単なる見た目の問題ではない——自信と尊厳に関わる“人生のテーマ”

自毛植毛やFUE技術に関心を持ち、自身の髪の将来について真剣に考えるショートヘアの女性のイメージ。薄毛や頭髪の変化に悩む人々の感情や意識変化を象徴するビジュアル。

髪は、人の印象を左右する大切な要素のひとつです。ふんわりとした前髪や額を覆う生え際、整ったヘアスタイルは、私たちの「自信」と直結しています。
しかし、年齢を重ねる中で、あるいは遺伝的な要因や生活習慣、ストレス、ホルモンバランスの乱れによって、髪が薄くなるという悩みは多くの人に訪れます。

そして薄毛は単なる美容上の悩みではありません。ときに「鏡を見るのがつらい」「外に出るのが億劫」といった心理的な苦痛に発展することもあります。
だからこそ、現代では医学の力で髪を取り戻す——すなわち植毛手術(hair restoration surgery)が注目されているのです。

ところが、この“希望”のはずの植毛手術に潜む「危険な落とし穴」が、近年世界中で問題視されています。

それは、医師免許を持たない人物が、手術を行っているという事例が後を絶たないという現実です。

このような不正な医療行為に対して、世界最大の植毛専門団体である国際毛髪外科学会(International Society of Hair Restoration Surgery:ISHRS)が強く警鐘を鳴らしています。

本記事では、この深刻な問題の背景、実例、そして私たちが安全な植毛手術を選ぶためにできることを、やさしく、丁寧に、そして深く掘り下げてご紹介します。

自信を取り戻す、最適な植毛

医師ではない者がメスを握る!?無資格者による“植毛手術”の実態

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まず驚くべき事実をお伝えします。

世界各地からISHRSに寄せられる報告によると、一部の植毛クリニックでは、医師ではないスタッフが実際の手術を担当しているというケースが頻繁に確認されています。

ここで言う“スタッフ”とは、医療資格を持たないテクニシャンや、トレーニングだけを受けた美容系従業員であることが多く、彼らは本来、医療行為を行ってはならない立場です。

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では、具体的にどのような“医療行為”が植毛手術で行われているのでしょうか?

  1. ドナー部(後頭部など)からの毛包(hair follicles)の採取
  2. レシピエント部(移植部位)への切開・移植
  3. 局所麻酔の投与
  4. 術中・術後の出血・感染対策

これらはすべて、外科的かつ専門的な処置を含むものであり、明確に医師免許を持つ人物のみが行える行為とされています。

しかし実際には、「医師の監督があるから問題ない」と称して、無資格者が施術を担当しているケースが後を絶ちません。そして、そうした手術によって、

  • 毛が生えない
  • 感染症を起こす
  • 皮膚に凹凸の傷跡が残る
  • 神経や血管を傷つける

といった取り返しのつかない健康被害が現実に起こっています。

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ISHRSの「最善慣行(Best Practices)」とは?正しい植毛手術のあり方

このような無資格者による手術を防ぐため、ISHRSは世界中の専門医に向けて「最善慣行(best practices)」というガイドラインを発表しています。

この中では、以下の原則が強く示されています:

  • 手術のすべての工程は、医師自身が直接行うか、医師が厳格に監督すること。
  • 無資格者に医療行為を委任することは、法律に違反する可能性がある。
  • 患者には、施術者の資格や責任体制について明確に説明する義務がある。

このガイドラインの背景には、実際にいくつもの国で「無免許医療行為」に対する刑事訴追が行われているという、深刻な国際情勢があります。

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「偽装学会」に要注意!学ぶべき場が“誤情報の温床”に

もう一つの大きな問題が、“偽装された学会”や“営利目的の会議”の存在です。

本来、「学会」とは、医師や研究者が最新の科学的知見を共有し、安全で効果的な医療技術を広めるための中立的な場所です。

ところが近年では、学会を名乗りながら実態は企業の営業活動であり、特定の技術を売り込むための“広告の場”になってしまっている団体が増えています。

そうした場で使われる文言には注意が必要です:

  • 「痛みゼロ」
  • 「傷跡なし」
  • 「切らない手術」

これらは耳ざわりの良い表現ですが、外科的処置である以上、痛みや傷を完全にゼロにすることは医学的にありえないのが現実です。

また、参加者は「最新技術を学べた」と思い込んでしまいがちですが、実際には「偏った知識」や「未検証の技法」しか得られず、結果として患者に危険が及ぶケースもあるのです。

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若手医師と患者、双方に被害が及ぶ連鎖構造

このような偽装学会の問題は、単に一部の患者が被害を受けるだけにとどまりません。
むしろ、若手医師や新規参入者に誤った知識が広まり、それがさらに患者を危険に晒すという“悪循環”を生んでしまうのです。

たとえば、

  • 「この器具なら資格がなくても簡単に移植できる」
  • 「手術時間を短縮して数多く施術すれば儲かる」

といった歪んだ指導がなされている現場もあります。

医療とは本来、人の命と健康に携わる責任ある営みです。それが、営利と効率だけに傾いた瞬間、医療は医療でなくなります。

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ISHRSが提案する「信頼できる医療情報の選び方」

では、どうすれば私たちは「信頼できる医療」にたどり着けるのでしょうか?

ISHRSでは、以下の具体的なアクションを推奨しています:

  • 学会やカンファレンスの主催団体が、非営利で中立的な立場であるかを調べる
  • ISHRSが加盟する国際組織(Global Council of Hair Restoration Surgery Societies)を信頼する
  • ISHRSの公式イベントカレンダー(https://ishrs.org/upcoming-events)に掲載されたセミナー・会議を優先的にチェックする

これらの学会では、誇大広告や一方的な技術の押し売りではなく、医学的根拠に基づいた安全・中立な教育が行われています。

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【実践編】信頼できる植毛医療を受けるために、今日からできる6つのこと

これから植毛を考えている方、あるいは大切なご家族のために情報収集をしている方のために、以下に「安全な医療機関選びのためのチェックポイント」をお伝えします。

① カウンセリングの段階で「誰が手術をするのか」を確認する

「医師がすべて行います」と言われたら、その医師の資格・名前を明示してもらいましょう。
「チームで対応」「専門の技術者がいます」など、曖昧な表現には要注意です。

② 症例写真の「撮影日と経過月数」を確認する

よく見る“Before/After”写真には、どれくらいの期間で毛が生えたのか、撮影時期が記載されていないことがあります。術後の経過が明記されているか確認しましょう。

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③ “切らない”や“痛くない”と謳う広告をうのみにしない

これらは注意すべき“バズワード”です。どんな手術であっても、身体に負担はかかります。

④ 価格の安さだけで選ばない

極端に安い施術には理由があります。人件費を抑えるために、無資格者が施術を行っている可能性もあります。

⑤ 医師の経歴・所属学会をチェックする

医師がISHRSや日本皮膚科学会、日本形成外科学会などに所属しているか確認しましょう。
所属していない、または学会歴が不自然に短い場合は慎重に。

⑥ カウンセリングで“急がせてくる”ところは要注意

「今なら割引になります」「すぐに予約を」などの圧力は、誠実な医療機関の姿勢とは言えません。

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最後に:髪の未来と、あなた自身の人生を守るために

植毛手術は、人生の選択肢の一つです。
薄毛に悩んでいる人にとって、それは「自信を取り戻すきっかけ」になるかもしれません。

しかしだからこそ、その希望を託す相手が本当に“医師”なのか、“信頼できる存在”なのかを見極めることが何よりも大切です。

ISHRSはこれからも、世界中の患者が安全で質の高い医療を受けられるよう、正しい情報を発信し続けています。

あなたの髪を、人生を、そして尊厳を守るために。
どうか“正しい医療”と出会ってください。

自信を取り戻す、最適な植毛

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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