マイコプラズマ/ウレアプラズマ
- マイコプラズマとウレアプラズマの菌種の違いと、性感染症としての位置づけ
- 男女それぞれの症状と、自覚症状が出にくいケースがある理由
- 検査・診断の流れと、治療で抗菌薬が効きにくい場合があること
- クラミジアや淋菌との重複、放置リスク、パートナー同時検査の考え方
マイコプラズマ/ウレアプラズマとは
マイコプラズマとウレアプラズマは、尿道炎や子宮頸管炎の原因になりうる小さな細菌です。性行為で感染する性感染症の一つとして扱われます。
これらの細菌には、いくつかの種類(菌種)があります。代表的なものがマイコプラズマ・ジェニタリウムとウレアプラズマです。菌種によって、病気の起こしやすさが違うと考えられています。
ここで注意したいのが、子どもや大人がかかる「マイコプラズマ肺炎」との違いです。肺炎を起こす菌とは仲間ではあるものの、性感染症の原因菌とは別の細菌になります。混同しないでください。
これらの感染症は、性的に活動的な年代でみられます。特別な人だけがかかるものではありません。パートナーとの関係のなかで、誰にでも起こりうる身近な感染症だと理解しておくと、検査へのハードルも下がります。
これらの菌の特徴は、細菌なのに細胞壁を持たないことです。この性質が、あとで触れる治療の効きにくさにも関わってきます。診療の現場でも、見分けと薬の選び方に工夫がいる感染症だと感じます。
おもな菌種を整理すると、次のようになります。
| 菌種 | おもな関わり | 特徴 |
|---|---|---|
| マイコプラズマ・ジェニタリウム | 尿道炎・子宮頸管炎などの原因になりうる | 性感染症の病原体として注目されている |
| マイコプラズマ・ホミニス | 関与が指摘されることがある | 常在菌として見つかることもある |
| ウレアプラズマ・ウレアリチカム | 尿道炎との関連が指摘される | 症状の有無で扱いが変わることがある |
| ウレアプラズマ・パルバム | 関与ははっきりしないことが多い | 無症状で見つかる場合がある |
ウレアプラズマは、症状がない人からも見つかることがあります。菌が見つかった=必ず治療、とはならない場合もあります。判断は症状や検査結果を合わせて行います。
近年は、クラミジアや淋菌の検査をしても原因がはっきりしない尿道炎の背景に、これらの菌が隠れていることが知られてきました。「検査を受けたのに、なかなか良くならない」という声の一部は、この菌が関わっている可能性があります。原因を一つずつ絞り込む姿勢が役立ちます。
主な症状(男女別・無症状のことがある)
症状はクラミジアや淋菌とよく似ており、見た目だけで区別するのは困難です。一方で、はっきりした自覚症状が出ないまま経過することもあります。
男性の症状
男性では、非淋菌性・非クラミジア性の尿道炎として現れることがあります。おもな訴えは次のとおりです。
- 排尿時の軽い痛みやしみる感じ
- 尿道のかゆみや違和感
- サラサラした少量の分泌物
淋菌のように大量の膿が出るというより、症状が軽めのことが多いと言われています。そのため気づきにくく、放置につながりやすい点に注意してください。
女性の症状
女性では子宮頸管炎などの形をとることがありますが、自覚症状に乏しいことが少なくありません。おりものの変化や下腹部の違和感で気づく方もいます。
| 対象 | 出やすい症状 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 男性 | 排尿時の痛み、尿道の違和感、少量の分泌物 | 症状が軽く見逃しやすい |
| 女性 | おりものの変化、下腹部の違和感、不正出血 | 無症状のまま進むことがある |
| 男女共通 | のどや直腸への感染で無症状のことも | 部位により気づきにくい |
女性の場合、おりものの変化を生理や体調のせいと考えて、見過ごしてしまうことがあります。ふだんと違う状態が続くようなら、一度調べてみると安心につながります。
無症状でも、体の中で炎症が続いていることがあります。症状の軽さと、体への影響の大きさは必ずしも一致しません。気になる場合は検査を受けてください。
感染経路・原因
おもな感染経路は性的な接触です。腟性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでもうつることがあります。
マイコプラズマは感染力そのものは強くないと考えられており、性行為以外でうつる可能性はほとんどありません。タオルや便座から日常的に感染する心配は、基本的にいりません。
潜伏期間は3日から5週間ほどと幅があります。感染してすぐに症状が出るとは限らず、心当たりの時期と発症のタイミングがずれることもあります。
口を使った性行為では、のどにも菌がつくことがあります。のどの感染は自覚しにくく、気づかないまま経過することも少なくありません。症状の有無だけで感染の有無を判断するのは難しいと考えてください。
新しいパートナーができたとき、コンドームを使わない機会が増えたときは、感染の機会が増えます。不特定多数との接触は、それだけ複数の性感染症に触れる可能性を高めます。まずは正確な検査から。
検査・診断
診断は、尿やおりものを使った検査で行います。菌の遺伝子を調べるPCR検査や、培養検査が用いられます。
ヒロクリニックなんば心斎橋院では、男女ともに診療しています。女性の検体採取は女性看護師が担当し、はずかしさや不安にできるだけ配慮します。
実際の診療では、初診の時点でマイコプラズマかどうかを見極めるのは難しいのが正直なところです。症状だけでは、クラミジアや淋菌と区別がつきにくいためです。
そこで、まず頻度の高いクラミジアや淋菌を念頭に検査・治療を始めることがあります。治療後も症状が改善せず、これらが陰性だった場合に、マイコプラズマやウレアプラズマを疑って追加の検査を検討します。
検査を受けるタイミングにも目安があります。感染してすぐは菌の量が少なく、検出されにくいことがあります。心当たりから数日以上あけて検査すると、より確かめやすくなる場合があります。時期に迷うときは、来院前にお問い合わせください。
秘匿性を重視される方のために、自費(実費)診療にも対応しています。保険証を使わずに受けたいというご希望も、遠慮なくご相談ください。
お電話でのご相談:06-6226-8631
治療方法
治療は抗菌薬の内服が基本です。ただし、菌の性質から効く薬が限られる点に特徴があります。
マイコプラズマやウレアプラズマは細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系といった一般的な抗菌薬は効きません。使われるのは、次のような系統の薬です。
| 系統 | おもな薬剤の例 | 位置づけ |
|---|---|---|
| マクロライド系 | アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど | 用いられるが、効きにくい菌が増えていると報告される |
| テトラサイクリン系 | ミノサイクリンなど | 選択肢の一つとして用いられる |
| ニューキノロン系 | レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど | 効きにくい場合の切り替えに使われることがある |
| ペニシリン・セフェム系 | — | この菌には効果が期待できない |
近年、マクロライド系が効きにくいマイコプラズマ・ジェニタリウムが増えていると報告されています。効きにくいと判断された場合は、テトラサイクリン系やニューキノロン系への切り替えを検討します。
薬が効いたかどうかを確認するため、治療後に再検査を行うことがあります。自己判断で薬を途中でやめると、菌が残ったり、効きにくくなったりする心配があります。医師の指示に沿って飲み切ってください。
服用中は、飲み合わせにも注意してください。薬によっては、いま飲んでいる薬やサプリメントと相性が良くないことがあります。ふだん使っている薬があれば、診察のときに伝えてください。
治療の効果には個人差があります。一度で治まらないこともあり、その場合は薬を見直します。焦らず経過を追いながら進めることが、回復への近道。
他の性感染症との関係・放置リスク
マイコプラズマやウレアプラズマは、クラミジアや淋菌と同時に感染していることがあります。症状が似ているうえ、重複も珍しくありません。
そのため、一つの菌が見つかっても、ほかの性感染症も合わせて調べる意義があります。性器クラミジア感染症や淋菌感染症(淋病)と併せて検査を行うことがあります。
複数の菌に同時に感染していると、片方だけ治療しても症状が残ることがあります。治りが悪いと感じる背景に、別の菌が隠れている場合も考えられます。原因を広く確認しておくと、遠回りを避けやすくなります。
放置した場合のリスクにも触れておきます。炎症が続くと、男性では前立腺や精巣上体へ、女性では子宮や卵管へ広がることがあると言われています。
女性では、上のほうへ炎症が広がると、不妊や子宮外妊娠の一因になりうると指摘されています。無症状だからと様子を見続けるより、早めに調べておくと安心です。
男性でも、炎症が長引くと精巣上体炎などにつながることがあると言われています。片側の陰のうが腫れて痛むといった変化があれば、早めに相談してください。
ただし、これは必ずそうなるという意味ではありません。過度に不安になる必要はなく、気づいた段階で対処すれば落ち着くことが多い感染症です。
予防とパートナーの検査
予防の基本は、コンドームを正しく使うことです。完全に防げるわけではありませんが、感染の機会を減らせます。最初から最後まで正しく着けることが、効果を左右します。
口を使った性行為でも感染することがあるため、コンドームだけで完全に防ぐのは難しい面があります。だからこそ、パートナーとの検査や、体調の変化への気づきが予防を支えます。
忘れたくないのは、パートナーと同時に検査・治療を考えることです。片方だけ治しても、もう片方に菌が残っていれば、再びうつし合うピンポン感染が起こります。
症状がなくても、心当たりがあればパートナーにも検査をすすめてください。相手を責めるためではなく、二人で区切りをつけるための検査です。
パートナーが変わったタイミングや、体調に気になる変化があったときは、定期的な検査を習慣にすると安心です。早く見つかるほど、対処もシンプルに済むことが多い病気です。無症状の時期こそ、検査の意味があります。
気になる症状があるとき、パートナーの検査が必要なときは、通院しづらい方に向けてオンライン診療も用意しています。人目を気にせず相談したい方に向いています。早めの相談が安心への一歩。
よくある質問
マイコプラズマ・ウレアプラズマについて、よく寄せられる質問をまとめます。
Q. 症状がなくても検査を受けたほうがよいですか?
A. 心当たりがある場合は、症状がなくても検査を検討してください。この感染症は無症状で経過することがあり、気づかないうちにパートナーへうつす可能性があるためです。不安があるときは、まずご相談ください。
Q. マイコプラズマ肺炎とは違うのですか?
A. 別の細菌です。性感染症の原因菌と肺炎の原因菌は同じグループの仲間ではありますが、種類が異なります。性器の感染が肺炎に変わるわけではありません。
Q. 治療期間はどのくらいかかりますか?
A. 使う薬や効き方によって幅があります。多くは一定期間の内服で経過をみますが、効きにくい場合は薬を切り替えることがあります。治ったかどうかは、再検査で確認することがあります。
Q. パートナーも一緒に治療が必要ですか?
A. 同時の検査・治療をすすめています。片方だけ治しても、もう片方から再び感染するおそれがあるためです。パートナーが無症状でも、検査を受けてもらうと安心につながります。
Q. 市販薬で治せますか?
A. 自己判断での市販薬での対処はすすめられません。この菌には効かない抗菌薬もあり、中途半端な使い方は菌を効きにくくする心配があります。医師の診断のもとで治療してください。
Q. 一度治れば再発しませんか?
A. 治ったあとでも、新たな感染機会があれば再びかかることがあります。免疫が一生続くわけではありません。予防とパートナーの検査を続けてください。
Q. 妊娠に影響することはありますか?
A. 放置して炎症が広がった場合、女性では不妊や子宮外妊娠の一因になりうると指摘されています。ただし、必ず起こるわけではありません。妊娠を考えている方は、早めに検査を受けておくと安心です。気になる点は診察でご相談ください。
お電話でのご相談:06-6226-8631
畠中 聡(ヒロクリニックなんば心斎橋院 院長/日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医)
関連情報(検査・女性の視点)
マイコプラズマ感染症は、性感染症検査専門サイトや女性向けの解説もあわせてご覧いただけます。
- 検査の詳細:マイコプラズマ感染症の検査・治療(性感染症検査)
- 女性の視点:女性の性病予防(婦人科)
畠山 聡先生 (はたやま さとし)
医師・医学博士 / ヒロクリニック医師
略歴
- 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
- 2016年 育和会記念病院
- 2019年 大阪鉄道病院
- 2021年 大阪公立大学附属病院
- 2022年 大阪鉄道病院医長
- 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長
資格・所属
- 日本泌尿器科学会認定の泌尿器科専門医
この記事は、ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。